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1jigendaddyjigendaddy   ( ^ω^)はイキガミの配達員になるようです

1 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:37:27 id:KPm2r6WsO
【国家繁栄維持法】
この法律は国民に「生命の価値」を再認識させることで国を豊かにすることを目的とし、

その手段として若者たち(18歳~24歳)を対象にしたある通知を出している。

その通知とは「逝紙(いきがみ)」と呼ばれる死亡予告証である。

およそ1000分の1の確率で選ばれた者は―――――――

―――――――紙を貰ってから24時間後には死んでしまう。





元ネタ:漫画「イキガミ」より
原作へ敬意と愛を込めて。

2 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:42:58 id:KPm2r6WsO
―――――――

( ´∀`)「……さて、今日君の担当する死亡予告書なんだけどね、内藤くん」

( ^ω^)

( ´∀`)「……内藤くん?」

( ´∀`)

( ^ω^)「……ZZZ」

( ´∀`)


ばしん。

( #)ω^)「はい、なんすか課長」

( ´∀`)「わぁ、謝りもしねぇよこの糞ガキ」

4 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:48:52 id:KPm2r6WsO
( ´∀`)「ちゃんとしてよ。まだ新人とはいえ……ってか新人だからこそ、居眠りとか気をつけないと」

( ´∀`)「仮にも、人の死を見届ける仕事してんだから」

( ^ω^)

( ^ω^)「いやぁ、昨日は先方さんと……」

( ´∀`)「知ってるよ。だからこそだよ」

( ´∀`)「はい、これが今日の『予告書』通知者リストね」

( ^ω^)「……はい」

( ´∀`)「元気出してよ。でないと、こっちもやってらんないんだから」

( ^ω^)「はい」

( ´∀`)「……ったく」

( ^ω^)

( ^ω^)(……何人目だろうか)

5 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:54:14 id:KPm2r6WsO

極論を言えば、人はみんな誰だって「神」なんだと思う。
そんな中、自ら「死神」を選ぶ物好きがいるってんだから……。



第一話:『一般的異端人(アブノーマルフォーマル)』


本日の対象:素直キュート

6 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:00:37 id:KPm2r6WsO

―――――――

o川;* ー )o「あっ!ん、はぁっ!!ああっ!!いいのぉ!!」

o川;* ー )o「もっと!!もっ、あっ!もっときてぇっ!ぁん!」

o川;* д )o「いく、いっちゃ、いっちゃ、あああぁっ!!」
―――――――

ぴっ。


( ^ω^)

( ^ω^)


『元アイドル素直キュート、AV初出演!!初めてで喘ぎまくりのイキまくり!!』


( ^ω^)

( ^ω^)「ふぅん」


どうやら、今日の相手はこの人らしい。

7 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:07:30 id:KPm2r6WsO
自己紹介をするならば、僕は内藤ホライゾンという。

( ^ω^)「まぁそれなりにいろんな人に渡してきたけど」

( ^ω^)「……AV女優は初めてだな」



職業、逝紙配達員。

まだ新米の域を出ておらず、働き初めてようやく2ヶ月が立ったところだ。

仕事内容はと言えば簡単。
逝紙を対象者に届け説明を施すだけ。


……まぁ当然これでは、説明不足になるだろう

まずは、逝紙から始めようか。

8 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:16:06 id:KPm2r6WsO

『国家繁栄維持法』
通称、「国繁」。
数年前に内閣が変わると共に施行された法律だ。

( ^ω^)「さて」

この法律は平和な社会に暮らす国民に対し、「死」への恐怖感を植え付けることによって「生命の価値」を再認識させる事を目的としている。

(  ω )「そろそろ行くか」

国民は、この法律によって誰にカプセルが注入されたかを知ることができない。


つまり国民はその時期(死亡予定の18~24歳の)が来るまで「自分は死ぬのでは」という危機感を常に持ちながら成長することになる。

( ^ω^)「……あら、コートにシミがついてんな……」

その「危機感」こそが「生命の価値」に対する国民の意識を高め、社会の生産性を向上させるらしい。

( ^ω^)「…………ま、気にしたら負け、かな」


現に、ここ数年のGDP(国内総生産量)等に上げられる日本の指数の増化はめまぐるしくものを見せ、

日本は世界経済のフロントランナーにも上げられるような大国とまで昇華した。

( ^ω^)「素直キュート。住所は、と……」

9 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:18:08 id:KPm2r6WsO



だからって、僕は絶対に認めない。

こんな法を、認められる訳がない。

( ^ω^)「……」


愛する人を理不尽に殺した、この法を……


何よりも呪いながら、今日も僕はイキガミを配り続ける。



この話は……また後日にしよう。

10 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:24:09 id:KPm2r6WsO
―――――――

