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1jigendaddyjigendaddy   ('A`)ドクオは夏の旅に出るようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:06:47.98 id:k7K4jv4K0
俺の名前はドクオ。

先月、17歳になった。そして今日から、夏休みが始まる。

ところでだ。

夏休み・・・ 嫌な響きだ。心 か ら 腐 っ た 響 き だ ぜ。

まぁ・・どうせ、始めの一週間はずっと講習漬けなんだけどさ。

嫌いなんだ。夏って。暑いし、ダルいし・・

何も思い出がないんだ。何一つとしてな!!!

なのに、やたら周囲の奴らは”夏”って季節をなぜか一大イベントの一つみたいに馬鹿騒ぎ。←ここ重要。

たとえば童貞、処女を喪失するのが一番多い季節が夏だそうだが・・・

こんなことはどうでもいい。心の底からどうでもいいんだ。






  変なメールがきた(3)

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:07:56.09 id:k7K4jv4K0
1 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 20:36 id:aDfgHdd0

・・・で、
事件が起こったのは今日の夕方の頃なんだ。



2 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 20:38 id:GhsdjsD0

>>1 kwsk


3 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 20:38 id:gRCNVLak0

>>1 そのメールの内容をまずは晒せよな。




7 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 20:36:01.09 id:aDfgHdd0

ま、話しを聞け。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:08:48.65 id:k7K4jv4K0
・・・今日も何も無かった日だなぁ・・・って

そんなことを思いながら俺は家へと歩いていた。

そしたら夏休みかだから知らないけどよー、やたら駅に伸びる道の方にカップルが多くて・・・

いや、そんなことはどうでもいいな。どうでもいいことを考えてしまうのは俺のクセなんだ。

自宅に到着。たった数百メートルの短い帰路だった。

ちなみに俺は生まれたときからこの町を出たことがない。

それはいいことなのか?悪いことなのか?

・・悪いことだな。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:09:54.20 id:k7K4jv4K0
散らかった部屋は、いつも俺にこう呟いているような気がする。


「”自分は特別なモノなんて何一つ持っていない”って気づくことが大人になるってことだよな?」


・・・
俺は聞かないフリをしてベッドに寝転がる。
・・窓から差す夕陽が眩しい。目障りだ。
・・・
ふと気づくと、スラックスのポケットから携帯電話が飛び出していた。
携帯のランプが点灯しているのに気付き、俺は起き上がった。







「新着メール一件」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:11:06.75 id:k7K4jv4K0
( 'A`)「はぁーあ。どうせ、レンタルビデオ屋の半額クーポンとか」

( 'A`)「そういうダイレクトメールなんじゃないの?」

( 'A`)「・・・ま、一週間ぶりに来たメールだし、見てみよう」



('A`)「・・・え?」








10 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 20:45 id:aDfgHdd0

・・まず、送り先から信じられなかった件について

・・・自分のメールアドレスだったんだ。つまり、自分からメールが来た。


  From dokudoku7-17@x...
  Sub (non title)

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:12:05.50 id:k7K4jv4K0
12 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 20:47 id:GhsdjsD0

いや、自分で送ったんでしょ?ww

13 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 20:48 id:jsjhfAA0

暑すぎて頭がパーになったようです。











('A`)「・・・っちょっ」

('A`)「はぁ!?」

('A`)「いくらメールが全然来ない、友達イナイイナイ君の俺でも」

('A`)「自分自身にメールを送るなんて怪行動はせんよ」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:13:17.59 id:k7K4jv4K0
20 :◆sVIPchooow:2007/07/23(日) 20:51 id:aDfgHdd0

この時点で俺はかなりビビっていた。携帯の故障か?とも一瞬思ったけど、これって故障っていうより、
やっぱり怪奇現象に分けられる!? だとか・・・ もうプチパニック状態。
本文を見る勇気を絞り出すまで20分くらいの時間を要したよ。だって本当に自分にメール送った記憶なんてないんだぜ?















あと・・、学校でいい話しのネタになるなこりゃwww とも真っ先に思い浮かんだ。
でも、話しをする友達なんて誰もいないから、
おまいらに話しを聞いてもらおうと思い、スレを立てた。

22 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 20:53 id:jsjhfAA0

>>20 哀れww 続けろ!!

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:14:51.71 id:k7K4jv4K0
30 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:00 id:GhsdjsD0

>>20 前置きはいいからよー。早く内容を!!












('A`)「・・・よし」

('A`)「本文を見てみよう」

('A`)「これで空メールだったらかなりシケるな」

('A`)「・・・お前は一週間後に死ぬ とかだったらもっと死ねるけど」



・・・・・

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:16:19.79 id:k7K4jv4K0
38 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 21:12 id:aDfgHdd0

・・本文にはこう書いてあった。まったくもって意味がわからない・・・・


















「旅に出ます  探してください」





~('A`)ドクオは夏の旅に出るようです~

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:21:48.55 id:k7K4jv4K0
('A`)「旅に出ます・・?」

('A`)「誰が?」

('A`)「探してください・・?」

('A`)「ふつう・・・」

('A`)「"探さないでください"だよな?」

('A`)「怪文書だ」

('A`)「・・どうしよう」


45 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 21:23 id:aDfgHdd0

とゆーわけで困った俺は、「はぁ?」と返信してみた。


・・・10秒後にそのメールがきちんと受信された。


・・空しかった。


30 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:24 id:GhsdjsD0

当たり前だろwww

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:23:00.70 id:k7K4jv4K0
ミスった・・ 

46 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:24 id:GhsdjsD0
↑細かいところですが。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/22(日) 23:58:28.04 id:k7K4jv4K0
('A`)「なんなのなんなのあのメールはなんんあののななnっうぇうぇ」

('A`)「・・はぁ」

('A`)「こんな不思議なことってあるんだな・・・」




50 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 21:40 id:aDfgHdd0

と こ ろ が ぎ っ ち ょ ん

不思議なことはそれだけじゃなかったんだよ。

てか、まあ・・ ここが一番すげーキモなんだが・・w









('A`) 「・・?」

('A`)「あ」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:02:02.75 id:fZDXIn140







”NO.1   2007 9/3 17:00”
  From dokudoku7-17@x...
  Sub (non title)









('A`)「み・・・ら・・・・・・・い?」

55 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:43 id:GhsdjsD0

未来!?

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:03:15.48 id:fZDXIn140
56 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:44 id:Ajdfhjk0

ちょwww 未来ktkrwww

57 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:44 id:jdjJJss0

釣りだろwww

59 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:44 id:GhsdjsD0

9月のおまえは何やってんだwww

60 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:45 id:GudksAA0

釣りにしてはなんか陳腐すぎる。・・マジか?

61 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:45 id:JSDJHGs0

MMRに報告wwww

62 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:45 id:wuieriAs0

オカ板池

63 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:45 id:JFSHaasd0

画面うp! あ、携帯の画面なんだから無理か。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:04:55.74 id:fZDXIn140
('A`)「やばいやばいやばい」

('A`)「消そう」

('A`)「・・・っつつつつぅつぅつつうううううう」

('A`)「・・消せねえよ!」












70 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 21:52 id:aDfgHdd0

・・・というワケで現在に至るわけだ。

さあどうしよう><


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:32:21.00 id:qQOWA6bH0
72 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 21:58 id:JFSHaasd0

安価出そうぜ

73 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 21:58 id:aDfgHdd0

把握。
>>80

80 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:03 id:Hguslasa0

や ら な い か

83 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:03 id:GHSKssaa0

>>80

84 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:04 id:JhdfsasgS0

ちょww 未来が変わってしまうぞww



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:32:37.39 id:qQOWA6bH0
87 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 21:04 id:aDfgHdd0

返信北

89 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:05 id:JhdfsasgS0

はっやーーーwwwwww

90 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:05 id:GYSlafdag0

迅速wwww

95 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 21:07 id:aDfgHdd0

「やらないか」・・・だって。
どうしよう>< 俺、そういう趣味は・・・

99 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:08 id:YSKDASsaas0

お ま え ら 何 が や り た い w w

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:34:07.87 id:qQOWA6bH0
('A`)「・・・はっっ!」

('A`)「なにわけのわからん流れを作ってんだ俺」

('A`)(さっきも試したけど・・、こっちから未来へは送れないんだな)


・・・・・・・・・・・・・

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:37:51.08 id:qQOWA6bH0
俺は超能力とか、宇宙人とか、・・とか、・・ry

何も信じない人間だ。 

自分しか信じないぜ。

ごめんうそ。




でも、それでも・・、心の片隅にほんのわずかな希望を・・・

ひょっとしたら、そういう類の何かはどっかに実在するのかもしれねーーーって・・

誰でも思うよな? そう思うからアニメとか映画は楽しいんだよなーって俺は考えるわけよ。

で、今のこの状況! 俺のクールフェイス、がた落ち?みたいな! もう気が動転してるわけ、今ナウぱにくってるわけwww

片隅で瞬いてた希望が今花開いてるわけさーーーー!!!!


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:38:29.30 id:qQOWA6bH0
105 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 22:12 id:aDfgHdd0

・・以上俺の考え

106 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:13 id:YSKDASsaas0

クールフェイスとか自分で言うなよww

107 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:14 id:HdksAArsfs0

今ナウww 尋常じゃねぇな

108 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:15 id:GJietenmvk0

段々、文章のテンションが上がってきてるww

109 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:15 id:JHduslaeRw0

下から5段目には心から同意。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:46:49.48 id:qQOWA6bH0
120 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:15 id:KduiarRsaL0

・・・で、>>1は結局どうするの?





('A`)「・・どうすんの」

('B`)「・・いや俺にきくな」

('C`)「・・はぁ」

('D`)「超インドア派で肌はまっちろけ。一人で電車やバスに乗るのが怖い。移動はいつもチャリか徒歩!!」

('F`)「・・そんな俺がこのメールに対してアクションを起こせる手段」

('G`)「・・・それは」




('A`)「・・・あれしかねえ」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 00:50:15.65 id:qQOWA6bH0
あ、Eいない・・ すいません

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:02:14.19 id:qQOWA6bH0
125 :◆sVIPchooow:2007/07/23(月) 22:20 id:aDfgHdd0

とりあえず安価
>>135










('A`)(なんと情けない自分。これは間違いなく叩かれる)


126 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:21 id:KduiarRsaL0

なんでも安価でスレの方向性を決めるのは悪い風潮

127 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:21 id:GHDuskappW0

とは思いつつksk

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:03:21.45 id:qQOWA6bH0
・・そして



('A`)「・・・3分経った」

('A`)「そろそろリロードしてみよう」

('A`)「・・・こええ 安価こえええええ」



かちっ


133 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:21 id:UieYhKDGh0

携帯破壊

134 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:21 id:GHdLoPTRe0

ksk






('A`)「うぅ・・ 何が出るんだ何が出るんだ」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:09:23.40 id:qQOWA6bH0
135 :以下、名無しにかわりましてJAPがお送りします。:2007/07/23(月) 22:21 id:LpoetraFG0










とりあえず、 旅に出てみろ。











('A`)「・・・・・・」


(*'A`)「ひゃくさんじゅーご・・・ ぐっ・・じょぶ?」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:10:14.28 id:qQOWA6bH0
俺の名前はドクオ。

先月、17歳になった。そして今日から、夏休みが始まる。

ところでだ。

夏。サマー。summer。あついよー。だるいよー。せつねーよー。

・・そんな俺が一番毛嫌いする季節に、大イベントが到来した。

旅に出ろっつーーんだよ。誰が? 安価wwww

いや、でも・・ 自分の意思だって多分ある。だからこんなに今、胸がわくわくしているんだ。

むしろ、安価は自分の背中を押してくれた存在にさえ思えた。

だから俺は決心した。

 








旅に出よう。 あのメールの謎を、解き明かすんだ。

(旅立ち編 おわり)

( ’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/07/24 21:11:55

2jigendaddyjigendaddy   旅立ち編2

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:43:41.94 id:qQOWA6bH0
あのあと、俺は>>135にGJと告げ、パソコンの電源を落とした。






「旅に出ます 探して下さい」・・・・・







このメールの真相を追って、俺が立てたスレ「変なメールがきた」は、俺が去ったあとも結構落ちずに伸びた。



俺はというと・・・

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:44:33.82 id:qQOWA6bH0
('A`)「かーちゃん」

J( 'ー`)し「なんだ。小遣いならやらんぞ」

('A`)「旅に出たい」

J( 'ー`)し「ん?なに?」

('A`)「・・・・」

( A )「・・・うーん?」



この時点で俺はもう気付いた。あぁ・・もう、なんか俺は、NGだな。って。

普通、お母さんに最初相談するかな・・・ こういうのって。

すいません駄目で。

・・

だれにはなしかけているのだ

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:45:24.91 id:qQOWA6bH0
J( 'ー`)し「はっきり言いな」

('A`)「・・旅」

J( 'ー`)し「たび?」

('A`)「旅に出てぇの」

J( 'ー`)し「・・あ」


どーした。トイレの電球替えなら明日にしてくれ。ところで俺が言ってるのは、旅だよ。トラヴェル。


J( 'ー`)し「旅とは違うかもしれないけどね」

J( 'ー`)し「ショボンおじさんがいつか遊びに来いって言ってたよ」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:55:52.70 id:qQOWA6bH0
('A`)「・・!でも、それっていつの話し・・?」

J( 'ー`)し「おまえが小学校の高学年の頃だねえww」


5年前とは随分ミドルな昔の話しである


('A`)(でも”いつか”の期限は切れてないかな)

('A`)「ショボンおじさんってあの・・・」

J( 'ー`)し「うん、親類の中でもちょっと変わった人ね」

J( 'ー`)し「でも悪い人ではないんじゃない」

('A`)「・・親類に悪い人がいたら大変だろうかーちゃん」

J( 'ー`)し「そうねぇwおほほほ」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 01:57:54.01 id:qQOWA6bH0
そうねぇw じゃねーんだよ。

ショボンおじさんは正直、やばい人だ。

確か片田舎でバーを営んでるんだが・・・

穏やかな顔つきの割に、性格はなんだか悪ノリしすぎの中学生のようだ。

いつかの結婚式のあと、この家で三次会をしたときに会ったのが最初で最後だ。

無理矢理酒を飲まされて・・・ 酔って・・ ゲロ吐いて・・ 小学生になにしやがるんだってとーちゃん笑ってたな。

こっちは笑われている場合じゃないというか・・ 最悪の思い出だよ。

その鬼人の元へ行けと?かーちゃんよぉ。

・・まぁ、今日のところはいいや。




('A`)「・・そうか、じゃ、寝るわ」

J( 'ー`)し「おやすみ」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 02:13:12.82 id:qQOWA6bH0
”夏を何かの一大イベントとかと間違えてる奴らがキライ”と俺は言った。

でも、今、俺もその波に乗っかろうとしている。夏の波に。

俺は嫌がるどころか、妙な充実感・・ いや、妙じゃない。しっかりと確信できる充実感を得ていた。

ここで一つ気付いたことがある。

嫌悪していたんじゃない・・。

嫉妬していただけなんだ・・。波に乗っている奴らにな。



誰に見抜かれるわけでもないのに、必死で嫌悪感を心の表面に押し出して、嫉妬・・劣等感を隠していたんだ。



・・あの不思議なメール一通で

俺は俺のことをこんなに素直に見つめることができたなんて・・・ 

未来は俺をどうしたいんだろう。

一体・・・・。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 02:30:37.63 ID:kF+nU0350
翌日。
・・・そんな普段の俺とはかけ離れたフレッシュな気分なんて、そう長く続くはずがなかった。

そーだよなwww ま、あったりまえのことよーーーーww




('A`)(ふぅ・・ 講習終わった。図書館で何か本借りに行こうかな)

「待ちなさい」

('A`)「先生・・ なんですか」

「おまえは残れ」

('A`)「はぁ」

「期末テストの成績が著しく悪い者は、午後から補習だと、終業式のあとの学年集会で言っただろう」

('A`)(んなもん爆睡してて聞いてねーーや)

「弁当がないなら最寄りのコンビニに行ってこい。夏休み中は購買部が開店していないからな」

('A`)「・・へい」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 02:31:08.25 ID:kF+nU0350
('A`)「・・すぐそこサンクスとかって言うわりには、学校から遠いんだよココ」

('A`)「しかも、いつもクーラーけちってんだよね・・」

('A`)「・・・嫌な空気だ」

「おい・・  あれ、ドクオじゃねぇか?」

「本当だ。馬鹿白豚のドクオだ」

('A`)(・・・豚丼買おうと思ったがやめよう)

「おww 豚丼を置いたww」

「やっぱ共食いはよくないよなww うんww」

('A`)(死ね、カス、頭くるくるぱーめ)

('A`)「実際に口に出せたらどれだけ爽快だろうね」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 02:33:27.02 ID:kF+nU0350
「なんかボソボソ言ってるww」

「きめぇ・・・ww」

('A`)(・・っ。こんあ状況でレジになんか並べねぇよ)

('A`)(飲み物は・・どこかの自販機で買おう)

('A`)(食料は・・・諦めよう)

「おいww 出やがったぞw」

「何か買っていけよなw 冷やかしかよww」

('A`)「・・・最初から最後までなんであんなに俺の行動一つ一つに・・・」



・・

悔しいなあ。 むかつくなあ。 ぶん殴りたいなあ。

でもできないよ。 俺はそういう人間。 利口なんじゃないよ? ははは。 怖いんだ。

・・・くそっ。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 02:45:56.16 ID:kF+nU0350

('A`)ぽけーーっ

「・・で、ここをαと置くことができるんだけど・・」

「おい、ドクオ」

('A`)「はい」

「この続きわかるか?」

('A`)「わーりません」

「・・ここをαと置くだろ、で、二本の式を・・」

「よし、ここでのaの値はどうなる?」

('A`)(腹減って何も考えられねーよ)

('A`)(・・・だが、リアルに)

('A`)「わーりません」

「・・そうか。」



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 02:57:28.00 ID:kF+nU0350
先生。 俺をそんな目で見るなよ。 こっち見るなよ。

ああ、そうだよ。 自分のレベル知らないでたまたまこんな高校に入ってきた俺が馬鹿だったのさ。

・・・はぁ。腹減った。








('A`)「終わった終わった・・ 俺は今からフリーダム」

('A`)「・・・」

俺は、手を繋いで駅へと急ぐカップルが見たくなかったから、うつむいて携帯を取り出した。

別に、自宅までの数百メートル、ゲームとか、2chをするわけじゃない・・

昨日のメールを、ただただ読み返すだけだ。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 02:58:51.84 ID:kF+nU0350
NO.1   2007 9/3 17:00
  From dokudoku7-17@x...
  Sub (non title)
本文
  旅に出ます  探してください








なぜか知らないが自分のメールアドレスから

なぜか知らないが約一ヵ月後の日付から

突然送られてきた一通のメール

俺はこれに導かれているような気がしてならない。どこへ?と尋ねられたら困るが。

今の俺にはこれだけが希望なんだ

いくら馬鹿にされても いくら頭が悪くても

このメールを見るとなんだかほっとするんだ・・・・・・・・・

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 03:01:10.76 ID:kF+nU0350
この日に何が起こるのか?

このメールを送ったのは誰なのか?

未来の自分・・・・ か?

だとしたら、俺は何を考えてこんな変な文章を打ったんだ?

俺は今からどうなるんだ?

想うことは一つ

・・でもないけど、一番多くを占めているのは

旅に出なければ、その未来は変わってしまう ・・んじゃないかなぁ?

・・ということだ(なんて曖昧な俺)

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 03:16:17.46 ID:kF+nU0350
('A`)「・・・もぐもぐもぐもぐもぐ」

J( 'ー`)し「今日はよく食べるわねー」

trrrrrr

J( 'ー`)し「はい、もっしー?」

(´・ω・`)「・・・ども」

('A`)(誰と電話しているんだ?)

J( 'ー`)し「あ、久しぶりですねぇw」

(´・ω・`)「・・はい」


(´・ω・`)「昨日の電話の件・・・」

J( 'ー`)し「ああ、はいw息子がお世話になりたいらしくてww」

(´・ω・`)「いいですよ」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 03:16:53.94 ID:kF+nU0350
俺はメシを食べるのに集中しすぎて、かーちゃんがどんな会話をしているのかさっぱりわからなかった。

でも、ガッツポーズははっきり見えた。

ガッツ・・?


J( 'ー`)し「良かったわね~ww」

('A`)「げふん。おかわり・・ 何が?」

J( 'ー`)し「旅に出られるわようww」

('A`)「・・ショボンおじさんの件?」

J( 'ー`)し「うーーんww」

('A`)「そっか・・・」

J( 'ー`)し「何か嫌なの?」

('A`)「あ、いや・・」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/07/23(月) 03:29:04.71 ID:kF+nU0350
俺は”これでいいんだろうか”と悩んだ。

旅っていうのは、自分で目的を決めて、自分で用意をして・・・って

そして、自分の好きな場所を思い思いに巡るのが、旅ってもんじゃないか?(勝手なイメージね)

なのに、俺はかーちゃんから何から何まで決められて・・ まあかーちゃんに話しを持ちかけた俺も駄目だが。

それに・・・ ショボンおじさん自体、なんかもう・・ ボツだよな。

あぁ、どうしたらいいんだろう。またスレを立てるか? いや、そんなヘタレな真似はしたくない。

贅沢なのだろうか・・? わからん。

また俺は、自分の行動力の無さに落胆した。誰かに頼らないと何もできないのかと。






しかしながら今夜も俺は、受信ボックスの9/3という日付を眺めながら、旅立ちの予感を沸々と感じていた。

確実に、確実に、その日は近づいてきている・・・

そう感じたんだ。


(旅立ち編2 おわり)


返信2007/07/24 21:13:39

3: このエントリーは削除されました

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返信2007/07/24 21:17:37

4: このエントリーは削除されました

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返信2007/07/24 21:17:44

5jigendaddyjigendaddy   旅立ち編3

1 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:21:49.87 ID:7O9Mhjb+0

とある夏の日。その日も同じようなことの繰り返しで、すぐに記憶の大海に沈められる予定だった一日。
ふとしたことから、そんなただ暑かっただけの日が、俺にとって少し特別な日となった。
「決意の日」とでも例えようか。(とはいってもその決意も他人の後押しのおかげだが)

事件はその日の夕方に起こったんだ。
一人憂鬱になってベッドに寝転がる俺へ、2007年9月3日・・そう、”未来”からメールが届いた。
そして送り先はなぜか自分のメールアドレス。本文は・・・


「旅に出ます 探してください」


とのことだ。今もよく意味はわからない。
この怪メールに俺は焦って、悩んで、考えて、内心ワクワクして・・・
その末に取った手段は、よりによって某 掲 示 板 に ス レ 立 て ときたもんだ。
スレの流れに流されるまま、(つーか俺が安価を出したんだけどな)俺は、旅に出ることになったのだが・・








~('A`)ドクオは夏の旅に出るようです~ 

3 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:25:50.78 ID:7O9Mhjb+0
窓から見える景色を眺めて俺は思う!!!

