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1jigendaddyjigendaddy   ('A`)は人斬りと死合うようです

1 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:11:15.95 id:MR46a/Pe0


春。桜も目を覚まし、ようやっと身を暖かみが覆うこの季節。
巷では人斬りの噂が渦巻いていた。

(´・ω・`)「もし、そこの方」

火富(びふ)町でもこの噂は絶えず、道行くものは皆その話ばかり。
そんなこの町のある酒屋にて。ある一人の男が、ある男へと話しかけた。

('A`)「なにようか」

男、名は鬱田独右衛門氏脳と言う。
聞けば流浪の身で、顔を知らぬものはおらぬとか。

(´・ω・`)「貴方様は独右衛門様とお見受けいたします。よろしければ、酌をお取りしてもよろしいか」

流派は内藤一刀流の出、腕も立つ。
旅の先々では賊をこらしめ、その一振りにて悪を治めると言う。

2 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:12:48.85 id:MR46a/Pe0
('A`)「畏まるな。そなたとて、武士であろう」

見れば、独右衛門に話しかけた男も、腰に一振りを納めている。

('A`)「見たところ、脇差は無いようだが、いかがなさった」

男はその問いかけに対し、酌を取るだけだった。

('A`)「話さぬか、話せぬか。いや、これは失敬。聞くものではないと存ずる」

答えぬことに、独右衛門は無礼をはたらいたか、と考える。
男は、しかし話し出した。

(´・ω・`)「いえ、滅相も無い。実は、人斬りに取られたのです」

それを聞き、独右衛門は形相を鬼のように変えた。

('A`)「何、それは誠か」

独右衛門がこの町に入る以前に、既に人斬りの話は耳に届いていた。
むしろ独右衛門は、その人斬りをこの身で滅ぼそうと目論むのであった。

(´・ω・`)「はい、誠に御座います。私めは、人斬りに襲われたのです。逃げる際、脇差を投げました」

それを聞くと、独右衛門は露骨に不満な態度を示した。

4 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:14:19.85 id:MR46a/Pe0
('A`)「逃げるとは何事か。そなたは武士であろう。武士ならば、死しても刺し違えよう。
   その脇差が泣いておるわ」

すっかりと呑む気が失せた独右衛門は勘定を机に叩き付けた。

('A`)「失礼する」

(´・ω・`)「お待ちになってください」

独右衛門が店を出ようとしたとき、背後から男の声が響く。

('A`)「何だ」

(´・ω・`)「貴方様に、私めの脇差を取り返してきて欲しいのです」

ついに堪忍袋の緒が切れたのだろうか、独右衛門は怒り狂った。

('A`)「この馬鹿者が。恥を知れ。貴様などに武士を名乗る資格など到底ありはせん。
    己の魂と呼ぶべき刀を失っただけでなく、それを他人に願いを請うなど不届き千万。
    武士ならば、自ら取り返してみよ」

それだけを言い、独右衛門は店を出た。

6 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:22:52.64 id:VX7ZBNZT0
 
 
刻は丑を指す夜。
独右衛門は町内をうろついていた。
聞けば、人斬りは夜を好むのだそうだ。それならば自分とて夜に出れば、もしや出会うかもしれない。
思いに馳せ、指で鍔を弾く。

(´・ω・`)「もし、貴方様は独右衛門様ではないでしょうか」

石橋を渡り終えようとしたときだった。
橋の下より、見覚えのある顔が覗く。それは、先ほどの男の顔であった。

('A`)「貴様か。何をしている、こんな夜更けに外を歩けば人斬りに出会うぞ」

立ち止まっていると、男はこちらに近づいてきた。

(´・ω・`)「・・・いえ、大丈夫でしょう。人斬りならば、私はよく存じてますから」

不意に、辺りを立ち込める殺気に、独右衛門は柄に手を乗せる。

('A`)「・・・何をするつもりか知らぬが、先ほどのことで憤慨したか。しかしとて、拙者、善意にて
   発した所存である。それを十重にて承知なれば、相手仕ろう」

そう言いきると、軽く腰を落とし、右足を半歩前へと出す独右衛門。
この形こそが内藤一刀流の抜刀の形である。

(´・ω・`)「いえ、はなから貴方様を斬る所存であります故、御気になさらぬよう」

対し、既に刀身を抜き構えるのは男であった。

7 名前: ◆xjCZpXtL0U 異常なまでに重い 投稿日:2008/04/09(水) 20:24:42.45 ID:07IRNSIR0
(´・ω・`)「某、名を曙歩初歩之助兵衛。人斬りにて候」

('A`)「・・・そうか、貴様が人斬りか」

しかし、不思議と驚きはしなかった。何故かは分からない。

('A`)「内藤一刀流、鬱田独右衛門氏能。地獄へと案内仕る」

(´・ω・`)「いざ―」

('A`)「―勝負」

ここに、後に記るされたものが無く、結果はどうなったのかは分からぬ。
しかし、著者が鬱田独右衛門氏能である以上、勝ったのは目に見えて分かるだろう。
今はもう亡き武士と、殺しに魅入られた男との死闘。
もしもこの目で見られるのであらば、悲願である。


序 了

(’A`)は人斬りと死合うようです
返信2008/04/10 21:05:31

2jigendaddyjigendaddy   一 斬鉄と砕鉄

8 名前: ◆xjCZpXtL0U IDがコロコロ変わる 何故だ 投稿日:2008/04/09(水) 20:26:00.16 ID:07IRNSIR0
一 斬鉄と砕鉄

その昔、鬱田独右衛門氏脳という流浪武士がいた。
聞けば東では悪を討ち、西では弱きを助けると謂う。
内藤一刀流の出であり、皆伝を成すからして、腕は素晴らしいものである。

そんな独右衛門は、ある刀を一口と一本持っている。
一口は斬鉄の刀。事実、鉄を斬ったかは定かではないが、謂れ名はそうなっている。
そしてもう一本、砕鉄の小刀。ただ、この小刀だけは、実話である。
しかし、どちらも無銘であった。

(´・ω・`)「私には脇差が無い。実際、無くしてしまったのです。しかし、目の前に存在する
      その脇差。伝えに聞けば、鉄を砕くのだとか」

石橋の上、両者はただ睨み合うだけであった。
独右衛門―独と呼ぼう―は柄に未だ手を置いている状態である。

('A`)「その通り。この脇差、砕鉄は名の通り鉄を砕く」

今やいつ斬りあっても可笑しくは無いこの状況。
初歩之助兵衛―初歩と呼ぼう―は掲げた刀を未だ宙に浮かせている。

9 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:28:00.18 ID:07IRNSIR0
(´・ω・`)「・・・面白い。その脇差、貰い受ける」

初歩が言い終えるのと駆け出したのは同時であった。

(´・ω・`)「いざ!!」

空気を裂くこの音こそが、初歩の太刀筋である。
元より人斬りであるということは、腕が立つということだ。
生半可な腕ならば、当の昔に切り捨てられているであろう。

('A`)「!!」

しかし、兜割は命中はせず。

(´・ω・`)「ぬぅっ・・・」

どこか、鉄を打ったような感覚が身を襲う。
慌てて数歩離れてみれば、眼前には独の刀があった。

10 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:30:22.20 ID:07IRNSIR0
(´・ω・`)「!!」

横薙ぎを身を屈めて避ける。
瞬間、まるで頭の上から旋風が巻き上げるかのような風が通った。

(´・ω・`)「せいっ!」

自らの柄で目の前にある独の鳩尾へと叩きつけようと試みるも、独は気づいたのか
後方へと下がってしまった。

(´・ω・`)「・・・わずか一合にてこれほどとは・・・やはり、腐っても内藤一刀流皆伝か」

この一帯は既に別の領域へと変化している。
二人を中心に、まるで結界のような殺気が立ち込めているのだ。

('A`)「お喋りが過ぎる。貴様、嘗めてかかってくれるなよ」

言い、またも居合いの姿勢に入る独。

(´・ω・`)「居合いの内藤とはよく言ったものだ。先ほどの太刀筋、まったく見えませんでした」

12 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:32:00.81 ID:07IRNSIR0
内藤一刀流。名を聞けばまず知らぬ者はおらず、居合いと言えば内藤、とはよく言うものである。
独特な流派でありながらその実、内藤出の者は誰もが猛者であった。
主は居合いを始め、小太刀術、槍術、柔までもが含まれている。

('A`)(しかし、この男・・・迷いが無い。むしろ、迷いを知らぬ太刀筋だ)

最初の袈裟斬りだ。まるで黄泉へと誘うその形は、恐ろしいものであった。
いや、そもそもこうして死合っているのだから、不思議ではない。
しかし。

('A`)(もしや・・・)

まさか、と思い今度はこちらから攻め手を踏んでみる。
速度を乗せ、相手まで後四歩。勝機を見出し、抜刀する。

ギャリッ、と。

('A`)「!」

見れば、斬鉄が地に叩きつけられている。

('A`)「まずい!」

14 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:37:20.42 ID:07IRNSIR0
何が起きたのか未だ理解できずに、砕鉄を縦に構える。
瞬間、衝撃が身を襲い、後ろによろめいた。

('A`)「おわっ―」

ズシャリ。

右肩から左足にかけてまで伝うこの痛み。
即座に斬られたのだと思うも、身は地へと倒れた。

(´・ω・`)「・・・元来、居合いとは待つものです。しかし、何を焦ったのでしょうか、貴方様は」

どうやら、独の横薙ぎの居合いは上から叩き落されたようだ。
手にはまだ、痺れが残っている。

身をもって受けたこの痛み。
だが、斬り口から何故か、妙な痛みだと感じた。
当然このような事を何度も繰り返してきた。しかし、未だかつてこのような痛みは知らなかった。
まるで真剣の切り口だとは、到底思えないほどの粗末な痛み。
鋭さが襲ってこないのだ。
そう、まるで、引っ掻き回されたような。

17 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:45:49.97 ID:61/f/oSY0
(´・ω・`)「しかし、流石は砕鉄の小刀。あっさりと我が刀を屠り去ってくれるとは」

それを聞き終えると、足元に鉄の塊が落ちるような、そんな音が届いた。
嗚呼、そうか。あれで防いだのだから、当然相手の刀など見る影も無いであろう。
何しろ、あれを斬るということは、鋼その物を斬るも同然なのだから。

(´・ω・`)「―これは」

まだ独の右手にある小刀を、初歩が奪い取る。
しかし、漏れてきた声は驚きであった。

(´・ω・`)「もはや、これを刀と呼べるのでしょうか。いや、断じて有り得ません。
      これは、刀の形をした鋼だ」

砕鉄の小刀。
名前を見れば、さぞ斬れる小刀なのだろうと思う者が多いと思う。
しかし、実態は違う。鞘越しに見れば小刀ではあるが、本当は鋼の塊なのだ。
いや、言い方を変えよう。その小刀には刃は付いておらず、1尺3寸のソレには似合わない重みがある。
幅もまるで大太刀の如く。

18 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:46:59.12 ID:61/f/oSY0
(´・ω・`)「・・・成るほど、相手の武器を破壊するための刀、か」

砕鉄の由来はそれであった。
元々は相手を撲殺するためのものでもあったが、その重み、厚み、そして壊れることなき刀身。
独はそれを相手の武器を破壊するためのものに使用していた。
例え相手が神速の攻撃をもってしても、この小刀で受ければひとたまりも無いのだ。

('A`)「ぐぅっ・・・」

だが、独にはそれはどうでもよかった。
負けたのだ。独は、人斬りに負けたのだ。
武士なれば、恥を背負いて生きてはいけぬ。

('A`)「介錯を・・・」

死合うのであれば、当然どちらかが死なねばならない。
此度は、独が負けたのだ。負けたのならば、死ぬのみだ。

(´・ω・`)「・・・・・」

だが、人斬りはただ黙ったまま独を見下ろしていた。

('A`)「頼む・・・殺せ・・・」

これ以上恥をかきたくないばかりに、死を催促する。

19 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:48:00.16 ID:61/f/oSY0
(´・ω・`)「・・・残念ですが」

それだけを言うと、人斬りは背を向けた。

(´・ω・`)「こんなにも素晴らしいものをいただいた。貴方を殺すのは止めて差し上げましょう。
      それでは―あぁ」

ふと、思い出したかのように人斬り、初歩は振り返り独に訊ねた。

(´・ω・`)「何故、あの時駆け出したのですか?試すにしても、内藤の出の者らしくない。
      あれでは単なる愚行もいいところです」

もはや死人である独に向けての質問は、独にとっての疑問でもあった。

('A`)「・・・貴様の太刀筋を見て、思ったのだ・・・示現流ではないか、と・・・」

示現流。「二の太刀いらず」で有名なその流派は、まさに必殺。
髪の毛一本でも早く打ち下ろせというほど初太刀から勝負の全てを掛けて斬りつける鋭い斬撃が特徴である。(wiki参照)
主に実戦を想定とした流派であり、示現流と死合う者に生きる者無しとまで言わしめられている。

(´・ω・`)「・・・成るほど、流石は独右衛門様だ・・・」

少し驚きを見せるも、しかしとて男は平然としていた。

20 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:52:05.06 ID:61/f/oSY0
(´・ω・`)「如何にも。この人斬り、曙歩初歩之助兵衛。出は示現流、皆伝を納めております」

答えられたのは、予測通りであった。
しかし、毒は驚愕を隠せないで居る。
示現流に負けた。それはつまり、独が、そして内藤一刀流が負けたと言うことだ。

(´・ω・`)「それでは。しかとこの小刀、貰い受けました」

去り行く人斬りの背を睨み、独は叫んだ。

( A )「死して屍拾うものなし。さりとて、魂までは果てず。
   人斬りよ!俺は既に死んだ身だ!しかし、その刀いずれ返してもらおう!
   待っていろ、直ぐだ、直ぐに奪い返して見せよう!例え世が我を邪険にしようと、生き恥をさらそうと!
   その小刀を、そして我が内藤一刀流の!恥と、魂と、死を!奪い返してやる!」

(´・ω・`)「・・・いいでしょう、待っています。貴方様が、また私の前に現れることを。
      そして、次こそ。完全に貴方を殺してあげましょう」

後に、火富の町から噂が広がった。
独右衛門が、人斬りに負けた、と。

21 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:53:08.09 ID:61/f/oSY0
 
 
「・・・行くのですか?」

火富とは近く、されど遠くも無い羅雲(らうん)の国の、ある剣道場にて。
ある男は一人、旅の荷造りをし、ある女は、その男に問いかけた。

「噂は君も聞いたお?独が、負けたお。人斬りに」

その独特な喋り方と、温和そうな顔からは、決して彼がこの道場の師範代を務めているとは思わないだろう。

「でも、つい先日、狐家からの推挙がかかったばかりですよ?なのに・・・」

「だからこそ尚、だお」

男は、風呂敷を背負うと軒先へと出る。
桜は彼の頬を掠め、地へと落ちた。

「人斬り、曙歩初歩之助兵衛。独を斬った男だお。そして―」

振り返ると、女は寂しそうな顔をしていた。

「僕の幕臣になるための条件、『歩之助兵衛の抹殺』。果たして来るお」

しかし、女は答えず。
男はただ道を行く。その先に何があるのか。何が待つのか。

23 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/09(水) 20:54:48.07 ID:61/f/oSY0
「―武雲!!」

背後から、名前を呼ばれ振り返る。

「必ず、生きて帰ってくるのよ!!」

先ほどの女は、まるで位など気にもせず、男にそう言った。

( ^ω^)「おっ!この内藤一刀流師範代、内藤武雲法螺居存!必ずや帰ってくるお!」

手を振り、男は最後にこう言った。

( ^ω^)「何故なら某、貴女様の士(さぶらい)でありますが故」

それだけ言い、男は駆け出す。
その後姿を見たまま、女は小さく呟いた。

ξ゚⊿゚)ξ「この津出鈴、貴方様のお帰りを待つ所存で御座います・・・」

ポツポツと、雨が舞う。
だかしかしとて、それは雨ではなく、涙であった。
女、鈴の涙は止むことが無く、これがこの年初めての春雨であった。


一 了

返信2008/04/10 21:06:18

3jigendaddyjigendaddy   二 士て候

1 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 19:56:23.14 id:T1qoNG6o0
前スレ(序・一)
ttp://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1207739475/l50

人物紹介


('A`) 鬱田独右衛門氏脳 うつだどくえもんしのう

流浪武士。内藤一刀流の出であり、皆伝を成している。
火富町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合うが、敗れる。
通り名は「悪斬り独」改め、「斬鉄の独」。


(´・ω・`) 曙歩初歩之助兵衛 しょぼしょぼのすけべえ

人斬りを好む狂人。示現流の出でおり、皆伝を成している。
火富町にて流浪武士、鬱田独右衛門氏脳と死合い、勝利する。
その際に砕鉄の小刀を奪う。通り名は「人斬り初歩」


( ^ω^) 内藤武雲法螺居存 ないとうぶうんほらいぞん

内藤一刀流師範代にして、内藤家11代目当主。
その腕は天下の狐家から推挙が上がるほどである。
推挙の際、「歩之助兵衛の抹殺」を条件とされ、果たすために旅立つ。

2 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 19:59:02.23 id:T1qoNG6o0
二 士て候

