('A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです RSSフィード
 

著作権についてはこちら
したらばのレスのズレが気になる方はこちら
mirrorhenkan関連はこちらとかこちら
ツンやヒートの口の文字化けが気になる方はこちら
まとめ事情さん関連はこちら
他まとめサイトさん関連はこちらとかこちらとかこちら
倉庫さん関連はこちら
AAのズレを調整したい方はこちら(外部サイト)
fc2のQRコードを非表示にしたい方はこちら(外部サイト)
作品のはてなブックマークのコメントを見たい方はこちらとかこちら
どれか選ぶのが面倒な方はこちら からでどうでしょう
リスト表示 | ツリー表示
ツリー全部最新の50件

1jigendaddyjigendaddy   ('A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです

1 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 20:54:20.43 id:PooBF2Ek0
「正義のヒーロー」と聞いて、あなた達は何を想像するだろうか。
それは仮面ライダーであったり、ゴレンジャーであったり、ウルトラマンであったり、
お巡りさんであったり、レスキュー隊であったり、近所のお兄さんであったり、
それぞれ人によって違うだろう。

テレビの中では、誰かがピンチの時、
正義のヒーローが颯爽と現れて、困っている人を助けてくれる。
悪は斃れ、人々は喜び、正義のヒーローは何処かへと去り、
ハッピーエンドで物語は終結する。

そう、正義のヒーローは助けを呼べば必ずやってくる。
だからこそ、人々はそんな彼らを「正義のヒーロー」と呼び、
それ故に正義のヒーローは正義のヒーローとして定義される。

……しかし、それはテレビの中だけの話だ。
現実には、正義のヒーローは困っている人の前には現れたりなんかしない。
正義のヒーローなんか世界の何時何処にも存在しない。
正義のヒーローは、誰も救ったりなんかしない。

4 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 20:55:34.06 id:PooBF2Ek0
――それでも、
それでも正義のヒーローを信じ続けた一人の少年がいた。
傷ついて、傷ついて、傷ついて、
それでも、いつか、いつの日か、
正義のヒーローが助けに来てくれると、
心の底から信じ続けた。

……当然のように、正義のヒーローはやって来なかった。
そもそも、居もしないものが現れるなんて、有り得ないことだった。
それでも、少年は信じて、待ち続けた。
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、正義のヒーローが――

――時間だけが過ぎ、少年は青年になり、希望はは歪に捻れ、
それでも少年は裏切られた事に気付かず、気付こうとせず、
ただ、純粋な想いだけが、風化しないまま積もっていった。

正義のヒーローは、誰も救ったりなんかしない。

だから、少年は――


         *        *        *

7 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 21:12:52.76 id:PooBF2Ek0
T都2ちゃん区VIP市。
郊外に程近い、それでいて疎らながら自然の残るホームシティ。
穏やかな風土と人間の存在するその街は、
物騒な事とは無縁なことが唯一の取り得である――はずだった。

( ><)「ギコ巡査部長! これが例の仏なんです!」
(,,゚Д゚)「おう、どれどれ……」
VIP署の刑事、ギコは青いビニールシートの覆いの一部を剥いで、中の「ブツ」を確認した。

(,,゚Д゚)「チッ…… やっぱコレかよ」
忌々しげに舌打ちし、元人間だったものから思わず視線を逸らした。
体中を食われたような、原型を殆ど留めていない死体。
この一週間で、同じような死体が既に五体発見されている。

( ><)「犯人がなんでこんな風に殺すのかわかんないんです!」
(,,゚Д゚)「それを調べるのが俺達の仕事だろうがゴルァ!」
ギコは後輩のわかんないんですに渇を入れると、
ポケットの中からハイライトを取り出し、ライターで火をつけた。

8 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 21:21:11.98 id:PooBF2Ek0
(,,゚Д゚)「……それで、またアレはあったのか?」
( ><)「はい! あったんです!」
言うと、わかんないんですはビニール袋を取り出し、ギコに見せた。
ビニール袋の中には、白い糸のようなものが詰められている。

(,,゚Д゚)「またこれか…… 犯行現場には、何だって必ず蜘蛛の糸が残されてるんだ」
( ><)「わかんないんです!」
(,,゚Д゚)「だからそれを調べるのが俺達の仕事だっつってんだろが!」
ギコは今度は口だけでなく手で渇を入れた。

(,,゚Д゚)「……ったく、犯人は怪人蜘蛛男かっつーの」
ギコの呟きは、煙草の煙と一緒に初秋の空へと消えていった。


       *     *     *

9 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 21:23:41.85 id:PooBF2Ek0
「おいバイト! さっさとこれ運んどけ!」
怒号と共に、俺に向かって段ボール箱が投げつけられた。
今日は一緒にパンチが飛んでこないだけ、いつもよりマシだと言える。

('A`)「……すんません」
「なんだあその顔は!? 文句でもあんのか!?」
('A`)「いえ……」
「だったらさっさと運べ! 全く、ほんと使えねーなお前は!」

俺の名前はドクオ。
いわゆる22歳フリーター童貞。
年下の正社員に罵られながらコキ使われる、有り体に言えば社会の負け組みだ。

学歴は中卒。
高校には入学したが、イジメで辞めた。

イジメから逃げる為に学校を辞めたが、
生きていく為のバイトでイジメられる始末。

ニートになろうにも、頼れる親族もおらず、最早死ぬ以外に逃げ場は無い。
どうやら、神様は弱い人間からはとことん搾取するポリシーらしい。


しかし!
これは世を忍ぶ仮の姿!
ひとたび悪の怪人が出現し、人の助けを呼ぶ声があらば、
光と共に変身し、蔓延る悪をなぎ倒す!