o川*゚ー゚)o「お疲れさまです、監督」

監督「いや、ありがとうねキュートちゃん!!今日もいいもん見せてもらったよwwちゃんと良い作品に仕上げるからね!」

o川*゚ー゚)o「はい、お疲れさまです」

監督「ん?キュートちゃん帰る?急いでるの?」

o川*゚ー゚)o「……?いえ、急いではいませんけど」

監督「なんだったら、ご飯おごろうか?実は僕も、今からちょっと時間余るんだよね」

o川*゚ー゚)o「いいんですか?ありがとうございます」

監督「いやいや、いいんだよ。はははwじゃあ、車取ってくるね」

o川*゚ー゚)o「はい」



o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o(くせぇ。)


くせぇ。くせぇったらありゃしねえ。


ゲロみたいな臭いがする。

醜悪な下心、それを隠してるフリをしてるだけ。
実際は隠そうともせず……むしろ私に見せ付けてるみたいに。

くせぇ。

11 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:27:15 id:KPm2r6WsO








o川* ー )o「待って……あっ、監督……車の中じゃあ……」

監督「大丈夫だよ、こんな寂れた地下駐車場……誰も来やしないだろ」


ほら。




やるなら早くやれ。
喘いではやるから、なるべく早く終わらせて。


雑念と共に、舌を噛みきってしまいそうだから。

12 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:32:48 id:KPm2r6WsO


監督「いやぁ、美味しかったね!」

o川*゚ー゚)o「本当ですね。本当にありがとうございます。ごちそうさまでした」


平日にしては車道は飽和状態。
わずわらしい。なぜ自分以外の人が車道を通ってるんだ。

これがぷよぷよみたいに消えてくれりゃあ、どれだけいいか。

o川*゚ー゚)o「……」

監督「CDでも聞くかい?キュートちゃんってどんな音楽が好き?」

o川*゚ー゚)o

どんな音楽。

o川*゚ー゚)o「……J-POPならなんでも」

監督「ははw今の女の子だと、○○とか人気だよね」

監督「もちろん、AABもね」

o川*゚ー゚)o

13 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:37:04 id:KPm2r6WsO
AAB48。
今の日本を引っ張る、人気アイドルグループだ。
日本で彼女達の名を知らない人間はいないし、彼女達の名を聞かない日はない。

そして

o川*゚ー゚)o「……その話は、やめて下さい」


私が、やめさせられたグループだ。


監督「wwwああ、ごめんごめん」

監督は気をきかせてくれたらしい。
とっさにCDをしまい、ラジオのボタンを押した。

しかし流れてきた音楽は、やっぱりAABのものだった。

o川*゚ー゚)o(ああ)