('A`)「ん・・・」

目が覚めてみれば、そこは知らない部屋であった。

('A`)「ぐぅっ!」

身を起こそうと試みるも、走るような痛覚がソレを阻止する。
布団をどかし見やると、上には何も着ておらず、代わりに身体中を包帯が巻きついていた。

('A`)「どなたか居らんか」

仕方なしに寝たまま声を上げてみれば、横の襖を開けて一人の女が入ってきた。

川 ゚ -゚)「はい、ここに」

視線だけをその女へと移すと、独は驚愕した。
まるで蝋人形のように白く、その面は人形のように美しく、崩れない。
身のこなしも上品なもので、すっかりと独は見入ってしまった。

川 ゚ -゚)「如何なされましたか?」

言われ、独は顔を赤らめながら視線を外す。

('A`)「いや、すまん。つい、貴女が美しく・・・見入ってしまった」

部屋の広さは六畳ほど。天井を仰ぎ見るに、そうなのだろう。
刻は夕を指しているのか、木漏れ日が赤く染まっていた。

3 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:01:01.71 id:T1qoNG6o0
川 ゚ -゚)「冗談がお好きなのですね」

(;'A`)「あ、いや、本心だ」

どうにもこの女は独には合わない様であった。

('A`)「それより、何故ここに俺が居るのだろう・・・」

昨夜、初歩と対峙し敗れた独は、叫んだ後すぐさまに意識をなくした。

川 ゚ -゚)「私がお運びしました」

('A`)「なんと・・・誠にすまんかった。なんと礼を申し上げれば・・・ん?」

敗れた独は出血量が多く、それこそ早いうちに保護しなければ絶命していたであろう。
しかし、現にこうして生きていることから、あの後すぐに助けられたと考えれる。

('A`)「・・・つかぬ事を訊ねてもよいか?」

川 ゚ -゚)「何で御座いましょう」

('A`)「貴女は、何時頃俺を助けてくださった?」

言うと、女は少し手を動かした。
顔は変わらぬが、どうやら焦ると手を動かす癖があるらしい。

4 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:03:12.04 id:T1qoNG6o0
川 ゚ -゚)「・・・明朝にて」

返ってきた答えを、しかし独は見破る。
その時間帯にならば、既に独は死んでいただろう。

('A`)「嘘はよくない。俺の傷は一刻でも放置しておけば死に至るほどのものだ。
    もし本当に貴女が俺を明朝に見つけても、そこには屍が転がっているだけだ」

この時期、火富町には夜には出歩くような者は居ない。
何故なら、人斬りが出回っているからである。
例え人斬りが存在しなかったとしても、女性が夜遅くに出歩くなどとは、何処か可笑しな話だ。

('A`)「貴女は昨夜、俺を保護しているはずだ。何故嘘をつく」

強い口調で問いただしてみると、案外すぐに答えてくれた。

川 ゚ -゚)「・・・その通り。私は昨夜、死に掛けの貴方を見つけ、保護しました。
     嘘をつくのは、あまり知られたくないからです。いえ、ご存知かもしれませんが・・・」

しかし、それもあまり納得のいかぬ答であった。
知られたくないとは、どういうことか。

('A`)(夜に出歩く女・・・・・!)

考え、出てきた答は遊女であった。
確かに、この外見なら納得がいく。それに、ここ火富町には遊廓が多くある。

8 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:05:12.86 id:T1qoNG6o0
('A`)「・・・遊女か」

川 ゚ -゚)「!!」

今度は、はっきりと顔に感情が出ていた。
それは怒りのようで、悲しみのような表情であった。

('A`)「いや、すまん。憤慨したのなら許してくれ。悪気は無いのだ」

川  - )「・・・・・」

独は謝っては見たが、女は返答しない。

('A`)「・・・・もし?」

川 ; -;)「私だって!好きで遊女をやっているわけではない!」

(;'A`)「うおっ!?」

突如人が変わったように叫びだす女。

川 ; -;)「仕方ないじゃないか!弟は人質に取られ、借金を作った親は逃げ!
      残った私が全てを受け継ぐしかないじゃないか!」

10 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:07:01.43 id:T1qoNG6o0
('A`)「・・・・・」

川 ; -;)「・・・けど、それも今日まで。ようやく借金も返済できた。これで無事弟も帰ってくれば―」

('A`)「待て」

女の悲痛な独白に、独は横槍を入れる。

川 ; -;)「・・・何?」

('A`)「お嬢さん、どこの遊廓に勤めている?」

川 ; -;)「斉藤屋ですが・・・」

急に先ほどまでの口調に戻った女は、顔を赤らめていた。
きっと、無礼が過ぎたと思ったのであろう、その様は傍から見れば微笑ましかった。

13 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:09:02.23 id:T1qoNG6o0
('A`)(斉藤屋・・・まずいな・・・)

ここ、火富町最大の遊廓を所持する斉藤屋。顔も広く、話によれば代官とも繋がりがあると聞く。
しかし、そこを重視するのならばまだ優しい。斉藤屋の新の姿はまさに極悪非道のソレである。
一度自分達の手元に来た女は死ぬまで返さず、逆らえば即刻死刑だ。
この女の例も多く、人質をとっては遊女として働かせるそうだ。
斉藤屋に借金があるのは些か妙であるが、返済できたとしても去る見込みは無い。
ましてや人質をとられているのだから、この女は死ぬまで遊女として生きなければならないだろう。

('A`)(だが、見過ごすわけにもいかぬ・・・)

困っているものを見過ごせない独ではあるが、何よりも命の恩人であるこの女を助けねば
武士道に反する。

('A`)(既に死んでいる身だ。大丈夫、助けてみせる。この身に変えてもな)

しかし、現在の独の状態は最悪と言っても過言ではない。
傷は深くは無いが、それでも斬られているのだ。その上―

17 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:11:01.81 id:T1qoNG6o0
('A`)(砕鉄も、無いか・・・)

砕鉄は、初歩が持っていった。それはしかと覚えている。

('A`)(いや、構わん。あれはいずれ返してもらう)

先ほどまで死しても、と考えていたはずの独だが、そう考えた途端死ぬ気がしなくなった。

('A`)「お嬢さん、最後に一ついいだろうか」

川 ゚ -゚)「・・・なんでしょうか」

すっかり泣き腫らしたがために、目は赤い。
白い肌と相まって、まるで雪兎の様である。

('A`)「名を、聞いてもよろしいか?」

これまでの会話で、まったく聞こうとしなかった質問をする独。
普通ならば、最初に聞いておくべきことだが、独は普通ではないようだった。

川 ゚ -゚)「沙麻・・・沙麻空(すなおくう)といいます」

ふむ、いい名だ、と声をこぼし、独も名乗りあげた。

('A`)「俺の名は鬱田独右衛門氏脳。流浪武士だ」

名を言った途端、空の顔が変わった。

20 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:13:04.14 id:T1qoNG6o0
川;゚ -゚)「なっ・・・貴方様が、独右衛門様・・・!?」

瞬間、両の手を畳につけ、頭まで音を立てて叩き付けた。

川;゚ -゚)「申し訳ありませんでした!先ほどの無礼、何卒お許しくださいませ!!」

そう叫ぶ空を見ながら、溜息を一つ零す独であった。

('A`)「よい。むしろ、俺のような只の流浪武士相手に、なぜそこまでするのか。
    俺は幕臣の者でも、代官でもないのだ」

独が名を出せば、その場ではまるで神のように崇められるのはよくあることであった。
しかし独自身はそれを良しとは思わず、むしろ何処か苛立ちを覚えるだけだ。

川;゚ -゚)「しかし、貴方様は我々、弱き民のためにその腕で悪を退治してくださる。
     よもやこの日本で、貴方を知らぬ者は居らぬでしょう」

独は幼き日より正義感が強く、また武士道を愛していた。
弱きを助け、強きを挫く。悪が居れば斬り、苦しみがあるならば斬り、人の世に蔓延る
悪しき物を憎み、守るために刀を振るう。
行く先々でそのようなことばかりを繰り返すうちに、独の名は全国に知れ渡った。
そうして付いた通り名が、『悪斬り独』である。

('A`)「しかし、だからといってそこまで畏まられても・・・」

そう呟いた途端だった。

21 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:15:11.46 id:T1qoNG6o0
「おうコラ沙麻のぉ!!話あるんやろぉがぁ、聞いたるけん、でてきぃやぁ!!」

遠くから戸を叩くような音が聞こえ、次いで荒い声が聞こえてきた。

川 ゚ -゚)「あ、すみません、きっと斉藤の者です。少し待っててくださいね」

荒い声であったというのに、空の顔は嬉々たるものであった。
軽い足取りで懐から金と思しきものを取り出し、部屋を出て行った。

('A`)「・・・まったく、嫌な予感しかしないな」

痛む身体を無理やりに動かし、枕元にある刀―斬鉄―を手に取った。

('A`)「負かり越してやろう」

そう呟き、指で鍔を弾いた。

22 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:17:05.11 id:T1qoNG6o0
 
 
ゴッ。

川  - )「うがっ!」

玄関口に倒れこんだのは空であった。
先ほどの鈍い音から察するに、殴られたと見ていい。

(・∀ ・)「あーらら、痛かった?だけんども、お前が悪いんじゃぁ」

その男、名を斉藤股牟希(さいとうまたんき)と言う。
遊郭『斉藤屋』を所持し、悪名高い事からも有名ではあるが、顔を見れば誰もが直ぐに分かる。
妙に離れたその両の眼、どこか血走ったようにも見える。
その男の周りには、護衛のものらしき男が三人ほどいた。

(・∀ ・)「なーにが『これで辞めさせて下さい、弟を帰してください』、じゃがぁ!」

そう叫び、蹴りを空の腹に入れる斉藤。

(・∀ ・)「勘違いしてんじゃねぇ!だーれが、返済すれば、帰すと、辞めさせると、言ったぁ!」

尚も間髪居れずに蹴りを見舞う。

(・∀ ・)「この、ダボがぁ!!」

その叫びは町内全域にまで響くであろう。
だがしかし、周りの者は助けもせず、関わりを持ちたくないのだろう、近寄りさえしない。

24 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:19:03.91 id:T1qoNG6o0
「兄貴、どうしやすかい?」

満足したのであろう斉藤は、それを聞きこう答えた。

(・∀ ・)「んー、そうだなぁ。この顔を殺すのは勿体無い。何より、こいつが幼き日より俺は狙ってた
     んだ、久しぶりに、抱くかねぇ?」

殴りながら!と最後に言い、その場には笑い声が溢れる。

川  - )(・・・畜生・・・)

既に意識も朧気な空。思う事は呪うことだけであった。

川  - )(何故こんな仕打ちをされねばならん。私が何をやったと言うのだ。憎い。殺したい。)

本来の空ならば、ここまでくれば涙しているであろう。
だが、それさえも忘れ呪詛を呟く。

(・∀ ・)「・・・ぁあん?なんじゃぁ?何言っとるんじゃ?」

呟き声が聞こえた斉藤。その声が空から発せられていると直ぐに理解した。

(・∀ ・)「おい、我ぇ!何言うとるんじゃぁ!!」

既にボロボロの空の首を掴み上げ、そう問う。

28 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:21:13.57 id:T1qoNG6o0
川  - )「・・・ね・・・・う・・・死・・・ちく・・・・」

(・∀ ・)「はぁん?」

おどけるように耳を空の口元に近寄せる。

川 ゚ -゚)「死ね!!この犬畜生以下めが!!」

叫ぶと同時に、空の口が動いた。
限界まで口を開けば、その白い歯が覗く。そのまま顔だけを斉藤の耳に近づけると、一気に
口を閉じた。

( ∀ )「ぎ、ぃゃぁああああああああああ!!!」

不意に斉藤に痛覚が襲う。それは左耳付近からであり、慌てて手を触れてみる。
ヌチャ、と。粘着質な音が聞こえ、手にぬくもりを感じる。
ソレが手についていると分かると、斉藤は自らの指先を見て驚愕した。

( ∀ )「ち、血いいいいい!!耳が、耳がああああ!!!」

川 ゚ -゚)「意外と・・・耳は取れやすいようだな・・・」

そう、空は耳を噛み千切ったのである。
ペッと斉藤の耳を口から捨てると、そのまま戸に凭れ掛かった。

32 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:23:01.92 id:T1qoNG6o0
( ∀ )「ぐぁぁぁあ!!糞、殺せ!!その女を殺すんじゃぁあああ!!」

痛みに狂い、のた打ち回る斉藤は、痛みを叫びながらそう言った。

「と、言うわけだ。穣ちゃん、すまねぇなぁ。俺らもあんたにゃお世話になったんだけどなぁ」

無論、布団の上で。そう最後に付けたし、男共は腰から刀を抜く。

川  - )(もはや、ここまで・・・)

これが今際か。空はそれだけを思い、目を瞑った。


「うぉおおおおお!!」

ギャリイン!

「があああああ!!」

しかし、いくら待っても黄泉へは着かず。その代わりに、雄叫びとぶつかり合う様な音、それと悲鳴が聞こえた。

川;゚ -゚)「・・・あ、ぁぁ・・・」

36 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:25:12.87 ID:4VuXnrRV0
眼を見開いたとき、そこには包帯を風になびかせ、一人の男が立っていた。
足元には刀が一本落ちており、どうやらソレは敵のものであったようだ。
しかし、可笑しなことにその刀、なんと真っ二つに折れている。
いや、折れているのではない。斬られているのだ。
持ち主であっただろう男は、その様を見たのだろうか。だが残念なことに、すでに男は
地べたに寝ていた。

川;゚ -゚)「独右衛門・・・様・・・」

空がそう呼ぶと、男―独―は空を見た。

('A`)「すまぬ、遅れたな。何分、身が言うことを聞かなくて」

それだけを言い、独は斬鉄を鞘へと戻す。

「お、おま、おまままま・・・」

「独右衛門・・・あの独右衛門じゃぁねぇかぁ!?」

残る二人は、ただ驚愕を表すばかり。

('A`)「・・・如何にも。俺の名は鬱田独右衛門氏脳だ」

先ほどの男の叫び声のせいだろう。周りには多くの人々が集まっている。

37 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:27:04.58 ID:4VuXnrRV0
「ど、独右衛門?あの?」

「すげぇ、初めて見た・・・」

「俺、昨日見たぜ!でも、昨日はあんな身なりじゃぁ・・・」

既に野次馬はそこかしこを埋め尽くしている。
しかし独は気にせず、空を見やるとこう言った。

('A`)「・・・空殿」

川;゚ -゚)「は、はい」

突然呼ばれた空は思わず声が裏返る。

('A`)「この独右衛門。貴女様に士(さぶらう)て候」

その発言は、場を驚愕させるに等しかった。
侍とは。仕える身であり、侍(はべ)る者である。
独の発した言葉。それはつまり、空を主人とすると言うことであった。
しかし、流浪の身でありながらそのような事を言うのは、あまりにも馬鹿げていた。

川;゚ -゚)「なっ―」

沈黙が下りた場で、空が言を発しようとした瞬間であった。

39 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:29:13.82 ID:4VuXnrRV0
「流浪の身の癖に、笑わせんじゃあねぇよ!!」

一人の男が、独へと斬りかかる。
左上段から一気に振り切ろうとするも、しかしそれは独が許さなかった。

('A`)「甘い」

相手の刀が振り下されるよりも速く。
間合いに入ってきた瞬間に独は抜刀した。

ズバッ。

チキン。

斬音が耳に木霊し、鍔鳴りが木霊を収めた。
周りは先ほどとは違い、沈黙ではなく黙殺されているように感じる。

「こ、このぉおおおお!!!」

最後の一人が正眼にて独に突進を仕掛けた。

('A`)「っ!」

思ったよりも相手は早く、少し反応に遅れた独。
しかし慌てず、柄に手を置き少しだけ鍔を指で押した。

41 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:31:00.51 ID:4VuXnrRV0
('A`)(突きか・・・避けるか?・・・・・いや!)

独は先ほどのことを思い出していた。
最初の一人目を斬ったときだった。

('A`)(―斬る!!)

最初、相手の刀を弾き飛ばすつもりで抜いた斬鉄。
居合いの速度に応じて、これならば手元から離れるだろうと思った独。
しかし、予想は遥か上を行くのであった。
何と、斬鉄は相手の刀を斬ってしまったのである。

('A`)「おおおおお!!」

右へ一歩大きく出ると、すかさず斬鉄を右上段へと抜く。

ギャリン!
鉄の斬れる音か、それとも落ちる音か。
それは定かではない。

「き、斬ったぞ!刀を斬った!」

「あ、あぁ!斬鉄ってのは本当だったんだな・・」

ふと耳に聞こえるのは、そんな声であった。

('A`)「っであああああ!!」

44 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:33:00.07 ID:4VuXnrRV0
対する男は斬られた刀を見、驚愕するも勢いのせいで身体はそのまま突き進んでしまう。

「しまっ―」

('A`)「ふんっ!!」

ズバン!