そう、俺こそが正義のヒーロー、『マスク仮面』!!!

10 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 21:33:58.98 id:PooBF2Ek0
('A`)「……で、この前はそんな感じで『マスクパンチ』を打ってですね、
    怪人ピザ男をぶっ倒したんですよ」
从'ー'从「まあまあ、それは凄いですね~」

自家製の黒いマスク仮面スーツとヘルメットに身を包み、
俺はおばあさんと世間話をしていた。

このおばあさんは渡辺さん。
以前、マスク仮面変身用スーツを着て歩いていたところを警官に追われ、
慌ててこの人の家に逃げ込んだ時からの付き合いだ。

本気なのか冗談なのかは分からないが、
この人は俺の正義のヒーローとしての活躍(ツクリバナシ)を、楽しそうに聞いてくれる。
家族もいないようだし、こうして誰かと話す機会も余り無いのか、
この時の渡辺おばあさんは本当に嬉しそうだ。

('A`)「で、そしたらピザ男が死ぬ間際に『コレステロール光線』をですね……」
从'ー'从「まあ、それは大変!」
('A`)「ええ、あの時ばかりはこれはもうダメかもわからんねと思いました」
ハリボテのスーツ。
嘘っぱちの武勇伝。
虚構のヒーロー、『マスク仮面』。
それが、死ぬこと以外の俺の逃げ場所だった。

そんなことも知らず、渡辺おばあちゃんは毎日の俺との会話を楽しみにしてくれる。
まあこれはこれで、人々のお役には立っているのかもしれない。

11 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 21:45:09.93 id:PooBF2Ek0
('A`)「んじゃ、今日はこの辺で帰ります。 すみません、夕食まで頂いちゃって……」
从'ー'从「あら、もうそんな時間かしら。
     ごめんなさいね、長々と引き留めちゃって」
('A`)「いえ、そんなことないですよ。 それじゃ」
从'ー'从「また来て下さいね。
     お茶だけならいつでも用意して待ってますから」

周囲に人のいない事を確認してから、俺は渡辺おばあちゃんの家を出た。
こんな姿を見られて通報され、また警察に追われては適わない。

('A`)「11時半、か……」
時計を見る。
今日は随分と遅くなってしまったようだし、早く寝よう。
仕事中欠伸でもしたら、また怒られてしまう。
そんなことを考えていると……

「君、ちょっといいかな」
肩に手をかけられ、振り返るとポリがいた。
当然、即座にダッシュで逃走する。

「こら~~! 待ちなさ~~~~い!!」
後ろからは、警官が鬼の様な形相で追いかけてきた。
畜生、今日に限って真面目にパトロールしやがって!
警官なら警官らしく、税金泥棒してろってんだ!

14 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 21:58:09.12 id:PooBF2Ek0
('A`)「……どうにか撒いたようだな」
人気の無い廃寺に逃げ込み、俺は九死に一生を得た。
しかし、「どうにか撒いたようだな」って、どう考えても悪人の台詞のような気がする。

('A`)「うげ、もう日付け変わってんじゃん」
   明日は8時からバイトだってのに、余計な体力を使ってしまった。
('A`)「あ~あ、仕事辞めてえなあ……」
しかし、辞めたところで先にあては無い。
今のバイトも一ヶ月前に入ったばかりだし、
次のバイトも見つかるかどうか疑問である。

('A`)「はあ~あ……」
もう一度、溜め息をついたその時、

「主は誰じゃ?」
('A`)「!!?」
廃寺の奥から、いきなり女の声がした。

('A`)「だ、誰だ!?」
恐怖の余り、声が震える。
誰だ。
いつの間に、そこへ。

「先に質問したのは儂の方じゃぞ。 もう一度聞く。 主は何者じゃ?」
('A`)「お、俺は――」
言葉が詰まる。
どう答えるか。
しばし迷った後、俺はこう言った。
('A`)「俺は、正義のヒーロー『マスク仮面』だ!!」

15 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 22:10:41.09 id:PooBF2Ek0
「正義のヒーロー、とな?」
寺の中に光が差し込む。
月明かりがさあっと寺の中を照らしていき、声の主の姿が、徐々に見えていく。
そこに居たのは――

イ从゚ ー゚ノi、「くくっ、正義のヒーロー、『マスク仮面』と申したか」
和服姿の女だった。
背が高い。
172センチの俺より少し身長がある。
腰に日本刀。
肌は雪の様に白く、それとは対照的に、唇は血の様に紅い。

だが、そんな特徴より何より――
腰まであろうかというその髪は、光り輝くような銀色をしていたことが、俺の目に焼き付いた。

イ从゚ ー゚ノi、「くっ、ぷっぷ……」
女は口に手を当て笑いを噛み殺すような仕草をしていたが、やがて堪え切れず、
イ从゚ ー゚ノi、「あーーっはっはっはっはっはっは!!」
高らかに大笑いを始めた。

('A`)「何が可笑しい!!」
恐怖も忘れ、俺は叫んだ。
俺の夢を馬鹿にされたことが、悔しかった。

イ从゚ ー゚ノi、「いや、すまんすまん。
     長く生きてきたが、その様な自己紹介をされたのは、初めてのことだったのでな」
まだ笑い足りないらしく、女はしきりに口に手を当てた。

16 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 22:16:20.42 id:PooBF2Ek0
('A`)「さあ、俺は答えたぞ! お前こそ誰だ!」
イ从゚ ー゚ノi、「おおそうじゃった。 名乗られた以上、こちらも相応の返礼をせねばな」
女はようやく笑うのをやめ、俺に向き直った。

イ从゚ ー゚ノi、「儂は銀と言う」
真っ直ぐに見つめられ、俺は思わず顔を逸らした。
よく見ると、この人かなりの美人だ。
いや、待て。
俺は何か重要なことを見落としてないか?