煩わしい。

14 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:44:09 id:KPm2r6WsO

思えば、何年前だろう。

同姓から容姿をそれなりに誉められるので、冗談半分でAABのオーディションを受けたのは今でもはっきり覚えていり。

それが最終審査まで行き、ついぞ合格と聞いた時には、嬉しすぎて母と泣きあった。


そして、そこからは努力の毎日だった。

毎日、自分以上の美少女達とダンスや歌の練習。
容姿を更に磨く為にケアは一瞬たりとも欠かさなかった。

苦汁と辛酸を舐め続けるような日々に耐え、一流のアイドルの一角として世間に認知されるように努力した。




そして努力は身を結ばなかった。

事実上の解雇を言い渡され、ほとんど何も残らなかった私は、


唯一残されたネームバリュー、「元アイドル」を使い、AV女優としてデビューした。

16 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:43:11 id:KPm2r6WsO

反応の遅い電球が、数秒差で光を生む。
年ごろの女にしてはみすぼらしい空間が、露になる。


o川*゚ー゚)o「……ただいま」


今では自宅たるこの六畳間だけが、私の安らげる場所。
実家に帰れるはずもないのだから。

o川*゚ー゚)o「……」

何をするわけでもない。
ただ静寂が嫌で、テレビを無造作につけた。

ぴっ。

「どうも、AAB48でーs」

ぴっ

o川*゚ー゚)o


ああ、煩わしい。
今の日本じゃあ、どこにいたって彼女達の名から逃げられないのだ。
そのうちストレスで死んでしまいそうだ。

17 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:46:14 id:KPm2r6WsO

o川*゚ー゚)o

なぜこんな事になったんだろう。
本当は私も、彼女達と同じ目線の元にいたのかも知れないのに。

いつの間にか私は、こんな世界に身を投じている。
華々しかった世界から、どんぞこに。

それが何よりも煩わしい。

o川*゚ー゚)o

o川* ー )o「……煩わしい」


なんだろうなぁ、この世界は。

o川* ー )o

ぴんぽーん。

o川*゚ー゚)o「……?」

18 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:50:21 id:KPm2r6WsO
o川*゚ー゚)o「……誰だろ、こんな時間に」


がちゃり。


o川*゚ー゚)o

( ^ω^)「あ、どうも」


玄関口に立っていたのは、少し太った温和そうな男だった。


( ^ω^)「素直キュートさんのお宅……でよろしいでしょうか」

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「……はい」








( ^ω^)「あなたに、死亡予告書をお渡ししに来ました」

o川*゚ー゚)o



えっ。

19 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:56:22 id:KPm2r6WsO
( ^ω^)「つきましては、こちらの書類が……云々……」

o川*゚ー゚)o

死亡予告書……って。

イキガミ?
   ありえない。
私が?      死ぬ?

国繁で、死ぬ?

嘘。

( ^ω^)「……して、こちらの死亡予告書とそn」

o川;*゚ー゚)o「違います」

( ^ω^)「え?」

o川;*゚ー゚)o「人違いです」

o川;*゚ー゚)o「帰って下さい」

ばたん。

(;^ω^)「え、ちょ?素直さん?」

o川;* ー )o「うるさい!!帰ってよ!あなたに用なんかない!!」

(;^ω^)「いや、そう言われましても、あなたは」

o川;* ー )o「知らない!!帰ってよ!!」


o川;* ー )o


なんで。     なんで私が。

20 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 15:02:21 id:KPm2r6WsO
(;^ω^)「……あーもう」

(;^ω^)「素直さん!……いいですか!」

o川;* ー )o

(;^ω^)「どうあなたが現実逃避しても……あなたの人生は翌日19時ジャスト!終わってしまうんだ!」

o川;* ー )o「っ!!」

(;^ω^)「どうか逃げないで下さい!……いや、逃げるだけならいい!むしろ、全力で逃げたらいい!でも……」

(;^ω^)「目をそらしただけじゃ、逃げた事にはならないんだお!」

o川;* ー )o

o川* ー )o「……」



がちゃり。

o川*;ー;)o「……本当に、私なんだね」

( ^ω^)「声をあらげてすいません……心中、お察しします」

21 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 15:07:51 id:KPm2r6WsO
( ^ω^)「では、お渡しします。こちらがあなたの死亡予告書……逝紙です」

o川*;ー;)o「……」

( ^ω^)「この逝紙ですが、対象者の最後の一日をなるべく保証出来るよう、公共施設及び公共交通機関、また国繁加盟店を自由に使用できるチケットにもなります」

o川*;ー;)o「……はい」

( ^ω^)「最後の一日を満足出来るように、心からお祈り申し上げます」

o川* ー )o

24 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 19:51:41 id:KPm2r6WsO

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「……」

o川*゚ー゚)o「最後の一日、か」

渡されたイキガミを見る。
赤枠には大きくこうかかれている。

「PM 7:00」。

o川*゚ー゚)o「……死ぬんだなぁ……」

どれだけ見ても実感がわかない。
まずはどうしようか。
両親に言うか?

