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29jigendaddyjigendaddy   ('A`)ドクオが生きるという事について考えるようです-28

168 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:02:40.30 id:tJnLi/7X0

「なぁ、クー。」

「なんだ?」

「死ぬ前にさ…ブーンから電話があったんだ。」

笑っていたクーの表情が急に真剣になる。

「娘よりも、ツンの後を追うことを選ぶって、そう言ってた。」

「そうか…。
 分かってはいたが、自殺だったんだな。」

「………あぁ。」


172 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:07:05.92 id:tJnLi/7X0
「なぁ、クー。
 あいつは、間違ってるよな?
 生きてる娘を置いて…ツンを………選んだっていうのは。」

「なぁ、ドクオ君。
 …話を変えるようで悪いが、聞いてくれるかな?」

「なんだ?」

「ツンは最期に笑っていたか?」

クーの鋭い視線が俺を射抜く。
蛇ににらまれた蛙のように、身体が動かなくなったような気がした。


174 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:08:17.81 id:tJnLi/7X0

「本当の事を話すよ。」

一度視線を空に向けて、深く息を吸ってクーは話し始めた。

「ツンから、ツンが音信不通になる前の日に、連絡があったんだ。
 明日、樹海で死ぬとな。」

心臓が恐ろしい速さで高鳴る。
一枚一枚、見られたくない事を剥ぎ取っていくような
クーの言葉にはそういう刃のような冷酷さと鋭さが込められていた。

「君に見送られて死ぬと、そう言っていた。」



176 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:11:24.90 id:tJnLi/7X0




「………知ってたんだな。」

自分でも驚くほど冷静な声で俺は答えた。

「あぁ、知っていた。
 すまない。」


178 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:14:13.01 id:tJnLi/7X0

「あとは君とツンが一夜を共にした事も、知っている。」

「カマかけか?」

「そう思うか?」

「………あぁ。」

「そう思いたい気持ちはよく分かるが、な。
 君が知られたくないと思っている事は大体把握しているつもりだ。」

そこまで聞いて把握した。
”私には嘘は無しにして欲しい”と言ったクーの真意が。


180 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:15:56.59 id:tJnLi/7X0

「勘違いしないでくれ。
 私は何も君を咎めるつもりはない。」

「え?」

目と言葉に鋭さと冷たさは残ったままだったが、思いもしなかった
クーの言葉に一瞬、緊張が解れる。



182 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:16:53.64 id:tJnLi/7X0

「学生時代、ツンは君に気があったんだ。
 確かな好意ではなかったにせよ、あの頃から
 ツンは異性の友人が少なかったからな。
 ブーンか君か、それくらいしかいなかった。」


本当は会った日に話すつもりだったんだがな…
そう一言言って、そして、淡々と語り始めた。

「ブーンに虐待されて苦しかった時期に
 楽しかった時期を想起して思ったんだろう。
 ブーンと君という選択肢の中から君を選んでいたら、という事をな。
 あの頃、ツンは電話でもよく話していたよ。
 学生の頃の事を懐かしむように、な。」


185 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:18:56.73 id:tJnLi/7X0

「さっきも言った通り私は君を責めはしない。
 軽蔑したりもしない。
 仮初めながら、君への屈折した想いは僅かだったとは言え
 確かにツンの生命を繋ぎとめていたんだと、私は思うから。」

屈折という言葉にツンのあの壊れた笑顔を連想する。


187 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:20:54.88 id:tJnLi/7X0

「それに、思うんだ。
 私達はまだ20代前半だ。
 君もブーンも勘違いしているようだが、きっと20代前半の人間なんて
 まだまだ子供で心もうつろいやすいものなんだと、私は思う。
 本当に困ったとき、見つけ出せる選択肢は”大人達”に比べて
 きっと驚く程に少ないのだろうな。」


189 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:21:41.21 id:tJnLi/7X0

「若さの上に、ブーンもツンも、君も、そして私も………
 実に狭い人間関係の間でしか生きてこなかったからだろうな。
 一人が苦しくなると連鎖的に苦しみが広がる。
 なまじ、互いを繋ぎとめているのは友情という切り捨てにくいものだから
 尚の事、対処に困る。」