('A`)「――って、その刀は何だ!?」
そう、刀。
日本刀。
サムライソード。
ドラクエだと装備すれば攻撃力40アップは間違い無し。
イッツアベリーデンジャラスウェポン。

イ从゚ ー゚ノi、「何って、日本刀じゃが」
('A`)「んなこた見りゃ分かるっつの!
   何でそんなもん持ち歩いてんだよ!
   日本じゃ正当な理由無く刃渡り6センチ以上の刃物を携帯したら犯罪だぞ!」
イ从゚ ー゚ノi、「大丈夫。 ちゃんとした理由はある」
('A`)「ほう、それは?」
イ从゚ ー゚ノi、「護身用」
('A`)「考え得る限り最悪の言い逃れじゃねえか!」
大丈夫か、この女。
日本が法治国家ということを知らないとはゆとり教育の弊害か。

17 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 22:22:24.42 id:PooBF2Ek0
イ从゚ ー゚ノi、「ふむ。 で、法律違反じゃとしたら、どうする?
('A`)「どうするって、そりゃ成敗して……」
そこで俺は硬直した。
日本刀VS素手のハリボテヒーロー。
オッズは1:100ってところか。
勿論俺が勝つのが100といった感じで。

('A`)「くっ……!
大丈夫じゃないのは俺の方だった。
どうする。
どうする。
どうする。

イ从゚ ー゚ノi、「さあ、どうするのじゃ?
     正義のヒーロー、『マスク仮面』」
女が挑発的な笑みを浮かべる。
どうするって、決まってる。
逃げなければ。
そうさ、いつだって、逃げるのは俺の得意技――

('A`)「舐めるな、怪人ドス女!
   ここで遭ったが百年目!
   このマスク仮面がお前を成敗してくれる!!」
逃げてはいけない。
このスーツを着て逃げてしまったら、
俺にはもう何処にも居場所は無くなってしまう……!

19 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 22:32:25.94 id:PooBF2Ek0
イ从゚ ー゚ノi、「ほう、それなりに根性はあるようじゃな……」
女が日本刀の柄に手をかける。
俺は逃げなかったことを真剣に後悔し始めた。
真剣なだけに。
って、今はそれどころじゃねえぞ!

「うわあああああああああああああああ!!」
その時、絹を裂くような悲鳴が寺の中に飛び込んできた。

('A`)「くっ! 命拾いしたようだな!
   今日のところは見逃してやる!!」
これ幸いと、俺は悲鳴のした方へと駆け出した。
声からして、距離はそんなに離れていない筈だ。

('A`)「おい、大丈夫か! 何があった――」
そこまで言って俺は絶句した。
サラリーマン風の男が、腰を抜かしてしゃがんでいる。
そこまでは現実の風景だ。
だが、その前にいるモノは――

20 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 22:38:33.65 id:PooBF2Ek0
ミ 嵒彡「フシュ…… フシュルルル……」
人間と蜘蛛が、『THE FLY』に出てくる機械でごっちゃになった様なその姿。
しかも、それは俺の様なハリボテではなく、
まるで本物のような――いや、紛れも無く正真正銘それがそいつの現実での本当の姿だった。

('A`)「……怪人蜘蛛男」
思わず口にした単語は、比喩でなくそいつを端的に、性格に表した言葉だった。

「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいい!!」
サラリーマンは俺の姿を見るや、脱兎の如く逃げ出した。
硬直したまま、その場に取り残される俺。
当然、奴の標的となるのは――

ミ 嵒彡「フシュルアアアアアアアアアアアアア!!」
蜘蛛男の口から、糸の様なものが吐き出された。
驚く間も無く糸に絡めとられ、俺は全く身動きが取れなくなる。

('A`)「な!? ああ!? ちょッ……!」
思考が現状に追いつかない。
何だ、これは。
あんな化物が、現実に?
いや、そんなことより。
俺は、まさかこのまま食われてしまうのか!?

ミ 嵒彡「フシュルウウウウウウウウウウウウウウ!!」
('A`)「う、うわあああああああああああああああああああああああああ!!!」
駄目だ。
殺され――

21 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 22:53:55.37 id:PooBF2Ek0
イ从゚ ー゚ノi、「情けないぞ。 マスク仮面」
('A`)「!?」

月を背に、黒い影が宙を飛ぶのを俺の目が捉えた。
そこから放たれる銀閃が、蜘蛛男に吸い込まれていく。

ミ 嵒彡「フオ!?
    ゴオオオオオオオオオオオオオオオ……!」
断末魔の悲鳴と共に、蜘蛛男の体は綺麗に十等分された。
緑色の体液と共に、蜘蛛男の体が地面に崩れ落ちる。

23 名前: ほっちゃん(岡山県) 投稿日:2007/03/16(金) 22:55:27.92 id:PooBF2Ek0
イ从゚ ー゚ノi、「大事無いか、マスク仮面?」
女が日本刀で俺に絡まった蜘蛛の糸を斬り、ようやく体が開放された。
('A`)「あ、ああ。 う……」
頭が混乱する。
何だ、今のは。
怪人蜘蛛男。
それを、不意打ちとはいえ、事も無げに葬った。
一体、一体お前は――

('A`)「お前は一体何なんだ!?」
イ从゚ ー゚ノi、「ふむ、正義のヒーローのファンの一人、とでも言っておこうか」
('A`)「!?」
イ从゚ ー゚ノi、「では、な。 次に会う時まで少しは精進しておくことじゃ。
      のう、正義のヒーロー『マスク仮面』」
それだけ言うと、女は夜の闇の中へと消えていった。