……いやぁ。

o川* ー )o(……顔を合わせるのもちょっと忍びないよなぁー……)

アイドルからAV女優に落ちぶれた娘を、あの人達は受け入れてくれるだろうか。
いや、受け入れてはくれるんだろう。

でもそれじゃあ、むしろ自分の気が持たない。

優しくしてくれる親を見て、さらなる自己嫌悪に陥るに決まっている。

o川* ー )o(とりあえず、どっかいこう)

先ほど内藤という男は言っていたが、この逝紙はパスカードにも似た効果があるらしい。
ならば使わない手はないだろう。


時刻は8時20分。
残された時間は、22時間と40分。

25 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 20:02:34 id:KPm2r6WsO
o川*゚ー゚)o「……お洒落な居酒屋とか……高級レストランとか」

自分の発想の拙さに泣けてくるが、浮かんだのがこれくらいしか無かった。
時間が時間なんだし、仕方ないのかも知れないけど。

とりあえずは、お腹が空いた。

o川*゚ー゚)o(ラウンド駅前に、めちゃくちゃ高いお店あったけど、あれは加盟店なのかな。だったら言ってみたいけど)

携帯電話を開き、検索をかけてみる。

うん、確かに。
「国繁加盟店」との表示がある。
ああいう高級そうなとこは体面を気にするもんだし、当たり前と言えば当たり前なのか。

o川*゚ー゚)o「れっつらごー」

死ぬとわかればなんだか可笑しくて、一人で笑ってしまった。
いつぶりだろうな、自然と笑みが出たの。

26 名前:名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 20:27:08 id:KPm2r6WsO

―――――――

トレンディドラマに出てくるような、小綺麗なお店。
自分の服と不釣り合いで、なかなか笑えてきた。
少しイケメンの彼氏に連れてこられたりしたら最高だろうなぁ、なんて考えた。

ウェイターに逝紙を見せれば、ただ小さく頷き「こちらへどうぞ」と導かれる。

o川*゚ー゚)o(なんだかVIPみたい)

一般的に、国繁死は「お国の為に自ら犠牲になった尊い人」として扱われるのだ。
つまりは、私は死によって得た事のない待遇を受けている。

o川*゚ー゚)o「この、和牛の~~~と、~~~~のAコース、~~~も付けてお願いします」

0をつけ間違えてるんじゃないかと思うくらいのそれを、惜しみなく頼んでみた。

その間もウェイターさんの表情が一切変わらないのが、私にはありがたかった。

29 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 05:47:33 id:w2KLwfEIO
o川*゚ー゚)o「うわぁ……」

出された料理は、一言で言うなれば絶品のものだった。
牛肉は、ここまで柔らかくなるものなのか。
その味わい深さは、思わず恥も捨ててかぶりつきたくなるような充足感を与えてくる。

o川*゚ー゚)o

ああ、ここまで満足したのはいつぶりか。
高い料理一つで至上の悦びを受けているというのは情けない話ではあったが、事実だ。
幸せが込み上げてくるとは、こんな時に使う表現なんだろう。

o川*゚ー゚)o「すごく美味しいですね」

ウェイター「ありがとうございます。我々の尽力の甲斐あってか、巷でもかなりの評価を頂いているようで」

o川*゚ー゚)o「はい!テレビでもこの店の話はよく聞きます」

ウェイター「ありがとうございます。最近では、あのAABの方々もあしげく此処に来て頂いているんですよ」

o川*゚ー゚)o

あれ。

o川*゚ー゚)o「……そう、ですか」

なんだろう。

o川*゚ー゚)o


目の前の幸せの塊が、ゴミに見えるよ。

30 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 05:56:09 id:w2KLwfEIO
o川*゚ー゚)o「帰ります。ありがとうございました」

ウェイター「あ、え……まだ、頼まれたデザートの方をご用意させて頂いてませんが……」

o川*゚ー゚)o「すいませんが、キャンセルで。ホントにごちそうさまでした」

ウェイター「……はい、ありがとうございました。ま……」


「またお越し下さいませ」とでも言おうとしたのだろうか。
ウェイターは不自然に言葉を止めて、私を見送ってくれた。

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「……あ」

タクシーが通りかかる。
ひとまず止めてみようと手を挙げれば、すんなり速度を落としてくれた。

o川*゚ー゚)o「……」

運転手「どちらまで?」

o川*゚ー゚)o「……」

どうしたものかと考えたが、先に逝紙を見せる事にした。
そうすれば、だいたいわかってくれるだろうと。
運転手は一瞬だけ驚いた表情を見せたけど、すぐにそれをひた隠した。

o川*゚ー゚)o「……都内の繁華街にでも……適当に」

なんでこんな事を言ったのかはわからない。
たぶん、逃げたかったのだ。

あの忌々しい、栄光の塊の名前から。
ウェイターの口から一節として出た、ただそれだけの名前から。

31 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:02:57 id:w2KLwfEIO
o川*゚ー゚)o