空ってなんであんなに青いんだろう?

・・うーん。俺、これではなんか不思議ちゃんみたいじゃないか。

それじゃ、
・・・空の青色は一体何で構成されているんだろう?
オゾンとか・・・ そういうものか?
俺、理科は小学生のころから苦手だから、さっぱりわからない。


・・夏は、四季の中で1番嫌いな季節だけど、夏の空はどの季節の空よりも綺麗だと思う。
なんか、どーんって突き抜けてるように広がっているような、そんな感じがするんだ。
雄大という表現も合うね。とにかく、いいよな。うん・・
ちなみに今は講習中。古文の講習だ。夏の空は、いとおかし!




「・・・助詞にはいろいろ種類があって~、格助詞や終助詞など~・・」

('A` )(こんなに青空は澄み渡っているのに、俺の心は灰色雲)

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:27:53.34 ID:7O9Mhjb+0
('A` ) ポケーッ

「おい、ドクオ」

(;'A`)「は・・はい」

「おまえ、そんなに空が好きか?」

(;'A`)「あ、え、ええと・・」

「そんなに空が好きなら、そこの窓から飛び降りてもいいぞ?」

( A )「・・すみません」

「わかればいい。・・じゃ、この格助詞という種類についてだが~」

そうだな。飛び降りて死んじゃえばずっと空に居られるもんな。ははは。
今日びの高校教師は、こんな酷いジョークを好む者が少なからず存在する。
・・でも今のってジョークになってたか?
別に俺は傷ついちゃいない。つよがりと言われたらそれで終わりだが、なんとか大丈夫だ。
しかし、反省して、ちゃんと講習を受けよう!といった気持ちもまったく生まれないので、

( A )(寝ることにしましょう・・・。眠いし)

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:29:39.93 ID:7O9Mhjb+0
( A )(・・)







( A )(寝ながらにして、視線が刺さっているのがわかるw)

俺はわずか1分間弱の睡眠タイムを終え、上体を起こした。
黒板を見ると、およそ3分の1ぐらいの板書が入れ替わっている。時計を見ると即座に気付いたが、実は10分もうつむいていたらしい。
体感の10倍のスピードで外界の時間は進んでいるようだ!・・ただし授業中寝ているときに限り。
刺さっている視線が、通りでいつもより痛いわけだ。と理解し、俺は完全に眠気がとれた。
・・しっかし、10分で板書の3分の1が入れ替わるって、どんだけアイツは授業が早いんだ?

('A`)(講習はあと少しでチャイムが鳴る!そして俺はまったく内容に着いていけてない!)

('A`)(・・なんかしてヒマを潰そう)

そして俺は辞書を手にとった。今は古文の時間なのに、なぜかロッカーから持ち出してしまった国語辞書・・

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:30:34.64 ID:7O9Mhjb+0
たび 【旅】
住んでいる所を離れてよその土地へ出かけること。
名所旧跡を訪ねたり、未知の場所にあこがれて、また遠方への所用のため、居所を離れること。旅行。



('A`)(とにかく、自分が住む場所から離れるのが旅の1番重要な条件なんだなぁ)

('A`)(・・一度も離れたことねえよ)

('A`)(ショボンおじさんの家でいいのかな?もうちょっと考えたいよな)

('A`)(そう考えているうちに夏休みが終わってしまう気がする・・)

「・・ドクオ」

('A`)(あー、どうしよどうしよ)

「ド ク オ」

('A`)「はぁ」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:31:16.79 ID:7O9Mhjb+0
目線の先には、50を過ぎた加齢臭のきつい初老の国語教師がいる。
厚いレンズを隔てて、俺を呆れたように見るその目は、きっと様々な事柄、物を見てきたんだろうな。と思う。
 

('A`)「・・・」

「机に乗ってるのは国語辞典だな?」

('A`)「はい」

「今の時間は何だ」

('A`)「古文です」

「・・もうすぐチャイムが鳴る。それまで立っていなさい」

('A`)「はい」

初老の教師には決まった特徴があって、絶対怒鳴らない。
その色んなことを見てきた目には、俺みたいなダメな生徒も、たくさん写ったんだろうな・・と俺は自虐的になった。
そんな気分に浸っているうちに、チャイムは鳴った。

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:35:05.60 ID:7O9Mhjb+0
('A`)「やっほう。今日は補習がナッシン」

('A`)「頭がおかしい奴らと接触する前にさっさと帰ろう・・」









そして帰り道
俺はどこのネジが緩んだか知らないが、思いきったことを考えた。


('A`)「そーだ」

('A`)「家出、してみようか」

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 20:50:34.41 id:hMgeGCO/0
頭の中に突発的に浮かんだことは、案外、突発的にすぐ行動に移せるのは人間のいいところだ。
行動力が致命的に欠落している俺でも、家出についてとある考えがすぐ固まったので、進路を切り替えた。


('A`)「駅へゴーゴー・・」

('A`)「んが!!!」

J( 'ー`)し「あらー、講習もう終わったの?」

('A`)「ああ。かーちゃんこそ、何やってんだ?」

J( 'ー`)し「駅前の銀行にお金おろしに来たのよぉ~」

('A`)「あ、あっそー」







家 出 終 了

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 21:04:37.77 id:hMgeGCO/0
ちなみに俺の考えとはこういうことだった。
今、持っている所持金全てを使って、1番遠くに行けるところへ行く。遠くに行ける切符を買う・・
といった、思い返すと、安直かつ無意味かつ無謀かつ・・かつ・・etcなアイディアだ。
旅の予行練習にでもなるかな。と思ったけど、放浪ビギナーの俺にとっては逆に難易度が高い。ってか高すぎるだろ。
まず、場所に着いたとするだろ。・・そっから先どーすんだよww 無一文ww 
この「無一文」ってところに家出の要素が含まれてるんだぜ。っていう説明は置いといて、俺は久方ぶりに、母親と家まで帰った。





J( 'ー`)し「ドクオと一緒に帰るなんて、小学校のときの運動会以来ねぇ~」

('A`)「・・そだな」

J( 'ー`)し「あんときアンタ、障害物競争で3位に入れなかったぁ~!って泣いてたわねぇww」

('A`)「・・そうだっけかぁ」

J( 'ー`)し「覚えてないの?あの日は雨上がりだったからねぇ、泥だらけの運動着も私の目には焼きついてるわよw」

('A`)「泥だらけの運動着・・ あぁ!」

15 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 21:12:29.08 id:hMgeGCO/0
そうだったなぁ。俺は毎年、運動会では障害物競争にだけ命を賭けていたんだ。
運動神経まるでゼロの俺は、それしか活躍できる場がなかったからな。
100メートル競争や、玉入れ、騎馬戦・・ そういう類の競技は、基本的に運動センスが重要だ。
でも、障害物競争ってのは、ちょっとの運と簡単なテクニックだからな。だから頑張ってたんだ。
その年の練習では、絶対3位以内には入ってたんだ・・。だけど、かーちゃんが見てる本番に限って4位か5位だった。
だからわんわん泣いていたんだ。くやしくて、恥ずかしくて。おぼろげながら思い出した。



J( 'ー`)し「あの日は泣いていたけど、今日はなんだか不機嫌みたいな顔してるわねぇ」

('A`)(かーちゃんがここにいなきゃ今ごろ俺は電車に揺られ・・)

('A`)「そーか?別にフツーだ」

J( 'ー`)し「・・いつか、笑ってるアンタと道を歩きたいねえ」

('A`)「・・・・」

俺は、空を見ていた。
どこまでも果てしなく広がって、どこまでも果てしなく青い空を。
かーちゃんよー、あんな空みたいにどっしり構えるには、どうしたらいいかな?
まあ、そんなことは恥ずかしくて、間違っても口に出せないけどな。

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 21:14:41.20 id:hMgeGCO/0
・・・・・・・よし。

('A`)「かーーーーーちゃん」

J( 'ー`)し「なんだーーーーー」












('A`)「俺、ショボンおじさんとこに自力で行ってみるわ」

”自力”っつー言葉に注目だ。
頭の中に突発的に浮かんだことは、勢いですぐ行動に移せるのは人間のいいところ。

・・本当にいいところだね。

J( 'ー`)し(かーちゃんはその一言を待ってたよ)

18 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 21:27:50.71 id:hMgeGCO/0
何も起こらないつまらない夏休み。いや、何も起こそうとしないつまらない夏休み。
いやいや? 何も起こせないつまらない夏休み。

・・

今年も例年通り、そんな日々が続くのかと俺は憂いを感じていた。
だけど、その憂いは、ついさっきの瞬間でぶっ飛んでしまったようだ。


なんという清々しい気持ち。まるで三ツ矢サイダーのCM。




もう決めたぞ。この決心は揺るがないぞ。



J( 'ー`)し「・・ところでドクオ」

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/24(火) 21:29:01.37 id:hMgeGCO/0
J( 'ー`)し「”自力で行く”ってどういうことなのかしら」

('A`)(・・・っううう。これぞ青春ってやつだよな!!!)

('A`)「・・え?」

('A`)「あぁ・・・」












・・・自力、ねえ
重要なんだよ。ここ・・

(旅立ち編3 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/07/24 21:35:58

6jigendaddyjigendaddy   旅立ち編4

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:43:05.74 ID:BC/SgcTb0
俺は旅に出る。


旅行じゃないぞ。熱海に一泊とかじゃないぞ。そこよろしく頼む。
生まれてこのかた17年。ろくすっぽ生まれた土地を離れたことがない俺が、放浪、「さすらい」に挑む。
不安などはもちろんあるけど、あまりそれらを直に感じないというか・・ 今の俺はちゃんと人間として胸を張っているような心情だ。

・・よくわからん心情だなぁ。














~('A`)ドクオは夏の旅に出るようです~

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:44:51.24 ID:BC/SgcTb0
・・かーちゃんに旅に出ることを告げた夜。俺は俺なりに自分の考えを整理してみた。








まずは、ここから遠く離れたショボンおじさんの家を目印・目的地として、なるべく新幹線だの公的機関を利用しないでそこまで辿り着きたい。これが一つ。
だから、何日かかるかわからない。泊まるところは雨、露を凌げれば公園や駅、どこにでも寝てしまおうという覚悟は"これから徐々に膨らませていく"とする。
移動手段は・・・ 後々説明する。
つまり、今はやっぱりそういう行為をすることに対して不安や抵抗があるってことだ。しかし、野宿というのがなんともハングリーな旅のロマンを感じさせる。
徐々に膨らますっつっても・・、旅立ちはもう明日なのだが、まぁなんとかなるさ。

そして、今回の旅を俺は"孤独なもの"にしたくないという気持ちが強くある。これが二つ目。
たくさんの人と触れ合おうと思ってる。・・どんな状況にしてもだ。人は一人じゃ生きていけないように、旅も一人っきりじゃ辛いもんだと俺は考える。
基本的には"ひとり旅"なんだが・・ 要するに俺はこの旅を通してたくさんの人々との出会いをしてみたいってワケだ。それが目的かな。そう上手くはいきそうもないがな。
だって俺だし。

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:47:07.37 ID:BC/SgcTb0
('A`)「これが一番の目的かなぁ」

('A`)「・・そう、上手くいかないと思うけどね」

('A`)「・・・以上、こんな感じで俺は明日、旅立ちたいと思ってるんだけど、どうかな」

('A`)「"自力で"っていう言葉の要旨はわかってもらえたかな」

J( 'ー`)し「・・・・」

('A`)「・・どうしたんだよ」

J( ー )し「・・・立派になったねえ、アンタ」











俯いているかーちゃんの瞳の奥に、キラリと光って流れるものを見つけた。

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:48:23.24 ID:BC/SgcTb0
('A`)「・・なに泣いてるんだよ」



J( 'ー`)し「あら、そう? ・・年をとるのは嫌ねぇ」










そう言って俺の顔をじっと見つめるかーちゃんのまつ毛は、キラキラと光っていた。
かーちゃんは俺を見つめながら朗らかに微笑んでいた。
泣きながら笑っているなんて、母親のこんな顔を見るのは、初めてだった

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:49:33.81 ID:BC/SgcTb0

J( 'ー`)し「・・ねえお父さん」

(,,'A`) 「なんだ」

J( 'ー`)し「あの子、明日、旅立つって・・」

(,,'A`) 「旅立つ・・って。おまえ、ただショボンの家を尋ねるだけだろう」

J( 'ー`)し「だけど・・、ドクオはドクオなりに色々考えてるみたいなんですよ?」

(,,'A`)「遊びにいくのはいいが、学業のほうが疎かにならないかが心配だな」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:50:46.67 ID:BC/SgcTb0
J( 'ー`)し「いいえ、私はそんなことより、帰ってきたときの息子の顔を見るのが楽しみなの」

(,,'A`)「そうだな・・。あいつが色々考えているんなら、行って、戻って、それで終わりにはならないはずだな」

(,,'A`)「そう考えると、俺もあいつの顔を見るのが楽しみだ」

J( 'ー`)し「ええ・・。あの子、昔から私がいちいち言わないと何もやらない子だったわ」

J( 'ー`)し「だけど今回は・・」

(,,'A`)「ドクオを動かす"何か"があるんだろうな」

J( 'ー`)し「私は"動かされてる"んじゃなくて、自ら"動いている"ことを期待したいわ」


隣の寝室から両親の話しが聞こえる。だが断片的なので会話の内容は掴めない。
俺はネットで情報を拾いつつ、とりあえず今家にある物を寄せ集めて荷作りをしている最中である。


9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:53:26.71 ID:BC/SgcTb0
('A`)(・・それにしても、かーちゃんが泣くとは思わなかった)



('A`)(なんだか俺まで泣いちゃいそうだったよ)





そう思いながら、俺はおもむろに携帯を開いた。
着信履歴も、発信履歴も、受信ボックスも、返信ボックスも、ついさっき全て削除した。なんとなく、過去の清算をしたかったのだ。
だが勿論、受信ボックスには保護された一件のメールが残されている。何度見ても、そのメールの日付は9月3日。そう、未来から送られてきた例の一通だ。

俺はさっき、かーちゃんに”人と出会うのが目的だー”なんて一丁前に弁を揮ったが、目的はもう一つある。
・・そう、このメールを送ったやつを"探す"ことだ。

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/25(水) 23:57:13.36 ID:BC/SgcTb0
「旅に出ます  探して下さい」
そう本文には記されていた。つまり送り人は、旅をしているんだ。そして、探してくれって要求しているのだ。
だったら、俺も旅に出て、おまえを見つけてやろうじゃないか。ってワケ。



だがしかし、このメールは未来からの文章だ・・ つまり、送り人が旅をするのは9月3日以降だと推測できる。そう推測してしまったら、目的に矛盾が生じる。
ここらへんがこの文章を”変”だと形容する所以なのだが・・。まあ、未来からメールがくる時点でもうアンビリーバブルなので、とりあえず良しとしておこう。
"良しとする"・・つまりな、俺が旅をしている間に色々と分かってくるかもしれないってことだ。このメールの謎がね。



・・そこで、この旅をただおじさんの家へ行って、帰ってくるだけじゃ、何も分からない。何も得られない。そう俺は理解した。
だから、俺は条件や目的をわざわざ設定した。このくらい今回の旅を、俺の中で大事で困難で大きなイベントとしないと、”見つけられない”と、俺は勇気を絞ったのだ。

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:00:14.58 id:tHVnJ7/W0
つまり・・その・・俺がやりたいことを、簡潔にすると・・・




とにかく、この旅を価値のあるものにしたい。


そういうことなんだ。・・簡潔になってるかな?自信はない。言いたいことが伝わったならそれでいい。
突然だが、何度も言う。
俺は夏が嫌いなんだ。


今こうして携帯の画面を眺めていると、あのメールは、夏から俺に送ってきた挑戦状のように思える。
大嫌いな季節から来た挑戦状。


”旅に出ろ”という挑戦。


俺はそれを受けて立った。珍しく”やってやろうじゃないか”と奮起した。
・・そうなんだ。俺の中で何かが変わろうとしている。





この挑戦を終えるとき、俺は夏を好きになるかもしれない。

12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:02:41.81 id:tHVnJ7/W0
夜が明けた。
翌朝。あの日あの時、あのメールを受信していなかったら、俺はいつものように制服に着替えて学校に行く準備をしていただろう。
だけど今日から学校で講習を受ける必要はない。残りの夏休みを使って俺は旅に出なきゃいけないのだ。
俺はダメージ加工がしてあるジーンズを穿き、腕には時計を巻いた。もうムードはばっちりである。(俺的にはね)


・・というか、家を出るのは昼食を食べてからなんだけど、やっぱり学校には行かないことにした。面倒だし。
期待と不安が大ゲンカして、教室の椅子になんか座ってられないだろうし、先生の都合で急に補習なんか入れられたら全部パーだからだ。


午前中の時間帯は、全て持ち物チェックや地図の見直しなどで時間が潰れてしまった。
寝室では父親が寝転がって気ままにテレビを見ている。今日は仕事が休みらしい。母親は昼食を作っている。冷やし中華みたいだ。












・・俺はやっぱりあのメールを何度も何度も開いては閉じている。

('A`)「ついにきたな・・この時が」

15 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:08:48.52 id:tHVnJ7/W0

J( 'ー`)し「ドクオー、お父さーん。ごはんよー」

(,,'A`)「ほっほほーい」

('A`)「・・・」

(,,'A`)「・・・お!」

(,,'ー`)「・・・」






俺と親父は一階へ向かった。親父はボテ腹をカリカリと掻きながら、俺の顔を見てはニヤニヤと笑っている。
勿論、嘲笑ではない。どんな意味の笑みなのかは自然に理解できる。
俺もニヤニヤと微笑み、俺と親父は不敵な笑みを交わし合った。それにしても俺は親父似だ。


16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:09:15.69 id:tHVnJ7/W0
(,,'A`)「おっ・・冷やし中華か。今年初めてだな」

J( 'ー`)し「そーなのよw味わって食べてね」

('A`)「・・いただきます」

J( 'ー`)し「なんだか元気ないわねえ」

(,,'A`)「もう今日からロクなもんを食べれないだろうからなww神妙になるわなそりゃ」

('A`)(精一杯感謝の気持ちを込めながら食べようと思ったんだけどね)

('A`)(それもある。確かにある)

J( 'ー`)し「ほらぁ、早く食べなさいよ!」

('A`)「わーった」

('A`)「色んな意味で」

('A`)「味わって食べる」

(,,'A`)「ちゃんとトマトも食べろよww」

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:12:47.12 id:tHVnJ7/W0
冷やし中華は・・・、凡庸な表現ですまない。
お袋の味がした。
こんなもん誰が作っても同じかもしれないが・・。そういうことにしといてくれ。
昼食を食べ終わった俺は台所に行って、自分と親父と母親が食べた皿を洗った。





J( 'ー`)し「ドクオ、そんなことしなくていいからさあ、最後の準備でもしてきなさいよ」

('A`)「大丈夫だよ。もう、すぐに行けるように玄関先に荷物は置いてあるんだ」

J( 'ー`)し「そう・・」

J( 'ー`)し「あんたが皿洗いなんか自分でしてくれるの、初めてと感じるくらい珍しいわね」

('A`)(そうだな。そう思うと俺は本当に駄目な息子だ)

J( 'ー`)し「・・でも、あんたは駄目な息子じゃあないよ」

('A`)「・・・!? なんで考えていることが・・、いやなんでもない。どうして?」

J( 'ー`)し「あんたのことが心配で心配でいつもたまらないからよ」

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:16:05.43 id:tHVnJ7/W0



('A`)「・・・おう」







そう言ってかーちゃんは、俺の隣で箸やら小皿やらを洗い始めた。
会話はそこで止まってしまった。

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:20:00.10 id:tHVnJ7/W0
そしてついにその時はやってきた。
空はいつもの夏の日のごとく青く、広く、澄み渡っている。この色は絵具に例えると何色だろうか?
勿論外はかなり暑く、アスファルトの向こうに陽炎が見えたが、風がそよそよと吹いていて、俺の服を揺らした。
向かいの家のブロック塀から、ヒマワリが顔を覗かせる。ヒマワリってこんなに大きく育つ植物だったかと俺は驚いた。


・・・・



('A`)「財布よし、地図よし、・・よし・・よし・・・」

('A`)「うん。全部大丈夫」

J( 'ー`)し「気をつけてね」

(,,'A`)「しっかり気張れや」







J( 'ー`)し「よく考えるのよ」
そう言ってかーちゃんは俺の手に、数枚の一万円札を握らせた。
俺もかーちゃんの手をぎゅっと握った。「ありがとう」と言いながら。

25 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:24:46.59 id:tHVnJ7/W0


・・・とーちゃんはというと。



(,,'A`)「ドクオ、携帯貸せ」

('A`)「ん・・?ああ」

(,,'A`)「えーと、ここがこうなって・・ちょいちょいちょい・・」

('A`)(何をいじってんだ・・?)