怪人ドス女。
怪人蜘蛛男。
ハリボテヒーロー。
そう。
この時から、全ては始まっていた。
全て始まっていたのだ。
後に、俺はそれを知る事となる。


~第一話『ハリボテヒーロー、参上!』 終
 次回、『怪人ドス女の謎!』、乞う御期待!~

ドクオは正義のヒーローになれないようです
返信2007/03/19 10:16:31

2jigendaddyjigendaddy   第二話『怪人ドス女の謎』

1 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 15:28:42.28 id:FYilZTEP0
(’e’)「蜘蛛男が斃されたようだ」
研究員』A「思ったより早かったな。
 『JOW機関』も、やるものだ」
(’e’)「いや、それがどうやら『JOW』とは違うらしい」
研究員B「何!? ならば誰があの蜘蛛男を斃したというのだ!?」
(’e’)「これを見たまえ。 回収した蜘蛛男の記憶素子からサルベージしたデータだ」

('A`)「怪人蜘蛛男……」

研究員C「何だ、こいつは」
「こんな馬鹿げたヒーローごっこをしている男が、蜘蛛男を打倒したと?」
(’e’)「いや、その可能性は低い。
 問題はここからだ」

「大事無いか、マスク仮面?」

研究員A「!!!」
研究員B「!!!」
研究員C「!!!」
(’e’)「見ての通り、ヒーローもどきに注意がいっている背後から、
 何者かが蜘蛛男を解体している。
 余りの手際に、反撃も回避も出来なかったようだ」
研究員B「……それで、その何者かの正体は?」
(’e’)「分からない。 だが、蜘蛛男の背後から攻撃した、ということは、
    ヒーローもどきがその姿を見た可能性は高いと予測できる」

3 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 15:35:57.61 id:FYilZTEP0
|::━◎┥「キニスルヒツヨウナドナイ。
      ウゾウムゾウガイクラアガコウト、セカイノススムナガレニアラガウコトハデキヌ」
(’e’)「歯車王様……!」
|::━◎┥「……ガ、ハムシガワレワレノマエヲトビツヅケルノハ、イクブンメザワリダ。
      ドクター・セントジョーンズ、ショリハマカセル」
(’e’)「お任せ下さい。
    実験も兼ねて相応の怪人を向かわせましょう……」

4 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 15:41:49.91 id:FYilZTEP0

                *            *           *

正義のヒーローは、いつか、きっとやって来る。

「あいつ何が楽しくて生きてんだろーなゲラゲラ」
「もう学校来んなよ」

正義のヒーローは、いつか、きっとやって来る。

「誰が家に入って良いっつった!」
「ろくでなしの子供はやっぱりろくでなしね。
 早く孤児院の人が迎えに来ないかしら」

正義のヒーローは、いつか、きっとやって来る。

「金にもならねえ薄汚いガキのお前を食わす余裕はうちの施設にゃねえんだよ!」
「全く、ただでさえ部屋がいっぱいだってのに。
 あの子、早く死ねばいいのに」

正義のヒーローは、いつか、きっと――

19 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 15:54:34.02 id:FYilZTEP0

             *            *            *

('A`)「うわああああああああああああああ!!」
自分の叫び声で目を覚ますのは、毎度のことだった。
忌々しい、昔の夢。
きっと、自分は一生この夢に苦しめ続けられるのだろう。

('A`)「……昨日のアレも、夢だったのかねえ」
そう言いかけて、かぶりを振る。
違う。
あれは、断じて夢などではない。
あの夜の光景が、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。

('A`)「……バイト行くか」
バイト先に行く足取りはいつもより軽かった。
バイトに行けば、否応無く現実に引き戻される気がしたからだ。

だが同時に、俺は興奮していた。
あの夜、あの非日常。
現実の惨めな自分を忘れることが出来る、あの超常の空間。
あの場所にまた行くことが出来るなら、命すら投げ打つことが出来る自分が、確かに心のなかにあった。

またあんな目にあったら今度こそ死ぬかもしれない。
だが、今のこの俺の現状は、果たして生きていると言えるのだろうか?
あそこならば、本当の自分の人生を送ることが出来る――
そう、思っていたのかもしれない。

35 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 16:11:40.27 id:FYilZTEP0
今日は、バイト先の先輩の嫌味や嫌がらせも、そんなに気にならなかった。
というより、ほとんど記憶にすら残らなかった。
頭の中は昨日の記憶を反芻するばかりで、何も身に入らなかったのだ。

('A`)「…………」
バイトから帰って、俺はもう一度頭の中を整理してみることにした。

まず、昨日渡辺のおばあちゃんの家からの帰り道、ポリスに追われて廃寺に逃げ込んだ。
そこで、怪人ドス女に会った。
そしたら悲鳴が聞こえて、次に怪人蜘蛛男に会った。
怪人蜘蛛男に殺されそうになったところを、怪人ドス女に助けられましたまる。

以上の記憶の掘り下げから導き出される結論は、
俺には、文章構成能力が無いということだ。

って、そうではなく。
怪人蜘蛛男が死んだ今、謎を解く鍵は怪人ドス女が握っているということだ。

……しかし、どうにもあの女に会うことは躊躇われる。
なんといったって、ドス。
前回はどうやら助けてもらったみたいだが、今回もそうとは限らない。

次に俺があのドスの餌食にならない保障など、
どこにも無いのだ。

38 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 16:22:35.05 id:FYilZTEP0
('A`)「…………」
結局、ここに来てしまった。
昨日と同じ、廃寺。
そしてマスク仮面変身スーツ。