運転手「……」

それに比べたら、このタクシー運転手は楽だった。

最後だと知った私に介するわけでなく、ただ押し黙ってくれている。

o川* ー )o

沈黙がただ、今だけはありがたい。

空間を満たすのはうるさい車の音と、ラジオの無機質な声だけ。

世間話くらい飛ばした方が良かったか、そう思ったけどすぐに止めた。

o川*゚ー゚)o




「どうもー!!AAB48でーす!」

そして、ラジオからも聞こえてくる、
忌々しい呪詛にも似たそれ。

o川* ー )o「……っ」

o川* ー )o「……ここでいいです」

運転手「ん?まだ繁華街までは遠いですが」

o川#* ー )o「いいから!!」

32 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:08:09 id:w2KLwfEIO
o川#* ー )o「……はぁ……はぁ……」

一目散に走った。
とにかく走った。

逃げる場所が欲しかった。


でも、街中の大きな看板広告も彼女達を映している。

わかってる。無駄だって事くらい。

でも。

o川#* ー )o「でも……」


行き着く場所は探しても、賑わう居酒屋には入りたくない。

喧騒には、ヘドが出る。

o川* ー )o「……はは」

完全に一人になれる場所を探した。
でも見つかったのは、カラオケくらいのもんだった。

o川* ー )o

o川* ー )o「もう、ここでいいかな」

33 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:17:38 id:w2KLwfEIO

o川*゚ー゚)o

カラオケの個室に一人、寝転ぶ。

画面は既に消してある。
告知PVなんかで彼女達が出てくるのは必然的だったから。

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「……なんか、歌うかな」

電子目次を見れば、ランキングでも予告でも彼女達。

煩わしい。

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「……あ」

そんな中、皮肉にも唐突に見つけた歌があった。
AABの初期の頃に出たものだ。
私がAABに在籍中に、最も好きだった歌。

公演では、だいたい真ん中辺りでよく歌われたものだ。

……公演には2度しか出してもらってないけど。

35 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:28:59 id:w2KLwfEIO
o川*゚ー゚)o

なんの気無しに、その歌を入れてみた。

o川*゚ー゚)o

歌いたくなったとか、聞きたくなったとか、それはどうか知らないけど
とにかく入れてみたくなった。

o川*゚ー゚)o

流れてくる懐かしいメロディ。
o川*゚ヮ゚)o「~~~~♪」

忘れるはずもない、大好きだった歌詞。

o川*゚ヮ゚)o「……~~~~♪」

少しだけ、嬉しかった。
この歌を歌えるだけで、幸せなあの頃に戻れた気がしたから。
あの頃はまだ右も左もなかった。
今じゃAABのセンターであるクールちゃんも、昔は私の隣でダンスの練習中にこけたりしてたんだから。
しかし、彼女は可愛かった。
人気が出るのも必然な気がする。

o川*゚ヮ゚)o「~ら~ららら~~♪」

彼女もこの歌が好きだったっけ。

でも、今は歌う事があるのかなぁ。
様々なヒット曲が出た今、長い公演の中でもこの歌に出番があるかどうかはわからない。

o川*゚ヮ゚)o「ららら~~~♪~~……」

そんな事を考えていたら、バカらしくなってきた。

こんな事をしていたって、昔に戻れるわけじゃないんだから。

それはいつまでも、過去の話。

今の私が口から吐くは、こんな栄光への歌なんかじゃない。

性欲にまみれた豚どもを悦ばせる、いやらしい喘ぎ声なのだ。

o川* ヮ )o「らら……♪……ああああ」

o川* ヮ )o「……あああああああああああああ♪」

そう思えば、何か台無しにしてやりたくて、めちゃくちゃな声を出した。

36 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:33:58 id:w2KLwfEIO
o川* ヮ )o「ああああああ!!ああああ!あああああ!」