上段より一気に斬鉄を叩き落す。
すると、相手の背がパカリと割れ、そのまま地に伏してしまった。

('A`)「―さて、そこの斉藤は」

斬鉄を鞘へと戻し、斉藤を見やる。
急な動き方をしたからか、腹の傷が開いたようで血の温もりを感じた。
しかし、それを気にせずに、独は斉藤へと近寄った。

(・∀ ・)「あ、あああああ?」

まだ痛みに狂っているのだろうか斉藤は、独を見やるが気にしていないようであった。

('A`)「空殿を、俺に譲れ。でなければ、斬るぞ」

既に際等との距離は五歩。飛び掛ってきても、いつでも斬れる距離だ。

46 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:35:00.47 ID:4VuXnrRV0
(・∀ ・)「はぁああああ!?馬鹿いうんじゃなかぁ!!おい、手前等、コイツを殺せぇえ・・・ぇえ?」

ようやっと周囲を見渡した斉藤は、現状を理解したようであった。
地には血に塗れた男三人が横たわっている。

(・∀ ・)「!・・・そ、そうか、お前、独右衛門・・・!!・・・あ・・・?」

一瞬、恐怖に歪んだ顔を作るも、独の身体を見て疑問の顔を浮かべた。

(・∀ ・)「包帯・・・?何で・・・手前が・・・・・待てよ・・・?」

考える素振りを見せながらも、斉藤は思い出したように、手を打った。

(・∀ ・)「・・・そういやぁ、今朝だったなぁ。人斬りがこの町を出たって聞いたのはよ・・・?その傷、もしや・・・?」

どこか邪悪な笑みを浮かべる斉藤に、独ははっきりと答えた。

('A`)「嗚呼、お前の考えてる通り。俺は奴と昨夜死合い、敗れた」

そう独が言った瞬間、一気に場は騒々しくなった。

「あの独右衛門が、負けた!?」

「しかも人斬りに・・・おいおい・・・」

「馬路かよ・・・えれぇこっただ・・・」

「大変だぜ、こりゃぁ。俺、皆に知らせてくるわ」

川;゚ -゚)「・・・そんな・・・」

47 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:37:00.59 ID:4VuXnrRV0
助けたはずの空は、しかしその時は独だとは知らなかった
だが、事実を知るや否や、恐怖に顔を歪める。
この事実は、世を震撼させるに十分であった。
何故ならば、ほぼ最強とまで謳われる独が、人斬りに敗れたのだから。

(・∀ ・)「へ、へへぇ!手前でも適わねぇのかい!大した奴だなぁ、人斬りさんはよぉ!?」

急におどけ始めた斉藤だが、独は澄ました顔である。

('A`)「・・・どうでもよい。空殿を俺に譲るのか、譲らないのか、答えろ」

(・∀ ・)「え、あぁ・・・そうだなぁ・・・俺としてはなぁ・・・」

斉藤は案じた。もしかしたら、独を倒せるかもしれないと。
手負いの上、状況を察するに、三人とも戦った後だ。疲労で身体は上手く動くまい。
ふと、手元に冷たい感触がし、目線だけを動かし見れば、それは斬られた刀の刀身であった。

(・∀ ・)「どちらもお断りさああああああ!!!」

すかさずそれを手に取り、独へと襲い掛かる斉藤。
しかし、距離が不味かった。
間隔は五歩。それだけの間合いと距離があれば、独には全てお見通しであった。

('A`)「っ!」

ドゴッ。

('A`)「・・・峰打ちだ。感謝しろ」

斬鉄を納めながら、独は言う。

48 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:39:00.37 ID:4VuXnrRV0
( ∀ )「う、うぐぅ・・・」

胴に吸い込まれた斬鉄の威力は、しばらく斉藤を苦しめるであろう。

('A`)「さぁ、空殿。弟さんを助けに行こう」

戸を背に座り込む空に、独は手を指し伸ばしそういった。

川;゚ -゚)「え、あ、はい」

少し迷うが、結局その手をとることにする。

('A`)「っと、肝心なことを忘れていた。おい、斉藤、人質をどこに放り込んでいる」

胸倉を掴み、斉藤に問う。

( ∀ )「・・・人質・・・だぁ・・・?」

答えは、どこか嫌な感じがした。

( ∀ )「んなもん、初めからいねぇよ・・・ターコ」

('A`)「・・・どういうことだ」

先ほどとは違った空気が、またも場を包んだ。
それは独から発されるものであり、それは純粋な殺意であった。

50 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:41:00.25 ID:4VuXnrRV0
( ∀ )「とっくに殺しんだよぉ!!バーカ!!!」

川 - )「!!」

空が、少し揺れた。

('A`)「・・・貴様・・・!!」

( ∀ )「それになぁー、空ぅぅ?」

独が柄に手を伸ばそうとした瞬間、斉藤が空の名を呼ぶ。

( ∀ )「俺ぁなぁ、お前がガキの頃から目ぇつけてたのさぁ。だーかーらー、お前の両親を殺してぇ、
     弟を人質にとってぇ、俺んとこに来るように仕向けたってわけさぁ!!」

ギャハハハ!と笑いが起こる。
だがその笑い声は、癇に障るものであり、反吐が出るものであった。
そもそも、借金があると言うのが可笑しな話なのだ。
斉藤と面識があったかは定かではないが、本人に借金をする道理はないだろう。

川 ; -;)「っわあああああ!!!」

殴りかかろうとする空を、しかし止めたのは独であった。

( ∀ )「ぁあん?何だ、助けてくれんのかぁ?ありがt」

そこで、斉藤股牟希の人生は終わりを告げる。
その場に居たものは、最後をとくと見届けた。
顔半分を、独により斬られた斉藤の最後を。

51 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:43:00.37 ID:4VuXnrRV0
('A`)「・・・空殿」

川 ; -;)「・・・・・」

話しかけるが、返事はない。

('A`)「・・・もしも、よいのならば。いや、できるならば・・・」

独の口は、突然として動き出す。
既に、主君と認めた独は、空にこう言った。
何故、空に侍ようとしたのかは分からない。だが、この女は、何故か守りたくなる。
独はそう思っていた。

('A`)「俺に、ついてくる気は無いか?」

しかし、それにも返事は無い。

('A`)「・・・そうか。失礼した。それでは―」

これ以上、場に居るのが忍びなくなった独は、去ろうとした。
しかし、それは誰かにより、止められる。

52 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/10(木) 20:44:00.41 ID:4VuXnrRV0
('A`)「―な・・・」

それは、空であった。

川 ; -;)「・・・ついていきます。いえ、つかせてください。身よりも無く、このような女ですが、
      お供をさせていただきとう御座います」

春。この時期に、二つの噂は全国へと伝わることとなる。
一つは独右衛門が、人斬りに負けた、と。
もう一つは、その独右衛門が女を連れている、ということであった。


二 了

(’A`)は人斬りと死合うようです
返信2008/04/10 21:10:00

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返信2008/04/10 21:13:55

5jigendaddyjigendaddy   三 座頭の擬古

1 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 17:46:29.58 ID:5RS1mcEG0
前回までのまとめ

花束 様
ttp://bouquet.u-abel.net/murder/mokuji.html

人物紹介
 
('A`) 鬱田独右衛門氏脳 うつだどくえもんしのう
 
流浪武士。内藤一刀流の出であり、皆伝を成している。
火富町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合うが、敗れる。
通り名は「悪斬り独」改め、「斬鉄の独」。
 
(´・ω・`) 曙歩初歩之助兵衛 しょぼしょぼのすけべえ
 
人斬りを好む狂人。示現流の出でおり、皆伝を成している。
火富町にて流浪武士、鬱田独右衛門氏脳と死合い、勝利する。
その際に砕鉄の小刀を奪う。通り名は「人斬り初歩」
 
( ^ω^) 内藤武雲法螺居存 ないとうぶうんほらいぞん
 
内藤一刀流師範代にして、内藤家11代目当主。
その腕は天下の狐家から推挙が上がるほどである。
推挙の際、「歩之助兵衛の抹殺」を条件とされ、果たすために旅立つ。
 
川 ゚ -゚) 沙麻空 すなおくう
 
火富町の遊郭、「斉藤屋」で働いていた遊女。
瀕死の独を見つけ保護した。
独に自らの不幸を打ち破ってもらい、共に行くことを決める。

2 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 17:48:03.71 ID:5RS1mcEG0
三 座頭の擬古
 
春風吹き荒ぶ田舎道。向かい風に逆らいながら、男は歩いていた。

(;^ω^)「はぁ、ひぃ、ふぅ・・・」

その男、内藤武雲法螺居存―内藤と呼ぼう―は空腹であった。
羅雲の国を出て早三日目。食の多い内藤であったため、手持ちの食料は
既に昨夜で平らげてしまった。
刻は頭上にお天道様が胡坐をかいて見下ろし、春にも拘らず日が照る。

(;^ω^)「も、無理だお・・・」

膝に手をつけ、その場に立ち止まる内藤。
ふと、霞がかった視界で先を見据えてみれば、茶屋が一軒見えた。

( ゚ω゚)「あれは・・・!!」

すかさず理解すると、内藤は足をピシャリと伸ばし、両腕を広げて駆け出した。

⊂二二二( ^ω^)二⊃「待ってろおー!!今すぐに行くおー!!」

その様は見るからに子供のようであった。

4 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 17:50:00.75 ID:5RS1mcEG0
 
 
( *^ω^)「はふ、はふはふ、はむ!」

次から次へと無くなっていく団子。内藤は金のことなど知らぬふりでどんどんと
食べていく。

「おい、聞いたか?あの人斬りが、丹生速(にゅうそく)町に入ったそうだぜ」

ふと、聞こえてきたその話に、内藤は耳を傾けた。
茶屋には内藤を除いて客は二人しか居らぬ様であった。

「馬路か・・・人斬りといやぁ、あれだ、『悪斬りの独』はどうなったんだ?」

「それが、人斬りを追っているらしい。あぁ、それとな。『悪斬りの独』は古いぜ」

「は?」

「今や『斬鉄の独』が通り名だよ。何でも、刀を斬ったとか」

( ^ω^)(・・・・・)

斬鉄。確かに、独は斬鉄を持ってる。しかし、実際に鉄を斬るとは思えなかった。
そもそも、刀など斬れるような物ではあるまい。

5 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 17:52:00.59 ID:5RS1mcEG0
「ふーん。そういやぁ、その独右衛門にもう一つ尾鰭がついてるよな」

「あぁ、あれか。女を連れてるんだろ?」

( ゚ω゚)「なんですとおー!!」

飲んでいた茶を噴出し、驚きのあまり叫んでしまう内藤。
あの独が、女を連れているとはどういうことだろうか。

(;^ω^)「も、もし、そこのお二方。それは誠にあろうかお」

顔面に付いた茶を拭いながら、話をしていた二人に近づく。

「ん?独右衛門が女を連れてる、ってことかい?」

(;^ω^)「はい」

「それが、本当なんだなぁ。しかもだ、あの『斬鉄の独』が士と決めたらしいぜ」

無論、その女に。
その言葉を聞いた内藤は、眼を見開き絶句していた。

「お?驚いたか。まぁ無理もねぇよなぁ。流浪の癖に侍るたぁ、可笑しな話だわな」

既に男の声が聞こえていないのか、内藤はふらふらと座敷に腰を落とした。

6 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 17:54:00.60 ID:5RS1mcEG0
「?おーい、兄ちゃん?」

(;^ω^)(・・・何考えてんだお・・・独の奴・・・)

もはや、独の事が分からなくなってしまった。
急に道場を飛び出したかと思うと、世を渡り歩き、『悪斬りの独』などと呼ばれ始め、
人斬りと死合い敗れたかと思えば、今度は女を連れて流離うとは。

(;^ω^)(にもかかわらず、まだ人斬りを追いかけてるのかお・・・)

そこに何故女が付いているのだろう。まったくもって分からない。
確かに、我等武士は主君に仕える身である。しかし、どこの馬の骨とも知らぬ女を主君と認め、
その上危険もある道中に連れ歩くなど、どうかしている。
いや、もしもその女性が何者かに狙われているとしたなら、傍に置くのが自然だが。
嗚呼、分からぬ。一体独は何を考えているのだ。
頭を抱え、一人悩む内藤であった。

「っと・・・すみません」

(;^ω^)「おっ?」

そんな内藤の足に、何かがぶつかる音がした。
次いで、何者かの声が聞こえる。

(;^ω^)「あ、いや、こちらこそすみませんですお。つい、考え事をしt―」

7 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 17:56:00.30 ID:5RS1mcEG0
ふっと、顔を窺おうと顔上げた内藤。
しかし、見上げた先にあるものに、驚愕を顔に表した。

(,,-Д-)「いえ、謝らないで下さい。私、盲目でして・・・」

言われずとも、その顔を見れば直ぐに分かる。
両目の上を走る、横一文字の刀傷。

(;^ω^)(なんと・・・惨い・・・)

茶色い、少しばかり太い杖を付いて歩くのだろう。
その杖の先は、内藤の足元に止まっていた。

(;^ω^)「大丈夫ですかお?」

そう言って、手を肩にかけようとしたときだった。
ほんの少しだけ、盲人の手が動いた気がした。

( ^ω^)「・・・?手伝いますお」

(,,-Д-)「なんと、忝い」

しかし、それは気のせいだったのか、違和感は襲ってこなかった。
盲人は内藤の手を取り、隣へと腰掛けた。

9 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 17:58:00.48 ID:5RS1mcEG0
(,,-Д-)「いや、有難い。私、座頭でして」

( ^ω^)「なんと。それはそれは」

座頭とは、盲官の第四等である頭を剃った盲人のことである。

( ^ω^)「どちらへ行かれるのですかお?」

見れば、盲人は風呂敷を背負っている。
きっと旅でもしているのだろう。

(,,-Д-)「丹生速まで」

( ^ω^)「丹生速・・・」

そう言えば、先ほどの男達が人斬りは今丹生速に入ったと言っていた。
ふと、その二人を探してみたが、既に茶屋を出ていたようであった。

( ^ω^)「奇遇ですお。僕も、これから丹生速に行こうとしてたんですお」

そう内藤が言うと、盲人は啜っていた茶を置いた。

(,,-Д-)「なんと・・・凄い奇遇ですね。何故丹生速に?」

聞かれたことは、あまり人には言えない事情であった。
しかし、内藤はふと思う。この盲人には、何を言ってもよいのでは。
と、いうよりも。つらつらと話さなくてもいいことまで話す人間である内藤は、案の定口を滑らせた。

11 名前: ◆xjCZpXtL0U >>8 マジで? 投稿日:2008/04/13(日) 18:00:00.50 ID:5RS1mcEG0
( ^ω^)「実は、人斬りを追ってるんですお」

言った途端、盲人は食っていた団子を噴出した。

(;-Д-)「ひ、人斬りを・・・!?何故・・・?」

当然の疑問である。

( ^ω^)「んー・・・任務、ですお」

(;-Д-)「任、務・・・とすれば、もしや貴方様は幕府の者でしょうか?」

( ^ω^)「に、なるための任務ですお」

盲人は、これは凄い方にあった、と溜息をついた。
一方内藤は、団子を食うだけである。既に十五皿目であった。

12 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:02:00.30 ID:5RS1mcEG0
 
 
「いやー、いい食いっぷりだった!ありがとよ、兄ちゃん!」

( ^ω^)ノシ「おっおっ!またいつか寄らせてもらうおー!」

皿が三十まで重なったとき、ようやく腹に溜まったのか内藤は店を出た。

(,,-Д-)「しかし、よろしいのですか?私と共に行く、など・・・」

茶屋から一里程歩いた所で、内藤の隣を歩く盲人がそう言った。

( ^ω^)「いいんですお。このご時世、危険も付きまといますし、何より弱き者を助けるのが武士の務め。
      ・・・それに」

一人じゃ旅は寂しいんですお。そう内藤は言い、二人は笑った。

それから一刻ほど歩き、ようやく山へと到着する。
この山を越えれば、火富へと辿り着けるのだ。

( ^ω^)「山道は気をつけましょうお、足元が危ないですから」

本来、内藤一人であればひょいひょいと行けるのだが、何しろお供は盲人である。
当然歩く速度は落ち、いつのまにか天に月が昇り、夜の蚊帳を締めていた。

14 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:04:00.48 ID:5RS1mcEG0
( ^ω^)「おっおっ。たまにはのんびりとした旅も良いもんですお」

パチパチと音を立てる焚き火を前に、内藤と盲人は向かい合って座っていた。

(,,-Д-)「流石に、盲人に山道は厳しいですね・・・!」

盲人はそう言うと、杖を手に取った。

( ^ω^)「?小便ですかお?」

(,,-Д-)「お侍さん、お気をつけを。このメクラ、目は見えずとも耳と鼻、よく利きます故」

そう盲人が言い終えたときであった。ザッと草を掻き分けるような、踏みつける様な音が
二人を中心に沸き立つ。

( ^ω^)「!!」

すかさず手を柄へと伸ばし、立ち上がる内藤。
見渡せば、数十人に辺りを囲まれていた。

( ^ω^)「・・・なるほど、山賊かお」

この辺りを根城とした山賊があると聞いたが、まさか自分達の所だとは。
すっかり忘れていた内藤は自分の失態に舌打ちし、腰を深く落とす。
その様は、見るからに独と同じものである。

16 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:06:00.75 ID:5RS1mcEG0
ミ,,゚Д゚彡「ぁあ?なんだ、侍か兄ちゃん?」

ふと、内藤より少し離れた茂みから一人の巨漢が出てきた。
見るからに、この山賊たちの長だろう。

( ^ω^)「見りゃわかるだろうお。なんのために刀下げてると思ってんだお」

親指で軽く唾を弾き、挑発する。

ミ,,゚Д゚彡「その様子じゃ、大人しく従う気はない・・・みたいだな」

対する男は、それを気にしないで居るようだが、手は正直である。
男も自らの刀へと手を伸ばし、抜刀した。

(,,-Д-)「・・・お侍さん」

( ^ω^)「貴方は下がっててくださいお。危ないですお」

ふと、内藤の背後から盲人が話しかけてきた。
振り向きたいところだが、隙を見せれば敵はすぐに襲い掛かってくるだろう。
どうにかして盲人を守りきろうとする内藤であったが、本人も流石に厳しいと思っていた。

17 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:08:00.09 ID:5RS1mcEG0
(;^ω^)(見たところ二十・・・くらいかお・・・。一人でも厳しいけど、その上誰かを守りながらなんて・・・)

そう考えたとき、内藤は今まで誰かを守りながら戦ったことがないことに気づいた。
そもそも、こうして道場外で戦うこと自体、あまり無かった。

(;^ω^)(独は・・・こんな状況でも守りきれるのかお・・・?)