(,,'A`)「お母さん、紙とペン」

J( 'ー`)し「はい」

(,,'A`)「スラスラ~。うむ」

('A`)「わ・・・ちょい・・何やってんだ親父?」

(,,'A`)「ほれ、返す」

('A`)「・・ああ」

('A`)「?・・何電源切ってんだよ親父」

そして俺は携帯の電源を入れた。しかし、表示されたのは待ちうけ画面ではなく・・

26 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:26:26.50 id:tHVnJ7/W0
(;'A`)「オートロック!?俺、ウェブにしかロックかけていないのに」

俺は携帯のロック番号を押した。しかし表示されるのは「番号が違います」という文字。
・・なぜだ。

(;'A`)「親父、何したんだよ!これじゃ携帯使えねーよ!」

(,,'A`)「甘ったれんじゃねぇーー!!」

('A`)「・・」

('A`)「・・悪いが全然怖くないぞw」







(,,'A`)「ごほん」

28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:29:52.86 id:tHVnJ7/W0
(,,'A`)「ごほん」

(,,'A`)「携帯なんて、電話もメールもインターネットもできちゃう便利すぎる文明の利器は」

(,,'A`)「男の一人旅には必要ない」

(,,'A`)「だからテキトーにボタン押してロックかけてやった」

(;'A`)「その前に、なんで俺が設定した番号知ってるんだよ!!」

(,,'A`)「リビングでいっつも携帯イジってるお前を見てるから、なんとなく分かった」

(;'A`)「・・なにぃ」




(,,'A`)("5"を5回押すとか安直すぎるぞ息子よ)




父親という存在はこういうところが中々強い。
・・どういうところだよ。
親父は少し間を置いて、俺のリュックの小ポケットにメモ紙を無理矢理捻じ込んだ。

29 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:35:24.29 id:tHVnJ7/W0
(,,'A`)「その紙の中に、俺がでたらめに設定した番号を書いたから」

(,,'A`)「どうしても駄目なときや、何かに巻き込まれたときや、つらくてたまらないとき・・etc」

(,,'A`)「そんなときは、その紙を見て、ロックを解いて、俺に電話をかけろ」

(,,'A`)「・・ま、よっぽどのことじゃない限り、絶対かけちゃ駄目だぞ。男のプライドはしっかり持っとけ」





(,,'A`)「わかったなら、行け!ちなみに、絶対に後ろは振り向いちゃいかん」












絶対に、後ろは振り向いちゃいかん

30 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:37:03.47 id:tHVnJ7/W0
勝手にロックをかけて、でも、ピンチのときは解いて電話をかけろ・・ってか。
公衆電話とかでも普通に会話は出来ると思うけどなあ・・w
しかし、携帯の扱いについては俺も少し悩んでいたところだ。確かに携帯があると、色んな意味において頼りすぎてしまうかもしれない。
部屋に置いてこうかとも思ったが、これで踏ん切りがついた。
あと、親父の不器用かつ優しげな配慮は十分感じたよ。


















親父も、ありがとな。じゃあ、そろそろ俺、行くわ。

32 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:40:43.51 id:tHVnJ7/W0
('A`)「行ってきます!」














(,,'A`)「アバヨ!!!」

(,,'A`)「・・柳沢に似てたかな?」

J( 'ー`)し(・・色んなことを学んできなさい)

34 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/26(木) 00:41:35.97 id:tHVnJ7/W0
・・旅の掟。・・というか常識? まあいい。早くも親父から一つ教えてもらった。


出発するときは後ろを振り向いちゃいけないんだな。


うんうん・・・


把握した。


俺はまっすぐ前だけを見て歩くよ。





まっすぐまっすぐ、進めよと、腕を振って歩く。



(旅立ち編4 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/07/29 00:01:14

7jigendaddyjigendaddy   旅心編

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:23:12.75 id:yVPKvvZq0
俺が夏を嫌悪する理由。


それは、夏が"なんでもあり"的なイメージを持ってるからだ。
なんでもありだから、世の若者はここぞとばかりに、この季節に集中して遊びまくる。何かに夢中になる。あぁ、むかつく。
だが俺は、誰とも遊ぶことがなく、何かに夢中になることもなく、淡々と変わらない日々を過ごすだけだ。あぁ、むかつく。
夏なんてキライだ。「夏」という一文字をフルに活用してフルに活動する奴らがキライだ。


















・・・ところで話しは変わるけどよ


3 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:24:52.91 id:yVPKvvZq0
"旅"という行為のキモは、とにかく自分が住んでいる場所から離れることにある。
だが、それだけではただの移動、逃避等になる。美しい景色に遭遇したり、たくさんの人たちとの出会いなどによって肉付けされて初めて"旅"という行為になる。


・・・それが俺の考え。そう、俺は"旅"というものを物凄く特別な何かと勘違いしているのだ。なんというか香ばしい馬鹿者なのだ。






でも、いいんじゃないか?特別な何かととらえても。





だって、今は夏じゃないか。




・・あれ?


('A`)ドクオが夏の旅に出るようです

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:30:28.56 id:yVPKvvZq0
最初の目的地へ歩を進める俺の行進曲は、勿論四方八方から鳴り響く蝉の声・・







('A`)「ミンミンミンミンとうるせぇなぁ・・・・」







ところでまだ、自宅から500メートルほどしか離れていない。
最終目的地であるおじさんの家まで、ずっと徒歩だったら何日かかるかわからないだろう。
だが、移動手段は公的機関を使わないと自分でルールを作ってしまった。



とすれば、アレしかないわけで。


6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:34:48.24 id:yVPKvvZq0
('A`)「着いた」


大通りから少し外れたところに最初の目的地はあった。
幼少のころからお世話になっている古びた自転車屋だ。

店内は薄暗く、奥の方からテレビの音が聞こえる



('A`)「誰もいないなぁ」

('A`)「こんにちわー。ドクオですがぁー・・・」



よっこらしょ




(,,゚Д゚)「はいはい」


工務ズボンに肌着一枚という、職業が分かり易い格好をしたおっさんが奥からでてきた。
俺にとっては結構馴染みのある人物だ。確か名前はギコさんだ。

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:38:54.19 id:yVPKvvZq0
('A`)「ドクオですが、父が頼んでいたやつは整備できましたか?」

(,,゚Д゚)「おー、もうバッチリだよ。これだろ?」



おじさんは隅にある自転車に被せてあった布を取り、俺に見せた。
それは、親父が昔使っていたマウンテンバイクだ。シャーシの光沢が、俺にはとても眩しく見えた。
なぜ俺が親父のマウンテンバイクを?その理由はまた後で。



('A`)「ああ!これです。ありがとうございます」

(,,゚Д゚)「なんだってこいつを今更整備したんだ?」

(,,゚Д゚)「こいつで、どっか遠くにでかけるのか?」

('A`)「まぁ・・ちょっと、はい」

(,,゚Д゚)「そうか~・・」

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:41:36.68 id:yVPKvvZq0
おっさんは、他の自転車を磨きながら一人呟く。


(,,゚Д゚)「若いうちは、なんでもやってみい。俺くらいの年になるとなぁ~・・
     どこへも行けなくなっちまうんだw」












('A`)「・・・」


"若いうちはなんでもやれ"
大人が俺たちによく言う台詞だ。今更俺にとって何の意味も重さもない・・・
・・というのは、やはり心に嘘をつきすぎているだろうか?
確実に言えるのは、数日前の俺にとっては大嫌いな言葉だったろうということだ。俺は、何も出来ずにいたから。そんな人間だったから。


10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:47:21.09 id:yVPKvvZq0
おっさんは、自転車のハンドルを撫でながら続ける。



(,,゚Д゚)「ドクオくんはなぁ~・・、このマウンテンバイクで、今からどこへでも、どこまでも行けるんだ。


     ・・なぜだと思う?


      若いからだよwww」







(,,゚Д゚)「おっさんは思うんだけどねぇ~。若いってのは、それだけでもう素晴らしいんだ。若さ故の特別な力ってのがあるんだよ。
     絶対、持て余しちゃいけないよ。」






('A`)「・・・」

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:49:18.01 id:yVPKvvZq0
おっさんの言葉は妙だ。
正しいことを言っているような、だけど、物凄く使い古されてきた言葉を、また使っているような・・


それにしても、"若い"ということはそんなに特別だろうか?
誰もが手にすることができるものなのに、そんな価値があるものだろうか?
・・これはきっとあれだ。しょうがないんだ。俺はまだ17年しか生きていないから、分からないだけなのかもしれない。



"無くなって初めて気付く大切さ"というやつを



俺は、無言の内に親父から手渡された整備の料金をおっさんに手渡した。
おっさんの手は、大きくてザラザラしていた。おっさんは喋り続ける。






(,,゚Д゚)「おっさんがドクオくんぐらいの頃はなぁ~・・」

13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:52:46.16 id:yVPKvvZq0

(,,゚Д゚)「いや、やめておこうww すまんすまん」

(,,゚Д゚)「じゃ、良い旅を!」









('A`)「・・!」

俺は何も言ってないのに、おっさんは俺が旅をすることを見抜いていたようだ。
ま、この荷物を見れば誰でもわかるか・・。




('A`)「・・なんでもやれ・・ってかあ」

('A`)「若さかぁ・・」

('A`)「・・良い旅・・・・」

(,,゚Д゚)「おいおいwどうしたんだドクオくん」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:54:30.08 id:yVPKvvZq0
俺は、自転車を入口まで運び、おっさんに背中を向けて、そこで初めて口を開くことができた。


('A`)「・・・おっさん、俺、自信ねぇ」
しかし、口にする言葉は弱音だった。










(,,゚Д゚)「・・・・」


二人の間に、ちょっとの沈黙が流れていた。
俺はハンドルを握りながら、ただぼーっと空を眺めていた。おっさんは、「ふーむ」とか、「むぅ」とか呟いていた。

15 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:56:29.66 id:yVPKvvZq0

二人の間に、ちょっとの沈黙が流れていた。
俺はハンドルを握りながら、ただぼーっと空を眺めていた。おっさんは、「ふーむ」とか、「むぅ」とか呟いていた。

そして、俺がサドルに乗りかけた瞬間だった。
おっさんは「うむ!」と納得したような声を発した。俺は気だるそうに後ろを振り向く。






(,,゚Д゚)「気弱になってるみたいだなぁドクオくんww」

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 00:58:35.46 id:yVPKvvZq0
(,,゚Д゚)「あれは君が五歳くらいのときかなぁ・・。
     おっさんと、君のお父さんと、ドクオくんで、補助輪なしで自転車に乗る練習をしたのは覚えてるか?河川敷で」

('A`)「んーー・・」

('A`)「おぼろげながら」




(,,゚Д゚)「おっさんが後ろを掴んでいたと思って、本当は一人で乗れていたなあw」

('A`)「・・まあ、そうやって覚えるものですからね」

('A`)「・・それで?」




(,,゚Д゚)「あのとき、自分はどこまでも行けるんだ!みたいな感覚にはならなかったかい?」

('A`)「・・なりましたね」

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 01:05:17.59 id:yVPKvvZq0
(,,゚Д゚)「・・そうだよ!その感じなんだよww」






(,,゚Д゚)「あのときの気持ちを思い出してほしんだ。"自分はなんでもできる!"っていう気持ちをね。地球は自分を中心に回っているのだと信じて疑わないようなww」







(,,゚Д゚)「・・・それを心に留めておけば、その自転車はきっとどこまでも走り続けると思うよ」

21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 01:09:18.24 id:yVPKvvZq0
素直に嬉しい。
だから、目頭が熱くなる。もう、駄目だ。おっさんの方を向いていられない。
しかし、言う事は言わなければならない。






( A )「・・ありがとうございました。それじゃ・・」







精一杯の言葉だ。
そして、俺はおっさんに感謝と別れを告げた。おっさんは「いいんだよいいんだよ」みたいな、満足気な顔をしていた。
再びサドルに乗り、ペダルを漕ぎ出すと、澄んだ風が体に当たるのを久方ぶりに感じた。やはりママチャリとは全然違う。軽い。
・・・後ろからギコさんが「ぐっどらっくぅーーーwww」と叫んで見送るのが分かる。でも後ろは振り向いてはいけない。




22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 01:10:28.41 id:yVPKvvZq0
自転車屋との距離がどんどん、どんどん開いていく。







おっさん。

俺は、どこまでも行けるような気がするよ。

24 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 01:15:47.81 id:yVPKvvZq0

"たくさんの人との出会い"・・・なんて、実際はそう簡単にいかないと思っていた。
でも違う。案外、簡単だった。


人は、生きていく以上、誰かと必ず関わる。

それは、ただすれ違ったり、一、二言言葉を交し合うだけのことかもしれない。

でも、"旅"という行為の上では、その全てが日常の何十倍も意味あるものに変化することに気付いた。

ただ、自転車を取りにいっただけのことなのに

俺の心は、何かでもういっぱいになっている。いっぱいいっぱいだ。


自宅から、まだわずか500メートル。
俺があの自転車屋に居た数十分間は、この旅において既にかなりの意味を持つ時間だった。

・・なんだか、前途多難だなぁ


でもよ、


ありがとう。おっさん。


(旅心編 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/07/29 10:57:17

8jigendaddyjigendaddy   旅路編

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 23:41:19.20 id:Z20vMipO0
俺は親父が若い頃使っていたマウンテンバイクに乗り、北を目指していた。
ショボンおじさんの家まではまだ何百キロもある。というか、まだ自分の住んでいる県からも出ていない。

・・・一日中、自転車を漕いでいても、自分の場所からまだ抜けられない。酷だ。
厳しい。厳しすぎる。早くも現実に直面してしまった。

夕陽も沈みかけ、俺は近場の公園を今夜の寝床とした。











野宿するのは、小学校のときの林間学校以来だ。


('A`)ドクオが夏の旅に出るようです


6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 23:42:34.53 id:Z20vMipO0
喉が渇いたら、そこらの水道から出る水を飲めばいい。
腹が減ったら、ポケットから乾パンを取り出して少しだけかじればいい。
日が暮れたら、そのときの場所で寝ればいい。
日が昇ったら、また目的地へ進みだす。



こんな地獄のような繰り返しに、プラスアルファが肉付けされて初めて"旅"になると俺は信じて疑わなかった。
また明日も誰かと逢える。また明日も素敵な景色が拝める。旅に出て初日だから当然といっても仕方ないが、俺は至極ポジティブな思考を持っていた。
だから野宿するにしたって胸がワクワク。

・・なんてのは全くの嘘だ。


('A`)「足がいてぇ」

('A`)「虫がうぜぇ」

('A`)「ハラ減った」

('A`)「蒸し暑い」

('A`)「・・家でテレビ見てえー」

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 23:45:10.20 id:Z20vMipO0
以上のような自分の不満の中で、最も大部分を占めていたのは空腹だった。財布からお金を取り出して、コンビニからでも食料を買いたい・・。
しかし、お金はいつどこでどれくらい急に必要になるかわからない。俺はお金を使うことにかなり神経質になっていた。
結局、初日は金を一銭たりとも使わなかった。俺は乾パンをみみっちくかじりながら、寝袋を準備した。
公園の時計はまだ8時。いつもなら家でゲームやらパソコンをしているゴールデンタイムである。






('A`)「あっちー・・けど、夜は涼しくなるからな・・」

('A`)「半身だけ寝袋に入って寝ることにしよう」

('A`)「あぁ~、もう嫌になっちゃうよ」

('A`)「・・」

('A`)「・・・・お?」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 23:47:34.25 id:Z20vMipO0
俺がこの旅で、一番初めに見た素晴らしい景色。
・・いや、旅の中で見た景色全てが素晴らしいとも言いたいところだが、とりあえず・・



一番初めに見た素晴らしい景色。
それは、公園で寝そべりながら見上げる夜空だった。


('A`)「なんて真っ黒いんだ」

('A`)「だからこそ星が綺麗に見えるのか」

('A`)「それにしても"星の数ほど~"というほど星が沢山だ」






('A`)「・・地球が丸く感じるよ」

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 23:48:14.22 id:Z20vMipO0
星というのは宇宙に転がるただの石コロだ。
だけど月のおかげで今俺の目には輝いて見える。
誰の手も借りないで輝ける人物とは存在するだろうか?少なくとも俺は誰かの手助けがないと何もできない人間だ。




そんなことを考えながら眠りについた。
今回の旅での、初めての夜だった。



翌朝、激しい激痛とともに俺は起床した。
両足がパンパンになっている。・・筋肉痛らしい。公園の時計を見たらまだ5時だった。
空はまだちょっとだけ蒼い。涼しい風が吹いている。


('A`)「・・っく。いってえ・・・。」

('A`)「バイクに乗る前に、ちょっとした準備運動をすればよかった」

('A`)「でも、筋肉痛は動かないと治らないしな」

('A`)「・・今日も頑張って漕ぐか」

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 23:49:28.45 id:Z20vMipO0
俺は公園の蛇口で顔を洗い、数メートル先にあったコンビニでおにぎりを一つ買った。
コンビニまでの道のりでさえ筋肉痛の身には少々辛い。
・・朝昼夜の食事のうち、一番重要なのは勿論朝だ。だから、朝くらいしっかりとした栄養を取りたいと思った。
それに、ここでちゃんとした一品を食べておかないと間違いなくぶっ倒れると、体と頭が分かっていた。




('A`)「う・・うまい・・」

('A`)「ただのコンビニおにぎりがこんなに美味いなんて・・・」

('A`)(そういえば親父、こんなこと言ってたなあ)

(,,'A`)『米はなあ!噛めば噛むほど味がでるんだ!!』

(,,'A`)『ドクオ!たまには、ごはんを甘くなるまで噛んでみろ!』



('A`)「わーったよ親父」

12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/28(土) 23:51:36.34 id:Z20vMipO0
米粒を味が甘くなるまで何度も何度も噛んで味わってみた。
たった一つのおにぎりなのに、腹は結構膨れた。なんだか感動的だ。




・・そして、俺は両足をよく揉んでからマウンテンバイクに乗り込み、出発した。
風呂の中で揉むと筋肉痛はよく治るのだが・・・
そういえば風呂はどうしよう。銭湯も高いなぁ・・・・。





こうして俺の旅は二日目を迎えた。
今日でこの県を出られるだろうか?

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 00:37:51.03 id:NaTQYXuX0
知らない街を走る。知らない店、知らない道、知らない人。
県内といえども、所変われば大分空気が違ってくる。この街は、俺の街より多少都会かもしれない。
ここの通りはやたら塾が多い・・。どの建物も「夏季集中!!」だの「勝負の夏!!」だのそんなコピーを出している。
多分、俺は大学には行かないだろう。
元々頭は悪いし、受験勉強でとても重要な時期と捉えられている高二の夏に、旅なんかしちゃってるロクデナシだから。









('A`)「そーいや、まだ講習中だったなあ・・」

('A`)「あのバカどもは、俺がいなくなって清々してるだろうな」

('A`)「俺のほうが学力的にはバカなんだけどな」

('A`)「あ~、ずっと旅にしていたいよ。学校なんかに戻りたくない」

('A`)「ま、夏休みはまだまだあるか・・」

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 00:40:30.35 id:NaTQYXuX0
・・ずっと旅をしていたい。か。
ずっと旅をする。そんな生き方は至極、理想的だと思った。でも、無理だろうな。
ギコのおっさんは昨日言っていた。自分くらいの年になると旅に出たくても出られなくなると。
それは、守るものができるからだ。家、妻、子供、お金。それらを守るために、やるべきことがどんどん生まれてくる。



・・俺にも、そのうち守るべきものが生まれてくるのだろうか?






('A`)「ここらでちょっと休憩しよう」



俺は塾がたくさんあった通りを外れたところにあった公園に自転車を停めた。
旅人にとって公園はドライブインみたいなもんだ。水飲み場、トイレ、日光を凌げる小屋、なんでもある。
用をたしたあと、俺は小屋で休むことにした。

13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 00:42:14.98 id:NaTQYXuX0
('A`)「今日も暑い・・。もうTシャツが汗でびしょびしょだ」

('A`)「しかも今日は黒シャツだからな。どう考えても判断ミス」

('A`)「"朝、いくら涼しくても、昼間になればいくらでも暑くなっていく"ということを覚えておこう・・」


俺はシャツとトランクスをちょうど一週間分、7枚持ってきていた。
だから、6枚目のTシャツとトランクスになったら、コインランドリーか何かで洗濯をすることに決めてある。
風呂に入ることを最低限に抑えなければならないので、身なりくらいいつも清潔にしていなければならない。




('A`)「正午か・・・」

('A`)「もうちょっと進んでから休めばよかった」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 00:43:27.87 id:NaTQYXuX0
逐一何かを呟きながら乾パンをかじる。旅に出てからひとり言は確実に多くなったw
視線の先では、野球をしていた子供たちが昼食のためか次々と帰っていく。
どの子供たちも肌が真っ黒だ。




('A`)「どれ・・俺も少しは焼けたかな?w」

シャツの裾をめくってみる。焼けたならば、くっきりと色の違いがわかるはずだ。

('A`)「む・・。なんだよ。くっきりにはなってるけど、ただ赤くなってるだけじゃないか」

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 00:44:41.12 id:NaTQYXuX0

そうなのだ。俺は日焼けしにくい体質で、日光の下にいても、皮膚は赤くなるだけで黒くなることは少ない。
いつもは異常なほど白い肌をしていて、それが原因でよく馬鹿にされたりいじめられたりしていた。そう、今でも。
こんな顔の性もあってか、病人のように見えるらしい。
そう罵られるたび、本当に病気になっている人たちにすまない気持ちになる。


('A`)「じゃ、そろそろ出発しよう」



県の出口まであと何キロだろうか・・ 地図で見ても、現在地がよくわからないので、あまり感覚がつかめない。
公道の看板はまだか?


