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4jigendaddyjigendaddy   ('A`)ドクオが生きるという事について考えるようです-4

35 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:25:39.07 id:e68qkRWc0
 平日にも関わらず人のごった返す病院の待合室。

 ざわめきの中で無意識的に耳が拾う音もいくつかあったが
それらは全て耳で塞き止められ、頭には入って来ない。

 今の俺の頭の中にはさっきのブーンの言葉しかなかった。

”会社をクビになったお。”

 一回のミスでクビ?
有り得ないだろ、常識的に考えて。
だとしたら会社辞めますなんて上司に伝えた
俺なんてどうなるんだよ。


36 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:26:29.46 id:e68qkRWc0
 まとまらない考えばかりが止め処なく出てくる。
だけど、ブーンのあの表情が物語るのは一つ。
ブーンが言った事は本当なんだ…という事。


「ドクオ。」

 騒がしい待合室の中、よく透るツンの声が聞こえた。
その表情はいつものような優しい笑顔だったが、心なしか
どこか曇っているようにも見えた。

37 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:27:15.74 id:e68qkRWc0

「お見舞い、来てくれたんだ。」

「あ、あぁ。」

「ブーンには会った?」

「………会ったぜ。」

「そう。」

 そこまで言葉を重ねて、お互いに何も言えなくなった。




38 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:28:05.00 id:e68qkRWc0

「すぐそこに喫茶店があるの。
 行かない?」

 無理に笑顔を作ってツンはそう提案する。
俺もツンを真似て無理に笑いながら頷いた。

 近くを歩いていた患者らしい男がぎこちなく笑う俺達を
不思議そうに見ていた。

39 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:28:42.33 id:e68qkRWc0
---------------

 病院の向かいにある小さなこじゃれた喫茶店。
入り口から一番離れた隅っこの席に俺とツンは
向かい合うように座った。


「解雇…されたの。」

 注文を終えて最初に切り出したのはツンだった。
あまりの直球。少しは軽い話からかと思って身構えていなかった俺は
少し狼狽する。

40 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:29:20.68 id:e68qkRWc0
 だけど、詳しく問いたださなければならない。

「一回のミスで解雇って、そんなの有り得るのか?」

 少なくとも、似たような業種で飯を食っている人間として…
それが公平な処遇なのか見極める義務がある。
そんな気がした。
 その証明がブーンの回復に繋がるかもしれない。
ツンの言葉を一言たりと聞き逃さないように、耳を傾ける。


「私は断片的にしか聞いてないけど……」


41 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:30:13.66 id:e68qkRWc0
 ツンの話を要約し、俺なりにまとめるとこうだ。

とある小規模なプロジェクトをブーンは任された。
当初の予定なら何とか人数的にも期間的にも達成が
出来そうだという仕事だったらしいが、いつの間にか
どこか見知らぬ高い場所でプロジェクトに求められる成果物が
思いのほか重要視され出した。当初の予定にない嬉しい
アクシデント…と取れなくも無かったが期待値が肥大化し、
クライアントからの追加予算と何とも言えない現場指揮の
人材が投入され、ますますプロジェクトは大きくなっていった。
しかし、そこで一つの良くない問題が発生する。
途中で投入されてきたクライアントの人間というのが
全く技術力を持たない人間だったらしい。自己掲示欲だけは人一倍強く
指揮をしたがるという現場にとって害悪以外の何者でもない存在が
実作業だけではなく、人材管理まで任され、仕事を回していたブーンから
人材管理という部分を剥奪し、理解に苦しむ仕事の割り振りを始めた所から
プロジェクトは迷走を始めた。
ありえない期間でありえない大規模なモジュールを組め、
聞きかじったソースコメントの指示を徹底付ける。
そして、次々と人間が辞めて行ってしまった。
中には消息不明になった人間や身体に異常を来たした者もいたという。
親族から訴えられたが、その男は責任逃れだけは上手く全てを
ブーンに押し付け、自らは知らん顔をしてやり過ごし
会社が背負うことになった損失とクライアントからの信頼の裏切りの
責任者としてブーンは祭り上げられたのだ。

42 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:30:51.95 id:e68qkRWc0

 そのプロジェクトについては俺も断片的にブーンから
聞いている分には有り得ない話だと思っていた。
だが、その有り得ないを成し遂げようと頑張って”今”に行き着いた。
救いのない話だ。
全ての責任を負わされて、ブーンは解雇を飛び越えて懲戒免職となった。