内藤よりも早く世に出、流離う独。耳に届くのは誰かを斬っただの、斬られただの。
思えば、独は内藤よりも修羅場を多く潜り抜けてきたのだろう。

( ^ω^)「けど―僕は独よりも強いお!!」

い「なんだこいつ、殺しちまえー!!」

ろ「ぎゃはは!!気持ちの悪い野郎だ!!」

内藤が叫ぶと同時に、二人の男が駆け出した。
一人は見るから初心者丸出しの、ただ刀を上に掲げただけの構え。
あれでは軽い衝撃でも喰らえば、手から離れてしまうだろう。
もう一人は正眼からの突きか、前へと切先を向けて走ってくる。

20 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:10:01.85 ID:5RS1mcEG0
( ^ω^)(・・・なんだ、これなら・・・)

一人目が後四歩と近づいたところで、内藤は刀を引き抜いた。
流れるような居合いは、敵の両足へと吸い込まれていった。

い「ぎぃ、やぁぁあああああ!!足がぁああ!!」

パクリと太ももが裂け、そこから鮮血が迸る。

ろ「邪魔だボケえええ!!」

い「ぎゃっ!」

倒れた一人目を踏み歩き、内藤へと駆ける敵。

( ^ω^)「ふん!」

敵の刀が屈んだ内藤の頭上へと吸い込まれると、内藤は柄へと手を伸ばし抜刀する。

ろ「おぐぅげぇ!!」

ドゴッ、と鈍い音が胴へと入り、あたりに響くと男は倒れた。

( ^ω^)「峰打ちだお・・・といっても、この距離から受けたらひとたまりもないおね・・・」

言うが、きっと男には聞こえていないだろう。

21 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:12:00.46 ID:5RS1mcEG0
は「こ、こいつ・・・強いぞ・・・」

に「構うこたぁねぇ!!数で押せ、数でぇ!!」

ほ「っしゃぁ!!死にさらせゴミがぁああ!!」

へ「だああらっしゃぁああああ!!!」

(;^ω^)(!・・・四人・・・どうするかお・・・)

前方から三人、右から一人と攻め込まれた内藤。
前方の三人はまだ近くはなく、右からは後七歩ほどで来るだろう。

(;^ω^)「くっ・・・」

一先ず右へと走りより、一人の男へと一閃する。

へ「がああああ!!」

喉元へと峰を叩けつけた。もしかしたら首がへし折れているかもしれない。

と「もらったああああ!!」

ふいに、背後から声が響いた。
少しだけ首を動かせば、短刀を構えた男があと二歩という距離にまで迫っていた。

22 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:14:00.39 ID:5RS1mcEG0
( ;゚ω゚)「しまっ―」

と「あひゅっ!!」

あと一歩、という所で、男はその身を止めていた。
しかし、それよりも目を見張るものがあるのは、その口元だった。
何故か口から刀の先が出ている。

( ;゚ω゚)「んなっ・・・」

「・・・そう言えば、まだ名乗っていなかった・・・な・・・」

急に男の口から切先が消えると、男は倒れる。
そして入れ違いのように、そこには先ほどまで一緒に居た男、盲人が立っていた。

(,,-Д-)「某―」

まるで時が止まっていたのは、事実でもあった。
突然の出来事に、その場に居るものは固まってしまったのである。

(,,゚Д゚)「名を頭佐擬古(ずさぎこ)。人は皆、『座頭の擬古』と呼ぶ」

盲人―擬古と呼ぼう―はその両の眼を開けた。
しかし、やはりと言えるが、その眼は見えていないようであった。
ふと手を見れば、そこにはあの少し太い杖が握られている。
だがしかし。それは杖にして杖にあらず。
直刀が、そこにはあった。

23 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:16:00.43 ID:5RS1mcEG0
( ;゚ω゚)「仕込み・・・いや、そんなことより!」

は「座頭の・・・擬古・・・だと・・・?」

に「天下の盲人ヤクザ・・・!?おい・・・」

ほ「あ、あぁ、ヤベェ・・・コイツはやべぇ・・・!!

へ「に、逃げろ!!」

『座頭の擬古』と聞いた瞬間、その場に居るものは戦慄し、敵のほとんどが逃げてしまった。
だが。

(,,゚Д゚)「―逃がすとでも、思ってんのか?」

ほ「へ―」

ズシャリ、と、音が響く。
内藤の視線の先、そこには首のない男が突っ立っているだけであり、間抜けのように血を噴出
していた。

24 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:18:00.24 ID:5RS1mcEG0
(,,゚Д゚)「かかっ!」

は「う、うわああああ!!!」

に「逃げろおおおお!!」

座頭の擬古。天下の盲目のヤクザであると言われる頭佐擬古がその本人である。
ヤクザと言われては只の悪人と思われるが、擬古は悪人を斬って旅をしていた。
だが、その斬る様はまさに修羅の如くと言われ、擬古は殺すことを楽しんでいると見受けられた。

( ;゚ω゚)「・・・座頭・・・擬古・・・」

当然、内藤も知ってはいた。
盲人のヤクザがいるということなど。だが、よもや一緒に歩いていた盲人がそうであるなど、誰が思うか。

(,,゚Д゚)「そこか!?」

ち「ひゅっ!?」

スパリ、と首がまたも落ちる。
逃げ惑う敵をどんどんと狩るその様は、まるで遊んでいるように思えた。


25 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:20:00.33 ID:5RS1mcEG0
(,,゚Д゚)「・・・ん?」

ふと、突然立ち止まる擬古。

(,,゚Д゚)「・・・手前か、親玉は?」

既に言葉遣いすらもヤクザのソレになる擬古は、先ほどの山賊の長と思わしき男の前へと立った。

ミ,,゚Д゚彡「・・・如何にも。手前、『座頭の擬古』なんだって?」

面白れぇ!!と男は叫ぶと、自らを名乗り上げた。

ミ,,゚Д゚彡「俺の名前は布佐擬古(ふさぎこ)!!奇遇だねぇ、おんなじ名前さぁ!!」

そう叫び終えると、男は刀を掲げた。

ミ,,゚Д゚彡「そんでぇ!!さようならだ!!」

片腕で振り下ろされたその刀は、まるで神速である。
だが、太刀筋は滅茶苦茶であり、ただ振り下ろしているだけであった。

(,,゚Д゚)「甘ぇ」

対する擬古は、杖へと戻された直刀の柄へと手をかける。

26 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:22:00.57 ID:5RS1mcEG0
ミ,,゚Д゚彡「そんな細身じゃ圧し折れるぜ!!」

(,,゚Д゚)「かっ」

ミ,,゚Д゚彡「え?」

シュパン、と。
布佐の振り下ろした刀は、擬古の一歩左へと落ちていた。
対する擬古の直刀は、布佐の首を掻っ切っていた。

(,,゚Д゚)「かっかっかっかっ!!!弱え!!」

カチン、と杖へと直刀を戻し、擬古は振り返る。

(;^ω^)「・・・・・」

(,,゚Д゚)「残りは逃げたみてぇだな・・・」

内藤は考えていた。
この男、『座頭の擬古』の事をだ。

(;^ω^)(強い・・・異常なまでに・・・)

知っていたはずだった。『座頭の擬古』のことは。
噂では、あの人斬りよりも強いのでは、と聞いていた。
だが、その実力を目の前で見た内藤は、人斬りよりも遥かに強いであろうと思ったのだった。

28 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:24:00.60 ID:5RS1mcEG0
(,,゚Д゚)「おい、お侍さんよ」

(;^ω^)「は、はいいぃい!?」

突然に名を呼ばれ、驚く内藤。

(;゚Д゚)「そんなに驚くなよ・・・名前、教えてくれよ」

呼びづらくて適わん。そう擬古は言った。

(;^ω^)「あ、そう言えばまだ言ってませんでしたおね」

一つ咳払いをすると、内藤は名乗る。

( ^ω^)「僕の名前は内藤武雲法螺居存ですお」

(;゚Д゚)「内藤!?・・・ってぇと、もしやお前・・・いやまさか・・・」

ふと、考えるような仕草を見せる擬古。
それに気づいたのか、内藤は擬古の考えていることに思い当たるふしを感じる。

30 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:26:00.40 ID:5RS1mcEG0
( ^ω^)「・・・たぶん、擬古さんの考えてる通りですお。僕は内藤一刀流の十一代目ですお」

(,,゚Д゚)「そうか、お前が・・・噂は聞いてたぜ。内藤の頭首が、人斬りを討つと。
    まさかお前がそうだとは・・・薄々只者じゃないと感じてたが・・・」

どうやら内藤の話は広まっているようであった。
よく思うことだが、一体噂とは何処から流れてくるのだろう。
一日も経てば、知らぬ間にソレは全国へと知れ渡る。

( ^ω^)「只者じゃないって、それを言うなら擬古さんこそだお。まさか『座頭の擬古』なんて思いもしなかったお」

先ほどまでの焚き火の場へと移動し、またも向かい合って座る。
そこら変に屍が横たわっているが、弔うのは一先ず後のようだ。

( ^ω^)「貴方も居合う者ですかお」

擬古の剣術はまさしく居合いであった。
先ほど布佐を斬った時もそうであったが、凄まじい腕のようである。
逆手抜刀。擬古はソレをしていた。

(,,゚Д゚)「まあな。普通に斬りあうんじゃ俺には不利すぎる」

と言われ、内藤は擬古が盲人であることを思い出した。

(;^ω^)「しかし、よく眼も見えないのに戦えますおね」

33 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:28:00.65 ID:5RS1mcEG0
不思議に思ったのはそこだった。
まるで眼の見えるかのような動き、そして的確に喉元を斬る様からは、とても眼が見えないとは思えなかった。

(,,゚Д゚)「なんつーか、分かるんだ。耳が、鼻が、そして感が教えてくれる。ここを斬れ、ってな」

よく聞く話だが、五感のうち一つでも失うと、他の感覚機能が高まるという。
擬古はその耳で敵の位置と聞こえる血の流れ、そして鼻で汗の匂いなどを嗅ぎ分けていたのだ。

(,,゚Д゚)「首は汗がよく伝うからな。おまけに脈も多く通ってるからよく聞こえる」

擬古が首ばかりを狙うのはそのためであった。
ふと、二人はそこで話を止めた。
特に意味もないが、そのまま夜空を見上げる。

(,,゚Д゚)「俺ぁな」

そんな静かな空気の中、擬古が話し出す。

(,,゚Д゚)「人斬りと死合ったことがあるんだ」

( ^ω^)「!!」

驚き、内藤は擬古を見やる。
だが、擬古は未だ夜空を仰いでいた。

(,,゚Д゚)「あの時はまだ眼が見えてて、『座頭の擬古』なんて謂れ名も無かった」

ふいに、夜風が吹き荒んだ。
まるで切り裂くようなその風は、しかし居心地のよいものであった。

35 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:30:00.40 ID:5RS1mcEG0
(,,゚Д゚)「この眼はな。人斬りにやられたのさ」

(;^ω^)「なっ!!」

それを聞けば、もう話は分かる。
つまり、擬古は人斬りに敗れている。そういうことだろう。

(;^ω^)「貴方ほどの腕の持ち主でも、勝てなかったのですか」

(,,゚Д゚)「・・・ああ。奴は強い。俺よりもな」

だが。と、擬古は付け足す。

(,,゚Д゚)「俺はまだ死んでいない。いや、本当はあの時死んでいたんだ。人斬りに負けたときに。
     だが、俺は今もここで息をしている」

武士ならば分かるだろう。死合い、敗れることとは。
つまりは、死ぬことである。果し合いとは、己が全てをぶつけ合い、勝った者のみが生き残れるのだ。
だが、敗れた者には死しか待っておらず、生きることは恥を背負うことである。
生きながらにして死んだ男、擬古。だが彼も独と同じであった。

(,,゚Д゚)「俺は奴を殺す。俺を生かした罰だ。生き恥を背負い、眼までも奪われた」

だから擬古は人斬りを追っていた。
そのために丹生速へと向かっていたのだった。

37 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:32:00.47 ID:5RS1mcEG0
(,,゚Д゚)「そして、その後に自刃してやる。最後だけは、武士らしく死にたい」

既に死んでいる擬古。だがその死に様は、まさしく武士にとっては最悪であった。

( ^ω^)「・・・そうですかお」

ふと、またも夜空を見上げる内藤。
なんとなく、見上げてみたその夜空。もしかしたら、あの星は刀の煌きなのかもしれない。
幾百人もの武士達の刀がぶつかり合った際の閃光なのかもしれない。
そんなことを、内藤は考えた。

( ^ω^)「僕の友も、人斬りに敗れましたお」

ふいに口から出たのは、独のことであった。

( ^ω^)「彼も貴方のように、今も生き、そして人斬りを殺すためにその後を追ってますお」

(,,゚Д゚)「・・・その友とは、『斬鉄の独』か・・・?」

今や日本中に知られている独と人斬りの関係。
独は人斬りを追い、人斬りは流離っている。
人斬りは、もしかしたら今まさに誰かを斬っているのかもしれない。

( ^ω^)「・・・複雑ですお」

38 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/13(日) 18:33:00.52 ID:5RS1mcEG0
擬古の問いには答えず、内藤は思いを呟いた。
まるで、皆が皆人斬りを殺すために生きているように思えるのだから。
そして、その中に自分も含まれているのだから。

( ^ω^)「・・・擬古さん」

(,,゚Д゚)「・・・何だ?」

春も中ごろに入った時期。またも噂は広まった。

( ^ω^)「星が、綺麗ですお・・・」

一つは、あの内藤武雲法螺居存が人斬りを追っていること。
もう一つは、その内藤が『座頭の擬古』と共に旅をしていることだった。
 
 
三 了

(’A`)は人斬りと死合うようです
返信2008/04/13 19:05:47

6jigendaddyjigendaddy   四 剣と才

1 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:12:55.07 id:edFRVWRJ0
以前までのまとめ

ttp://bouquet.u-abel.net/murder/mokuji.html 花束 様
ttp://boonnovel.g.hatena.ne.jp/bbs/253?mode=tree ブーン系小説グループ 様

人物紹介
 
('A`) 鬱田独右衛門氏脳 うつだどくえもんしのう
 
流浪武士。内藤一刀流の出であり、皆伝を成している。
火富町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合うが、敗れる。
通り名は「悪斬り独」改め、「斬鉄の独」。
 
(´・ω・`) 曙歩初歩之助兵衛 しょぼしょぼのすけべえ
 
人斬りを好む狂人。示現流の出でおり、皆伝を成している。
火富町にて流浪武士、鬱田独右衛門氏脳と死合い、勝利する。
その際に砕鉄の小刀を奪う。通り名は「人斬り初歩」。
 
( ^ω^) 内藤武雲法螺居存 ないとうぶうんほらいぞん

内藤一刀流師範代にして、内藤家11代目当主。
その腕は天下の狐家から推挙が上がるほどである。
推挙の際、「歩之助兵衛の抹殺」を条件とされ、果たすために旅立つ。

2 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:13:59.81 id:edFRVWRJ0
川 ゚ -゚) 沙麻空 すなおくう
 
火富町の遊郭、「斉藤屋」で働いていた遊女。
瀕死の独を見つけ保護した。
独に自らの不幸を打ち破ってもらい、共に行くことを決める。
 
(,,゚Д゚) 頭佐擬古 ずさぎこ

諸国を旅する座頭だが、実態は人斬りを追っている。
道中、内藤と出会い和解し、共に人斬りを追うことに。
通り名は「座頭の擬古」、「天下の盲人ヤクザ」。

3 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:16:00.53 id:edFRVWRJ0
四 剣と才
 