歌のメロディとリズムを破壊してやるように。
綺麗な思い出を破壊してやるように。

o川* ヮ )o「あはは!!……死ね~!♪しーね~~♪死ね!!!!」

歌のメロディとリズムに乗って吐き続ける。
綺麗な思い出と重ね合わせながら。

o川* ヮ )o「死ねー♪死~ね!みんな死ねー♪ああはははははははは♪」

「死ね」とだけ吐き続ける。
メロディとリズムを無視して、
綺麗な思い出を憎んで。


o川*;ヮ;)o「死ね!!!死ね!!!死ねー!!!ははは!死ねえええええええええええ!!!」


私なんか、早く死ね。




―――――――

37 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:37:34 id:w2KLwfEIO


o川*;ヮ;)o


私は最後の一日まで、嫉妬と羨望に苛まれ続けたのだ。

そして深夜2時の中頃、そのまま眠りに落ちた。


―――――――

38 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:41:49 id:w2KLwfEIO
o川*゚ー゚)o


起きたら、既に14時を回っていた。


残された時間は、5時間と少し。


o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「5時間、か」

もう誰にも連絡をしない事にした。

国繁死の場合、家族にはちゃんと連絡が行くし
まぁそちらには問題はないだろう。


行きたい場所は決まってる。


o川*゚ー゚)o

初めて公演を行なった舞台。

死ぬなら、そこがいい。

o川*゚ー゚)o

ここからなら、3時間ほどで行けるはず。

夢に潰された人生だ。夢を見たまま死にたいのだ。

39 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:46:13 id:w2KLwfEIO
もし私が場違いにアイドルなんて目指してなければ、

国繁死とわかったら何をしてたんだろう?

恋人の一人くらい作って、その人の腕の中で最後を過ごしたのか。
母や父に感謝して、円満に人生を迎えたのか。
はたまた今以上に失敗した人生を選んで、死が決まって喜んでいたのか。



o川*゚ー゚)o「……ないな」

今以上に失敗した人生なんか、ないか。

電車の窓からは、風景から消えていた緑が姿を現し始める。

o川*゚ー゚)o「懐かしいな」

40 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:54:07 id:w2KLwfEIO

―――――――

o川*゚ー゚)o

誰もいない、静かな世界。
いつ来ても小さなホールだ。



でもこの上で確かに私達は、夢を綴っていた。

o川* ー )o「……はは」

ちゃんちゃら可笑しい話だ。
ここへ来て今更、「私達」なんて言葉を使っている自分が。


o川* ー )o「……よ、っと」

舞台へ上がってみる。
懐かしさだけが込み上げてくる。
昨日みたいな嫌悪感は、まったくない。

o川*゚ー゚)o「……」

少しだけ、あの頃にここで繰り返したダンスを踊ってみる。

タップ、ステップ。
何かに連れてかれるような、不思議な感覚。

現在時刻、5時半。

o川*゚ー゚)o「……あと、1時間半か」

/ ,' 3「おや」

o川;*゚ー゚)o「えっ」

41 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:58:25 id:w2KLwfEIO
/ ,' 3「人がいるとは……珍しい」

o川;*゚ー゚)o「えっ……あ」

/ ,' 3「いやいや、いいよ。そのまま舞台にいるといい。何かここに思い入れでもあるんじゃろう?」

o川;*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「はい」

/ ,' 3「ワシもこの舞台が好きでな。よくここに来るだけの客じゃよ」

o川*゚ー゚)o「……そうなんですか」

o川*゚ー゚)o「客、ね」

/ ,' 3「あぁ」

/ ,' 3「ここはな、ワシが好きなアイドルグループが全盛期の時に公演を行なっていた場所なんじゃよ」

o川*゚ー゚)o

……それって。

o川*゚ー゚)o「……AAB?ですか?」

/ ,' 3「!ほぉ、知ってるかね」

42 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:04:06 id:w2KLwfEIO
o川*゚ー゚)o「でも、『全盛期』って……彼女達の全盛期って言うなら、今でしょう」