……別に着替えなくても良かったのだが、そこはまあ気分的に。

('A`)「こんちわー……」
声をかけるが、寺の中から返事は無し。

冷静に考えれば、怪人ドス女が今日もここにいるとは、限らないことに今更気づいた。
どうやら俺には文章構成能力以外にも、色々足りない物があるらしい。
主に頭の中が。

('A`)「……帰ろう」
諦めて、俺が背を向けた時、

イ从゚ ー゚ノi、「来たか、マスク仮面」
さっきまで誰も居なかった筈の場所に、突然そいつは現れた。

40 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 16:38:01.70 id:FYilZTEP0
('A`)「現れたな! 怪人ドス女ば!!」
格好良くポーズを決めた台詞も、噛んだことで完全に台無しだった。

イ从゚ ー゚ノi、「誰が怪人ドス女じゃ。 儂は銀と言うに」
しかし腰に下げた日本刀は、怪人ドス女という呼称をこれ以上無い位に主張していた。
それか怪人銃砲刀剣類所持等取締法違反女だ。

イ从゚ ー゚ノi、「で、何用じゃ?
       あれだけ怖い思いをしたにも関わらず、今日もまたここに来た、ということは、
       それなりの理由があってのことじゃろう?」
怪人ドス女は悪戯っぽい笑みをこちらに向けて浮かべる。
イ从゚ ー゚ノi、「ま、大方昨日の事を聞きにきた、ってところじゃろうがな」
('A`)「くっ……」
どうやら、こちらの考えは全てお見通しのようだった。
しかし、それならそれで、逆に話がし易いというものだ。

('A`)「お前は何なんだ!? あの怪人は何者だ!? 裏では何が動いている!?
   答えろ!!」
大声で、俺は怪人ドス女に質問をぶつけた。

イ从゚ ー゚ノi、「知らん」
しかし、返ってきたのはそっけないその三文字だけだった。

41 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 16:48:51.88 id:FYilZTEP0
('A`)「知らん……って」
俺は絶句した。
思わせぶりな素振りしておいて、結論はそれか。

イ从゚ ー゚ノi、「何じゃ、その不服そうな顔は?
       お主が一人で儂が何でも知っていると勘違いしただけじゃろうが。
       お主の勝手な思い込みに、何故儂が付き合ってやる義理がある?」
('A`)「…………」
言い方はあれだが、こいつの言うことは一々尤もだった。

イ从゚ ー゚ノi、「ま、見当をつけるとか、推理するとか、予想するといったことは出来んでもないがな」
('A`)「? どういうことなんだ?」
イ从゚ ー゚ノi、「……おそらくあれは、儂のような『種』の似非」
('A`)「???」
何言ってんだこいつは。
質問に答えているようで、それ以上の謎を増やすような言い草。
お前はRPGのサブキャラか。

42 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 16:54:20.48 id:FYilZTEP0
('A`)「ってか、お前、何でそんな年寄り臭いっつーか、次代がかった喋り方――」
イ从゚ ー゚ノi、「待て。  次は儂からの質問の番じゃ」
俺の質問を、怪人ドス女が遮る。

('A`)「質問……って?」
イ从゚ ー゚ノi、「お主と同じ質問じゃよ。 聞こう、お主は何じゃ?」
('A`)「…………?」
イ从゚ ー゚ノi、「どうした。 自分が何者かも、分からぬか?」
真っ直ぐに見つめられ、俺は身動き出来なくなる。

('A`)「お、俺は……」
俺は、何者だ。
負け組み。
人間のクズ。
ハリボテヒーロー。
('A`)「俺は――――」
俺は、誰だ。

('A`)「……俺は、『マスク仮面』だ」
口に出た名前は、昨日俺が怪人ドス女に名乗った時と同じものだった。

43 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 17:08:43.17 id:FYilZTEP0
イ从゚ ー゚ノi、「ほう、では更に問おう。
       マスク仮面、お主は何者じゃ?
       どんな信念が、どんな信仰が、どんな定義がお前をお前たらしめている」
('A`)「正義のヒーローだ!」
正義のヒーロー、マスク仮面。
譲れない、俺の最後の夢(逃げ場所)。

イ从゚ ー゚ノi、「ならば、正義のヒーローとは?」
('A`)「困っている人がいたら、助けを求める人がいたら、
   いつでもどこでも駆け付ける。
   それが、正義のヒーローだ!」
そう、そして、それは、ずっと、俺の前には――

イ从゚ ー゚ノi、「困っている人を助ける――
       ふむ、綺麗な理想ではある。
       じゃが――」
('A`)「?」
イ从゚ ー゚ノi、「別に、それは正義のヒーローでなくとも出来ることじゃし、やるべきことであろう?
       誰でも当たり前にすべきことを、さも誇らしげに掲げることが、正義のヒーローの本質か?」
('A`)「――――!」
反論出来なかった。
必死に否定しようと口を何度も動かしたが、何の言葉も出てこなかった。

44 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 17:22:42.28 id:FYilZTEP0
('A`)「…………」
何も言えず、俺は立ち尽くした。

イ从゚ ー゚ノi、「……すまんな。 別に、お主を責める心算だったわけではない。
       ただ、どんな理由かは知らんが、在りもしない虚像に縋り続けるのは見ていて余りに危うい――」
('A`)「……かる」
イ从゚ ー゚ノi、「?」
('A`)「お前に何が分かる!!」
叫んで、俺は怪人ドス女から逃げるように駆け出した。

「馬鹿じゃねーの? 正義のヒーローなんて、いるわけねーだろ」
「お前なんか誰も助けちゃくれねえよ」
「さっさと諦めて死ねよ」

後ろから、誰かの笑い声が追いかけて来る。

うるさい。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
うるさい!

お前らに分かってたまるものか!
正義のヒーローは、絶対にいる!
いつか、いつか、俺の前に現れる!