色は匂へど 散りぬるを
我が世誰そ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
 
 
       弘法大師(空海) 俗説
 
 
(;'A`)「・・・よく食うな」

独と空は蕎麦屋で飯を食べていた。
刻は昼を指し、空腹を満たそうと思い入ったのである。

川 ゚ -゚)「だって・・・美味しいんですよ、この蕎麦」

火富町を出て一日、道中にて。
空は既に三杯目であった。

川 ゚ -゚)「それよりあの噂、本当なのでしょうか」

あの噂とは。

4 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:18:00.35 id:edFRVWRJ0
('A`)「内藤か?」

既に耳に入ってきた噂は、内藤のことであった。
独と内藤は幼少の頃より親しく、同門であった。
その内藤が、幕府の命により人斬り―初歩―を討つために旅立ったそうだ。
だが、その内藤にもう一つ尾鰭が付く。

川 ゚ -゚)「座頭の擬古、彼と共にいるようですね」

('A`)「・・・ああ」

何故座頭と共にいるのか。それだけが理解できずにいる独であった。

('A`)「まぁ、奴と一緒なら死ぬ事もないだろう」

独は座頭の擬古について考えた。
当然腕は立つようで、その事も独は知っていた。
噂では人斬りと対等な力を持つのでは、とまで言われている。

('A`)(・・・手合わせ願いたいな・・・)

腕に自信がある独であるから、当然そう思う。

5 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:20:00.40 id:edFRVWRJ0
川 ゚ -゚)「・・・闘ってみたいのですか?」

(;'A`)「へ?」

スルッ、と蕎麦を啜る空が、そう独に言う。
突然問われた独は、少し戸惑った。

川 ゚ -゚)「顔に出てますよ、座頭と闘ってみたい、と」

言われ、独は顔を空から反らす。

川 ゚ -゚)「・・・ところで」

まだ顔を反らし続ける独に、空は問うてみる。

川 ゚ -゚)「内藤様は、強いですか?」

その問いに、独は難しい顔をした。

川 ゚ -゚)「・・・?」

その顔を見た空は、はて?と頭を傾ける。

6 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:22:00.36 id:edFRVWRJ0
('A`)「・・・奴は、強い」

暫くだんまりだった独は、蕎麦を啜りながらそう言った。

('A`)「きっと、剣の腕なら天下一といっても間違いない」

川;゚ -゚)「それほどに・・・」

空は驚いていた。
あの独の口から、ここまで言わせる男、内藤。
確かに内藤一刀流の頭首であり、師範代でもあるからして腕が立つのは分かる。
幕府から声がかかると言うのもうなずける話だ。
しかし、空は思うのであった。独よりも強いのか、否か。

川;゚ -゚)「独様と、内藤様が闘ったら・・・どちらが」

('A`)「内藤だ」

答えは刹那で返ってくる。
いつのまにか独を独様と呼ぶようになっている空。
だが、その返答に些か顔を暗くするのであった。

7 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:24:00.26 id:edFRVWRJ0
('A`)「・・・だが、それが死合うのであれば、俺が勝つ」

川;゚ -゚)「え?」

ふと、独が呟いた言葉に、空は顔を上げる。

川;゚ -゚)「どういう意味ですか?」

先ほど、独は自ら内藤には負ける、と言った。
しかし、呟いた言葉では勝つと言う。
一体どういうことなのか。

('A`)「・・・内藤は―」

8 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:26:00.26 id:edFRVWRJ0
 
 
(,,゚Д゚)「剣の才だけだな」

とある茶屋で、擬古は向かいに座る男、内藤にそう言った。

(,,゚Д゚)「数日前、山賊に襲われたときも思ったんだ。お前、殺すことに慣れていないだろ」

(;^ω^)「おっ・・・」

言われ、内藤は顔を伏せる。
先ほどまで食べていた団子を銜えたまま、ただ暗い顔をしていた。

(,,゚Д゚)「きっと、剣の腕だけならお前は誰よりも強い。無論、俺よりもだ」

独と同じ言葉を言う擬古。

(,,゚Д゚)「だが、それは剣の才があるだけだ。お前に殺す才は無い」

それは、事実であった。
内藤は剣の腕だけなら天下一、しかし殺すこととなればからきしだ。
それは本人も思っていたことである。

9 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:27:59.92 id:edFRVWRJ0
(;^ω^)「その言葉、よく友にも言われましたお。僕には剣の才があるけど、殺す才は無いって」

実際、前の戦闘でもそうだった。
内藤はいつも敵に対して死なない程度の攻撃しか与えていない。
それが峰打ちであったり、致命傷に関わらない部位を斬ったりと、とにかく相手の動きを封じることを
前提とした剣術であった。

(,,゚Д゚)「『一の太刀にて敵を治め、鍔鳴りにて敵を討つ』、内藤一刀流が泣くぜ」

『一の太刀にて敵を治め、鍔鳴りにて敵を討つ』。これは内藤一刀流の心得である。
居合いを以って敵を斬り、その鍔鳴りは倒した事を意味する。
つまり、内藤一刀流とは一撃にて闘いを終わらせる、必殺の剣術なのだ。
本来、居合いとは鞘から抜き放つ動作で一撃を加えるか相手の攻撃を受け流し、
二の太刀で相手にとどめを刺す形である。
しかしそこは内藤一刀流。つまるところ、これは二の太刀をいらずとしたことだ。
一に抜刀、二に納刀。それこそが内藤一刀流の真髄である。

(,,゚Д゚)「そもそも、剣とは何のためにある?当然、人を殺すためにあるんだ。
     お前だって、その刀は人斬りを殺すために持ってるも同然なんだ」

幕府より出された命に内藤は旅立つ。それこそが独と擬古の憎むべき存在の人斬りを討つことだ。

10 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:30:00.59 id:edFRVWRJ0
(;^ω^)「けど・・・僕は殺すことが嫌いですお」

幼き頃より剣の達人として褒めたてられ、剣を持たせれば年上だろうが勝った。
気づくと皆伝を成し遂げ、父が死に師範代を勤めていた内藤。
だが、日々思うのは才能の事であった。
自分には剣の才があるのに、殺す才が無い。
かつて独が旅立つときにも言われたその言葉は、内藤を苦しめるのであった。
何のための才か。剣は殺すための道具だと言うのに、内藤は殺すことができない。
その滑らかでかつ、太刀筋は胡蝶の如く。鍔鳴りは耳に優しく、しかし殺すことの出来ない剣。
いくら賛美されても、殺すことだけができないでいた。

(;^ω^)「殺す才・・・」

あの人を斬った時の手応え。まるで至福を味わうかの如く。
内藤は怖かったのだ。自分が殺すことに魅入られるのが。

13 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:32:00.45 id:edFRVWRJ0
 
 
川;゚ -゚)「・・・・・」

空は、独に内藤の話を聞かされ唖然とするだけであった。
あの内藤一刀流の子孫である内藤に、殺しの才が無いと言うのだから。

('A`)「あいつの太刀筋を見れば誰もが思う。あれは人を殺す剣じゃない、と」

独は内藤が刀を振っている姿を思い出す。
まるで流れるようなその居合い。美しく、魅入られるようなその太刀筋。
納刀の際の鍔鳴りは耳に心地よく、剣神ここに在りと思うのであった。
だが、独は思う。あれでは人を殺すことが出来ないだろう、と。
本当の剣は、殺す剣は。もっと禍々しく、大袈裟で、大雑把なのだ。
刀と刀がぶつかれば刃毀れし、折れ、吹き飛ぶ。
果たして、内藤のあの剣で人を殺すことが出来るのか。
独はずっと思っていたのだった。

('A`)「・・・けど、俺はそれで良いと思っている。あいつに羅刹の剣は向いていない。
   言うなれば、あれは魅せる剣だ」

15 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:34:00.13 id:edFRVWRJ0
川;゚ -゚)「はぁ・・・」

そう言うもんですか、と空は呟くと蕎麦を啜った。
やはりここの蕎麦は上手い。そう思う空である。

川 ゚ -゚)(剣と才・・・か・・・)

では、独はどうなのだろう。
そう思うが、空は聞かずに居た。

17 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:36:01.35 id:edFRVWRJ0
 
 
( <●><●>)「寒い夜です。春なのに夜風は冷たいです」

その男は、見たところ齢九十である。
皺の深い手を擦り合わせ、息を手に吹きかける。

( <●><●>)(もしかしたら、これが最後なのかもしれません・・・)

思うは、これまでの人生であった。
人々には先生と呼ばれ、或いは剣神と呼ばれ。
しかしそんな男にも、終わりが近づいていた。

( <●><●>)「・・・そこに居るのは分かってます」

背を預けている巨木越しに、向かいに居るであろう相手にそう言う。

「流石は若手枡(わかてます)先生・・・」

男は、木から離れると野の上に出る。
所々に土筆(つくし)が芽吹いており、この寒さでも春なのだと実感する。

(´・ω・`)「いや、伊東一刀斎若手枡(いとういっとうさいわかてます)様。貴方様にお会いしたかった」

19 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:38:05.28 id:edFRVWRJ0
伊東一刀斎若手枡。もはや言う事もあるまい、その人物こそが剣の神であり、一刀流の祖である。
最強の剣客であり、しかし自らは一刀流を名乗らないで居た。

(´・ω・`)「・・・悲願でした。ずっと、貴方様にお会いできることを夢見、そしてその時が今訪れた。
      聞く話では敵無し、剣は神を越えると言う」

人斬り、初歩は震えていた。
その震えが恐怖であるか、はたまた武者震いであるかは分からない。
ともかく、初歩も若手枡の前へと踊りでて、対峙する。

( <●><●>)「何故・・・」

ふいに、若手枡の手が揺れた。

( <●><●>)「何故、貴方は人斬りを好む?私の弟子にも、貴方のようなものが居た。
        しかし、必ずと言っても良いほどに、貴方方の末路は死のみ」

伊東一刀斎が弟子、善鬼も人斬りを好み、諸国を流離っていた。
後に一刀斎の弟子、神子神典膳が善鬼を討ったという。

(´・ω・`)「全ては、より強くなるために。人斬りを続ける所存です」

20 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:40:00.06 id:edFRVWRJ0
もはや、それ以上は言うまい。二人は腰を軽く落とし、抜刀する。
ふいに、夜風が二人を包んだ。それが合図だった。

(´・ω・`)「人斬り、曙歩初歩之助兵衛。負かり越して候」

( <●><●>)「伊東一刀斎若手枡。相手仕る」

互いの刀が、月を反射した。

(´・ω・`)「いざ―」

( <●><●>)「―勝負」

駆けたのは、初歩であった。
得意の左上段より掲げた刀を、全身全霊を持って若手枡に斬りかかる。

(´・ω・`)「ふぅっ!!」

これぞ示現流。全てを無に変えるようなその太刀筋は、まさに必殺だった。

22 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:42:00.40 id:edFRVWRJ0
(´・ω・`)(捕らえた!!)

そう思った初歩。軌道はしっかりと若手枡の頭に向かう。
だが。

(´・ω・`)「!!」

振り下ろした刀は、地へと吸い込まれるのであった。
ふと、右を見れば三歩先に若手枡が立っている。

(´・ω・`)(早い・・・とても九十とは思えない・・・)

流石は天下の若手枡。伊達に剣神ではない。

(´・ω・`)(しかし・・・)

初歩はその場に立っているだけだ。

(´・ω・`)(攻めて来ない・・・受けの太刀か・・・?)

先ほどからずっと、若手枡は動かない。
その様は、見るからに妙であった。

23 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:44:00.43 id:edFRVWRJ0
(´・ω・`)「ならば!!」

攻めてこないのならば、こちらから攻める。
必殺を重んじる流派だからこそ、待ちなどは知らない。

(´・ω・`)「でああああ!!」

今度は、横薙ぎの一撃だ。
振るわれた刀はまさに神速。風きりの太刀とはこのことだった。

( <●><●>)「・・・・・」

しかし。

(´・ω・`)「なっ・・・」

初歩の刀は、宙に舞っていた。
即座に上へと弾かれたのだと気づくも、時既に遅し。

( <●><●>)「これぞ―」

振り上げた際の若手枡の刀は、未だ上空へと滞在していた。

( <●><●>)「―夢想剣よ」

26 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:46:00.50 id:edFRVWRJ0
(´・ω・`)「――」

夢想剣。無意識のうちに敵を斬るこの剣術は、かつて若手枡が悟りを得た際に手に入れたものだ。
ズシャリ、と音が響く。その音は初歩の腹から聞こえ、若手枡に斬られたのだった。

(;´・ω・)「がぁっ!!」

しかし、初歩は崩れなかった。
その場に立ち竦み、未だに若手枡へと視線を向けている。

(;´・ω・)「くっ・・・くっくっ・・・何という実力の差・・・これほどまでとは、思いもしませんでした」

( <●><●>)「・・・貴方は、まだ生きようとしてますね。わかってますよ」

そう、初歩の眼には未だに狂気が渦巻いていた。

( <●><●>)「止めです!」

そう若手枡が叫び、振り下ろした刀を横に構える。
首元へと狙いを定め、そして振る。

31 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:48:00.27 id:edFRVWRJ0
( <●><●>)「もらっ―」

それは突然だった。
初歩の首まで後一尺という距離で、初歩は動いた。
自らの脇差に手をかけると、一気に引き抜く。

ギャイン!と、砕ける音が響いた。

( <●><●>)「なっ―」

そこで、若手枡の意識は消えた。
最後に聞こえたのは、ゴッという鈍い音だったという。

33 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:50:00.51 id:edFRVWRJ0
 
 
(´・ω・`)「・・・くっ・・・」

足元に倒れている老人を見下ろし、初歩は笑い声を漏らす。

(´・ω・`)「くっくっくっ・・・ははははははは!!」

そう。初歩は砕鉄で若手枡の剣を防いだのだった。
受けると同時に剣を粉砕し、隙の出来た若手枡の頭めがけて砕鉄を振り下ろした。
頭蓋骨の砕ける音が響き、そこで若手枡は絶命した。

(´・ω・`)「超えた!!遂に超えたんだ!!私が最強なんだ!!」

まるで狂ったかのようにそう叫ぶ。
ふと、腹に刻まれた傷をいとおしそうに見る初歩。
見れば、少し腸(わた)がはみ出ている。

(´・ω・`)「この傷、有り難く承る」

そう言うと、初歩は骸に礼をする。
嘗ての大剣豪であった伊東一刀斎若手枡に向けて。

34 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:52:00.38 id:edFRVWRJ0
(´・ω・`)「・・・しかし」

腹を布きれで巻きながら、初歩は思う。

(´・ω・`)「お前が無かったら、今頃死んでいたのは私だったな」

言い、砕鉄を見る。

(´・ω・`)「今、私を追ってるものが多いと聞く。あの独右衛門様も当然のこと。
      何と、内藤様までもが迫ってきている」

初歩も道中、噂を耳にしていた。
自分を討ちに来る内藤が、怨念を晴らすために迫る独がいると。

(´・ω・`)「独右衛門様、か・・・」

ふいに、独の名を呼ぶ。

(´・ω・`)「早く会いたいな・・・」

この年、全国に知れ渡った噂は、悲しみと恐怖を運んできた。
その噂は、あの人斬りが伊東一刀斎若手枡と死合い勝ったという噂であった。
 
 
四 了

(’A`)は人斬りと死合うようです
返信2008/04/17 15:53:33

7jigendaddyjigendaddy   番外 斬鉄の心得

36 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:54:00.40 id:edFRVWRJ0
番外 斬鉄の心得

まだ独が幼い頃に、それを発見することとなる。
二尺七寸の打刀。
抜き身は美しく、光に反射するその様は神秘的であった。
乱れ波紋が走り、すっかりと独は見入ってしまった。

('A`)『父上、何故あの立派な刀を下げないのですか』

ある日のことだった。
独は父がいつもみすぼらしい刀を下げていることに疑問を抱き、
そう問いただした。
独の父は偉くも無く、かつ平凡でもない者であった。
腕はそれなりに立つようで、そこが独の自慢であった。

『独、お前はあの刀を気に入ったか』

それだけを言うと、父は独に付いてきなさいと言い、刀の
置いてある部屋へと移動した。

『この刀は、斬鉄と言う。銘は無く、いつからこの家にあるかも分からん』

そう言うと、父は斬鉄を抜いた。

('A`)『鉄を斬るのですか?』

37 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:56:00.10 id:edFRVWRJ0
刀の名を聞き、当然の疑問を抱く独。
しかし、それを聞くや否や父は真剣な顔つきをしたのだった。

『私も、斬れるかどうかは知らない。しかし、お前の祖父、私の父はこれを用いて
 戦へと出ていた。その際に、刀を斬ったそうだ』

そうとだけ言い、父はかかっている掛け軸を見やり、こう言った。

『これこそがこの斬鉄を使う上での心得、「斬鉄の心得」だ』

独にはまだソレが読めず、一体何と書いてあるのか気になって仕方が無かった。

('A`)『父上、僕には読めません。しかし、もしも僕が大人になったら、斬鉄を
    帯刀してもよろしいでしょうか』

しかし、その言葉に父は顔を渋らせるのだった。

『いいか、独。お前には才がある。だが、その才は剣でもあり、もう一つ大事な才がある。
 それは今のお前は知らなくてもいいんだ。しかしこの心得に書いてあるように、斬鉄は
「斬ろうと思うもの全てを断ち切る刀」なんだ』