('A`)「お、あった・・ なになに、25キロ・・?」





一時間に3キロ進めるとして・・あと8時間くらいか・・・
よし。がんばろ。 


19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 00:53:14.90 id:NaTQYXuX0
あっ!






という間に
日は暮れた。昨日と比べるとだいぶ小汚くて小さい公園に俺は停まった。
結局、県内からは出られなかった。

('A`)「くっそーー・・・。もう少しでここから出れたのにな」

('A`)「4時ごろから頑張りすぎたのが原因だな」


('A`)「腹減った・・・。死ぬ・・」



ベンチに座り、ペットボトルに詰めた公園の水道水を飲んでいると、向こうがわに、ツナギを着た男の人を発見した。

('A`)(誰だあの人・・・)

21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:02:47.41 id:NaTQYXuX0
('A`)「ホモっぽい」




そう思っていると、突然その男は、俺が見ている目の前で
ツナギのチャックを外し始めた。





N| "゚'` {"゚`lリ「たべないか」






そう言って男はツナギの紛らわしい内ポケットから、よりによってかバナナを取り出した。

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:04:01.93 id:NaTQYXuX0
Jml3XqUr0
総合にてthx

24 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:09:59.87 id:NaTQYXuX0
('A`)「え・・え?」


N| "゚'` {"゚`lリ「たべないかと言ってるんだ」


N| "゚'` {"゚`lリ「はら、減ってるんだろう?」

('A`)「ま、まあそうですけど・・・」




この公園、もしかしてハッテン場か何かだろうか?
もし断ったのなら、「じゃあ俺のバナナを咥えな・・」とでも言われそうだったので、やむを得ずバナナは頂いた。
とはいえ、数日ぶりの甘味はやはり美味しかった。バナナはフルーツの王様だ。



N| "゚'` {"゚`lリ「・・・」

(;'A`)「・・・もぐもぐ・・」



ツナギの男は俺をとてもいい顔で見つめている。勘弁してくれ。

27 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:20:27.43 id:NaTQYXuX0
バナナを食べ終わると、俺は男に感謝の言葉を告げ、トイレに向かった。というか、逃げた。
パニックでトイレに逃げてしまったのだ。入口に足を踏み入れた時点ですぐに後悔した。
菊穴の死を覚悟した・・・・・。


だが、体は逆だ。いや違うぞ、決して興奮していきり立ったとかそういうわけじゃない。
なんだか急に尿意を感じてきたのだ。ベンチで水を飲みすぎたんだな・・・



・・・・やばw漏れるww


トイレに入って3分くらい経った。男は来ない。
もう大丈夫だろうと思って、俺は排泄を始めた。
しかし焦りは隠せない。


ジョーーーーー・・・・

(;'A`)(はやくはやく全部でろーーー)  

N| "゚'` {"゚`lリ「・・・・」

(; ' A ` )「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

・・・この男は気配を消す術でも知ってるに違いない。←涙声

30 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:29:42.33 id:NaTQYXuX0
男は黙ったまま、いい顔のまま、俺の隣で排泄を始めた。
俺は一番手前の便器で用をたしていたのだが、男はちゃっかりと俺の隣の便器を使った。逃 げ ら れ な い。


そして
男はおもむろに語り始めた。
俺は硬直。




彼_ ちょっとワルっぽい自動車修理工で(自分でワルっぽいとか言うな)
阿部高和と名乗った(名乗るな)

だがしかし・・・


ホモ・セックス・・ いや、 旅には慣れているらしく
トイレに入るなり昔の話しをいくつかしてくれた。(よりによってトイレで)
とりあえず・・助かったような気分だ。



N| "゚'` {"゚`lリ「君、高校生っぽいな」

N| "゚'` {"゚`lリ「よかったのかホイホイ家を出ちまって」

N| "゚'` {"゚`lリ「旅はノンケだってかまわないで食っちまう行為なんだぜ」

だが言ってることはよく意味がわからない。

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:37:54.03 id:NaTQYXuX0
(;'A`)「そ・・そうなんですか、とりあえず、外出ましょうよ」

N| "゚'` {"゚`lリ「そうだな」




俺たちはトイレの外に出た。俺にしてみれば、脱出した。
阿部さんはあそこの小屋に行こうと提案したが、俺は全力で拒否。ベンチで話しの続きを聞くことになった。
時折意味がわからないときもあるが、経験者の話しはやはり興味深い・・・・。


もちろん旅のな




('A`)「・・・ありがとうございました。じゃあ、俺そろそろ・・・」

N| "゚'` {"゚`lリ「ドクオくん」



(;'A`)「は・・はい?」



N| "゚'` {"゚`lリ「やらないか」


33 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:42:45.81 id:NaTQYXuX0
(;'A`)「・・・」

N| "゚'` {"゚`lリ ←いい顔




('A`)「ぎにゃあああああああああああああああああああああ!!!」







本気で恐怖を感じた俺は、荷物を迅速にまとめて自転車に乗り込んだ。
疲れなんて吹っ飛んだようにハイスピードで公園を出て行く。
阿部さんはベンチに座ったままだ。 追ってこないでずっと俺を見つめているのが逆に怖かった。



(;'A`)「はぁ・・はぁ・・・ ここまでくれば大丈夫だろ」




少し離れた神社にたどり着いた。さっきの公園より、さらに劣悪な環境で寝ることになってしまった。
でもまあ・・、阿部さんの腕の中で寝るよりは何倍もマシだ。

36 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:56:49.99 id:NaTQYXuX0
(;'A`)「・・・」

寝袋で(なぜか)全身をガードしながら、その日の夜は眠りについた。
ふと冷静になってみると、阿部さんには悪いことをしてしまったかもしれない。
食料をもらって、経験談をしてもらって・・ なのに俺は全力でここまで逃げてきてしまった。
だが!あそこで逃げなかったら間違いなく俺はヤラれていただろう。
・・・こんな"出会い"もあるんだな。



37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 01:57:30.73 id:NaTQYXuX0


とりあえずピンチは逃れた。それでもうオーケーだ。
だが、ピンチというのは案外またやってくる。


・・・・



_翌朝

('A`)「あぁー・・よく寝た。よし、ケツに違和感なし。大丈夫だ」

(;'A`)「・・・だがジーパンのポケットに違和感あり・・・・。なんだかスカスカする・・・」


(;'A`)「もしや・・・・・!?」


財 布 を な く し て し ま っ た 。


(旅路編 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/07/29 11:15:30

9jigendaddyjigendaddy   旅路編2

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:19:55.72 id:JMs7lmdW0
目的地であるショボンおじさんの家はラウンジ県にある。
そして俺の現在位置はVIP県。ラウンジに行くには、間に挟まれたもう一県、サロン県を越えなければならない。
順調に旅が進んでいれば、今日の午前中にはサロン県入りを果たせたはずだが、ここで初のトラブルが発生した。







(;'A`)「あwせdrftgふゅいlpp」

(;'A`)「やばい・・・ リュックのどこを探してもない・・・」

(;'A`)「どうしようどうしよう・・」






そう、財布を無くしてしまったのだ。




~ ('A`)ドクオは夏の旅に出るようです ~

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:21:57.05 id:JMs7lmdW0
街は夏の日曜日ということで大変のどかだ。人も少ない。
しかしそんな街並みに似合わない形相で、必死で自転車をこぐ男が一人。俺だ。




(;'A`)「ぬわあああああああああああああ」

(;'A`)「確か昨晩は・・・、そうそう、空腹に負けてコンビニでおにぎりを買ったんだ」

(;'A`)「財布はそのままジーパンのポケットに入れておいたはずだ・・」

(;'A`)「そして、停まった公園で阿部さんと出会った」

(;'A`)「そこでの一悶着で、きっと公園のどっかに財布を落としてしまったんだな・・・」





ならばその公園に向かえば財布は見つかるか? ・・・世の中そんなに甘くない。

だって・・・・。公園自体見つからない。

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:26:19.02 id:JMs7lmdW0
(;'A`)(はぁはぁ・・・ 昨日は気が動転して夢中で自転車を漕いでいたからな)

(;'A`)「公園へ戻る道がさっぱりわからん!!!!」

(;'A`)「右! 左! 左! 左! よし、ここで右だ!」




俺はハンドルを曲がり角のたび直感でさばいていく。
しかし、昨日立ち寄った公園にはなかなか立ち寄れない。
・・・そして何個目かの信号機に足を止められたときだった。





(;'A`)「あ・・! この看板!見覚えがあるぞ・・」

(;'A`)「こ、ここで左だっーー!!」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:28:54.67 id:JMs7lmdW0
なんとか俺は財布を落とした(と思われる)公園に辿り着いた。
夜のときはあんなに怪しい雰囲気だったのに、昼間はからっとひらけた場所に見える。




俺は早速ベンチやトイレなどを捜索してみた。
・・だが財布は見つからない。





絶 望 的 だ

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:30:19.12 id:JMs7lmdW0
( A )「・・・・」



「おにーちゃん」



( A )「・・・?」


目線を下げると、ベンチで苦悩する俺のそばには4歳くらいの少年がいた。
なんだ?お金でもくれるのか少年よ。


「もしかして、おにーちゃん、さいふのひと?」


('A`)「・・!!」

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:33:28.14 id:JMs7lmdW0

('A`)「そ、そうだ!おにーちゃんは財布の人だ!」

('A`)「ぼ、ボク?財布のこと何か知ってるのかな?」



少年に俺は全ての希望を傾けた。

・・だがしかし、返答は酷すぎるものだった。




「んとね、ボク、ラジオたいそうのかえりみちにおさいふみつけたんだけどね」

「あさごはんたべてまたここにきたら、なくなってた!」


( A )「・・・・・」

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:40:07.19 id:JMs7lmdW0
今日も今日とて蝉は鳴きまくる。俺は心の中で泣きまくる。少年は友達に呼ばれて駆けていく。







「いかないと!じゃあね!おにーちゃん」

( A )「あい・・・」


朝の時点では財布があったんだ。


・・誰かが届けてくれたのか?

だが、そんな一縷の希望は、次の瞬間すぐさま吹っ飛んだ。


('A`)「・・・・このへんの交番に行ってみよう」

13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:46:18.54 id:JMs7lmdW0
('A`)「・・・・このへんの交番に行ってみよう」


がんっ!


('A`)「いてて・・、ぼーっとしてたから気付かなかった」

('A`)「・・あ、倒れちゃったよ」

俺が転倒させてしまった公園のゴミ箱から、放り出された見覚えのある柄の財布。


('A`)「!!!!!!!!!!! 俺のじゃないか!!!」


だがもちろん。


( A )「中身・・抜き取られている・・・」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:50:18.58 id:JMs7lmdW0
・・・・俺の目の前は真っ暗になった。


_そのころ、ドクオがいる公園から少し離れた通り。


DQNA「5万も入ってたぜーーww」

DQNB「だせぇ柄のわりにはたくさん入ってたな」

DQNA「よし!メシでも食おうかww」

DQNB「うひひひww」


N| "゚'` {"゚`lリ(・・・におうぞ)


DQNA「・・なんだあいつ?」

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:53:02.76 id:JMs7lmdW0
N| "゚'` {"゚`lリ「待ておまえら」

DQNA「・・・あん?」

DQNB「誰だよてめぇ」

N| "゚'` {"゚`lリ「貴様らに名乗る必要はない」






N| "゚'` {"゚`lリ「その金はどうやって手に入れたんだ」

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:56:21.39 id:JMs7lmdW0
DQNB「・・・はぁ?」

DQNA「さっきから意味わかんねーだよてめー」

DQNA「バイトで稼いだんだよ」








N| "゚'` {"゚`lリ「・・・」

すりすり

DQNA「ちょ!うわ!てめーー!!! なに下半身すりつけてんだよ!!!やめろーー!!」

18 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 15:58:49.67 id:JMs7lmdW0
N| "゚'` {"゚`lリ「俺はノンケでも食っちまうような男なんだぜ」

N| "゚'` {"゚`lリ「本 当 の こ と を 言 い な・・」


すりすりすりすり・・・・


DQNA「ひっ!わ、わかった・・言うよ!だからやめろーー!!」

N| "゚'` {"゚`lリ「よし」





DQNA「・・・"ハッテン公園"で拾ったんだよ。・・・な」

DQNB「・・・な」

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:03:40.87 id:JMs7lmdW0

N| "゚'` {"゚`lリ(やはり・・・)

N| "゚'` {"゚`lリ「その金は俺の友人のものだ」

N| "゚'` {"゚`lリ「さあ、返すんだ」




DQNB「はあ!!??何言ってんだよ!もう俺たちの金なんだよ!」

DQNB「・・さっきからわけのわからないことばっか言いやがって・・」

DQNB「くたばれホモ野郎ーーーー!!!!!!!!!!」


がっ!!!


DQNB「・・っ、なんて力だよ・・!!!」

N| "゚'` {"゚`lリ「ケ ツ の 中 で シ ョ ン ベ ン さ れ た い か?」

21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:05:57.61 id:JMs7lmdW0
DQNB「ひっ!!!!!!!!!」

DQNB「あ・・あ・・・・」


じょおおおおお・・・・・


DQNA「わ!きたねぇー!!なにおまえ漏らしてんだよ!!」

N| "゚'` {"゚`lリ じーーーっ

DQNA「・・・」

DQNA「けっ、返せばいいんだろ!! おらよ!!」


N| "゚'` {"゚`lリ「よし。・・まったく、前戯もしないうちに漏らしちまうなんて」

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:09:23.08 id:JMs7lmdW0
N| "゚'` {"゚`lリ「・・もう用はない。帰りな」




DQNA「おい、いつまで泣いてんだよ!行くぞ!」

DQNB「ひ、ひぃーー・・・」








N| "゚'` {"゚`lリ「ドクオくんは今、どこだろうか・・・」

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:10:57.75 id:JMs7lmdW0
・・・・・・


俺は下をうつむきながら、街を自転車を押しながらふらふらしていた。
所持金が無くなった。まだ家を出て3日目だというのに。
自分の不注意で、盗まれた。王道的に盗まれた。ゴミ箱に空っぽの財布が捨てられていた。
お母さんからもらった二万円が盗まれた。貯金していたなけなしの三万円が盗まれた。
もう、駄目だ。お金が無ければ旅を続けられない。
続けられる術があるとしても、もう気力がない。何かがぷちんと切れてしまった。



ごめん、親父。

ごめん、お母さん。

ごめん、俺




もう、だめぽ。

25 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:17:46.62 id:JMs7lmdW0
( A )「・・・ひぐ、ひぐっ」



旅に出てからまだ三日。
この旅において俺は初めて完璧に泣いた。子供のように嗚咽まじりで泣いてしまった。
俺、超絶かっこわりぃなーーー。

・・でもそれも最初で最後さ。

















( A )「・・帰ろう」

30 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:43:15.68 id:JMs7lmdW0
今日の日差しは一段と強い。
暑さと情けなさが一緒になって俺の体に襲いかかる。
・・・なんだかひどい臭いがする。そうか、もう三日も風呂に入っていないのか。



体くらいは綺麗にして帰ろう・・・




( A )「ポケットにかろうじて300円あった」

( A )「このお金で風呂に入って、そんで、帰ろう」

( A )「アニメでも見よう」

( A )「親父にぶん殴られるだろうな」


31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:46:31.65 id:JMs7lmdW0
しばらく街を人生の敗北者のように歩いた。
進行速度は亀のように遅い。かなりノロノロとしている。
・・銭湯はどこだろうか?癒されたい。心と体の疲れを癒したい。


('A`)「・・・あった」


銭湯は昼間というのになかなかの盛況だ。


('A`)「みなさんすまん・・・。ちょっと臭いが利用させてもらうよ」








銭湯の利用料金は250円だった。これで手元に残ったのは50円玉だけ・・。切なすぎる。

33 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 16:52:32.42 id:JMs7lmdW0
('A`)「・・いい湯だ」


体を洗い、湯船に浸かる。
体を洗うことが、髪を洗うことが、風呂に入ることが、こんな気持ちよく感じるのは初めてだ。
外にいればガンガンに強く感じる日差しも、銭湯の窓を通せば、柔らかい光に変わる。


( A )「・・残念だ」

( A )「くそっ」




がらっ



そのとき、浴場のドアが勢いよく開いた。
いい体格をした男が、前を堂々と見せてずんずんと入ってくる。なんてデカイおいなりさんなんだ。

N| "゚'` {"゚`lリ「・・・」

35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:00:11.76 id:JMs7lmdW0
湯を体に威勢よく3回ほどぶっかけ、その男は湯船に入ってきた。
湯気でよく分からないが・・・、見たことがある顔だ。 あ、阿部さんじゃないか!!!


ここで疲れを癒して、さあ帰ろうってときに・・なんでまた出会っちまうんだ。
元はおまえと出会ったせいで財布を無くしてしまったんだ。責任とれ!あほ!ホモ!!






('A`)(・・離れよう)


もちろん、ついてくる


( A )「・・・くっ」

36 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:05:38.48 id:JMs7lmdW0

N| "゚'` {"゚`lリ「仕事の昼休みに時々こうして来ているんだけどね」

N| "゚'` {"゚`lリ「・・・ここはいい温泉だ・・」

N| "゚'` {"゚`lリ「色んなところを旅したが、こういうただの銭湯が意外といいんだ・・」

N| "゚'` {"゚`lリ「いい湯だろ、ドクオくん」

('A`)「・・そーっすね」


37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:08:16.14 id:JMs7lmdW0
N| "゚'` {"゚`lリ「それにしても、また君に逢えるとは嬉しいよ」

('A`)(俺はさっぱり嬉しくねーーよ)

N| "゚'` {"゚`lリ「昨日はすまなかったね。最初はひょんな気は起きなかったのだが・・・」


N| "゚'` {"゚`lリ「あの後ちょっと考えたんだが、やっぱり俺は君みたいなひたむきな青年は掘れないよ」


N| "゚'` {"゚`lリ「か わ い す ぎ て ね」



('A`)「・・・・」

風呂に入っているのに鳥肌が出た。阿部さんは恍惚の顔で天井を眺めている。

38 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:13:53.79 id:JMs7lmdW0
('A`)「・・・・」

風呂に入っているのに鳥肌が出た。阿部さんは恍惚の顔で天井を眺めている。

('A`)「それじゃ・・・」


俺はすぐさま浴場を出た。もう少しゆっくりしていたかったのに、あわよくば、のぼせるくらいずっと入っていたかったのに・・。
だがあのまま一緒に湯船につかっていたら、何をされるかわからない。本当に、怖い。
阿部さんはまだ恍惚の表情で入浴している。よかった。追ってこない。





('A`)「・・全力で自転車こげば着けるかな?」


俺は今後について、乾パンをかじりながら建物の外にあったベンチに座りながら考えていた。
・・・ぼーっとしていた。まるでボケた老人のように精力がない。


N| "゚'` {"゚`lリ「どうしたんだい?元気ないな」


・・気がついたら、精力みなぎる男・阿部が隣に座っていた。

・・・ベンチと彼は相性が良すぎる。

39 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:18:13.22 ID:R/Mjj4Ci0
俺は判断力が低下していた。「もーどーにでもなれー♪」ってなスタンスだった。
だが、それが幸を呼ぶことになるとは!


('A`)「・・もういいや。全部話してしまおう」

N| "゚'` {"゚`lリ「なんだい?」

( A )「お金を盗まれたんです・・・」



たのむから、「そうか。じゃあお金をやるからしゃぶれ」
なんて言わないでくれよ・・・?




N| "゚'` {"゚`lリ「・・やはりこれはドクオくんのだったか」


('A`)「!?」

40 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:18:54.05 ID:R/Mjj4Ci0
そういって阿部さんはポケットから封筒を取り出した

N| "゚'` {"゚`lリ「地元の不良たちが誰かの金を盗んでいたんだ」

N| "゚'` {"゚`lリ「俺の睨んだとおりだ。君のだったな」





晴天の霹靂だ。
ナイス阿部。 阿部サイコー。 掘られてもいい。 さきっちょだけならいい。 やっぱうそ。

でもキターーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

41 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:20:35.74 ID:R/Mjj4Ci0
('A`)「あ・・あ・・あ・・」

(*'A`)「ありがとうございます」


N| "゚'` {"゚`lリ「いや、礼には及ばんよ」


('A`)「それじゃあ・・・」


すっ    阿部さんは手をひっこめた。 


N| "゚'` {"゚`lリ「でも、渡せないなぁ」にやり


(;'A`)「!?」






やばい。今 度 こ そ 処 女 奪 わ れ る ☆

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:26:50.53 ID:R/Mjj4Ci0
(; A )「んーーー!!!」

俺は無意味にケツの穴を全力で締めていた。


N| "゚'` {"゚`lリ「ふふ・・。なにやってるんだ。」

N| "゚'` {"゚`lリ「さっきもいったろう。俺はノンケでも食っちまうが、君みたいな、一つのことに一生懸命になっている奴は食えない」


N| "゚'` {"゚`lリ「まあリラックスして話しをきけ」


(;'A`)「それじゃ・・・。なんで渡してくれないんですか!?」



N| "゚'` {"゚`lリ「ふふ・・」

N| "゚'` {"゚`lリ「ドクオくん。君は俺のことを」


N| "゚'` {"゚`lリ「・・・ヘンタイだと思っているだろう?」




N| "゚'` {"゚`lリ「・・正直に言わないと掘るよ」

44 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:30:25.17 ID:R/Mjj4Ci0
(;'A`)「ひっ!!!」


(;'A`)「は・・はい。思ってます。すいません」


N| "゚'` {"゚`lリ「うん。それでいいんだ。正直に言ってくれて嬉しいよ」



N| "゚'` {"゚`lリ「・・・でもそれじゃ」






N| "゚'` {"゚`lリ「君は旅人として失格だ」



・・・え?