('A`)「絶対に、いるんだ……!」
俺の目からは、いつの間にか大粒の涙がこぼれていた。

45 名前: 外来種(チリ) 投稿日:2007/03/18(日) 17:35:54.17 id:FYilZTEP0

              *             *             *

(,,゚Д゚)「現場検証は不要ってどういうことだゴルァ!!」
ギコの怒号がVIP署刑事一課の部屋を震わせた。
刑事一課長「だから先程説明しただろう?
        これ以上現場を調べても何も得る物はない。
        そう判断したからだ」
(,,゚Д゚)「ざけんな! サラリーマンからは、化物が出たって証言も出た!
    それに、現場には明らかに何か異質な物が残留していた形跡があった!
    それを調べなくて、何の為の警察なんだ!」
ギコが机に拳を叩きつける。

刑事一課長「……ギコ君、君は最近仕事のし過ぎで疲れているんだ。
        長期の有給休暇を認めるから、しばらくゆっくり休み給え」
(,,゚Д゚)「なっ……!」
ギコは拳をわなわなと震わせ、やがて大きく舌打ちをすると、
これ以上話しても無駄というように刑事一課長に背を向けた。

(,,゚Д゚)「そうかい分かったよ! それじゃお言葉に甘えて一ヶ月程休ませてもらうとしますかねえ!」
ギコは壁に罅を入れんばかりの勢いでドアを閉めて、部屋を出て行った。


 ~第二話『怪人ドス女の謎』 終
  第三話『襲来、怪人クマ男!』乞うご期待!~

(’A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです
返信2007/03/19 10:20:01

3jigendaddyjigendaddy   第三話『襲来、怪人クマ男!』

3 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 21:35:00.86 id:OzcfqwBY0
第三話『襲来、怪人クマ男!』

怪人ドス女と会わなくなって、三日目になる。
その間、俺はバイトにも行かずひたすら家の中で引き篭もって生活していた。

「正義のヒーローとは、何じゃ?」

……思い出したくもないのに、頭の中であの女の言葉が繰り返される。
正義のヒーロー。
ピンチになれば必ず助けに来てくれる、弱い物の味方。

……まだ、それは、俺の前に現れてはくれない。

('A`)「……腹減った」
冷蔵庫の中の物も底を付き、
空腹に耐えられなくなった俺は久し振りに外へ出ることにした。

最初はあれだけ鳴っていたバイト先からの電話も、今はもう鳴らない。
この様子じゃ、とっくにクビになっているのだろう。
いつまでも働かずに済む程俺の貯金は多くない。
面倒だが、また新しいバイトを探さなければ。

('A`)「…………」
部屋を出ようとした時、壁にかけておいたマスク仮面変身スーツが目に入ってきた。
そういえば、あれからこの服にも袖を通していない。
何となく、着る気になれなかったのだ。

4 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 21:38:24.67 id:OzcfqwBY0
('A`)「……こんなもん着て、何になるってんだ」
分かっている。
こんなものは所詮まやかし。
ハリボテのヒーローにしか過ぎないことを。



('A`)「それでですね、怪人蜘蛛男が糸を吐きかけてきたのを
   さっとかわして、マスクキックでやっつけたんですよ」
从'ー'从「まあ、そうなんですか!」
結局、俺はスーツを着て渡辺おばあちゃんの家に来ていた。
スーツを着ることで、幾分か心も軽くなった気がする。

从'ー'从「でも、心配ねえ。
     近くでそんな怪人が出ていたなんて」
('A`)「大丈夫ですよ。
   もしもの時は、このマスク仮面がすぐに駆け付けて守りますから」
俺は何を言っている。
俺に、何が出来るというのだ。
あの時だって、何も出来ずに殺されかけただけだってのに。

5 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 21:47:26.79 id:OzcfqwBY0
('A`)「……そろそろ帰りますね」
从'ー'从「あら、もう夕方なのね。
     ごめんなさいね、長々と引きとめちゃって」
('A`)「いえ……」
渡辺おばあちゃんの気遣いが、今日だけは痛かった。

从'ー'从「あ、そうそう」
('A`)「はい?」
从'ー'从「今日は何か元気が無いみたいだけど、頑張って下さいね。
     詳しい事は私には分かりませんけど、きっと大丈夫よ。
     信じる道を進んでいれば、きっと最後には上手くいくわ」
('A`)「……はい」
信じる道。
だが俺は、一体今何を信じているのだろう。



渡辺のおばあちゃんの家を出て、一人人気の無い道を選んで歩く。
先日警察官に追いかけられて以来、周囲には最大の注意を払っていた。
もし捕まれば、間違い無くブタ箱にゴーホームだ。

('A`)「あ」
(,,゚Д゚)「あ」
そんな矢先、曲がり角でばったりと人に出くわしてしまった。

6 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 21:53:47.08 id:OzcfqwBY0
('A`)「……あ~、こんばんは。
   自分、マスク仮面っていいます」
(,,゚Д゚)「これはこれはご丁寧に。
    俺はギコっていう、VIP署の刑事です」
('A`)「へ~、刑事さんなんですか~。
   凄いですね~。 最近何かと大変でしょう」
(,,゚Д゚)「ええ、そうなんですよ~。
    猟奇殺人は連続して発生するし、不審者も出てくるし」
('A`)「それは忙しそうですね~。 じゃあ私はこの辺で……」
俺はそそくさと反転してその場を立ち去ろうとした。
(,,゚Д゚)「ちょっと待ってくれませんか~」
その肩を掴んでくる刑事。
('A`)「……そっすよね~」
(,,゚Д゚)「そっすよ~」