と言われるが、生憎独には読めはしない。

39 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/17(木) 12:58:00.28 id:edFRVWRJ0
『お前が大人になったとき、しっかりしているかどうか。斬るべき物と斬らざるべき物を見極めているか。
 まぁ、正義感の強い男だからな、お前は。きっと大丈夫だろう』

('A`)『難しくてよくわかんなかったですが、内藤と素振りでもしてきます』

早く斬鉄を握りたいがために、今日も独は稽古をつける。

部屋から独が出て、どこか寂しさの残る部屋。
その中で、父は一人呟くのであった。

『「鐡の如く強い心、ソレ即ち全てを断ち斬る刀也」、斬鉄か』
 
 
斬鐡ノ心得
 
一、鐡ノ如ク強キ心ソレ即チ全テヲ断チ斬ル刀也
 
二、曰ク斬ナル思フモノ全テヲ断チ切ル刀也
 
三、血塗レ鉄ノ滴ル事狂気見出ス
 
四、三ヲ見出シ時即チ斬鐡ヲ見出シ時也
 
五、以上ヲ以ッテ斬鐡ヲ斬鐡トスル
 
 
番外 了

返信2008/04/17 15:55:13

8jigendaddyjigendaddy   五 生と死

1 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 18:58:00.02 id:qPBxLCt90
以前までのまとめ

ttp://bouquet.u-abel.net/murder/mokuji.html 花束 様
ttp://boonnovel.g.hatena.ne.jp/bbs/253?mode=tree ブーン系小説グループ 様

人物紹介
 
('A`) 鬱田独右衛門氏脳 うつだどくえもんしのう
 
流浪武士。内藤一刀流の出であり、皆伝を成している。
火富町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合うが、敗れる。
通り名は「悪斬り独」改め、「斬鉄の独」。
 
(´・ω・`) 曙歩初歩之助兵衛 しょぼしょぼのすけべえ
 
人斬りを好む狂人。示現流の出でおり、皆伝を成している。
火富町にて流浪武士、鬱田独右衛門氏脳と死合い、勝利する。
その際に砕鉄の小刀を奪う。通り名は「人斬り初歩」。
 
( ^ω^) 内藤武雲法螺居存 ないとうぶうんほらいぞん

内藤一刀流師範代にして、内藤家11代目当主。
その腕は天下の狐家から推挙が上がるほどである。
推挙の際、「歩之助兵衛の抹殺」を条件とされ、果たすために旅立つ。

4 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:00:00.34 id:qPBxLCt90
川 ゚ -゚) 沙麻空 すなおくう
 
火富町の遊郭、「斉藤屋」で働いていた遊女。
瀕死の独を見つけ保護した。
独に自らの不幸を打ち破ってもらい、共に行くことを決める。
 
(,,゚Д゚) 頭佐擬古 ずさぎこ
 
諸国を旅する座頭だが、実態は人斬りを追っている。
道中、内藤と出会い和解し、共に人斬りを追うことに。
通り名は「座頭の擬古」、「天下の盲人ヤクザ」。
 
( <●><●>)(故) 伊東一刀斎若手枡 いとういっとうさいわかてます
 
その身一つで一刀流を築いた最強の剣客。
剣の神と謳われ、その実力はまさしく天下一であった。
丹生速町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合い、敗れる。

5 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:02:00.32 id:qPBxLCt90
五 生と死
 
その噂は直ぐに伝わった。
全国を震撼させ、世の武士達を悲しみに染めた。

( A )「もう一度、言ってはもらえんか?」

丹生速町。火富町から出て五日にして独と空は辿り着いた。

「・・・だから、若手枡様が、敗れたんだ・・・」

町に入った瞬間、それは眼に飛び込んできた。
飛脚が紙を撒きながら、叫んでいたのだ。
伊東一刀斎若手枡が、死んだと。
独はそれを聞くや否やすぐさま飛脚のもとへと駆け寄り、詰め寄った。

( A )「誰が、誰がやったんだ・・・!」

飛脚の胸倉を掴むと、独は叫ぶ。

「人斬りだよ・・・あいつがやったんだ」

( A )「っ」

その言葉を聞き、ようやっと独は手を離す。

6 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:03:59.98 id:qPBxLCt90
「しかし、不思議なんだ」

咳払いをしながら、飛脚は呟いた。

「若手枡様・・・撲殺されてたんだ」

まるで、鉄で殴りつけたかのように。そう言った。
もはや独はその言葉で絶望へと堕ちた。

川;゚ -゚)「独様!」

駆け出した独は、しかし空の制止すら聞きはしない。
向かう先はどこか。それは独にも分からないでいた。

('A`)「・・・・・」

気づけば、独は野へと出ていた。
周りには少しばかり土筆が芽吹いており、春を感じる。
ふと眼に入った巨木へと近寄ると、それに凭れ掛かったまま座り込んだ。

7 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:06:00.10 id:qPBxLCt90
('A`)(若手枡先生・・・)

もはや剣に生きる者に知らぬ者は無し。
一刀流の祖であり、天下一の剣客、伊東一刀斎若手枡。
当然独自身も一刀流の身であるからして、知らぬはずも無し。
実際に会った事は無いが、それでも名を馳せたお方であった。

('A`)(人斬り・・・貴様は・・・)

曙歩初歩之助兵衛。彼は最強を手に入れたも同然であった。
あの若手枡に勝ったという事は、つまり剣を極めたも同然であった。
だが。

('A`)(何故斬らなかったんだ・・・)

若手枡の死に様は撲殺されたらしい。
それはつまり、砕鉄だろう。

('A`)(何故、俺の刀で・・・!!)

8 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:07:59.95 id:qPBxLCt90
地へと拳を叩きつける。しかし虚しきかな、痛みしか伝っては来なかった。
募る所、毒は罪悪感に駆られていた。
まるで自分が若手枡を殺したように感じるからだ。
初歩に奪われた砕鉄。あれを用いて若手枡に勝ったのだとすれば。
自分のせいではないのか。自分があの時負けなければ、つまり若手枡も死ななかったのでは。

('A`)「不甲斐ない・・・なんとも情けない話よ・・・」

一人垂れて、頬を拭った。
しかし皮肉なことに独は知らないであろう。
よもやここが若手枡の最後の場所であったことを。

9 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:10:00.05 id:qPBxLCt90
 
 
( ^ω^)「・・・は?」

同刻。内藤もその話を知る。

( ^ω^)「いやいやいやいや。有り得んお。馬鹿言うんじゃないお」

茶屋で相変わらず団子を貪る内藤と擬古に、その話は耳に入った。

「なぁ・・・人斬りの奴・・・」

「ああ。若手枡様を、殺したんだろ・・・」

その瞬間であった。内藤は立ち上がると、その二人へと近づき、馬鹿にしたような口調で言った。

( ^ω^)「あのお方が人斬りに敗れる訳無いお。あまり馬鹿にすると怒るお」

見るからにすっかりと憤慨しているのは、誰にでも分かった。
顔つきはいつも通りだが、その手は震え、身体からは怒りが染み出している。

10 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:12:00.22 id:qPBxLCt90
「ほ、本当だよ・・・今や、全国中の噂さ」

( #^ω^)「おい、貴様。大概にしろお。無礼にて斬る所存ぞ」

遂に柄へと手を伸ばす内藤。二人は震えたが、しかし内藤は何者かに止められた。

(,,゚Д゚)「・・・止めろ、内藤」

( #^ω^)「・・・擬古さん」

内藤の背中を見れば、擬古の杖がツンツン突かれている。

(,,゚Д゚)「失礼したな、お二方。何卒、俺に免じて許してはくれんか」

「・・・いいよ、もう。おい、行こうぜ」

「あ、あぁ・・・」

勘定を叩きつけると、その二人は出て行った。
内藤は睨みつけながら、ずっとその二人を眺めていた。
まるで親の敵のように。

11 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:14:00.22 id:qPBxLCt90
(,,゚Д゚)「・・・本当だと、思うか?」

暫く場には沈黙が下りたが、擬古が呟くようにそう言った。
言われ、内藤は顔を上げるが、その眼には団子に噛み付いている擬古が映るだけであった。

( ^ω^)「有り得ませんお」

きっぱりと否定する内藤。
それを聞いた擬古は口を動かすだけである。

( ^ω^)「たかが人斬り風情に、あの剣神とまで謳われたお方を倒すなんて。有り得ませんお」

その言葉に、擬古がピクリと反応した。

(,,゚Д゚)「・・・俺も独右衛門も、敗れたがな」

(;^ω^)「あっ・・・いや、その・・・」

弁解を試みる内藤であるが、しかし擬古は茶を啜る。
ようやっと飲み終えた擬古はポツリと言うのであった。

12 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:16:00.43 id:qPBxLCt90
(,,゚Д゚)「・・・お前には分からんだろうよ。何しろ、奴と死合ったことがないんだからな。
    奴は強い。強いなんてもんじゃない。あれはまさに人殺しの太刀だ」

内藤は実際、実感が無いのだろうがあえて言わせてもらおう。
この擬古もそうであるが、独も国内では最強を謳われるほどの腕の持ち主である。
言うなれば若手枡と肩を並べられるほどだ。
しかし何故そこまで若手枡が剣神と謳われるか。それは単純である。
用は経験の差だ。若手枡はその腕と剣で数多の人を斬り、敵を討ち、名を上げてきた。
そう考えれば独も擬古もまさにその通りである。
しかし、誰もがソレはしなかった。何故ならば若手枡は剣の神だからである。
その身一つで一刀流を開祖し、若かりし頃は扇一つで相手を蹴散らすほどだ。
その上剣の腕など誰もが敵わず。まさしく神を超えた剣であった。
まさに生きる神、若手枡。一体誰がそのような御方を斬ろうか。

(,,゚Д゚)「もう、既に奴は最強を超えたかも知らんな」

そう一言呟くと、もう一本団子を掴んだ。
しかし内藤は、納得は出来ていなかった。

( ^ω^)「けど!本当かどうかなんて分かりませんお!」

(,,゚Д゚)「内藤」

凄む内藤であったが、擬古がすぐさま声を出す。

13 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:18:06.82 id:qPBxLCt90
(,,゚Д゚)「火の無い所から煙はたたんよ」

噂など事実が無ければ広がりはしない。
つまり若手枡は人斬りに敗れた。擬古はそれが真実であると言ったのだ。

(  ω )「・・・おっ・・・」

もはや認めるしかないのか。内藤は脱力した。
持っていた団子を地へと落とし、その眼は宙を漂う。

(  ω )(独・・・君もこの話を・・・)

14 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:20:00.19 id:qPBxLCt90
 
 
('A`)(聞いたのか・・・?)

両者同じ事を思うも、しかし知らずに居るであろう。
刻は夕餉時。気づいた独は、しかし動く気にならなかった。

('A`)「・・・あー・・・」

夕日が辺りを包み、何処からか風が吹いた。
風は草の匂いを運び、花の匂いを運ぶ。
独は少しだけ、この暖かな春の匂いに包まれた。

('A`)(内藤・・・きっとお前は、憤慨しているだろうな・・・)

内藤は若手枡に憧れていた。自分の道場が一刀流であるからかもしれない。
しかし独も内藤も本人には会った事など無い。
それでも内藤は若手枡を敬い、尊いていた。
そんな若手枡があの人斬りに敗れたと聞けば、直ぐにでも内藤は駆けつけるだろう。

('A`)「・・・なんだかなぁ・・・」

幾分か落ち着きを取り戻した独は、罪悪感など無かった。

('A`)(あの若手枡先生に勝つ・・・か・・・)

16 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:22:00.10 id:qPBxLCt90
実のところ、独は夢見ていた。
いつか自分はあの若手枡を抜き去るだろう、と。
案外にも、それは身近に迫ってしまった。
若手枡は撲殺された。それは独の砕鉄によるものだ。

('A`)(例え俺の刀でも、振ったのは人斬り・・・か・・・)

殺したのは人斬り。命を奪ったのは砕鉄。砕鉄は独の小刀。
そもそも、先ほどまでの独は独らしくなどは無かった。
死合ったというのに、どちらかが死なないというのが可笑しいのだ。

('A`)(若手枡先生は負けたんだ・・・負けたのならば・・・)

死、あるのみ。
それを分かっていたつもりだった。だのに、独は認めたくなかった。
何も若手枡を殺さなくてもよいではないか。剣の神とまで謳われた人を斬ることは無いじゃないか。
だが、と独は思う。
だからこそ、剣に生きた者だからこそ。
その最後は武士らしく、剣客らしく死ぬのが最上なのだ。
背は斬らず、腹を斬らして武士とする。

('A`)(例え形が撲殺であっても・・・満足だっただろうか、若手枡先生は)

17 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:24:00.23 id:qPBxLCt90
別に撲殺が珍しいことなどは無い。
昔の話では木剣で槍と死合う者もいたし、鎖鎌で対峙する者も居た。
用は形が果し合いであるならば、死に様など関係ない。

('A`)(勝つか負けるか、生か死か)

勝てば生き、負ければ死のみ。
では、自分はどうなのか。そんなものは簡単であった。

('A`)「生きる屍だ」

生きながらにして死んでいる独。それは擬古もそうであった。

('A`)「っと・・・そういえば、此処は何処だろうか」

ようやく思考を中断した独は、夕焼けに包まれた野を見やり、呟いた。
そういえば、空をおいてきてしまった。

('A`)「さて、探すか・・・」

「必要ありません」

立ち上がる独に、聞こえてきたのは女の声。
ふと凭れていた木の裏側を見れば、そこには空がいた。

川 ゚ -゚)「満足しましたか?」

18 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:26:00.07 id:qPBxLCt90
一体何時からいたのか、しかし独には分からなかった。

('A`)「ああ。十分なまでにな」

もう悩み、考える必要は無い。
若手枡の事等、考えることなどない。
只、独は人斬りを思う。人斬りを負かすことを思う。

('A`)「どれ、飯でも食おう。丹生速は鰻が美味いと聞く」

川 ゚ -゚)「鰻ですか・・・楽しみですね」

(;'A`)「少しは加減してくれよ・・・金だって底があるんだ」

夕暮れ、独は只思う。

('A`)「・・・ところで、いつからいたんだ・・・?」

川 ゚ -゚)「・・・涙を拭っているところから」

('A`)「・・・ウツダシノウ」

必ずや人斬りを討つ、と。

19 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:28:00.26 id:qPBxLCt90
 
 
火富町。ようやっとたどり着いた時には既に日は沈んでいた。

(,,゚Д゚)「はー、五月蝿え所だ。人が多いのか?」

擬古は片耳に手を当てながら一人問う。

(,,゚Д゚)「おい、内藤。そろそろ飯でも食おう」

擬古は杖で内藤の足に合図を送るが、しかし内藤から返事は来ない。

(,,゚Д゚)「おい、内藤?」

( ^ω^)「へぁ?」

返ってきた返事は、しかし間抜けである。

(;゚Д゚)「ボーッとしてんなよ・・・飯でも食おうぜ」

( ^ω^)「あ、はいお・・・」

20 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:30:00.20 id:qPBxLCt90
擬古は眼が見えない。だから内藤に飯処を探してもらわねばならない。
人が少ないところならば匂いを嗅ぎ分けるのだが、如何せんここには人が多すぎる。
おまけにそこ等じゅうから声が飛び交い、すっかり擬古は混乱していた。

(;゚Д゚)「あー、これだから眼が見えないのは嫌なんだ・・・」

両目の上を走る横一文字の刀傷。
それこそがあの人斬りによりつけられた敗北の証だ。

( ^ω^)(・・・・・)

独も、擬古も。若手枡までをも負かした人斬り。
果たして、内藤に勝てるのか。

(,,゚Д゚)「お、美味えなこの・・・あー・・・海老か?」

( ^ω^)「そうですお」

二人はようやっと見つけた飯屋の暖簾を潜り、天丼を食べていた。

(,,゚Д゚)「いやー、久々に丼物なんて食ったぜ」

言い、ガツガツと天丼をかきこむ擬古。
対する内藤は、未だに手付かずだった。

21 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:32:00.13 id:qPBxLCt90
(,,゚Д゚)「・・・食わねえのか?」

言われ、内藤は箸を置く。

( ^ω^)「擬古さん」

唐突に真剣な声を発した内藤に、擬古は丼を置くのであった。

(,,゚Д゚)「・・・まだ、若手枡の事を考えてるのか?」

内藤は未だに考えていた。
若手枡が死んだ。人斬りが殺した。その事ばかりだった。

(,,゚Д゚)「内藤・・・お前は甘すぎる」

( ^ω^)「へ?」

擬古の言うことに、内藤は素っ頓狂な声を出す。

(,,゚Д゚)「如何にお前が若手枡を敬おうが、奴は死んだ」

22 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:33:59.92 id:qPBxLCt90
その言葉は、内藤を憤慨させるに等しかった。

( #^ω^)「擬古さ―」

(,,゚Д゚)「聞 け 、ガ キ」

ふと、内藤の喉下には箸があった。

(;^ω^)「っ!」

何時の間に。内藤は思うが、大人しくした。

(,,゚Д゚)「・・・お前は根本的に考え方が武士らしくない。死合うということは、つまりどちらかは死ぬということだ。
    強き者は生き、弱き者は死ぬ。それが今回の結果だ。人斬りが勝ったんだ」

人斬りは若手枡死合い、超えた。
剣神は敗れ、人斬りが勝った。

(,,゚Д゚)「お前の怒りは判らなくも無い。だが、負けた者は負けたんだ。死ぬ者は死ぬんだ。それを理解しろ」

ようやっと箸を内藤の喉下から離すと、擬古は丼に箸を向かわす。

(,,゚Д゚)「それになぁ・・・」

24 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:35:59.91 id:qPBxLCt90
ふと、呟いた言葉。

(,,゚Д゚)「負けて生き延びるほど、辛いものは無いんだよ・・・」

それは、擬古の本心であった。

(;^ω^)「あっ・・・」

既に言うまでもなく、擬古は人斬りに敗れている。
実のところ、擬古は若手枡が羨ましかったのだ。
武士らしく死ねた若手枡が、心の底から望んだソレが。
そしてソレは独も同じである。擬古と独。彼らは似ていた。

(;^ω^)(僕は・・・酷な事をしていたのかお・・・?)