45 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:39:13.19 ID:R/Mjj4Ci0
N| "゚'` {"゚`lリ「なんでだと思う?」

(;'A`)「・・・。わからないです」

N| "゚'` {"゚`lリ「ここで一つ聞くが、・・君は、なんの為に旅をしているんだい」

(;'A`)「え・・あの・・その・・それは・・・」

N| "゚'` {"゚`lリ「目的がいくつあるのか知らないが」

N| "゚'` {"゚`lリ「"たくさんの人と出会う"というのは含まれていないかい?」

(;'A`)「あ・・・あります」


N| "゚'` {"゚`lリ「だろう?」

N| "゚'` {"゚`lリ「・・・出会うのはいい人ばかりじゃない」



N| "゚'` {"゚`lリ「俺みたいなホモもいれば、お金を盗む悪いやつだっているのさ」

46 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:44:49.22 ID:R/Mjj4Ci0
N| "゚'` {"゚`lリ「いいかい?」

N| "゚'` {"゚`lリ「一度、旅立ったら」

N| "゚'` {"゚`lリ「どんな人とも対等に接することができる」

N| "゚'` {"゚`lリ「そんな柔らかい心を持ちな」


N| "゚'` {"゚`lリ「昨日や今日の俺に対する態度を見てたら、不安でしょうがない」


N| "゚'` {"゚`lリ「・・・俺が優しいホモで良かったと感謝してくれ」

47 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:51:36.28 ID:R/Mjj4Ci0
旅をすれば、優しい人に出会うだろう。
怖い人に出会うだろう。嫌な人に出会うだろう。可愛い人にも出会うだろう。
ホモの人にも出会うだろう。レズの人にも出会うかもしれない。子供と出会う・・。老人と出会う・・。
男と出会う・・。女と出会う・・・。
そんな当たり前のことを、俺は今ひとつ理解していなかった。自分の許容範囲を狭くしていたようだ。



('A`)「・・・・」

('A`)「そうですね・・。俺は旅人として失格でした」

('A`)「実は、もう旅を諦めようかと思っていたんです」

('A`)「でも阿部さんのおかげでまたやる気が起きてきました」

N| "゚'` {"゚`lリ「下のやる気もでてきたかい?」

(;'A`)「びくっ!!」

(;'A`)「・・・」

49 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 17:57:49.99 ID:R/Mjj4Ci0
(*'A`)「なに言ってんすか阿部さんwww」

N| "゚'` {"゚`lリ「ふふ・・そうだ。その精神を忘れるなよ」


そう言って、阿部さんは俺に金の入った封筒を手渡してくれた。


('A`)「それじゃあ・・。そろそろ行きます」

N| "゚'` {"゚`lリ「ああ。その前に」

N| "゚'` {"゚`lリ「下心まったく無しで、最後に握手をしよう」








そして俺と阿部さんはがっちりと握手をした。
彼の無骨な手を見ながら思う。阿部さんはホモだけど、男前だ。体じゃない、心がだ。
・・出発のときだ。阿部さん。本当にありがとう。

50 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 18:01:02.37 ID:R/Mjj4Ci0
('A`)「さよーならーー!!」

N| "゚'` {"゚`lリ「・・・・」

N| "゚'` {"゚`lリ(いい肌してたのにな)












封筒の中には、元の所持金5万円と、阿部さんが入れてくれたのであろう5千円札が入っていた。
ちょっと泣きそうになった。
それと・・・、底のほうに、阿部さんからの手紙と、地図が入っていた。

52 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 18:02:18.54 ID:R/Mjj4Ci0
N| "゚'` {"゚`lリ

しつこいようだが、世の中には俺みたいな人のいいホモばかりじゃない。

だから、ここにサロン県とラウンジ県のハッテン場をピックアップして記した。

赤文字で書いてある公園は、やばい奴らがたむろしている。躊躇なく掘られるだろうから、絶対行くな。

それ以外の場所はギリギリ大丈夫だ。それでも襲われそうになったら、俺の名前を出せ。

・・・それじゃあ、グッドラック。






ホモの阿部より



('A`)「阿部さん・・・・」

54 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 18:03:30.32 ID:R/Mjj4Ci0























阿部さんへの感謝の気持ちでいっぱいになりながら、
再び北へと自転車を漕ぎ始めた俺は、夕方6時ごろ、遂にサロン県入りを果たした。

(旅路編2 おわり)

(’A`)ドクオが夏の旅に出るようです
返信2007/07/29 18:19:53

10jigendaddyjigendaddy   白球編1

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:35:36.07 id:UhdQy5VM0
サロン県に入って一時間が経った。
街並みがガラっと変わってくる。空気も違うような気がする。
俺はこの県をまっすぐ縦断しなければならない・・・。
ゲームで例えれば、一面をクリアして、二面を攻略するような気分だ。


温泉に入ったことで疲れが取れていた俺は、日が暮れても今日はちょっと進んでみることにした。
家に出てから三日目。トラブルもあったがなんとか順調である。



未開の地を、一人で突っ走るということは確実に楽しい。
目に見る物全てが初めてだ。新鮮だ。夕陽も美しい。




自分の街で見る夕陽はあんなにキライだったのに・・・。




('A`)ドクオは夏の旅に出るようです

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:38:02.30 id:UhdQy5VM0
('A`)「あーー疲れた・・・」

('A`)「このへんで今日は野宿だな・・」

('A`)「野宿にもだいぶ慣れてきたwwあ・・そういえば」


俺はリュックから、阿部さんにもらった「ハッテン場リストMAP」を取り出した


('A`)「えーとここは・・」

('A`)「よし。入っていないなww」


身の安全を確認し、慣れた手つきで寝袋を準備した。
ふかふかのベッドで眠れる日はいつだろうか・・・・・。
まあいいや、最近は寝袋の寝心地も良いと思えてきた。

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:40:34.77 id:UhdQy5VM0
ぶんっ・・・ ぶんっ・・



数時間が過ぎる。俺は胸がわくわくして中々寝付けなかった。
やっと眠りにつくかつかないか。というところだった。

さっきからなんだけど、俺が寝ている茂みの先から、何かを振る音が聞こえる。
なんだろう?正直五月蝿い。やっと眠れそうだったのに、これでは寝れない。





ぶんっ・・ ぶんっ・・・


('A`)「ねれねぇ」

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:46:39.54 id:UhdQy5VM0
俺は、完全に目が冴えて立ち上がった。
茂みを越えると、そこには、ランニング一丁で、汗だくになりながらバットの素振りをする青年の姿が。






(;^ω^)「297・・298・・299・・・」

(;^ω^)「300!! よし、終わったお・・w」


( ^ω^)「ふぅ・・。お?」


ぬうっ





('A`)「・・・・・」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:48:25.67 id:UhdQy5VM0
(  ω )「・・おっ」


(;^ω^)「おばけだおーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」


(#'A`)「・・・」




これが俺とアイツとの最初の接触だった。
なんて失礼なやつ。

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:51:15.38 id:UhdQy5VM0

(;^ω^)「・・・がくぶる」

(#'A`)「・・・」

(#'A`)「うがーーー」



(;ω;)「うひゃああああああああ」


どすっ

(;'A`)(尻餅付きやがったよコイツ)


( ω )「・・・」

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:53:04.54 id:UhdQy5VM0
('A`)「おーい?大丈夫ですか?俺は幽霊じゃないよ」

(;^ω^)「・・はっ!ほ、本当かお??」

('A`)「うん。足あるよ。ほら」

( ^ω^)「良かったお・・。幽霊だったらこのバットでぶん殴ってたお」

('A`)「その前に尻餅ついてちゃ、幽霊に逃げられちゃうよ」

( ^ω^)「そうだおねwww うはww」







(;^ω^)「・・・じゃ、君は誰なんだお?」

( ^ω^)「このへんじゃ見掛けない顔だお」


('A`)「・・ん。俺は・・」

13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:55:15.89 id:UhdQy5VM0
人見知りが激しい俺だが、こいつには口が滑らかに動いた。
・・・なぜか、こいつには俺と同じような何かを感じたんだ。
簡単な自己紹介をすると、頼んでもないのに、今度はあっちが自己紹介をし始めた。



( ^ω^)「ごほんww ボクの名前は内藤ホライゾンだおww」

( ^ω^)「サロン県立サロン北高校の二年生だおww」

( ^ω^)「このバットを見ればわかる通り・・ 野球部だおww」



そう言うと、内藤はいかにも野球部らしくバットを2、3回振った。
なんとこいつ・・ 内藤は俺と同い年だった。
旅に出て、同年の人と出会うのは初めてだ。俺は自然と胸がわくわくした。

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:56:57.84 id:UhdQy5VM0
('A`)「そっかぁ・・・」

('A`)「・・・」

('A`)「素振りうるさくて眠れなかったんだよ」

( ^ω^)「すまんお・・w」




( ^ω^)「・・って」

( ^ω^)「ドクオくんはどこで寝てたんだお!!??」



('A`)「ん?あそこ」

俺は茂みの向こうを指差す

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:59:07.45 id:UhdQy5VM0
( ^ω^)「うはwwww テラ野宿www」

(;^ω^)「な・・なぜなんだお???」




('A`)「今・・、旅に出てるんだ」

( ^ω^)「た、たび!?」

(* ^ω^)「かっけぇーーお!!男のロマンだお~wwwww」



内藤は俺の一言一言にいちいち反応して、目を輝かせてくる。
17歳にもなって、なんて人懐っこい奴なんだ。


('A`)「・・・う、うん。そうだな、ロマンだなw」

('A`)「内藤は明日、試合でもあるのか?」


18 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 20:59:53.27 id:UhdQy5VM0
('A`)「そうなのか。おまえ、レギュラーなのか?」

( ^ω^)「もちろんだお~w」

( ^ω^)「一番センターだお☆」


('A`)「すげぇな~・・・・」


俺とこいつは似てると言ったが、撤回。
なんだよ、すげーじゃないか。一番センターなんて。足速いんだろうな。


( ^ω^)「それじゃ、明日の試合に備えて今日はもう帰らなくちゃいけないお!」

( ^ω^)「縁があったらまた逢うお~♪」



そして内藤は闇の中へと消えてった。
俺は、持ってきたラジオでプロ野球中継を聴きながらその夜は眠りについた。

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:07:59.84 id:UhdQy5VM0
・・翌朝、いや、翌昼か?
俺は汗ダラダラになって目覚めた。昨日は予想外に疲れていたらしい。腕時計の針は11時を指している。


('A`)「あっちいいいい・・・死ぬ・・やばい・・」

('A`)「うっかり寝すぎたみたいだな・・」


気分が悪い。昨日の夕方あたりはあんなにさわやかな気持ちだったのに。
まあ、よくあることか?とりあえず俺はこのダルすぎる状態をいち早く抜け出すため、さっさと出発することにした。


('A`)「ふぃ~・・・やっぱり風にあたると気持ちいいな」

('A`)「汗も吹っ飛んでいくよ・・」


ある看板が目に留まった


← サロン北高
       500M


('A`)「・・内藤の学校だ」


22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:14:08.78 id:UhdQy5VM0
俺はハンドルを左にきる。校門らしき場所はすぐ視界に入った。
しかし俺が行きたいのはそっちじゃなく、敷地の奥にあるであろうグラウンドだ。
バットにボールが当たる気持ちのいい音が聞こえてくる。練習試合はこの学校でやっていたんだ。



('A`)「内藤のやつ、活躍してるかな?」



学校の外周をぐるりと回ると、グラウンドが見えてきた。
サッカー部が練習している奥で、黒のユニフォームと白のユニフォームが試合をしている。
遠すぎて内藤の姿は見えない・・・。俺はもっと近くに行くことにした。


('A`)「よっし。ここからなら快適に観戦できる」

('A`)「白のほうが北高かな?」

24 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:20:44.82 id:UhdQy5VM0
黒のユニフォームを着ている高校が攻撃らしい。
いかにも四番打者気質な体格をした男が、ネクストバッターボックスでバットをぶんぶん振っている。

・・とすればセンターの守備場所にブーンはいるはずだが


('A`)「後ろ姿だからよくわからんわ」



「ストライーーク、バッタアウッ!!」



黒の打者が三振を取られた。
次はホームランバッターだ。きっとかなり飛ばすだろう。北高、頑張れ!


('A`)(やっぱりスポーツはするより見るほうにかぎるよ)


ちなみに俺は、自分の投げたボールが10メートル離れた相手にも届かない。


27 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:25:57.97 id:UhdQy5VM0
一球目・・ 外角低めにストライク。打者は見逃す。様子見か?
二球目、三球目とボール玉が放られ、四球目は豪快にフルスイング。しかしファールチップだ。
五球目はまたもボール。これでカウントはツースリーフルカウントだ。


('A`)「wktk~・・」


ピッチャーが汗をぬぐい、まっすぐを投げる。 
やばいぞ、打者のバットを振るタイミングがばっちりだ。
・・これは


かきーーーーーーん・・・


('A`)「わ・・わあああ、とぶとぶ~ww」

29 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:35:22.04 id:BS6CGQvO0
俺が身を翻した瞬間、打球が頭の脇にどすっと落ちた。
タイミングがもう少し遅かったら、脳天激突していたかもしれない。あー怖い。


('A`)「あーびびった」

('A`)「でもホームランボールゲットだぜww」


俺は土のついた硬球を手にとり、投げる素振りなどして観戦を続けた。
・・向こうから人の声が聞こえる。


「おーーい、草刈りー!! 飛んだボールまだかー!!??」

「すいませんだお~・・ 確かここらへんに飛んだんですお・・」


どうやら草刈さんという人がこのボールを捜しているみたいだ。そうだよな、練習試合だし。

32 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:42:48.43 id:BS6CGQvO0


「・・困ったお~・・。練習試合なんだからボールは失くせないお~・・」


・・・待てよ?この口調は・・・


(;^ω^)「早くしなきゃコーチに起こられるお~・・」


('A`)(内藤じゃねーか)

('A`)(レギュラーがわざわざここまで来るわけがないが・・)


俺はホームランボールを内藤のほうへ投げた。
とはいっても、ボールは数メートルしか飛ばず、あとは内藤のほうへ転がるだけだ。


( ^ω^)「おっ!! ボールだおww 投げてくれた人は誰だおww?」

34 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:48:10.59 id:BS6CGQvO0
('A`)「・・よっ」


(;^ω^)「ド・・ドクオくん!!??」


('A`)「近くまで来たから観戦してんだ」

('A`)「ホームラン打たれちゃったけどさ、勝ってる?」

(;^ω^)(やばいおやばいおーーwww)

(;^ω^)「い、今のホームランで同点にされてしまったおww。今は3対3だおww・・多分」

('A`)「・・そっかぁ」

('A`)「・・・いいよな、野球」

36 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 21:55:12.41 id:BS6CGQvO0
(;^ω^)「ほっ」



「おーい!! ボール拾い終わったら早く草刈りに戻れよー!!」


(^ω^;)「あ、すいませんだおww すぐ戻りますおww」



('A`)「・・・」

( ω ;)「・・・」



(^ω^:)「じゃあ、またあとでだお!!」

(;'A`)「あ、ああ・・」

39 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/29(日) 22:04:27.46 id:BS6CGQvO0
俺の心に、なんだか切なくてどろっとしたようなものが残った。
でも一番切なくて、悲しかったのは内藤自身だ。
"またあとで・・"その言葉を俺は真に受け、試合が終わるまで、ここの野原で試合を観戦することにした。
もっぱら心は空っぽで、試合どころではなかったんだが。
時々、視界に入ってくる内藤を見まいと俺は必死だった。あいつも、自分のこんな姿を見られたくないと思っているだろう。


・・やっぱりあいつは俺と同じなんだな。


色んな夏の過ごし方があるだろう。

恋人とデートしたり、友達と遊んだり、勉強を頑張ったり。

海に行ったり。山に行ったり。気ままに家で過ごしたり。







・・・こいつは草刈りをやってる。なんてひどい過ごし方だ。


誰かがフラフラ遊んでいる間、こいつは、素振りとか必死で練習してる。(と思う。昨日の様子からするに)
なのに、草刈りしてる。グラウンドにも入れてもらえない。・・なんでだよ。
・・・内藤。

(白球編1 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/07/30 21:38:21

11jigendaddyjigendaddy   白球編2

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:29:50.69 id:WttnhqY80
_サロン県

8月の空の下、性懲りも無く空は今日も青い。
なんでそんなに青いんだー。



蝉の鳴き声と、球児たちの怒声、歓声と、バットにボールが当たる音。
そして、乾いたアスファルトの上を自動車が滑る音しか聞こえない。
いや、それだけ聞こえれば十分なのだ。



俺が住んでいた街には、無駄な音が多すぎる。


俺はずっと白と黒のユニフォームの試合を見ていた。
試合がどんな展開になろうが、内藤はグラウンドの方を向かない。
俯いたまま、チンタラと草を刈っている。

彼の真っ白すぎるユニフォームに、背番号はついていない。




('A`)ドクオは夏の旅に出るようです

3 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:32:19.12 id:WttnhqY80
「ゲーームセット!!」

審判の声が轟く。試合が終わったようだ。




「ありがとっしたーーー!!」

練習試合といえども、きっちりとした挨拶を両チームは交わし合う。
内藤がやっとグラウンドの方を見た。しかし、すぐに元の体勢に戻った。


・・・


試合が終わると、白チームの監督らしき人物が西瓜を両手に抱え持ってきた。
マネージャーの女の子が出てきて、それを丁寧に何等分にも分けていく。
黒チームも、白チームのほうのベンチに寄ってきた。皆一斉に、和気藹々と西瓜を食べ始める。

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:34:21.70 id:WttnhqY80
('A`)「腹減ったな・・・」

('A`)(内藤はまだ草刈りをしているな)






(;^ω^)「ふぅ・・」

(;^ω^)「やっとここらへんは全部刈り終わったおww」

( ^ω^)「ん・・。みんなスイカ食べてるお」

( ^ω^)「おいしそーだおーーーwww」



5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:35:44.75 id:WttnhqY80
( ^ω^)「・・・・ww」



「あれ?まだ3個ぐらい残ってんじゃん!!」
 
  「誰か食ってないやつがいるのか?」

「ま、いいだろww食べちゃっていーよね?」

  「よしゃ!3回のホームランを称え、残りはやろう!」

「コーチあざっす!やった~!」

  「はは、まるでガキだなお前!」




( ^ω^)「・・・」

(  ω )「ま、いいお」

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:38:31.25 id:WttnhqY80


野球部は二玉のスイカをあっという間に平らげてしまった。
黒チームはそそくさと帰っていく。
白チームは、試合に出ていた人たちは校舎の方へ戻っていき、残った部員でグラウンドの整備が始まった。



「内藤ー!!いつまで草刈りしてんだよ!整備しに来い!!」









(;^ω^)「は、はい!すんませんだお!今すぐ行きますお」


7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:40:33.34 id:WttnhqY80
('A`)「そりゃないだろ」



コーチの内藤に対する扱いが酷すぎて、思わず声が出た。
内藤は汗をぬぐい、草刈り鎌を手に、グラウンドへ急ぐ。



・・だが、グラウンドを見れば、整備はもうほぼ終わっている。



それが理由でまた内藤は怒られた。たまらない気分だ。


「遅いんだよ内藤!!もう一年がほとんど片しちまったじゃねーか」


(;^ω^)「すいませんだおすいませんだお」

「・・・ま、いい。帰れ」

(;^ω^)「あざっした!失礼しますお!」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:43:45.76 id:WttnhqY80
校門前で内藤を待つことにした。
なんだか、あいつと話したい気分なんだ。どうしても。


('A`)(内藤おせぇな・・・)


俺は校舎を眺める。


('A`)(サロン北高か・・)

('A`)(さっきから出てくる生徒を見てるけど、女子のクオリティーはこっちのほうが上だなww)



('A`)(ん~。サロン北高・・)

('A`)(どっかで聞いたことあるんだよ)

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:46:39.16 id:WttnhqY80
ふと校舎を見上げた。
俺は上方にある垂れ幕に気がついた。



「祝 野球部甲子園2年連続出場」




(;'A`)「ぶっ・・!」

('A`)「強豪高なんだな」

('A`)「思い出した。去年の甲子園で、VIP県の代表と当たったんだよ」

('A`)「でも、今日練習試合してたってことは、今年は負けちゃったのか」

('A`)「3年連続はならなかったのか~・・ たいしたことないな」


13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:49:39.42 id:WttnhqY80
「そ ん な こ と な い お ~ w」


(;'A`)「!?」



(A';)


( ^ω^)「待っててくれてありがとだお~w」

('A`)「お・・おう」




内藤の脅かしに気が緩んだか、俺のすきっ腹が音をあげる。


14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:50:36.21 id:WttnhqY80
ぎゅるーーー・・



(;'A`)「あいや・・・」

( ^ω^)「腹減ってるお?」

('A`)「ん・・うん」

( ^ω^)「ボクんちに来るおww」




('A`)「い・・いいのか?」

遠慮という思考が今思えば欠如していた。
しかし本能には逆らえない。

( ^ω^)「おっおっww」

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:53:12.40 id:WttnhqY80
そして俺と内藤は、共に田舎道を歩いた。
サロン県の入口付近は店が立ち並んでいて、結構な街並みだと思っていた。しかし、ちょっと外れると途端に田舎の風景だ。
だが悪くない。全然悪くない・・・。
稲穂にトンボがたくさん止まっている。その身はまだ赤くない。行く先には、陽炎が揺れている。
いつのまにか、風の音と、俺たちが喋る音しか聞こえなくなった。

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:55:37.25 id:WttnhqY80
('A`)「それ、サロン北の制服か」