8 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:00:26.76 id:OzcfqwBY0
(,,゚Д゚)「そこの変態、さっさと止まれやゴルア!!」
('A`)「止まれと言われて止まる馬鹿がいるか!!」
街頭の点き始めた通りの下で、俺と刑事が壮絶な鬼ごっこを繰り広げていた。

(,,゚Д゚)「止まれゴルア!」
('A`)「嫌じゃボケ!」
糞。
やっぱりもう少し夜遅くなってから外に出るべきだった。
てか、本当にブタ箱入りになったら洒落にならんぞ。

(,,゚Д゚)「あじゃー!」
('A`)「うぎー!」
最早言語ですらない雄叫びを上げながら、鬼ごっこは続いていった。

9 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:08:05.61 id:OzcfqwBY0
('A`)「はあ、はあ……
   どうにか逃げ切ったか……」
逃走劇を繰り広げること数十分、ようやく刑事を振り切り、
俺は人気の無い河川敷の土手に腰を下ろした。

('A`)「あ~、だり~……」
一週間以内に警察に二回も追いかけられる人間など、そうはいるまい。
このままいけば、その内ギネスに載れるかもしれない。
全く載りたくないけど。

「クスン、クスン……」
と、土手の上の方からすすり泣くような声が聞こえてきた。
見ると、小学生低学年くらいの女の子が、泣きながらとぼとぼと歩いている。

('A`)「お嬢さん、どうしたんだい?」
正義のヒーローの使命として、俺はすぐに声をかけた。
泣いている人には救いの手を差し伸べる。
これは正義のヒーローとして当然の事だ。

「……おじちゃん、誰?」
('A`)「私はマスク仮面。 君を助けに来た」
おじちゃんという単語が聞こえた気がするが、きっと空耳だ。

……俺も、もう十代じゃないんだな……

10 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:15:55.60 id:OzcfqwBY0
「……本当に、助けてくれるの?」
('A`)「ああ、本当だ」
俺はにっこり微笑んで頷く。

('A`)「さ、何があったのか、話してみなさい」
「……おかあさんがくれたペンダント、失くしちゃったの」
女の子が節目がちのまま俺に言った。

「今日、ここで遊んでたらね、
 誕生日にってお母さんがくれたペンダント落としちゃったの。
 それで……」
女の子がまた泣き出しそうになる。
いかん。
ここは正義のヒーローとして、この涙を止めなければ。

('A`)「任せなさい! 
   このマスク仮面が、必ずや君のペンダントを見つけてあげよう!」
「本当?」
女の子がこれ以上ないくらいの笑顔を俺に見せた。
この純粋さといったらどうだ。
それに比べてポリの野郎め。
俺を見るなり犯罪者扱いしやがって。

('A`)「さあ、それじゃ一緒に探そう!」
「うん!」
こうして、鬼ごっこから一転、宝探しが始まるのだった。

13 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:27:37.88 id:OzcfqwBY0



('A`)「……無いな~」
日が落ちてからの捜索は予想以上に困難を極めた。
懐中電灯でもあればいいのだが、あいにくそんな物を買うだけの手持ちが俺には無い。
しかし、あんまり遅くなり過ぎてもこの子の両親が心配するし……

('A`)「って、うわあ!」
考え事をした瞬間、足を滑らせて土手の坂を無様に転がった。
('A`)「……っつ、いってぇ~。
   糞、手ぇすりむいちまっ……ってあれ?」
思わず地面についた手に、土や草とは違う感触があった。
('A`)「ペンダント……って、これか?」
プラスチックの宝石と、安合金のペンダント。
それでも、こんなイミテーションでも、
あの子にとっては何にも変え難い宝物だったのだろう。

('A`)「さて、と。 さっさと教えてやるか。
   きっと喜ぶぞ」
俺は周囲を見渡し、今も必死でペンダントを探しているであろう女の子を捜した。

17 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:35:25.26 id:OzcfqwBY0
「きゃああああああああ!!」
その時、あの女の子の悲鳴が聞こえてきた。
反射的にそちらの方を向く。
そこには、女の子と、もう一つの巨大な影。

( ・(エ)・)「クマー!」
どう見ても怪人クマ男です。
本当にありがとうございました。

どうしてこの都会に熊がいるんだ?って、今はそんな場合じゃない。
クマ男は、今にも女の子に襲いかかろうとしている。
助けなければ。

('A`)「待……!」
駆け出そうとした時、俺の足が動かなくなった。

駄目だ。
行けば、殺される。
蜘蛛男にすら歯が立たなかったのに、
それより更に強そうなあいつとどうやって戦えというのだ。

前は、ドス女が助けてくれたが、
今回もそんな都合のいいことがあるとは限らない。
幸い、クマ男はまだこちらには気づいていない。
今なら、逃げられる。
逃げ――

「助けて! マスク仮面!!」
('A`)「――――!」

18 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:41:23.03 id:OzcfqwBY0
('A`)「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
反射的に、俺は走っていた。
さっきまで石みたいに動かなかった足が、
今は自分の足じゃないぐらいに速く動いた。

『今』、『目の前で』、『助けを求める人がいる』。
だから、走った。
だから、走れる。

そうだ。
正義のヒーローは、助けを呼べば、必ずやってくる!!!