CDも出す度飛ぶように売れるし、公演から握手会等のチケットは一瞬のうちに無くなってしまう。

私がいた「あの頃」には考えられない世界だ。

/ ,' 3「かもな」

/ ,' 3「しかしな、ワシの全盛期な紛れもなくここなんじゃよ」

/ ,' 3「ワシの好きな彼女達はここにいた。……まぁ今が嫌いというわけではないが」

o川*゚ー゚)o「……」

/ ,' 3「良かったぞ、あの頃は。あの頃があったからこそ、今の彼女らがあるんじゃろう。……例え」

/ ,' 3「その中に、ここで夢潰えた子がいたとしても」

o川*゚ー゚)o「……っ」

43 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:11:53 id:w2KLwfEIO
o川*゚ー゚)o「あなた、もしかして……私を」

/ ,' 3「ん、君の事なんか知らんけど」

o川;*゚ー゚)o「……知らんのかーい」

/ ,' 3「ほっほっほ」

/ ,' 3「……まぁ、知らん。知らんのが当たり前じゃった」

/ ,' 3「今のようにメディア主体じゃ、名前だけが先行するからのぅ」

o川*゚ー゚)o「……それでも、今は売れてる」

/ ,' 3「売れない時代があったからこそじゃろ」

/ ,' 3「名前すら覚えてないが、ワシはここで見た彼女達を忘れない」

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o「……じゃあ」

44 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:12:51 id:w2KLwfEIO


o川*゚ー゚)o「今度は私の名前を覚えてもらう為に、今からここで見ててもらっていいですか?」




/ ,' 3

/ ,' 3「……ああ」



/ ,' 3「贅沢じゃな。AABの生ライブ、独占とは」

o川*^ー^)o「一生ものの宝ですね、おじさん!」

/ ,' 3「ほっほっほ」


o川*゚ー゚)o「じゃあ、歌います!曲名は―――――――」





―――――――

45 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:16:55 id:w2KLwfEIO


o川*^ヮ^)o




素直キュートは舞台上、幸せそうに息を引き取った。

彼女が好きだったあの歌は、誰かの心に今も響いているのだろうか。

―――――――


( ^ω^)

( ^ω^)「なんてね」

( ^ω^)「僕にゃ君のエロい体の方が頭には残ってるけど」

( ´∀`)

( ^ω^)「……」

( ´∀`)「君なあ」

( ^ω^)「言いたい事はわかりますよ」

( ´∀`)「わかるなら素直に殴られて欲しいな」

( ^ω^)「いやです」

46 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:21:52 id:w2KLwfEIO
( #)ω^)「訴えますよ課長」

( ´∀`)「正当防衛だよ。バカを感染されそうになったから身を守ったまで」

( ^ω^)「こりゃひでえや」

( ´∀`)「……あのな。死に感慨深くなるのはわかるけど、それでも対象者に深入りだきゃあするなよ」

( ´∀`)「……『人の死は』」

( ^ω^)「『ただの統計として見、そして計れ。紙面は悲劇を語らない』……でしょ」

( ´∀`)「わかってるならいい」



( ´∀`)「たった明日死ぬってわかってるだけ、ただそれだけで赤の他人に変な情を抱くのはお門違いなんだよ」

( ^ω^)


( ^ω^)「わかってますよ」


嗚呼。

47 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:24:55 id:w2KLwfEIO

「もし―――なら――――ツンは、どうするんだお?」

「どうもしないわよ。だってあなたは―――――」

「違うお。僕は―――――――」



( ^ω^)(明日死ぬだけ、ただそれだけ……か)

( ^ω^)(そう割りきれたのなら……なぁ)

それが難しいから、人なのだろう。
夢潰えたアイドル。
彼女の最後は、人として幸せと言えただろうか?

48 名前:名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:29:11 id:w2KLwfEIO
死亡予告書――――――――――――――

『o川*゚ー゚)o』
指名:素直キュート
生年月日:6月9日
本籍:○○県シベリア地区6―9
住所―▽▽都速報市プラス3丁目24―16
死亡予定時刻:「PM7:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。


発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――




第一話:『一般的異端人(アブノーマルフォーマル)』

終了。

( ^ω^)はイキガミの配達員になるようです
返信2011/09/14 19:54:27