( ^ω^)「このポロシャツだっせーーおww」

( ^ω^)「ドックンもそう思わないかお?」

('A`)「ドックン・・wそんな風に呼ばれたのは初めてだよ」

('A`)「・・ってか胸んとこについてる校章?がもっさいな!なんだか!」

( ^ω^)「やっぱりwそう思うお?wフヒヒw」

( ^ω^)「ところでドクオのチャリ、かっけーおww」

( ^ω^)「旅専用って感じがするおw」

('A`)「んー。これか。親父のなんだ」

( ^ω^)「へぇーww」


こんな感じで俺たちは会話を幾つも交し合った。
・・・とんと久しぶりだ。こんな仲良く誰かと話したのは。
そんな何気ないことに俺はいちいち感動していた。
内藤と俺は気が合う。間違いなくだ。

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 21:57:54.49 id:WttnhqY80
('A`)「でさーww」

( ^ω^)「・・・」

('A`)「・・・?」




(  ω )「うそついて、ごめんだお」






俺は精一杯その話題を避けているつもりだった。
しかし、内藤のほうから出してくるとは。

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:00:52.89 id:WttnhqY80
('A`)「う、嘘って・・」

(  ω )「一番センターとか」

(  ω )「根も葉もねぇこと言っちゃってごめんだお」

('A`)「あ、ああ。そんなこと別に・・」

(  ω )「本当のボクは・・」

(  ω )「いつも・・」

(  ω )「今日みたいに・・・」






('A`)「・・」

('A`)「ぶえっきゅしょい!!!」

( ^ω^)「お?」


21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:03:29.51 id:WttnhqY80
('A`)ずずっ・・

('A`)「へへ・・。昨日、ちょっと涼しいカッコで寝ちゃったかな」



( ^ω^)「ティッシュだおww」

('A`)「ありがとよ」




俺は故意に大きなクシャミをつき、内藤の言葉を塞き止めた。
内藤はどうも自分を無理に責め過ぎているような気がする。気持ちはわかるけど・・


「駄目だ、内藤。

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:06:08.78 id:WttnhqY80
 そんなの、誰かに話してどうにかなるような問題じゃねぇだろう。

 試合に出られないのが・・、悔しかったらよぉ」



(#'A`)「死ぬ気で人の何倍も頑張ってみんかい!!」








(  ω )




('A`)「え?あ?・・・ ん?」


(;'A`)「・・・・・・・・・!!!」

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:09:47.26 id:WttnhqY80
なんということだ。



頭の中でだけ思っていたことが、いつの間にか口に出ていた。
こんなことってやはりあるのか。
内藤は真っ青な顔をしている。やばい。やばすぎる状況を生んでしまった。

(;'A`)「あ!今のは・・wその・・、いやな・・」








(  ω )「・・・・・・・・・・死ぬ気でやっても」
 

(  ω )「追いつけねぇから」



(  ω )「困ってんだおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

25 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:13:31.43 id:WttnhqY80
内藤は肩にかけた野球バッグを左右に揺らして走って行ってしまった。
被っていた野球帽が脱げたのも気にしないで行ってしまった。



・・どうしよう。






俺は内藤の野球帽を手にとって、立ち尽くした。



内藤は、陽炎の向こうへ消えていく。



通り過ぎた自転車の、ハンドルに垂れ下がっていた誰かのラジオから


甲子園の中継が聞こえる。

26 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:16:09.31 id:WttnhqY80

少し時間が経ち、呆然と立ち尽くした後で、俺は自転車を漕ぎ始めた。
進路はとりあえず内藤が走っていったほうだ。左手には・・彼の野球帽。




そして自分の発言の底の浅さに心から腹が立った。
同じ台詞を、少し前の自分が受け取ったらどう反応するだろう・・?
きっと彼と同じように激怒しただろう。
とにかく自分にイライラし、ペダルを漕ぐ勢いがいつもより激しくなった。しかし内藤の姿は見えてこない。










自転車を漕ぐ俺の脳裏に、とあるやり取りが過ぎった。

28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:20:17.11 id:WttnhqY80
・・・・・・・・・・・・・・・・・


('A`)「は~・・・。模試、またクラスでビリだよ」

('A`)「無理してこんな高校入るんじゃなかった」

('A`)「はーーあ!」


J( 'ー`)し「あらドクオ、この成績表・・」


('A`)「あ・・。うるせーー!!見るなよ!!??何も言葉を投げるな!!」

J( 'ー`)し「・・・」

29 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:21:17.42 id:WttnhqY80
('A`)「見んなって言ってんだろーー!!」

('A`)「返せ!」

J( 'ー`)し「あんたはきっと・・」

('A`)「うるせーーってんだよ!調子が、悪かったんだよ!!」

J( 'ー`)し「・・・」

J( 'ー`)し「そお」

('A`)(勉強したってしたって、テストになると駄目なんだよ!!!!!!!!!!)

('A`)(周りが頭良すぎんだよ!!まったくよぉ!!)

('A`)「けっ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

30 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:22:59.98 id:WttnhqY80
かーちゃんはあの時、俺に何の言葉をかけようとしたんだろう?
あの時の俺と、内藤が、重なる。オーバーラップする。
・・・内藤、待ってくれ!












('A`)「ないとーーーー!!!!!」





誰もいない、何も無い、だだっぴろい、田舎道

気付くと俺は内藤の名を叫びながら自転車を漕いでいた。

腹が減っていたことなどもう忘れた。

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:26:36.91 id:WttnhqY80
('A`) シャカシャカ・・


( ' A ` ) シャカシャカ・・・



( ' A ` )シャカシャカ・・・


「はい、50円。ありがとねぇー」

( ^ω^)「ここの駄菓子屋は安くてサイコーだおww」


( ' A ` )シャカシャカ・・・


( ' A ` )シャカシャカ・・・



( ' A ` )「ないとーーーー!!!!!」



( ^ω^)ぺろぺろ

(^ω^;)「お??」

32 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:29:26.95 id:WttnhqY80
('A`;)「・・ちょww ftgyふじこplp;:;::」



俺は急いでブレーキを・・・


かけるのも忘れたわ!!



(;'A`)「あ」


ずっしゃああああああああああ

(^ω^;)「ドクオーー!!」


初めて・・・
マジコケしてしまった。





体中が痛い。でもそんなことは関係ない。
内藤に謝らなくては。

33 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:30:26.53 id:WttnhqY80
(;^ω^)「ぎょええええ!!ドクオ!大丈夫かおww」

(;;'A`)「はぁ・・はぁ・・・よゆーーだぜ」

(;;'A`)「それより、これ・・」

( ^ω^)「おっww帽子wwやっぱり落としていたんだおww」

(;;'A`)「内藤!さっきは・・軽率な発言、正直すまんかった!!」

(;^ω^)「大丈夫だおww」

( ^ω^)「ボクこそ、いきなり走り出しちゃってごめんだお!」

('A`)「は・・はは」

( ^ω^)「おっおっwww」


('A`)^ω^)「はははwwwwwwおっおっwww」

34 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:35:13.75 id:WttnhqY80
俺たちは笑いあった。
俺はすり傷だらけで、内藤は持っているアイスが溶けている。
でもやっぱりそんなの関係なかった。






笑い声はどこに反射するでもなく、すっ・・とお互いの心に染み渡った。









駄菓子屋の奥で、おばあちゃんがにこにこしている。

35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/07/31(火) 22:36:04.57 id:WttnhqY80
( ^ω^)「ドクオ!」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「帽子を届けてくれたお礼だおww。この駄菓子屋でなんでもおごってやるおww」

('A`)「ktkrwwwwwwwwww」


・・・・・・


二人の間に、清らかな何かを感じた。


すぐ傍で流れている小川のせせらぎのような

頭上に広がる青空のような



俺の頬を伝う汗のような

内藤の真っ黒に焼けた腕のような


(白球編2 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/07/31 23:38:46

12jigendaddyjigendaddy   白球編3

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:35:01.03 id:tL5Cv6DW0
俺と内藤は和解し、俺たちは再び内藤の家へと進み始めた。
足や腕の擦り傷がジンジンと痛むが、心は清らかだ。






('A`)「・・・」

('A`)(こんなスーッとした気持ちはどれくらいぶりだろう)






口の渇きを内藤から奢って貰ったホームランバーが潤す。
そしてこの果てしなく続くような田舎道。麦藁帽でも被りたい気分だ。そして肩に虫かごを提げ、手には虫取り網か?
なんて呑気なんだ。





('A`)ドクオは夏の旅にでるようです

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:39:33.23 id:tL5Cv6DW0
景色を見ながらしみじみと思う。
・・・いい町だなあ。(村かもしれんが)



果てしなく続くように見えた田舎道も、T字路に差し掛かった。
右には山と田んぼ。左にはちょっとした町並みが見える。





( ^ω^)「ハフww」

( ^ω^)「ハフハフwwドクオwwハフw」

( ^ω^)「そこを左wwハフハフww」

(;'A`)「アイスを口の外に出してから喋れよw」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:41:21.81 id:tL5Cv6DW0
こいつはアイスをペロペロ舐めて食べるのではなくハフハフと食べる。変な奴だ。
内藤の言うとおり左に歩を進める。



( ^ω^)「ハフハフ・・・。食べ終わったおw」

 
( ^ω^)「じゃん!」



内藤はアイスの棒をようやく口外に出したかと思いきや、立ち止まり、棒を表裏とクルクル交わしながら凝視し始めた。
・・そして溜め息をついた。どうしたのだろうか。




(  ω )「・・・」

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:42:52.62 id:tL5Cv6DW0
(  ω )「・・・」


(;'A`)「どしたん」


( ;ω;)「ハズレだったお~」


そう言って内藤は俺に何も印刷されていない棒を見せる。
そうか。ホームランバーは一塁打とかホームランとか当たりつきのアイスなんだっけ。

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:44:00.53 id:tL5Cv6DW0
( ^ω^)「くやしーおww」

( ^ω^)「僕、ホームランバーで二塁打までの当たりしか出たことないおww」

( ^ω^)「いつか"ホームラン"を拝みたいおww」

( ^ω^)「お?wwドクオも食べ終わったおww」

( ^ω^)「・・どうだお?」



('A`)「・・・・」




(;'A`)「俺もハズレだww」

( ^ω^)「人生厳しいおーーww」

12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:45:50.09 id:tL5Cv6DW0
アタリかハズレか。



・・そんな避けられず、自分の力で変えられない選択肢が、人生には幾つも大なり小なり転がっている。
内藤がベンチにさえ座れないこと、俺が駄目な人間でい続けること、それも不可抗力なのか。
そんなことを考えているうちに、内藤の家らしき場所に着いた。いい匂いが漂う。




('A`)「・・・ブンブン軒」

('A`)「内藤んちって定食屋なんだな」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:48:26.71 id:tL5Cv6DW0
( ^ω^)「いやあーwテラ庶民で申し訳ないおw」

( ^ω^)「でも味はまあまあだと思うおww」

( ^ω^)「・・ドクオの親は何してるお?」

('A`)「いや・・俺んとこもテラ庶民だよ。ただ会社員さ」



(;^ω^)「お互い、親の跡を継ぐのは嫌だおね~・・w」



('A`)「ああ・・」










内藤の何気ない一言が心の突起に引っかかる。

15 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:52:26.27 id:tL5Cv6DW0
サラリーマンは自営ではないので跡を継ぐという表現はやや語弊がある。
しかし、「俺もこのまま単なるつまらないサラリーマンになってしまうのかなぁ・・」という
茫漠とした不安はいつだって持っている。
または、内藤が言うように、拒否の感情を。




・・・俺は、「自分には他人と何かがあるんだ」と、根拠もない自信を反抗期の頃からずっと持っていた。
何も行動を起こせないくせに、「今に見ておれ」という精神だけが先走っていた愚か者だった。
しかし、17歳の誕生日まで生きてきて、気付いた真実。









いや、ずっと前からうすうす気付いていたのに、見て見ぬフリをしていたこと。

別にそんなもんなかった。俺には特別なものなんて何もなかった。

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:54:54.23 id:a2plZH4d0

・・ずっと目を背けてきたのに、その真実が一気に俺に接近してきたのは高校に上がってからだった。




春。妙なプライドが先行してあっという間に孤立。
でも逆に空気な存在になれば好きなことができる・・と思いきや、体や言動をネタに陰口の標的にされ、学校内で動きづらくなった。今もだけど。
ちなみにこの好きなことって・・・。色々あったけど、どれも構想だけで形にはならなかった。自分の行動力の無さに絶望した。



夏。学校祭のバンド演奏の練習に行く奴らを尻目に帰宅し、アニメ鑑賞。
ここぞとばかりに青春の花火咲かせてるカップルの奴らを尻目に帰宅し、オナニー。
真夏の太陽の下、汗を流して練習に取り組む運動部を尻目に帰宅し、クーラーが効いた部屋でパソコン。
夏休みに入ってからは何も無い。ただ、日付だけが過ぎていく空白の日々。



・・一番俺の劣等感や無力感が強かった季節だ。徹底的に惨めだった時期だ。だから大嫌いなんだ。去年の夏は思い出したくも無い。

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:56:18.13 id:a2plZH4d0
秋。確か二度目の外部模試があった。
返却された答案は散々な結果。一生懸命取り組んだつもりなのに酷すぎる結果。もっと自分は頭が良い人間だと思っていた。

斜め前の奴らの話しが今でも脳内再生できる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何点だった~w」

  「200点w」

「すっげーじゃんww俺なんか180だぜ?」

  「まぁ、それくらいならいいんじゃね?」

  「だって100切ってるやつもいるんだよ?」

「はぁwwそいつホントに○高生かよw」

  「最低でも150点は取らないと、名乗って駄目だよなww」  

「ホントだぜwwうはww」





・・これも思い出したくない。
だが、すぐ思い出せる。そんな、嫌な過去だ。

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:57:32.33 id:a2plZH4d0
そして冬だ。

冬・・。冬は・・・




   ドクオ!

ん?

   なにぼーっとしてるお!



・・・・・・・・




(;'A`)「・・はっ!わりぃ内藤」

( ^ω^)「よくこんなゴミゴミして、うるさい所で物思いに耽られるおww」

( ^ω^)「おまい、面白い奴だお~w」

( 'A`)「あ、あぁ~ww」

21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 02:59:23.29 id:a2plZH4d0
(::^ω^:)「へい!いらっしゃ・・ん?ホライゾンじゃねぇか!試合、どうだったよ!」



(;^ω^)(ん~。ひたすら草刈ってたからわからんお)



( ^ω^)「・・勝ったおーw」

J^ω^)し「良かったわねえ」

J^ω^)し「隣にいる子は誰だい」

('A`)「ど・・どうも」

( ^ω^)「ダチのドクオだおーーww追々話すお!だからラーメン二丁!!」

(::^ω^)「金は小遣いから引いとくからな。よし、座って待ってろ」

( ^ω^)「げwwwこれは痛いwwww」

('A`)(すまねえ)

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:00:34.18 id:a2plZH4d0
俺と内藤は、奥から二番目の窓側のテーブルに座った。
内藤は本棚から雑誌を持って来て、ペラペラとめくり読みしている。
俺はというと、さっきのドロドロとした想いが再び襲ってきそうだったが、窓から見える向日葵を見て、なんとか抑えた。
そうさ。旅をしている間くらいは、そういう黒くて嫌な感情を起こしたくない。





( ^ω^)「今週のジャンプは駄目だお・・つまんね」

('A`)「内藤、おまえ漫画は何読むんだ?」

( ^ω^)「ん~・・」

( ^ω^)「DMCとか好きだおww」

('A`)「うひょう!俺もだww」

( ^ω^)「カミュ様がラルクの歌を歌う回なんかすげぇ笑ったお・・ww」

('A`)「うんうんww」

24 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:02:34.70 id:a2plZH4d0
('A`)「俺としては、市長は人間だったって伏線は後付けじゃないかな~と・・」


俺たちがささやかな漫画談義に花を咲かせていると、テーブルにラーメンが運ばれてきた。
・・・一瞬にして醤油スープの匂いに俺は夢中になった。



(::^ω^)「ラーメン二つ!できあがったよ!」

(::^ω^)「ドクオ君っつったな!味わって食ってくれや」






(;'A`)「・・・・・・・・・・・」

(;'A)「や、やばばばばばっばばばばば」

26 名前:>>23のカミュ様はジャギ様でした ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:03:54.65 id:a2plZH4d0
その忠告もむなしく、久し振りに目の前に存在しているラーメンという"料理"に俺はがっついた。
うめえ・・ 世界で一番うめえよこのラーメン・・・ ブンブン軒GJ・・ としか言い様がない。



(;'A)ずずずーーーっ。ちゅるちゅるちゅる・・・ ごっくん ずずーっ・・

(;'A)「ふはーーーっ!!」



(;^ω^)「ハングリーだお~・・ww 旅人だお~・・ww」




スープがめちゃ熱く、胡椒もちょっと入れすぎたみたいで、目からは涙がこぼれる。
だが、全く感情的な涙ではないとは言い切れない。
久し振りに麺料理を口に入れることができて、俺は今、感無量だ!! 乾パンなんて、まずいんだよwww

28 名前:>>23のカミュ様はジャギ様でした ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:06:08.98 id:a2plZH4d0
(;A)「うっ・・ううっ・・はふっ・・ちゅるるる(チャーシュー柔らけええええ)」



(;^ω^)(泣いてるお~wよほどヒドイもん食ってくたんだお)



(;'A)「ぶはっ!!(す、スープあぢぃ!胡椒もかけすぎちゃったみたいだwwでもうめええええええ)」




(;'A)「・・・ずっ、ずずっ」

トンッ

(;'A)「ごっそさんでした」

29 名前:>>23のカミュ様はジャギ様でした ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:07:07.14 id:a2plZH4d0
時計を見ると、食べ始めた時刻から4分しか経っていない。
驚異的な早さかはわからないが、自分の中では、驚異的だ。無我夢中になっていたとはこういうことか。



( ^ω^)「最後の一滴まで飲み干してくれるなんてよっぽど腹が空いていたんだおねww」

('A`)「ん・・ああ」

('A`)(正直モノ足りねえ)

( ^ω^)「・・」

(^ω^ )「とーちゃーーん!チャーハン大盛りと餃子追加だお!!」

('A`)「ちょっ・・!!」

('A`)「いいよいいよ別にさ・・」

( ^ω^)「おっおっwww」

( ^ω^)「旅人なら」

( ^ω^)「ヨソの地で出会った人の優しさには全力で応えろおww」

30 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:08:38.71 id:a2plZH4d0
('A`)「・・・」



('A`)「言うねぇ」



そして更に数分後、餃子とチャーハンが運ばれてきた。
正直、チャーハンはラーメン以上の感動だった。
記憶を辿ると、俺が旅に出る前、自宅で最後に口にしたのは冷やし中華、麺類だ。
その日の朝は確かパン・・・。すると、米を食べたのは旅立ちの昨夜が最後だった。もう、何日か前だ。

コンビニおにぎりなら何度か買って食べたが、こっちは出来立てほやほやの手作りだ。
電子レンジの暖かさじゃなく、中華鍋の火力によって暖められた料理だ。内藤の親父さんが、丹精込めて拵えてくれたチャーハン。
ブンブン軒のチャーハンの米は、チャーハンの割にはあまりパサパサとしていなかった。しかし、それが逆に良くて、美味しかった。
コンビニのおにぎりにはないふっくらさが凄く新鮮な食感に感じたのだ。


32 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:11:28.97 id:a2plZH4d0

(;'A)がつがつがつがつがつがつ



(;^ω^)「全力で食べてるお。わろすww」



(;'A)「・・・ぷはあああ」

(;'A)「ごちそーさま・・・」

(;'A)「ないとー・・・まじ、ありがと・・」




( ^ω^)「どういたしましてだおww」



久方ぶりに腹一杯食べたせいか、強烈な満足感と眠気が襲い掛かってくる。
だが、寝ちゃだめだ。
寝ちゃだめだ
寝ちゃだめだ
寝ちゃだめだ
寝ちry・・・・・・・・・・・

34 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:14:24.16 id:a2plZH4d0
・・・

がたん



( A )「・・・」

( ^ω^)「食べるだけ食べて寝てしまったおwwまるで漫画www」

( A )「・・・ぐー・・・・すぴぴぴ」

( ^ω^)

35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:15:09.65 id:a2plZH4d0

( ^ω^)「旅かぁ」


( ^ω^)「・・・・」


(^ω^ )








「さあー、五回の表、ここらへんからゲームにドラマは生まれてくるのでしょうか」

36 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:17:00.57 id:a2plZH4d0
  「そうですねえ・・。佐藤の球にもだいぶシベリア高は慣れてきましたね」

  「相変わらずの驚異的ピッチングですが、負けじとシベリアも"ヒットにつながる三振"を続けています」

「解説ありがとうございます。さて、そんなシベ高が繰り出す次のバッターは3番、田村」

「地区予選では決勝にて二本のホームランをスタンドに叩き込んだ彼ですが・・どうでしょうか」

  「一打席目のスイングを見た限りでは、ナインの中では一番佐藤の球にかする可能性がありますね」

  「ただしパワーは四番の遠藤などよりは確実に劣るので、外野前など安定したヒットを狙っていきたいですね」 



(^ω^ )(佐藤すげぇお。とても同い年とは思えないお) 

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:17:45.46 id:a2plZH4d0
客「やっぱりすげえな佐藤。シベ高打線をここまで抑えるなんてよ。プロ行くのかな?」

客2「もちろんだろ。それにしてもやっぱり夏は甲子園・・」


(^ω^ )

(^ω^ )

( ^ω^)(・・・僕は)



( ^ω^)(甲子園の土なんか踏めなくていい)

( ^ω^)(ただ)

( ^ω^)(試合の中で、プレーがしたいお!!)