今まで、内藤は決して殺すことはしなかった。
だがソレは武士にとっては最悪である。負かされ生き延びるなど、誰が望もうか。
内藤は何も殺すことは無い、そう考えていた。
力加減を間違えて殺してしまったことはある。だがその度に内藤は罪悪感に圧され、涙を流した。
剣は人を殺すためにある。武士は誇りに生きる。

(;^ω^)(独・・・君は迷いも無く、殺せるのかお・・・?)

26 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/04/26(土) 19:38:00.01 id:qPBxLCt90
自分には無理だ、と内藤は思う。
相手の命を奪うことなど無いではないか。
何故そこまで死にたがる。何故そこまで殺したがる。
越える先に何がある。誰が待つ。
より強き者か、弱き者か。

(;^ω^)(人斬り・・・貴様は何を思う・・・)

何故殺す。何故、何故。
そればかりが内藤の頭を駆け巡る。

(;^ω^)(ならば、僕は)

この時、既に内藤は新たな剣を生んだ。
それは歴史上最強と謳われ、最弱とも呼ばれた。

(;^ω^)(『生きる剣』を)

時期は春の下旬。一人の武士が、ある一つの流派を生んだ。
ソレは自らを生かし、敵すらも生かす剣術。
人は言う。アレは剣にして剣にあらず。
『生命剣』の誕生であった。
 
 
五 了

(’A`)は人斬りと死合うようです
返信2008/04/26 20:20:07

9jigendaddyjigendaddy   六 武士 モノノフ

1 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:17:49.79 id:LULDf0Mt0
以前までのまとめ

ttp://bouquet.u-abel.net/murder/mokuji.html 花束 様
ttp://boonnovel.g.hatena.ne.jp/bbs/253?mode=tree ブーン系小説グループ 様

人物紹介
 
('A`) 鬱田独右衛門氏脳 うつだどくえもんしのう
 
流浪武士。内藤一刀流の出であり、皆伝を成している。
火富町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合うが、敗れる。
通り名は「悪斬り独」改め、「斬鉄の独」。
 
(´・ω・`) 曙歩初歩之助兵衛 しょぼしょぼのすけべえ
 
人斬りを好む狂人。示現流の出でおり、皆伝を成している。
火富町にて流浪武士、鬱田独右衛門氏脳と死合い、勝利する。
その際に砕鉄の小刀を奪う。通り名は「人斬り初歩」。
 
( ^ω^) 内藤武雲法螺居存 ないとうぶうんほらいぞん

内藤一刀流師範代にして、内藤家十一代目当主。
その腕は天下の狐家から推挙が上がるほどである。
推挙の際、「歩之助兵衛の抹殺」を条件とされ、果たすために旅立つ。

2 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:19:00.03 id:LULDf0Mt0
川 ゚ -゚) 沙麻空 すなおくう
 
火富町の遊郭、「斉藤屋」で働いていた遊女。
瀕死の独を見つけ保護した。
独に自らの不幸を打ち破ってもらい、共に行くことを決める。
 
(,,゚Д゚) 頭佐擬古 ずさぎこ
 
諸国を旅する座頭だが、実態は人斬りを追っている。
道中、内藤と出会い和解し、共に人斬りを追うことに。
通り名は「座頭の擬古」、「天下の盲人ヤクザ」。
 
( <●><●>)(故人) 伊東一刀斎若手枡 いとういっとうさいわかてます
 
その身一つで一刀流を築いた最強の剣客。
剣の神と謳われ、その実力はまさしく天下一であった。
丹生速町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合い、敗れる。

3 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:20:36.42 id:LULDf0Mt0
六 武士 モノノフ

川 ゚ -゚)「大分塞がってきましたね」

包帯を巻きながら空は言う。

('A`)「これなら後数日といったところか」

丹生速町。独と空が滞在して早四日が経った。
本当は急ぎたいのだろうが、如何せん独はまだ怪我が治りきってはいない。
人斬り―初歩―に刻まれた腹は、しかしもう少しで完治するであろう。

川;゚ -゚)(・・・しかし、早い・・・)

空は思う。この男、独のなんと治りの早いことか。
そもそもこの身で空を守ったというのだから驚く話である。
普通ならば動けず、呻くのであるが独は違う。
斬られた次の日に戦い、そして旅をしている。

川;゚ -゚)(よく歩けるものだ)

感慨深げに空が顎に手を当てているのを独は見た。

('A`)「・・・?」

しかし考えるも思い当たる節は無し。

4 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:23:44.40 id:LULDf0Mt0
('A`)「少し、剣でも振ってくる」

身体に巻かれた包帯を手で叩き、斬鉄を掴む。
そのまま襖を開けようとするが、ふと身体に柔らかい感触が覆った。

川 ゚ -゚)「お着物を。冷えます」

言われ、肩にかかっている着物を見るが独は言う。

('A`)「いや、いい。直ぐに熱くなる」

それだけを言うと、独は出て行った。
一人部屋に残された空はその場にへたり込み、独の着物を抱きしめた。

川 ゚ -゚)「・・・酷だ」

空。彼女は只恋焦がれていた。

5 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:25:09.09 id:LULDf0Mt0
 
 
すっかりと桜が散ってしまった春の下旬。
刻は日が顔を出してから四つほどだ。

('A`)「・・・・・」

宿の庭へと出た独は、しかし自然体だった。
その様はまるで脱力。無殺意、無意識。

('A`)「ふぁあ・・・」

ふと近くの松に不如帰がとまっている。
春を口ずさむ鳴き声は耳に心地よく、同時に風が吹いた。
春麗。日も温かみが増し、風も心地よくなる時期。
一人の男は、立ったまま寝てしまうのではと思われた。
もう一度風が吹く。まるで旋風の如き風は身を襲い、或いは身を包み。
そうして風は暫く吹き続けた。

('A`)「・・・―」

ふいに、まだ風の吹き荒れる中、独の指が鍔を押した。
金属の鳴る音はか弱く、力強く。しかし風がここぞとばかりに勢いを増した。

6 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:27:16.97 id:LULDf0Mt0
('A`)「っ!」

その時、独は抜刀した。二尺七寸の打刀、斬鉄。
謂れは全てを斬る刀だという。
ザッ、と音が聞こえたかと思えば、全ての音は止んだ。
鳴いていた不如帰も、吹き荒れていた風も、全てが止まった。

('A`)「・・・・・」

チン、と鍔鳴りが響いたとき、ようやっと不如帰が思い出したかのように鳴く。
続いて止んでいた風までも恐る恐るというように少しずつ流れてきた。

('A`)「好調だな」

曰く、一閃にして全てを沈める太刀筋を『音斬りの太刀』と言う。
まるで時の止まったかのような、不思議な感覚。
その剣は美しく、全てを魅了する。息をすることさえも忘れさせる太刀筋は、まさしく剣神。
独の剣は、しかし内藤を超えたのかもしれない。

('A`)「よっ、ほっ」

それから暫く木を振るい、心を無にし、まるで道場のときのような事を繰り返した独。
気づけば刻は昼へと迫っていた。

9 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:29:17.75 id:LULDf0Mt0
('A`)「む、もうこんなに経っていたか」

汗を拭い一人呟く。
斬鉄を腰に帯刀し、中へと戻ろうとした時であった。

「凄えな、兄ちゃん」

ふと後ろの塀。そこから声が聞こえた。
独が振り返れば、そこには若い男が映っていた。

( ゚∀゚)「あんた、只者じゃねえだろ!」

塀に座り、じっと独を見る男。
顔は特徴的で、眉毛が太い。どこか明るそうにも見える。
しかし独は男を警戒した。何故なら男は刀を挿していたからだ

('A`)「・・・何奴」

殺気を飛ばす独であるが、男は気にしない素振りである。

11 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:31:32.44 id:LULDf0Mt0
( ゚∀゚)「おいおい、そんなに怪しむなよ。通りすがりの武士だっつーの」

見たところ、まだ二十前半といったところか。
既に三十前半になる独は、餓鬼が、と呟いた。

( ゚∀゚)「なぁ、あんた強いんだろ?」

塀からこちらへと移動した男は、独の眼を見てそう言った。

('A`)「・・・・・」

しかし独は答えず。沈黙を貫くようだ。
男もそれに気づいたが、しかし続ける。

( ゚∀゚)「さっきの、見てたぜ。あんたが抜いた瞬間に、音が、世界が止まったんだ。
     なぁ、あんた凄えな。何であんな剣が振るえるんだ?」

独がソレをしたのは二刻も前である。
そうすると男はずっと独を見ていたということだ。

12 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:33:11.15 id:LULDf0Mt0
(;'A`)(なんだコイツ・・・)

そう考えた瞬間、独は身震いした。
この男、少し変わっているらしい。

( ゚∀゚)「なあ、もう一度見せてくれよ」

いいだろ、と男は何度も言い独に詰め寄る。
独は苦い顔で黙っているだけだ。

(;'A`)「あー、すまんがちと人を待たせてるんだ。悪いな」

ふいに頭に空の顔が過ぎりそう言う。
そそくさと男から離れると独は足早に中へと戻って言った。

( ゚∀゚)「あー・・・」

一人残された男。

( ゚∀゚)「・・・振られたなあ」

別の意味で恋焦がれているようだった。

13 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:35:19.55 id:LULDf0Mt0
 
 
('A`)「空、居るか?」

襖を開けながらにして空を呼ぶ独。八畳の部屋で、すぐに空を見つけた。

川 - _-)「ぐーっ・・・」

('A`)「・・・寝てたか」

部屋の中央で空は寝ていた。

('A`)「・・・飯―」

川 ゚ -゚)「はい食べます食べます」

(;'A`)「―でもどーだ・・・早いな、起きるの」

川 ゚ -゚)「寝耳に美しい響きが聞こえてきたので」

ほんの先ほどまで熟睡していたはずなのだが、空はすぐさま起きると身支度を始める。
その光景を見ながら独は呆れるばかりだった。

14 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:37:46.49 id:LULDf0Mt0
川 ゚ -゚)「さぁ行きましょうか」

眼を爛々と光らせて独を見る空。

(;'A`)「本当、食欲は良いな・・・」

そう言い、ふと独は内藤を思い出した。
そういえばあいつも食が凄まじい。どこか懐かしさに浸る独。

('A`)「・・・で、今日は何を食べるんだ?」

内藤は団子ばかりを食べていた。それをいつも独が苦笑いで隣に座っている。
あの頃の独は人を斬ることも、殺すこともまだ知らなかった。

川 ゚ -゚)「丁度団子でも食べたいと思っていまして」

その言葉を聞き、独は笑った。

川 ゚ -゚)「?どうしましたか?」

いやいや、と独は言い着物を羽織る。

('∀`)「・・・ああ、そうだな。団子にしよう」

15 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:39:26.60 id:LULDf0Mt0
川 ゚ -゚)「あ・・・」

一瞬、ほんの一瞬だけ空は見た。
独が笑ったのを。独はそのまま背を向けてしまったが、空は確かに見たのだった。

('A`)「どうした、おいてくぞ?」

川 ゚ -゚)「それは困ります。さあ団子を食べに行きましょう」

独の後ろを付いていく空。
やはりどこか懐かしさを感じる独であった。

('A`)(俺も・・・内藤も。あの頃は何も知らなかったな)

チラリ、と独は空を見やった。

川 ゚ -゚)「?」

つられて空も独を見たが、独は直ぐに目を離す。

('A`)(俺たちも幼いままだったら・・・)

16 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:41:19.68 id:LULDf0Mt0
空を見て独は思う。まるで内藤を見ているようだ、と。
何時の間にか人を殺すことを覚え、しかし人に感謝された独。
独自身も悪を討つためならば仕方なし、そう思っている。
武士道、人道、正義。どれも独の大好きなモノだ。

('A`)(だが・・・)

独は思う。子供のままではいられない。子供のままでは勝てない。
いくら剣の腕がよかろうと、殺意がなければならない。
いくら殺そうと思っても、剣が無ければ殺せない。

('A`)(俺は・・・俺は必ず奴を討つ)

人斬り。只奴に想い馳せる独。
修羅にならなければ勝てない。鬼にならねば勝てない。

('A`)(ならば俺はなる。なってみせる)

ただ一人、そう強く思うのであった。

17 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:43:03.67 id:LULDf0Mt0
 
 
(;'A`)「鬼だ・・・」

目の前に連なる皿を見て独は呟く。

川 ゚ -゚)「何か言いましたか?」

(;'A`)「いや、何でもない」

空に分からぬように溜息をつき、次いで皿の数を数えてみた。
十、二十、といったところだろうか。女の癖に、いや人の割りによく食べる。

(;'A`)(本当に内藤みたいだ・・・)

再度溜息をつく。懐を擦ってみれば涼しいばかり。

(;'A`)「簡便してくれ・・・」

「何をだ?」

ふと、背後から話しかけてくる者が居た。
しかしその声、どこかで聞いたことのあるものだ。

18 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:44:10.14 id:LULDf0Mt0
( ゚∀゚)「奇遇だねえ、また会ったな」

先ほどの眉毛の濃い男だ。
独が何か言おうとするよりも早く隣へと座る。

(;'A`)「お、おう。先刻ぶりだな」

何故か緊張する独。無理も無いだろう。
もしかしたらこの男、衆道やもしれぬ。

(;'A`)(コイツ、妙に近いんだよな・・・色々と・・・)

一人焦る独。

川 ゚ -゚)「・・・そちらの方は?」

ふいに空が話しかけてきた。
独は聞かれ、答えようとするのだが如何せん何も知らない。

('A`)「分からん。先ほどあっただけだ」

しれっと事実を言うと、男はわざとらしく頭を滑らせた。

20 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:45:22.08 id:LULDf0Mt0
( ;゚∀゚)「なーんか寂しいなあ、そう言うの」

すると男は独の肩に腕を乗せて顔を近づけた。

( ゚∀゚)「俺の名前は長岡助屡次(ながおかじょるじ)!流浪武士さ!」

ピクリ、と独の手が動く。空はソレを見逃さなかった。

川 ゚ -゚)「まだ若そうですが・・・」

( ゚∀゚)「おうよ!今年で二十二だ!」

次の瞬間であった。
バッ、と独は立ち上がり、男―長岡と呼ぼう―を見やりこういった。

('A`)「御免蒙る」

勘定を机に叩きつけ、空の手を取り無理やり連れて行く。
空が何か言っているが独は聞こえないフリをした。
暫く歩き、あの野原へと着くとようやっと独は空の手を離した。

川;゚ -゚)「一体、どうなさったのですか」

歩く速度が早かったのか、空は息が荒い。
しかし独は息切れも無く、しかし雰囲気はまるで武士のソレになっている。

('A`)「分からん」

21 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:46:35.12 id:LULDf0Mt0
独自身、実は何故あのようなことをしたのか分からなかった。
しかし心では十分理解しているだろう。
単に気に入らなかったのだ。あの長岡という男が独は気に食わないのだ。
若く、男の癖に阿呆のように声を上げる。
あんな者が果たして武士なものか。独は断じて認めない。
だがしかし独とてあの年から流離い始めていた。
既に身も三十四となっている。

('A`)「・・・分からん」

再度呟く。
まるで子供のようだ、と独は思った。
気に入らない者には頭は下げず、口はきかず、顔をあわせず、駄々をこねる。
いや、武士とはもしかしたら子供の延長線の様なものかも知れない。
ふと思うことはまさしく莫迦なものであった。