19 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:48:25.42 id:OzcfqwBY0
('A`)「マスクキック!!!!!!!!!」
全体重を乗せたドロップキックを、怪人クマ男に叩き込む。
テレビの様に相手が吹っ飛んで爆発する、なんてことは勿論出来なかったが、
それでもクマ男に尻餅をつかせることぐらいは出来た。

('A`)「出たな怪人クマ男!
   幼い子供を襲おうとするなど言語道断!」
起き上がろうとするクマ男に向かい、ポーズを取って見栄を切る。
('A`)「マスク仮面、ただいま参上!
   貴様の悪運もここまでだ!!」
クマ男が、こちらを睨む。
負けずに、こちらも睨み返した。

('A`)「さあ、お嬢さん。
   ここは私が引き受けた。
   君は早く逃げなさい!」
「あ、あの……」
('A`)「早く!!」
「はい!」
女の子が逃げていくのを確認して、俺はひとまず安堵の息をついた。
問題は、ここからだ。
あっさりやられては、女の子が安全な場所まで逃げることが出来ないし、俺が死ぬ。
いかに時間を稼ぎ、かつ、死なないようにするか。

相手を倒せなくてもいい。
こちらの勝利条件は、生きのびることだ。

22 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 22:57:12.43 id:OzcfqwBY0
( ・(エ)・)「クマー!」
考えがまとまらないうちに、クマ男がこちらに向かって襲いかかってきた。
フェイントもテクニックもへったくれも無い、単なる体当たり。
それでも、それは人を殺傷するのに充分すぎるものであるということは、一瞬で判断できた。

('A`)「う、うわあ!」
咄嗟に右に横っ飛びして、辛うじてだが体当たりをかわす。
避け切れずにかすった太腿の部分が、それだけで麻酔でも打たれたかのように痺れて感覚が薄くなる。
あんなものをまともに喰らったら。
恐怖の冷や汗が俺の背中をつたった。

( ・(エ)・)「クマー!」
再び、クマ男が突進してきた。
大丈夫。
決して避けられない速さじゃない。
落ち着いていれば、完全とはいかないまでも回避は可能。
後は、機会を見て逃げればいい。

('A`)「うおっ、と――」
俺がもう一度右に跳んだ瞬間――

23 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 23:04:19.31 id:OzcfqwBY0
('A`)「がはあっ!!」
とてつもない衝撃が、俺の腹部を襲った。
吐瀉物を撒き散らしながら吹っ飛び、地面に叩き付けられる。

('A`)「がはっ! がああっ!!」
余りの苦しみにたまらず地面を転がりながら、ゲロと苦悶の声を口から絞り出す。

クマ男がすれ違う瞬間、ほんの少し腕を横に開き、
その部分が俺の腹に命中したのだと、喰らった後で理解出来た。

全く腰の入っていない、手打ちですらない、ただ当てただけのパンチ。
それだけで、この威力。
マスク仮面変身スーツに鉄板を仕込んでいなければ、間違い無く内臓が破裂していただろう。

幸いにも、肋骨のある部分には当たってはいなかったため、骨は無事のようだが――
今この現実で、骨が折れていないからそれが一体何だというのか。
死刑執行の時間が、ほんの僅かに延びたに過ぎない。

26 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 23:17:38.73 id:OzcfqwBY0
('A`)「ぐうっ! がっ……!」
体に残された力を総動員して、何とか起き上がる。
ふらふらとおぼつかない足でバランスを保ち、怪人クマ男に向き直る。

( ・(エ)・)「クマー……」
クマ男は勝利を確信したかのように、ゆっくりとこちらに歩みを進めてきた。
俺に次の一撃をかわすだけの力は、もう無い。

('A`)「くっ……!」
死という文字が脳裏に浮かぶ。
そういえば、あの女の子はもう逃げただろうか。
俺はもう助からないかもしれないけど、それだけが心残り――

「マスク仮面!」
聞こえる筈の無い声。
あの子、何で戻ってきたんだ!?
あのまま逃げてれば、助かったものを……!

27 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 23:18:22.60 id:OzcfqwBY0
( ・(エ)・)「クマー!」
俺はいつでも殺せると判断したのか、クマ男が向きを変えて女の子に襲い掛かる。
('A`)「させるかあ!!」
もう動かない筈だったのに、俺の体は全力以上の力で女の子に向かって駆け出した。

('A`)「がああああ!!」
一瞬だけ、俺の方が女の子の所に先に到着した。
だが、一瞬だけ。
それだけの時間では、最早何の手も打つことは出来なかった。

( ・(エ)・)「クマー!」
クマ男の腕が俺と女の子に向かって振り下ろされる。
('A`)「くっ……!」
俺は女の子を庇うように抱き締めた。

畜生。
何が正義のヒーローだ。
誰も、何も守れやしない。
こんなものが、俺の――!

29 名前: 彼女居ない暦(岡山県) 投稿日:2007/03/19(月) 23:30:07.01 id:OzcfqwBY0
('A`)「…………?」
しかし、いつまで経ってもクマ男の腕は振り下ろされてこなかった。
恐る恐る眼を開ける。
そこに映ったのは――

イ从゚ ー゚ノi、「間一髪、といったところじゃな」
('A`)「――――!?」
銀の髪。
日本刀。
怪人ドス女。
そいつが、そこにいた。
俺より細い筈のその腕で――怪人クマ男の一撃を受け止めている。

イ从゚ ー゚ノi、「よくぞここまで吼え、戦った。
      正義のヒーローの矜持、しかと見せて貰った」
ドス女が腕を受け止めた状態からクマ男を蹴り飛ばして、強引に距離を離す。

イ从゚ ー゚ノi、「そこな童はお主が守れ。
      あとは、こちらで始末をつける」
そう言うと、ドス女はそのトレードマークである日本刀をゆっくり引き抜く。
イ从゚ ー゚ノi、「怪外は怪外同士、死合うとしようぞ。
      のう? クマ男よ」
日本刀の切っ先が、怪人クマ男に真っ直ぐに向けられた。


~第三話『襲来、怪人クマ男!』 終
 次回『変身、怪人狼女!』乞うご期待!~

(’A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです
返信2007/03/20 10:40:33