190 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:22:20.28 id:tJnLi/7X0

「さっきの質問の答えを私なりに述べさせてもらう。」

さっきの質問?
一度頭の中で復唱して理解した。


”なぁ、クー。
 あいつは、間違ってるよな?
 生きてる娘を置いて…ツンを………選んだっていうのは。”


192 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:23:19.44 id:tJnLi/7X0

「みんながみんな、ある意味で狂っていた。
 視野が狭くなっていた。
 そして、狭い視野のままに我を通したんだ。
 誰も間違っては居ない。
 ツンを拒めず抱いた君も、
 君に歪な傷跡を残して死んだツンも、
 全ての責任を放棄して死んだブーンも、
 そして、全部知りながら傍観者を通した私も。
 だから、今だけでいい。
 信じろ。
 思い込め。
 誰も間違っては居ない、と。」


194 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:23:56.68 id:tJnLi/7X0

「だけど、そのせいでデレちゃんは………」

「例え、君や私がどれだけブーンの選択に異を唱えても
 ブーンの主観では、それは間違いにはならないんだ。」

「…どういう事なんだ?」

「………正しいも間違いもないんだ。
 ブーンは死んで、デレちゃんは両親を亡くしたまま生きていかなければならない。
 そこに横たわる現実を前に正しいも間違いも、存在しないんだ。」

「横たわる…現実……?」


196 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:26:03.26 id:tJnLi/7X0

「それに、揚げ足を取るようで何だが君の正しいか間違いかという
 ”意味のない答え”をブーンにあてがうなら君の行動もまた
 間違いとされなければならなくなるんだぞ?」

俺の行動も、間違いとされる?

ハッとして気付く。
元を正せば、俺があの日、このせかいから去ろうとするツンを止めていれば
もしかしたらこうはならなかったのかもしれない…
そんな期限切れの可能性を想像した。

そうだ。
もう、期限切れなんだ。

いくら間違いだと叫んでも、現実はもう変わらない。

ブーンは死んでデレちゃんは両親のいないまま生きていかなければならない…。

”意味のない答え”………全くだ。
俺は、的外れな事を考えていたんだな…。


197 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:27:30.59 id:tJnLi/7X0

例えようの無い何かに打ちのめされて俺は空を仰いだ。

そっと、俺の手に柔らかいもの触れる。
クーの手だ。


「なぁ、ドクオ君。
 ウェルテル効果という現象を知っているか………?」

クーは俺と手を繋ぐ格好で、どこか遠く、空の向こうを見つめながら言葉を紡いだ。


200 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:29:10.17 id:tJnLi/7X0

「大切な人が死ぬことで 連鎖的にその人に近しい人々が
 死んでいく現象………
 ゲーテの著書。
 ”若きウェルテルの悩み”という作品に由来する現象だ。」


瞳を閉じて、クーは俯く。


「君はどうする?」




201 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:30:27.97 id:tJnLi/7X0



―――死ぬのか?


―――それとも、生きるのか?





204 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:31:44.10 id:tJnLi/7X0

「私はデレちゃんのことも心配だ。
 だけど、あの頃の…大切な友達である君がどうするのか。
 それが心配なんだ。」

それまで淡々と話をしていた冷たい表情から打って変わって、クーの表情が
悲しみに染まる。

「クー…?」

「これ以上、私は友達に死んで欲しくない。
 だからッ!!」


208 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:34:56.18 id:tJnLi/7X0

叫びながら、クーが俺に胸に飛び込む。
体勢を崩しそうになりながら、しっかりとクーを抱き止める。

「今は何も考えないで!!
 何が正しいことで何が間違いなのかは
 今だけは忘れて!!」


俺の顔に胸を埋めてクーは泣いていた。


211 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:36:27.41 id:tJnLi/7X0


「………だから、死なないで。」

小刻みに震えるその肩をしっかりと支えるように、包み込むように抱きしめる。

考えなければならない事を
考えようと思った事を
全て、考えるのを後回しにして………

俺は暫定的な赦しに甘んじた。


213 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/23(木) 02:37:21.95 id:tJnLi/7X0



曖昧で無責任で適当な距離感を持った俺達の関係はこうして始まった。




返信2006/11/23 09:09:22