川 ゚ -゚)「まるで子供のようなお人です、貴方様は」

ふと、独は空を見る。
手にはあのまま持ってきたのか団子を一本持っている。
それを口に含みながら、空は言う。

川 ゚ -゚)「男とは、何時まで経っても子供なのですね」

言われ、独は顔を赤くする。

23 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:48:00.25 id:LULDf0Mt0
(;'A`)「う、煩い。食いながら喋るな、行儀の悪い」

しかし空はクスクスと笑い、独はさらに小恥ずかしくなるばかり。

(;'A`)「・・・―」

気分でも変えよう、と独は斬鉄を抜いた。
チキリ、と刀身を晒す。

('A`)「っ!」

抜刀から上段、続けて右からの振り下ろし。
次いで横薙ぎに振るい左への切り上げ。
ヒュ、ビュ、と風きり音が耳に届き、見ている空はしばし夢の中。

川 ゚ -゚)「何とも心地のよい・・・荒々しく、決して美しくは無いというのに」

空は思う。
何時ぞや独が言っていた内藤の剣。即ち剣神、即ち魅せる剣、即ち不殺の剣。
ならば独はどうか。即ち剣王、即ち魅入る剣、即ち必殺の剣。
まさしく対極だ、と空は思う。
内藤の剣は美しく、流れるように、かつ優しさに溢れるという。
しかし独の剣はやはり対極で、ガサツで、荒々しく、かつ全てを壊すような。
そこまで想い、ふと空は思う。
では強いのはどちらか。どちらの剣が勝るのか。
内藤のように不殺の剣か、独のような必殺の剣か。
空は考えるばかりで、結局はどちらでもよかった。
今見えるこの男が世界で最強なのだと、空は思うのだ。

25 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:49:36.00 id:LULDf0Mt0
川 ゚ -゚)「そうだ・・・独様こそ最強なんだ・・・」

( ゚∀゚)「それは無えな」

ふいに、空の隣から声が聞こえてきた。
ギョッとした空が見れば、そこには先ほどの男―長岡―が佇んでいたのだ。

川;゚ -゚)「うわぁ!」

( ;゚∀゚)「っしぇえい!」

空が突然叫ぶと、それに驚いた長岡も釣られて叫んだ。

川;゚ -゚)「何時から・・・?」

( ゚∀゚)「あー・・・あの人が刀振り回してるところから」

言い、長岡は独の方を向いた。

('A`)「・・・・・」

独はただ静かに納刀し、長岡を見据える。

26 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:50:45.65 id:LULDf0Mt0
( ゚∀゚)「あんた、独右衛門だろ?」

('A`)「・・・・・」

場には静寂が流れる。

( ゚∀゚)「すぐに分かったよ。そこの女、そしてあの太刀筋。間違い無え、あんたは独右衛門だ」

しかし独は答えず、風のみが音を発するのであった。

川;゚ -゚)「うっ・・・」

空はすぐさま気づいた。もはやこの場の空気は別だ。
まさしく死合う世界。いつ始まっても可笑しくは無いこの雰囲気。
ピリピリと身を焦がすような突き刺さる空気。そして痛い無言。
空は長岡を見る。よくよく見ればやはりヘラヘラとしているが、しかし眼は笑ってなど居ない。
むしろ感情など込められていないような、そんな眼。
次いで独を見れば、やはり長岡を睨むのみ。
空には分からないが、やはり隙が無いところを見るに十分果たし合う気はあるようだ。

('A`)「それで・・・」

ふいに独が呟く。

('A`)「それで、俺が独右衛門ならどうする」

はっ、と長岡が鼻で笑った。

27 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:52:01.00 id:LULDf0Mt0
( ゚∀゚)「俺あなぁ」

ふと、少しだけ殺意が薄れる。
それは長岡が和らげたからだ。

( ゚∀゚)「俺は強くなりたいんだ。誰よりも、何よりも。最強を目指すんだ・・・」

だから、と続ける。

( ゚∀゚)「手前を殺し、最強を手にする」

どっ、と殺意を込めた目で独を睨む。

( ゚∀゚)「ま、最もあんたは最強じゃぁねえよな。何しろ、人斬りさんに負けたんだからよ?」

それは独を挑発するのに十分だった。

('A`)「いいだろう、受けてたつ」

空は何も言わない。言えないのだ。
自分が喋っていい場では無い。それを十重に理解しているのだ。

川;゚ -゚)(独様・・・どうか御健闘を・・・)

29 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/06(火) 20:52:57.16 id:LULDf0Mt0
祈り、目を瞑る。
ここから先、長岡は独の力を垣間見ることとなる。

( ゚∀゚)「長岡助屡次、参る!!」

('A`)「鬱田独右衛門氏脳、相手仕る」

後に誰かが言った。
独右衛門は鬼だ、と。
 
 
六 了

(’A`)は人斬りと死合うようです
返信2008/05/10 15:32:55

10jigendaddyjigendaddy   七 二刀と鬼

1 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:31:32.85 id:CgaT5Wsq0
以前までのまとめ

ttp://bouquet.u-abel.net/murder/mokuji.html 花束 様
ttp://boonnovel.g.hatena.ne.jp/bbs/253?mode=tree ブーン系小説グループ 様

人物紹介
 
('A`) 鬱田独右衛門氏脳 うつだどくえもんしのう
 
流浪武士。内藤一刀流の出であり、皆伝を成している。
火富町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合うが、敗れる。
通り名は「悪斬り独」改め、「斬鉄の独」。
 
(´・ω・`) 曙歩初歩之助兵衛 しょぼしょぼのすけべえ
 
人斬りを好む狂人。示現流の出でおり、皆伝を成している。
火富町にて流浪武士、鬱田独右衛門氏脳と死合い、勝利する。
その際に砕鉄の小刀を奪う。通り名は「人斬り初歩」。
 
( ^ω^) 内藤武雲法螺居存 ないとうぶうんほらいぞん

内藤一刀流師範代にして、内藤家十一代目当主。
その腕は天下の狐家から推挙が上がるほどである。
推挙の際、「歩之助兵衛の抹殺」を条件とされ、果たすために旅立つ。

2 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:32:21.52 id:CgaT5Wsq0
川 ゚ -゚) 沙麻空 すなおくう
 
火富町の遊郭、「斉藤屋」で働いていた遊女。
瀕死の独を見つけ保護した。
独に自らの不幸を打ち破ってもらい、共に行くことを決める。
 
(,,゚Д゚) 頭佐擬古 ずさぎこ
 
諸国を旅する座頭だが、実態は人斬りを追っている。
道中、内藤と出会い和解し、共に人斬りを追うことに。
通り名は「座頭の擬古」、「天下の盲人ヤクザ」。
 
( <●><●>)(故人) 伊東一刀斎若手枡 いとういっとうさいわかてます
 
その身一つで一刀流を築いた最強の剣客。
剣の神と謳われ、その実力はまさしく天下一であった。
丹生速町にて人斬り、曙歩初歩之助兵衛と死合い、敗れる。

4 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:36:33.29 id:CgaT5Wsq0
七 二刀と鬼
 
ポツリ、と雨が降った。

('A`)(狐雨か)

空は晴れているのに、所々に弱い雨が降り注ぐ。

( ゚∀゚)「何他所向いてやがる」

ザ、と音を立てて、長岡が独へと近づいた。
距離にして後五歩。

( ゚∀゚)「余裕、ってか?」

長岡はその距離を保ち、抜刀した。

('A`)「―!」

独の前に立つ男、長岡は構えた。
左腕を前に、右腕を天高く掲げる構えだ。
しかしその両腕には刀が二つ。
左手には小刀、右手には刀。

5 名前: ◆xjCZpXtL0U うんこいっぱいでた 投稿日:2008/05/10(土) 13:38:04.59 id:CgaT5Wsq0
('A`)「二刀流か」

呟き、独は右足を半歩だし腰を深く落とす。
柄に手を置き、居合いの体制に入った。
二刀流。両手にそれぞれ刀もしくは剣を持って、攻守をおこなう技術の総称。
二刀剣法とも呼ばれる

( ゚∀゚)「手前に捌ききれるか?」

突如、長岡が足を踏み出した。

( ゚∀゚)「我が師、宮本武蔵の二天一流、とくと見よ!!」

叫び、長岡は独に迫った。
二天一流。右手に大太刀、左手に小太刀の二刀を用いる五つのおもて「五方」の
五本にまとめ上げ、その兵法理念を『五輪書』に書き表した。
『五輪書』では流名は二刀一流・二天一流の二つが用いられているが最終的には二天一流になったと考えられる。
後世には、二天流・武蔵流の名も用いられている。
左腕の小刀を横薙ぎに独へと振るう。
だが。

6 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:40:00.26 id:CgaT5Wsq0
('A`)(・・・これは・・・)

ギン、と鉄のぶつかる音が響く。
独の居合いは、長岡の刀により受けられていた。
しかしその受けもやはり二刀流によるものか、左手の小刀で根元を、右手の
刀で腹を押さえた。

( ゚∀゚)「でああああ!!」

キン、と長岡が独の刀を押し、離れた瞬間に右の刀で突きを見舞う。
独はそれを峰で弾き、次いで来る小刀の逆手薙ぎを弾く。
独は少し離れると納刀し、すぐさま居合いの姿勢に入る。
すると長岡はあと二歩という距離にまで接近し、独は今一度抜刀する。
横薙ぎの神速、居合い。それを受けたのはまたもや二本の刀。
しかし、甘かった。

('A`)「・・・!」

斬鉄が軽く二本に当たった瞬間、独は掬う様に小刀の下へと斬鉄を潜らせ、一気に
上へと振り上げる。

7 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:42:00.06 id:CgaT5Wsq0
( ;゚∀゚)「なっ―!!」

左手の小刀が手元から離れ、次いで右手の刀が大きくぶれた。

('A`)「はあ!!」

独は刀を横に構えると、抜き去るように長岡の胴へと斬鉄を滑らせた。

( ; ∀ )「があっ!?」

美しく決まった一閃。長岡が倒れる音を背に、独は空を呼んだ。

('A`)「空、布をくれ」

ポツリ、と雨が降る。それは独の鼻先に当り、長岡に当り。

川 ゚ -゚)「・・・どうぞ」

独は空に渡された木綿で斬鉄の血糊を拭い、納刀した。

( ; ∀ )「ぬぐ・・・が・・・あ・・・」

8 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:44:00.36 id:CgaT5Wsq0
ふと、耳に届くは苦痛の声。
独は振り返ると、そこには刀を杖代わりに、立とうとする長岡が居た。

('A`)「・・・・・」

再度斬鉄を抜く。介錯をするべく独が長岡へと近づいた。

('A`)「今、楽にしてやる」

斬鉄を天空へと掲げ、振り下ろそうとした瞬間だった。

( ; ∀ )「ま・・・だだ・・・」

ふと、長岡の声が聞こえた。

( ; ∀ )「俺は、死なない・・・!!最強になるんだ!誓ったんだ、師匠に!!
     こんなところで死ねない!!俺は誓いを果たすんだ!!」

('A`)「・・・・・」

チン、と音が響く。ソレは納刀の音である。

11 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:46:00.17 id:CgaT5Wsq0
('A`)「お前は弱い。一合目の時にソレはすぐさま理解できた。力が無いんだ。振りも遅い。
    その程度で俺に挑むのは早すぎた」

静かに独は長岡へと語りかけた。

('A`)「お前は、生きたいか?」

( ; ∀ )「・・・・・」

('A`)「恥を忍び、世に邪険にされ、それでも生きたいか?」

ポツリ、と雨が降る。
しかし、その一滴が最後だったかのように、空は晴れ晴れとした。

( ; ∀ )「・・・生きたい」

('A`)「・・・・・」

( ; ∀ )「生きて、絶対に最強になるんだ・・・死んでたまるか!!」

そう言い、長岡は立ち上がる。

12 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:48:13.97 id:CgaT5Wsq0
( ; ∀ )「さあ、殺せるものなら殺してみやがれ!!俺は死なない!!
     例え頭(こうべ)一つとなろうとも!!朽ち果てはしねえ!!」

目は朧気か、その目はしっかりと独を見据えていない。
だが独はソレを聞き、背を向けて歩き出すのであった。

( ; ∀ )「いつか、必ず!!手前を殺してやる!!そして、そして!!
     最強になってやるんだ!!待ってろ、俺が絶対に手前を殺す!!」

ザッ、ザッ、と独は草を掻き分け、空の居るほうへと歩く。
ようやっと空の隣へと立つと、こう言った。

('A`)「すまんが、手当てをしてやってくれ。俺は先に宿に居る」

川 ゚ -゚)「分かりました」

この時、長岡は死の間際で思っていた。
あの男、独右衛門の強き事。

( ; ∀ )「・・・正しく、鬼也・・・」

14 名前: ◆xjCZpXtL0U マドレーヌうめえな・・・ 投稿日:2008/05/10(土) 13:50:03.05 id:CgaT5Wsq0
 
 
一人部屋の中で斬鉄の手入れをする独。
まるで心此処にあらず、といった風に意識が無いのか、口をぽかりと明けたまま布で斬鉄を拭く。

('A`)「・・・決めたのにな・・・」

ふと、呟いた言葉は誰へのものか。

('A`)「鬼になると、決めたのにな・・・」

独は自責の念に囚われていた。
自らを鬼と化し、情をかけず、殺しつくす鬼となると決めた。
だが独は、長岡を生かしてしまったのだ。

('A`)「結局、俺では鬼になどなれないのか」

この甘さで、果たして奴に勝てるのか。
あの人斬りを、討てるのか
無理だ、と独は思う。こんな体たらくな、甘い剣では。
返り討ちにあうのが目に見えて分かる。

15 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:52:09.24 id:CgaT5Wsq0
('A`)「・・・・・」

一人部屋で憂く。しかし独は知らぬまい。
傍から見れば、その太刀筋は正しく鬼の如き。
破壊の限りを尽くす、そんな風体なのだ。

「独様、居ますか?」

ふと、独が感慨に耽っていると、空の声が襖越しから聞こえてきた。

川 ゚ -゚)「・・・!!」

スラッ、と襖が開く。空が独を確認するや否や、すぐさま抱きしめた。

(;'A`)「お、おおおい、空、どうした」

焦る独の質問に、しかし空は答えず。
焦点を宙に浮かせ、戸惑いながらも独はその状態のまま固まっていた。

16 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:54:00.12 id:CgaT5Wsq0
川  - )「・・・よかった・・・」

ふと、暫くの間黙っていた空が、呟いた。

川  - )「本当に、よかった・・・」

(;'A`)「???」

川 ゚ -゚)「・・・失礼しました」

そう言うと、空は独から離れ、一畳を挟んだ所に正座する。

川 ゚ -゚)「独様、私は不安でした」

言われ、しかし独は何がかは分からない。

川 ゚ -゚)「もし、貴方様が死ぬようなことになったら、と考えるだけで・・・頭が真っ白になりました」

その言葉を聞き、独は有り得ない、と思った。

17 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:56:00.06 id:CgaT5Wsq0
('A`)「空、安心しろ。俺は死なないし、負けない」

川 ゚ -゚)「・・・安心など出来ません」

しかし独の言葉にピシャリと反論する空。

('A`)「何故だ」

川 ゚ -゚)「貴方様は、あの人斬りにまた挑もうとするからです」

フッ、とそこで音は途絶えた。
独は空の言葉を聞き、暫し思うのであった。

('A`)「何故そこで人斬りの話なぞ・・・」

川 ゚ -゚)「貴方様は確かに強い。先ほどの死合いでもその実力は十分なまでに分かっています。
     無論、私を助けてくださったときから既に。しかし、思ったのです。
     何れ貴方様は人斬りと死合う。その時、もしかしたら―」

('A`)「止めろ」

川 ゚ -゚)「いえ、止めません。貴方様は敗れるやもしれない。死ぬかもしれない。
     私は怖かったのです。今日、初めて果し合いを見て、恐ろしかったのです。
     あの空気、あの殺気。どちらが死んでも可笑しくは無いあの場。
     貴方様は、これから先、本当に生きていられるのですか?」

19 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:58:00.02 id:CgaT5Wsq0
('A`)「・・・無礼ぞ」

ついに怒る独。その手は振るえ、眉間に皺を寄せ、顔を赤くする。

川 ゚ -゚)「勘違いしてはいませんか」

そんな独に、空は至って普通のように声を出した。

川 ゚ -゚)「貴方様は、私に侍る者ではなかったのですか?」

('A`)「―!」

独はあの日、空を助けた際に誓ったのである。
士う、と。

川 ゚ -゚)「貴方様の主君、沙麻空が命じます」

この日、独は鬼にはなれなかった。

20 名前: ◆xjCZpXtL0U 投稿日:2008/05/10(土) 13:59:00.05 id:CgaT5Wsq0
川 ゚ -゚)「その身、その心。全て私に預け、決して死んではなりません」

('A`)「・・・心得て候」

両の手を畳へとつけ、頭を深く下げる。

川 ゚ -゚)「・・・よろしい」

春も終わり頃、ある男は鬼になろうとした。
しかしなりきれず、男は自らの心の弱さに悔いた。
その男の主君は言う。死んではならない、と。
男は答えた。死なない、と。
 
 
七 了

(’A`)は人斬りと死合うようです
返信2008/05/10 16:06:12