( ^ω^)(声を出して、ゴロ捕って、フライも捕って、打って、走って、楽しみたいんだお)

( ^ω^)(草刈りなんか・・草刈りなんか・・・)

38 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:18:36.81 id:a2plZH4d0
・・・・・・・・・・・・・






「よし・・これで・・ww」

「あーーー!!!最悪だお!!」





( A )「・・・」

('A)むくっ


ここはどこだろう?
俺が寝ていたのは、寝袋の中じゃなくて、ベッドの中だった。
壁には野球選手のポスター、棚にはサインボールや色紙。本棚には野球漫画がずらり揃っている。


窓の外はもう真っ暗だ。急いで腕時計を見てみる。
・・・部屋の明りが眩しい。

40 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:22:01.81 id:a2plZH4d0
( A`)「ん・・ん~・・」

('A`)「くっ・・9時?夜の?」



「ダイジョーブ博士、失敗したおwwww」



('A`)(・・もしや)

( ^ω^)「ん」

( ^ω^)「ドクオwwやっと起きたかおwww」

41 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:22:48.03 id:a2plZH4d0
('A`)(・・もしや)

( ^ω^)「ん」

( ^ω^)「ドクオwwやっと起きたかおwww」


('A`)(も、もしや)

('A`)「昼間っからずーーっと俺は寝てたのか?」

( ^ω^)「爆睡だおwww」

(;'A`)「す・・すまん・・・」



J(^ω^し「ほらいぞーーん!ドクオくーーん!お風呂沸いたわよ~」

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:24:05.85 id:a2plZH4d0
( ^ω^)「気にするなお!!!」

( ^ω^)「親には事情を話したから、今晩は泊まってけwww」

(;'A`)「まじか~」

( ^ω^)「遠慮すんなおおおおwww」

( ^ω^)「さ、風呂入りにいくおww」





俺は店を出たら、悲しいが内藤に別れを告げて先へ急ぐつもりだった。
号泣必死の感動の別れになる予定だったww


・・・しかし


メシをたらふく食べてしまった俺は、その場で爆睡。
きっと内藤が自室まで運んでくれたんだろう。かたじけない。
疲れをここぞとばかりに癒すように夜まで眠りこけていたってことだ。
それどころか今夜は泊めてくれるというのだ。内藤はもしかして幸福の神様かもしれない。

44 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:29:55.66 id:a2plZH4d0
('A`)「ふぃー・・」

( ^ω^)「いい湯かお?」

('A`)「ああ。最高だよ」


そう尋ねる内藤の身体は、さすがスポーツをやっている人間だ。と言った感じでよく鍛えられていた。
腕にはアンダーシャツの日焼け跡がバッチリついている。例えやることが雑用ばかりでも、浴びる日光は同じか。


それにしてもだ


その足は速く走れそうだし、その腕は球を遠くに飛ばせるくらいバットを振れそうなのに、なぜだろう?


部活動の事情やシステムはよくわからない。ましてや運動部だ。
何か問題でもあるのだろうか。しかし俺が助けてあげられることは・・・残念ながらなさそうだ。

48 名前:修正 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:33:41.92 id:a2plZH4d0
入浴し終わった俺と内藤は、茶の間で内藤のお母さんの料理に舌鼓を打ち、再び内藤の部屋に戻ってきた。
景色がよく見える部屋だ・・・。向こうの田舎道のほうはほとんど真っ暗で何も見えない。



でもやっぱりそれがいいんだ。



人工的な明りではなく、蛍の発光色が田んぼを仄かに仄かに照らしている。それだけで素敵だ。
内藤は相変わらずパワプロのサクセスを進めている。




( ^ω^)「よしゃwwオールAwwktkrww」

( ^ω^)(僕もオールAとまではいかなくても、オールCくらいにはなりたいなぁ・・)

51 名前:修正 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:44:32.01 id:a2plZH4d0
意気揚々とコントローラを操作する内藤に俺は尋ねた。



('A`)「・・なぁ内藤?」

( ^ω^)「なんだお?」

('A`)「どうしてこんな俺の世話してくれんだ?」

(  ω )「・・・」



少し間を置いて内藤は口を開いた。





( ^ω^)「・・・ドクオは今、一生懸命になれることがあるかお??」






52 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:46:24.78 id:a2plZH4d0
さっきから名前欄が変でごめんなさい。別にどこも修正してないです。

53 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:47:02.35 id:a2plZH4d0
ドッ('A`)キーン・・




('A`)「・・なんだあ、いきなり?答えになってねーぞww」

( ^ω^)「たとえば僕にとっての野球みたいな・・」

('A`)「ああ・・そういうのね・・」

( A )「・・・・」








('A`)「俺、ないんだよw」

55 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:48:47.62 id:a2plZH4d0
こんな場面でよく内藤は俺の痛いところを突いてくるなぁと思った。




・・・「一生懸命になれることがあるか?」・・・?





今、旅をしているこの日々は例外として、いつも繰り返しのような一日を過ごす俺にとって、




会心の一撃だ。

59 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 03:59:46.73 id:a2plZH4d0
( ^ω^)「そか・・・」

('A`)「うん・・で?」

( ^ω^)「おっ?」

('A`)「世話してくれる理由」

( ^ω^)「そりゃー、同い年の男の子がそんなすっげーーーことしてたら」

( ^ω^)「手助けしたくなっちゃうおwww」

(;'A`)「すっげぇことねえ・・。旅とか格好よく言ってるけど」

(;'A`)「本当はただおじさんの家を尋ねにいくだけだよ?」

( ^ω^)「でも!」

62 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:02:57.07 id:a2plZH4d0
( ^ω^)「でも!」

( ^ω^)「一人だお!チャリだお!野宿だお!」

( ^ω^)「VIP県からラウンジ県まで・・遠いお!」

(;^ω^)「すげーーーおwww」

(;'A`)「う、うーんwwそう言われれば結構なチャレンジしてるなww」




( ^ω^)「・・あ!」


64 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:11:53.41 id:a2plZH4d0
そして俺は自転車、内藤は走って公園へと向かった。
俺と内藤が出会ったあの公園だ。公園はサロン県の入口にあり、内藤の家からは中々遠い・・。
街灯が足元を照らす商店街や、ちょっとおっかない夜の田んぼ道を抜けて、やっと俺たちは公園に辿り着いた。


(;^ω^)「ふぅはぁ・・・。」



('A`)(よくこんな距離を走っていられるな)



('A`)(風呂入ったときも思ったが、補欠の補欠といえども、俺とは体のつくりから違うんだな)

66 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:14:14.74 id:a2plZH4d0
僅か2分くらいの休みを挟んで、内藤は素振りを始める。
内藤が腕を振るたび「ぶんっ」と風を割るようないい音を出すバットは、中々重そうだ。
今日は俺がバットケースに入れて持ってきたが、いつもは自分で背負って・・?それも結構辛いトレーニングになるのではないか。
内藤は150回ずつ素振りを区切り、全部で4セット。合計で600回も素振りをした。
俺は野球の練習のことはさっぱりわからないが、彼は相当やる方なのでは?と思った。




ぶんっ!! ぶんっ!!
 
(; ω )「148・・・149・・」

ぶんっ!!

(;^ω^)「150!」

(;^ω^)「終わったお!!」


68 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:22:45.97 id:a2plZH4d0
('A`)「おつ!!あそこの自販機でジュース買おうぜww」

( ^ω^)「た、大切なお金、いいのかお??」 

('A`)「大丈夫だよww」







そして俺たちはペットボトルを手にベンチに座る。ベンチといえば阿部さんだ・・・。ま、今は関係ないや。

69 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:24:03.02 id:a2plZH4d0
汗を拭いたりして、一呼吸置いたあと、内藤はおもむろに語り始める。
いつもとは違う語り口だ。神妙だ。



( -ω-)「・・明後日」

('A`)「あん?」

( -ω-)「明後日、また試合があるお」

('A`)「まじか!?間隔短くないか?」

( -ω-)「・・・三年生が引退して、監督は新たなチームの基盤を早く作ろうと」

( -ω-)「夏休みには練習試合をたくさん入れたお」

('A`)「良かったじゃないか」

('A`)「出られるかもしれないぜ?」

70 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:26:18.98 id:a2plZH4d0
その瞬間、内藤は突然俺の方を向いた。
かなりびっくりしたが、俺の驚いた顔なんてスルーして、話しを続ける。




(-ω- )「・・絶対に出るお」


(;'A`)「おぉ、気合入ってるな」



(-ω- )「明後日は二試合やるお」

(-ω- )「一試合目は主に一軍・・。二試合目は主に二軍中心でスタメンを決めていくらしいお」


('A`)「・・とすれば・・」

71 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:27:10.48 id:a2plZH4d0




(-ω- *)「二試合目に、絶対スタメンで出てやるお!!!!」 






('A`)「・・」


内藤はなんだかいつもにこにこしていて、あまり怒っても怖くなさそうな顔つきをしている。
しかし、そのとき俺が見たあいつの顔は、何か、プラスの感情で満ち溢れていた。

とにかく、プラスの感情で。赤いオーラが出てきそうな勢いだ。

72 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:28:24.59 id:a2plZH4d0
(  ω )


がばっ!


(;'A`)「いきなり立つなよww」


( ^ω^)「おっwwwwww」


( ^ω^)「やる気でてきたお!!!!」


( ^ω^)「さあ!ドックン!行くおww帰るおww」

75 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:32:45.01 id:a2plZH4d0




⊂ニニニニ( ^ω^)ニニニニニニ⊃

明後日は、絶対に活躍するおーーーーーーーーーーーーーwwwww








内藤は、両手を広げて公園の外へ走り始めた。
今まで黙々とトレーニングをしてきた姿が全部ぶち壊れるくらい、なんだか滑稽だ。
・・しかし、その後ろ姿は活力で溢れているような気がする。




(;'A`)「ちょwwおまえーー!!まてよーー!!」


俺は必死で自転車で後を追う。変な走り方なのに、妙に速い。

78 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:39:05.22 id:a2plZH4d0
たったったったっ・・・

⊂ニニニニ(* ^ω^)ニニニニニニ⊃「ぶーーーーーーんwwww」

シャカシャカ・・・

(*'A`)「飛ばすなあwwwないとーーー!!!!」




・・・野球ということに
こんなに打ち込める、一生懸命になれる内藤が


心底うらやましい

79 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:39:42.14 id:a2plZH4d0
・・でも


嫉妬とか・・、恨めしさとか・・・


そういうのは微塵も感じなかった

俺は・・内藤を
勝手に"親友"ってもう認定したから

むしろ
心から応援してやりたいんだ





・・しつこいほどに何度も言うけど

夏って季節は嫌いだ・・・・

80 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/02(木) 04:40:37.33 id:a2plZH4d0
だけど・・・




夏の空は好きなんだw




今日の帰り道、内藤と走りながら見た満天の夏の星空



あの星の数ほど



俺たちの人生にチャンスが転がってる気がした



(白球編3 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/08/02 16:11:42

13jigendaddyjigendaddy   白球編4

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:06:10.21 id:X4FiVM740
公園から帰ってきた俺たちは内藤の部屋へと戻った。


( ^ω^)「はぁ・・疲れたお。また汗でべたべたになってしまったお」

('A`)「お疲れ、内藤。毎日こんなことしてるのか?」

( ^ω^)「公園に行かないときもあるお。家の庭でただ素振りしてるだけの日とか」

( ^ω^)「でも今晩はドクオがいるから、ちょっと頑張ってる姿を見せたかったんだおww」

('A`)「・・素直だなあ」

( ^ω^)「照れるww」

( ^ω^)「じゃ、もう一回シャワー浴びてくるおww漫画でも読んでてくれお」

('A`)「ああ」

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:07:26.78 id:X4FiVM740
内藤はタオルを手に階段を降りて行った。俺は部屋の本棚を見渡す。
ドカベン・・、巨人の星・・、H2・・、MAJOR・・、野球漫画が大半を占めている。大した量だ。
奥の方には「ピッチングがよくなる本」などの指導書や「'03 オールスター」と試合のテープがぎつぎつに並べてある。
内藤は本当に根っからの野球好きだ。



こんな風にさあ、「俺はこれが大好きなんだ!!夢中になってんだ!!」って胸を張って言えるものがあるって素敵だ。
羨ましい。



・・俺?


特にないかな


・・今のところは




('A`)ドクオは夏の旅に出るようです

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:11:35.68 id:X4FiVM740
('A`)(これからも・・・)

('A`)(ずっと・・・)

('A`)(無いのかな?)

('A`)(俺には・・・・)

('A`)(夢中になれることや・・)

('A`)(大好きなこと・・)

('A`)(夢・・・)

('A`)(・・・・・)






子供のころからだった。
何かに挑戦、参加する機会があると、何故か恥ずかしくて、面倒で、ずっと逃げてきた。
夢中になれることが見つかるかもしれない機会を避けてきたんだ。
ずっとだ。子供のころから、ずっと。
だから俺には何もない。そういう類のものが何も。

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:15:34.91 id:X4FiVM740
・・・・・・・

J( 'ー`)し「・・ほらっ、はやく着替えなさいよ」

J( 'ー`)し「今日から水泳教室に行く約束でしょ・・?」

('A`)「い、いやだぁあ!ぼく、いきたくない!いやだいやだ!!」

J( 'ー`)し「どうして?」

('A`)「み、みずがこわいんだぁ!かおもつけられないんだ!」

J( 'ー`)し「小学校のプールじゃあんなに楽しそうにしてたじゃない?」

('A`)「・・・」

J( 'ー`)し「はやく行きましょう。遅れるよ?水泳パンツはあらかじめ穿いてなさい・・。ほら」

ぶんっ

('A`)「やだーーー!!!」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:16:32.64 id:X4FiVM740
J( 'ー`)し「こら!!パンツ投げるんじゃありません!!」

('A`)「お・・おなかいたい。だからいけない」

('A`)「おなかいたいよ・・・」

J( 'ー`)し「うそつくんじゃありません」

('A`)「うそじゃないよ・・・。だからいかない」

J( 'ー`)し「帰りにおもちゃ買ってあげるから、行きましょう」

('A`)「・・・・」

J( 'ー`)し「・・・」




(;'A`)(あれ?ほんとうにおなかいたくなってきちゃった・・・)

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:17:59.14 id:X4FiVM740
J( 'ー`)し「ドクオ!!!!」

(; A )「・・・・うぅ」

(;A;)「いたいんだよぉ。ほんとうにいたいんだよぉ」

J( 'ー`)し「・・・はぁっ」




J( 'ー`)し「あ、VIPスイミングスクールですか?」

J( 'ー`)し「・・はい。本当にすいません。今週は休ませて・・」

J( 'ー`)し「はい、はい・・。失礼しました」

がちゃ

J( 'ー`)し「来週はちゃんと行くのよ」

(; A )「!」

('A`)(おなかいたいのよくなった・・・)

・・・・・・・・

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:18:49.49 id:X4FiVM740
昔を思い出すと、「なんでこんな子供だったのかなあ」と苦笑したい気持ちになったり、「懐かしいな」と和やかな気持ちになる。


普通の人ならな。


でも俺は、子供のころからまるで変わっていない。こんな感じで17歳まで育ってしまった駄目な人間だ。
だから、過去を振り返るのは大嫌いだ。昔は、嫌いだ。






(A` )「・・・なのに」

(A` )「思い出しちゃったな。むかつくぐらい鮮明に」

(A` )「近所の水泳教室にも気恥ずかしくて行けなかったガキなのに」

(A` )「一人、自転車に乗って違う県に来ちゃったよ」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:25:26.63 id:X4FiVM740

(A` )「なんでだろうな?」

(A` )「俺はあの頃の自分から何ひとつ成長してないって思い込んでたんだけどな」

(A` )「やっぱりあのメールのおかげなんだろうか」






「旅に出ます 探してください」








元はといえば、未来から送られてきたあの一通のメールに突き動かされ、俺はここまで来てしまった。
このメールの不思議な力に動かされて。


16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:28:56.99 id:X4FiVM740
窓の外をぼんやり眺める。




「もう引き返せないよ」




真っ暗で何も見えない田舎道がそう言っている気がした。


そう、目的地にも辿り着いていない俺に、帰り道なんかないんだ。


( ^ω^)「アイスうめえwww」


俺がここぞとばかりに物思いに耽っていると、アイス片手に上半身裸の内藤が部屋に戻ってきた。
さっきも思ったが、やっぱり俺なんかよりずっとたくましい体つきをしている。
阿部さんが悦びそうな体だ。まーそんなことはどうでもいいけど。

18 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:31:35.97 id:X4FiVM740


( ^ω^)「・・明日も早いし、寝るお。消灯ーーーww」




そう言って、内藤は部屋に入るなり早々に明かりを消す。
内藤の部屋は田舎道に面している。だから街灯の灯りは部屋に入ってこない。
窓の外から差し込むのは、星と月の光りだけだ。ベッドの下に布団を敷いて寝転がる内藤の顔が、微かに見える。






おやすみ。






( ^ω^)「さあドクオ」

目を瞑ろうとした瞬間、内藤は口を開く

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:33:47.62 id:X4FiVM740
('A`)「・・ん?なんだよ」

( ^ω^)「語るおwwww」




( ^ω^)「ジャンルは何にするお?www」

( ^ω^)「恋バナ、将来のこと、学校生活、好きな食べ物」

( ^ω^)「なんでもこいwww」





こういう"お泊り"の雰囲気が大好きなやつは世にたくさんいる(と思う)
俺は大して好きじゃないが・・・、というか、内藤が提示したジャンル、ほとんど語れねぇよバーローwww

21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:36:26.00 id:X4FiVM740
('A`)「好きな食べ物・・・」

( ^ω^)「なんだお?ww(そういう話題から来るかwwやっぱドクオおもしれえww)」

('A`)「もずくかな」

( ^ω^)「・・・」

( ^ω^)「コメントに困るおwwww」

('A`)「あ、そうそう。ブンブン軒の料理、か    なり美味かったよ」

('A`)「改めて礼を言わせてもらうよ」

('A`)「ありがとう」

( ^ω^)「むきょあーー」

( ^ω^)「別に料理を作ったのは僕じゃないのに、なんだか照れるお」

( ^ω^)「どういたしましてだお!」

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:39:08.49 id:X4FiVM740
「ありがとう」

「どういたしまして」



当たり前の言葉のやりとりなのに、なんだか恥ずかしくなるようなやりとり。
少しずつ、でも確実に避けてきたやりとり。
今、すんなりと交わせた。


おどろくほど自然に。


( ^ω^)「・・・」

( ^ω^)「眠いおw」

('A`)「ああ、俺も。今日はもう寝ようよ」

( ^ω^)「そうするお」




そして二人の会話は終わり、内藤はのび太のような速さで眠りの世界へインした。
大きな寝息が聞こえる。

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:42:46.27 id:X4FiVM740
( -ω-)「ぐおおおおおおwwおっおっおっww・・・・」


内藤の寝息は




俺には「今日も一日頑張ったおwww」



と聞こえるなあ。


( -ω-)「むにゃむにゃ・・」

( -ω-)「いちばんせんたー・・ないとー・・」

( -ω-)「むにゃむにゃ・・」

24 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:43:36.13 id:X4FiVM740
('A`)(・・人の寝言なんて初めて聞いたよ)

('A`)(がんがれ。内藤まじがんがれ)



('A`)(俺も・・・)

('A`)(まじがんがれ!!)

('A`)(とゆーわけで寝ることにしよう)

( A )(・・・)


自分を励ますのも他人を励ますのも久しぶりだ。そう思いながら眠りにつく。
夜空は相変わらず綺麗だ・・・・。明日も暑くなるに違いない。

26 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:45:48.86 id:X4FiVM740
_


・・あまりよく眠れない。

心の中に少しモヤモヤがある性だ。

・・よし。

部屋の天井を見ながら、ふと俺は決めた。





('A`)(明日、ここを発とう)




いつまでもここにはいられないのだ。
内藤の試合も見たかったけど・・・、しょうがない。
このままのペースじゃ、夏休みが終わってしまうかもしれない。
しょうがないんだ。旅にはこういう決断も必要だ・・。


出発は、明日の午後だ。


27 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:52:36.02 id:X4FiVM740
_夜が明けた。
今日は朝から既に暑い・・・。セミも元気だ。



ところで



"一宿一飯の恩義"
かーちゃんが見ていた「田舎に泊まろう」とかいう番組で覚えた言葉だ。


俺は内藤の家に一晩泊めてもらい、一度ではなく二度も食事の世話を受けた。
だから、ここは旅人としてきちんとその恩を返さなければいけない。
友達の家に泊まりにきた訳じゃないんだ。




('A`)「とゆーわけで・・・」

('A`)「何か手伝えることはありませんか?今日半日はブンブン軒のために働きます」

('A`)「迷惑だったらすいません・・」

28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:54:52.93 id:X4FiVM740
(::^ω^)「ぶわっ」

(::^ω^)「えらい!偉すぎるぞどっくおくぅーーーん!!!!」

(::^ω^)「ウチの野球バカとは大違いだww」

(::^ω^)「自転車で旅をしている時点でこいつぁちげぇと睨んでいたが・・・」

(::^ω^)「おじさん感激www」



(*'A`)(えへへ)




(::^ω^)「・・・・ww」

(::^ω^)「じゃ、このスープ缶の洗いかた頼むわ」

30 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 01:59:12.79 id:X4FiVM740
そう言って内藤のお父さんは、給食の食缶の5倍はあるんじゃねーかってぐらい大きな缶を引っ張り出してきた。




(; A )(で  け  え・・・・・)



(::^ω^)「半までには終わらすんだよwwじゃあよろしくねw」






この親父、容赦ねぇ。
恩義なんて一丁前なことを口走ったこと、早くも少し呪う俺であった。

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:00:24.90 id:X4FiVM740
_そのころ、内藤の部屋


( -ω-)「・・・」

(#-ω-)「・・・・・・・」

がばっ!!