 毛色は違っても似たような業種だけに、似たような話はよく耳にする。
しかし、これはあんまりだと思った。


43 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:31:31.40 id:e68qkRWc0

「なんだよ、それ!!」

 溜まりかねて口から悲鳴にも似た声が漏れ出した。

「………それからね、ブーンはああなっちゃったの。」

 運ばれてきたコーヒーカップを両手で包むように持ち、
俯いた視線のままツンは続けた。

「ブーンね、二回死のうとしたの。」


45 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:32:25.19 id:e68qkRWc0
 あまりの告白に身体がビクリと反応する。
スプーンを掴みそこね、耳障りな金属音が店内に響いた。
ツンは表情を見せない格好のままに、なおも言葉を繋げる。

「一度目も二度目も首を吊ろうとしていたわ。
 わざわざ娘が見ている前でね。」

 吐き気を催した。
ブーンが、あのブーンがそんな真似をするようには見えなかった。
だけど、あの病室で見たブーンは…そうも、見える。

「くそったれ…。」

 言葉が見つからなかった。

46 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:34:23.37 id:e68qkRWc0
だけど………ブーンに非はない。

そうだよ。
ブーンはどこかの誰かさんが言い出した”無茶”を通すために、
頑張ってボロボロになったんじゃないか。


ガタンと、大きな音を立てて椅子から立ち上がる。


「どこに行くの?」

 カップを両手で抱くように持った格好で、ツンが顔を上げる。
女性らしい仕草に少しドキッとする。


47 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:35:02.27 id:e68qkRWc0
「もう一回、ブーンに会ってくる。
 それで説明してやるんだ。
 あいつは悪くなんかないんだって。」



「やめて。」



一瞬、ツンが何を言ってるのか分からなかった。


48 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:35:38.80 id:e68qkRWc0
「え?」

「今は、そっとしておいてあげて。」

「何言ってんだよ!
 そんな悠長に構えてられないだろ!?
 いつまた死のうとするか分からないじゃないか!」

 ツンの両肩を掴んで周囲の客目も気にせず俺は叫んだ。
だけど、ツンは怯えた様子も驚いた様子もなく、
静かな湖面を思わせる平然とした表情で、ただ俺を見据えていた。


49 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:36:12.63 id:e68qkRWc0
 ふっと、ツンの手が肩を掴む俺の片方の手を優しく撫でた。
柔らかく冷たい感触に狼狽して俺はツンの肩から手を離す。

 ツンの表情は相変わらず穏やかだったけれど、
その表情の下にはさっき見せた”拒絶”の意志が見て取れた。

 何故、ブーンに伝えちゃいけないんだ?

51 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:37:02.38 id:e68qkRWc0

”お前は悪くなんかない。”

 その一言を届けちゃいけない理由でもあるのかよ?
意味が分からなかった。

 だけどこの話はここで打ち切られ、後は二人の近況とこれから…
そして万一の事を考えて、少しの間、娘をツンの実家の両親に
預けるという事を聞かされた。
 ここに来て、ようやく俺は気付いた。
―――何かがおかしくなり始めている、と。




52 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:37:41.68 id:e68qkRWc0
 ツンの分も一緒に喫茶店の会計を済ませて店の扉を開ける。
扉に備え付けられたベルがガランガランと音を鳴らし
店員の「ありがとうございました」という声に見送られて
二人並んで店を後にした。
 店の外に出て時計を見る。
時間は三時半。空の色はまだまだ青い。

「それじゃあ今日はどうもありがとう。
 それと、ご馳走様。」

 にこっという音が聞こえそうな柔らかい笑顔を見せて
ツンは軽く頭を下げた。

「ご馳走っつってもコーヒー一杯分だけどな。」


53 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:38:29.30 id:e68qkRWc0
 二人していくらか自然な笑みを漏らす。
何気ないやりとりだったが、少しだけ安心出来た。

「それじゃあ、俺そろそろ帰る。
 何かあったら連絡くれよ。」

「うん、ありがとう。」

「相談でも何でも、頼りないかもしれないけど
 俺でよかったら乗るからさ。」

「うん。」

 もう二つ三つ言葉を交わして俺とツンは別れた。
別れ際、ちらっと、ツンのバッグの中に煙草の箱が
入っているのが見えた。


54 名前:(・へ・) 投稿日:2006/11/13(月) 22:39:05.80 id:e68qkRWc0
ツンもブーンも嫌煙家のはずだったんだが…?
まさか娘さんが吸ってるってか?
なーんて、ようやく言葉を喋りだした女の子が煙草を吸うわけがないよな。

 特に深く考えず、俺は駅に向かって歩き出した。

返信2006/11/15 11:19:27