(#^ω^)「あっじー!!!!」

(#^ω^)「なんて暑いんだお!!朝から不快度マックスだお!!」

(#^ω^)「むきょあーーー!!!」



( ^ω^)「・・おっ?」



( ^ω^)「ドクオがいないお!」

32 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:01:00.14 id:X4FiVM740
( ^ω^)「・・・ドクオのリュック」

( ^ω^)「人の荷物を見るのは悪いことだけど・・」

( ^ω^)「見てみるおww」




( ^ω^)「・・ん?このノート、かなり気になるおww」





「サロン県~ラウンジ県 国道のデータ」

「サロン県の野宿できそうな場所」

「旅の心得!!」

「出費表」

・・・

33 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:04:56.62 id:X4FiVM740

( ^ω^)「す・・すげーーノートだお!!!」

(  ω )「・・・・・」

(  ω )「僕も野球、頑張るおw」



俺が厨房で缶の洗いかたをしていると、階段から制服を着た内藤が飛び出してきた。



( ^ω^)「行ってきますだおーーー!!」

(;'A`)「ふぅはぁ」

(;'A`)「お、内藤」

(^ω^ )「あ、ドクオ!!ここにいたのかお!!」

(;'A`)「メシの恩はちゃんとこうやって返さないとな・・ww」

35 名前:地の文は内藤視点 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:08:20.29 id:X4FiVM740
(^ω^ )(同い年なのに・・・なんだかすごく大人に見えるお)


(^ω^ )


( ^ω^)「・・じゃ!!」


(;'A`)「ああ!」






自転車を漕ぎながら思う。

僕が住んでるとこは・・、田舎だ。
田んぼと山と川と少しのお店と家しかない。
ちょっと自転車で田んぼを走ると、少しだけ町並みが広がってくる。
そこに僕が通った保育園、小学校、中学校、高校、全てが集まってる。


僕はこの町から外には出たことがない田舎者だ。


きっとドクオは旅なんかしてるんだから、いろんなところに行ったことあるんだろうな・・
こんなつまらない景色だけじゃなくて、いっぱい素敵な風景を知ってるんだろうな。
羨ましいよ。

36 名前:地の文は内藤視点 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:09:03.70 id:X4FiVM740
( ^ω^)(着いたお)

「お、内藤」

( ^ω^)「ちゃーーーーす!! だお」

「明日はたしか二軍の試合があるんだよな」

( ^ω^)(嫌味くせぇ・・)「はい!そうですお!!」

「ま、出られるように頑張れや。いつも草刈りじゃつまんねぇしなw」

( ^ω^)「頑張りますお!」

(  ω )「・・・」






そして僕がこの町でやってきたことはただ一つ・・。野球だ。
僕から野球を取ったら何も残らない。

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:13:43.62 id:t09IRmrf0
・・だけど




既に奪われているような状況なんだ。数年前から。
中学校に上がってからか・・・、レギュラーじゃなくなったのは。
周りのやつらが上手すぎて、どうもついていけなくなった。
勿論、努力でカバーしようと思ったけど、駄目なんだ。どうしても、どれだけ頑張っても、追いつけない。
そうさ、





センスがないんだ。

38 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:14:56.65 id:t09IRmrf0
この事実を咀嚼するのにどれだけかかったか・・・
高校に上がって、それでも僕は野球部に入部した。親は部活になんか入らないで勉強しろって五月蝿かったけど、



それでも僕は野球がやりたかった。




下手でも、センスがなくても、好きなんだ。
それ以上の理由はいらない。そう思っていた。



・・でも、好きなだけじゃ続けられない。分かってんだ。このままじゃ時間の浪費だって。
だから・・・、明日の試合にも出られなかったら・・・・

39 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:16:07.23 id:t09IRmrf0
( ^ω^)(退部届けを出すお)



そして真夏の太陽の下、今日も練習は始まった。



「ダッシュー!」

(;^ω^)「おーー!!」

だっだっ・・

(;^ω^)(今日はかなり暑いお・・)

40 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:16:50.64 id:t09IRmrf0
「キャッチボール!」

びゅっ

(;^ω^)「ナイスキャー!」

ぱしっ

(;^ω^)「ナイスボー!」



「ノックいくぞー!」

(;^ω^)「おねがいしますおー!」

カンッ!

(;^ω^)「あ・・捕れなかった」

(;^ω^)「もいっちょおねがいしますおー!!!」

カンッ!

(;^ω^)「あうっ!くそぉ・・」

(;^ω^)「もいっちょー!もいっちょー!!」

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:20:45.25 id:t09IRmrf0
「バッティングー!」

カーン!

(;^ω^)(やった!これは伸びるお・・)

パシッ!

  「センターナイスキャー!」
 
(;^ω^)(やっぱり僕の球は外野の頭を越えないお・・・)


_



(;^ω^)「おねがいしゃーす!!だお」

「・・明日は練習試合だ。また試合か、と思ってるようなプレーの奴は絶対試合には出さん」

「二試合組んであるから、チームの皆をまんべんなく出せると思う」

「よく体を調整させてくるように」

(;^ω^)「あっしたーー!!だお」

45 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:24:18.64 id:t09IRmrf0
(;^ω^)「・・・・今日も練習が終わったお・・・・」

( ^ω^)「綺麗な青空だお・・」

「内藤」

( ^ω^)「はいだお!!」

「整備、しとけ」

( ^ω^)「はいだお!!」

( ^ω^)(試合のことは何も言わないお・・・)

49 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:28:13.85 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「おつかれっした!!だお」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









(::^ω^)「お疲れさん!」


(;'A`)「へい・・・・」

51 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:29:15.64 id:t09IRmrf0

時計が14時を回るころ、俺の半日従業員は終了した。
3つほどのスープ缶を洗い、数え切れないほどの皿やコップを洗い、ごくごく近所の家まで出前を運んだ。
・・かなり疲れた。自転車を漕ぐのとはまた別の疲れだ。

・・・しかしだ。

俺は勿論アルバイトをやったことがない。だからこれが俺にとっての人生初めての労働。
体はクタクタだが、誇らしい気分でいっぱいだ。






(::^ω^)「ドクオくんの仕事はここまでだ」

(::^ω^)「もうお昼も過ぎて客の入りもだいぶ落ち着いた」

(::^ω^)「缶洗いに食器洗いに出前に本当に助かったよ」

53 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:33:43.02 id:t09IRmrf0
(;'A`)「いえいえ」



(::^ω^)「・・ところで、いつ出発するんだ?」




('A`)「恩は返せたので・・これから準備をして、日が暮れるまで進んでみようかと思います」

(::^ω^)「そうなのか・・。すぐ出発してしまうんだな」

J^ω^)し「もう一泊泊まっていきなさいよドクオくん」

('A`)「いえ、これ以上お世話にはなれませんよ」

(::^ω^)「そんなこたぁねぇけどなあww」

('A`)「心遣いありがとうございます」

55 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:39:25.28 id:t09IRmrf0
最後に内藤のお父さんは俺にラーメンを食べさせてくれた。
薄い表現だが、俺さ、このラーメンの味は絶対忘れない。いや、忘れられない気がするんだ。








つーか、この町も、この店も、窓から見える風景も、空も、風も、全部・・。








ラーメンを食べ終わり俺は内藤の部屋に戻る。
支度といっても、リュックの中をちょちょいと少しばかり整理するだけだ・・。
内藤に何か書置きを残そうかと思ったけど、自分の文章力じゃロクなことを書けないと思い、やめた。
しかし、俺はウズウズとしていた。内藤に、何か残したい。何か・・・

56 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:43:41.48 id:t09IRmrf0
('A`)「うーん・・・・」

('A`)「何かないかな」

俺はジーパンのポケットを漁ってみた。

('A`)「何かないかな何かないかな」






('A`)「・・・・あった!」






俺はポケットの中にあったとある物を、ハンガーに掛けられている試合着に忍ばせた。
・・・・明日、内藤がこれを着て、活躍することを信じて。

57 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:44:25.80 id:t09IRmrf0
('A`)「・・それじゃ、おじさん、おばさん、お世話になりました」

(::^ω^)「おう!帰り道、また寄ってくんな!」

J^ω^)し「旅の無事を祈ってるわよ」



('A`)「ホライゾンにもよろしく伝えてください」



(::^ω^)「そ・・そういえばホライゾンに会わないで去っちまっていいのか?」

('A`)「いいんです。俺なりに考えた結論です」





(::^ω^)「そうか。じゃあ俺は何も言えんよ。がんばれな」

59 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:45:16.36 id:t09IRmrf0
おじさんとおばさんは交互に俺の手を握る。
旅に出てから2度目の握手だ。気づいたことだが、掌って、大きさ、硬さ、温かさがその人によって全然違う。





('A`)「さよなら!」





俺はブンブン軒を後にした。外に出るなり強い日差しが身体を刺す。

昼間の光りは一日の中で一番強い。だが、何故か気持ちよく感じる。

さあ、行こうか。進路は北だ・・・。

60 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:46:37.49 id:t09IRmrf0
_

ブンブン軒から200メートル程離れたときだった。
・・・後ろから声が聞こえる。





「待つお!!!!!!!!!!!」








61 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:48:10.92 id:t09IRmrf0
( 'A`)「この声」


(A` )






(;^ω^)「はぁはぁ・・・」




後ろを振り返ると、そこには内藤の姿があった。

63 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:49:56.72 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「僕に何も言わないで行っちゃうなんて、酷いお!!酷いお!!」

(A`)「・・・旅ってのはそーゆーもんなんだよww」

(;^ω^)「何がだお!!ちゃんとお別れをしないのは人間として駄目だおー!!」

(A`)「・・・・・・」






内藤は俺に近づき、グローブを渡した。俺は自転車から降りる。






( ^ω^)「・・・・これ」

('A`)「・・グローブ?なんだ?」

65 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:50:52.75 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「最後にドクオとキャッチボールをしたいんだお」




('A`)「キャッチ・・ボール」

('A`)「・・・」

('A`)「いいよ」




俺はグローブを手に取り、左手にはめた。
黒くてよく磨かれているそのグローブは俺の手には少し大きかった。そういえばグローブをはめるなんて初めてのことかもしれない。
内藤はカバンからもう一つの黄色いグローブを取り出し左手にはめる。
そしてボールを握っては自分のグローブの掌中に投げ、俺のほうをニコニコと見つめている。

67 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:54:04.89 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「・・・」

( ^ω^)「じゃ、いくお」

( ^ω^)「それっ!」





('A`)「!あ~、捕れなかった・・。ごめんな」






俺の運動音痴はひどいもんだ。
内藤は精一杯俺に弱い球を投げてるのに、俺はグローブのさばき方がよくわからずポロしてしまった。

68 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:54:53.51 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「どんまいどんまいw」

( ^ω^)「さっ、来い!!ww」




内藤は気にせず、胸の辺りにグローブを構える。
よっしゃ、そこを狙って投げればいいんだな。





('A`)「ふんっ!!」

(A`)「・・ありゃ」





俺が放った球は大きく左に反れ、ワンバウンドして内藤がキャッチしてくれた。
いくらあまり野球をやったことがなくても、自分の余りのコントロールの無さに悲しくなった。

70 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:56:06.40 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「大丈夫だお!!そのうちサマになるおww」




そう言って内藤は二球目を投げる。一球目とは違い、球が来る方向が少しわかる。





・・ここだ!






ぱしっ という小気味良い音と共に、ボールがグローブの中に入った。

('A`)「やったw」

思わず無邪気な顔になる。内藤はそんな俺の表情を見て微笑む。

71 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:57:06.00 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「おら~wwここだおwここに向かって投げるんだおドクオ!!ww」







再び内藤が胸のところにグローブを構える。それだけじゃなく、腰も低くして、俺の球を待っている。
俺は、ボールを離すところはどこが良いかとか、意識しながら内藤へ球を投げてみた。










( ^ω^)「うん!ナイスボールだおwww」

今度は内藤の胸へと真っ直ぐな球が届いた。キャッチボールの楽しさが段々分かってくる。

73 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 02:58:12.91 id:t09IRmrf0
・・・・・


しばらく球を投げ合ってるうちに、俺はキャッチボールに夢中になっていた。







( ^ω^)「どうだお?ドクオ、キャッチボールは楽しいおww」

('A`)「・・うん。楽しいな」

74 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:01:16.65 id:t09IRmrf0
球を投げると同時に言葉も投げる。

そして



俺は・・そろそろ別れを投げなければならない。






ちゃんと投げれるかな。







ちゃんとキャッチしてくれるかな。


77 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:03:54.83 id:t09IRmrf0

('A`)「俺、そろそろ・・」

( ^ω^)「・・」










( ^ω^)「よっしwwドクオwww」

('A`)「なんだ?」

( ^ω^)「最後にたっかーーーーく球を上げてくれお!!」


('A`)「高く?」

( ^ω^)「そうだお!フライのつもりで投げるおww」

( ^ω^)「僕はそれを絶対に捕るwwwww」

79 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:06:23.49 id:t09IRmrf0
('A`)「・・よっし」


俺は空へ振りかぶって球を投げた。





(;'A`)「あっ!」

(;^ω^)「ちょwww」

・・やばい。自信ないことはそんな頑張ってするもんじゃない。

球は大きく大きく反れた。高く上がるも、このままじゃ田んぼに落ちてしまう。












82 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:09:36.42 id:t09IRmrf0


ニニニニ( ^ω^)ニニニニニつ
「ぜwっwてwwぇwwとwwるww」


内藤は両腕を広げて走り、田んぼに突っ込む。





(A`;)「う、うわっ」






田んぼの泥が跳ねまくり、たちまち内藤は泥だらけになった。同時に転倒し、球がどうなったかわからない。

83 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:10:50.84 id:t09IRmrf0
('A`)「ない・・とう?大丈夫か?」




(* ω )「・・はぁはぁww」


内藤は泥だらけの身を起こし、両手を掲げた。










( ^ω^)「捕ったおーーwww」

( ^ω^)「内藤選手!見事なファインプレイ!!試合終了ですwww」

84 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:11:27.54 id:t09IRmrf0
内藤の右手は、泥だんごのようになってしまった球を掴んでいる。

・・やるじゃん、内藤。





( ^ω^)「・・・」

('A`)「・・・・」





( ^ω^)「おっおっおっおっwww」

('A`)「ははははwww泥だらけで何言ってんだよーww」



二人の間に笑いが起きる。昨日、俺が自転車で追いかけたときと同じように。

87 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:14:29.13 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「・・ドクオ!」

( ^ω^)「この球はおまえにやるお!」


('A`)「・・ちょw」

('A`)「こんな泥だらけの球いらねーよw」


( ^ω^)「待ってろお」


内藤はカバンの中からタオルを取り出し、球を丁寧に拭いた。
球は白球に戻っていく。


( ^ω^)「・・ほら」

('A`)「あ・・ありがと」


俺は球をリュックにしまった。
そして、再びサドルに乗り込み、いよいよお別れだ。というところで内藤は話し始める。

88 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:17:36.50 id:t09IRmrf0
( ^ω^)「ドクオは、"自分には一生懸命になれることがない"って言ってたお・・・」


('A`)「ああ・・その通りだぜ?」






( ^ω^)「・・そんなことないおww」






('A`)「!?」


('A`)「・・・なんで?」

92 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:20:28.24 id:t09IRmrf0

( ^ω^)「リュックの中のノート、見ちまったお」



('A`)「そ、そっか。別にいいけどよ」





( ^ω^)「・・・それで、あと・・、ドクオが僕んちで働いてるとことか・・」





( ^ω^)「見てさ・・・、僕なりに・・・思ったんだけど・・」





(;'A`)「・・」

俺は内藤が何を言うのか、一語一句、心臓を打ち震わせながら聞いていた。

95 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:22:22.22 id:t09IRmrf0




( ^ω^)「今、ドクオは・・」














   ”一生懸命になれることを探すこと”に・・・、一生懸命に、夢中になってるんだお


96 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:24:03.19 id:t09IRmrf0
( A )「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




俺は、内藤の言葉に、閉口するしかなかった。



(;^ω^)「・・・!?ごめんだお。やっぱ意味不明だおねwwww」




( A )「いいや?」


( A )「・・ありがとな」


( A )「ほんとうに、ありがとな」





(;^ω^)「・・・・」

97 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:25:36.38 id:t09IRmrf0
それしか言えなかった。内藤の言葉は、俺にとって当てはまるかそうでないか?
そんなことを超越して、それしか言えなかったんだ。
・・・・・・・・・それしか。




('A`)「・・じゃ、もう行くわ。また、遊びいくからな?」

( ^ω^)「ぜってぇ来いお!!!来なかったら許さん!!ww」






('A;)「明日の試合・・・」

( ^ω^)「わwwかwwっwwてwwるwwおww」

( ^ω^)「・・・ベストを尽くすお」





('A;)「ああ・・それじゃ」

( ;ω^)「待つおww」

99 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:27:16.36 id:t09IRmrf0

('A;)「あ・・?」

( ;ω^)「おめー泣いてんじゃねーかおwww??」






(A;)「うっ、うるせーーよwwおまえだって・・・」


( ;ω;)「フヒヒwwwこれは汗だおwww」








(A;)「・・そんな泥だらけの手でこすんなよ!ばい菌つくぞ・・・」


( ;ω;)「う・・うるせぇおwww」

101 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:27:56.57 id:t09IRmrf0
(A;)「じゃ・・じゃあな。本当にじゃあな」







( ;ω;)「さっさと行けお!!拭いきれなくなるおwww」


(A;)「ああ・・・・わーってるよ!!・・・・」






102 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:28:44.46 id:t09IRmrf0
俺は自転車を漕ぎ始めた。はやく、内藤から離れたくて、漕いで、漕いで、漕ぎまくった。


ちんたら走ってたら、後ろを振り向きたくて、振り向きたくて、たまらなくなる。


だから、無我夢中で漕いだ。涙が渇くほどに早く漕ぎたいのに、涙はそれより早いペースで流れ出る。


人が涙するときっていっつもそうだ。


理由も根拠もないのに、なぜか、心のどこかが緩んでしまって決壊してしまうんだ。






・・・気がついたら、夕方になっていた。



蝉が死力を尽くして鳴いている。


俺は無表情のまま泣いていた。

103 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:29:36.81 id:t09IRmrf0
・・・ここはどこかわからないが、とりあえず公園のベンチに座った。

するとなんだか、また色々と切ないやら、悲しいやらで

残りカスみたいな涙が出てきた。

最後の一滴まで搾り取られると













そのままベンチにもたれかかって、泣きつかれて寝てしまった。


104 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:31:09.04 id:t09IRmrf0
_翌日



( ^ω^)「かっとばせーー!!い・と・う!!」


( ^ω^)「・・・」


















(  ω )「ごめんドクオ」


(  ω )「やっぱり、選ばれなかったお・・・」

106 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:32:51.40 id:t09IRmrf0
「・・・・・・・・・」





( ^ω^)「おまえがうたなきゃー だれが打つ~!!」

「・・内藤」


( ^ω^)「は、はいですお!!!」


「次の打席、おまえを立たせてやる」




(;^ω^)「・・・・・・・・・!!!!!!!!!!」



( ^ω^)ぶんっ、ぶんっ・・


「いいスイングだ。あとはよっく球を見極めてけ。おまえがここ一番で使える男か試してやる」


(;^ω^)「は、はいですお!!!」ぶんっ・・ ぶんっ・・・

107 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:33:47.15 id:t09IRmrf0
「・・・・?」

「おい、内藤、おまえポケットからなんか落ちたぞ」





(;^ω^)「?」


(;^ω^)「なんか棒っきれみたいなもんが丁寧に紙で包まれてるお」


(;^ω^)



(;^ω^)



(; ω )「・・!!!!!!!!!!!!!!!!!」

108 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:35:35.21 id:t09IRmrf0
あいつ・・・


僕がおごってやったホームランバー・・・


「ハズレたww」なんて嘘つきやがって・・・・・・・


・・・僕は一度も当てたことないのにwwwww





109 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/04(土) 03:36:04.22 id:t09IRmrf0
・・・お守り代わりに使えってか?ww




・・・・恩にきるお


・・・心から、


ありがとう。


だお。


              『   ホ   ー   ム   ラ   ン   』


                                              (白球編4 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/09/22 21:51:56

14jigendaddyjigendaddy   自転車編1

3 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 16:49:42.36 id:rL7ZYkzL0
また一つ別れが過ぎて、旅は続く。






翌日。
俺は早速、再びショボンおじさんの家へと向かう。
内藤の試合が気になる・・。でもまあ、大丈夫だろう。







_その日は特に何もなく、平坦な旅路だった。

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 16:51:57.53 id:rL7ZYkzL0
赤信号に足をペダルを漕ぐ足を止められ、俺はふと公道の看板を見上げた。
夕日の柔らかな光も目に差し込んでくる。




↑ ラウンジ 23Km





どうやら俺は知らぬ間に、サロン県の真ん中まで来てしまったようだ。
放心状態が覚めず、ぼーっとしながら進んでいると、気がついたら結構な距離を走ってたわけだ。




('A`)ドクオは夏の旅に出るようです

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 16:55:00.03 id:rL7ZYkzL0
そういえば今日は、昼時以外、本当に一日中自転車に乗っていた。
ずーっと漕ぎ続けるとこんなにもの距離を走れるのかと、少し嬉しくなった。
公園の滑り台に寝転がりながら、俺はまだ腫れぼったい瞼を擦る。




('A`)「んあぁぁ・・」

('A`)「立ち止まったら急に疲れてきたよ」

('A`)「今日の宿はここにするか」






俺は屋根のついた小屋に足を運び、腰を下ろした。
今日、目にした風景、人の顔などを目を瞑り思い出す。

市民プールに向かう子供たち
散歩をする老夫婦
大きな大きな入道雲
橋の下を流れる綺麗な川


すると、あっという間に時間は過ぎ、眠りにつくのにほど良い時間帯になる。

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 16:56:18.55 id:rL7ZYkzL0

( A )「・・・・・・・・・・・」




('A`)

('A`)「暗くなってきたな」

('A`)「よし、今日はもう寝よう」





寝袋から顔を出して、今宵の月を見る。
少しだけ欠けているが、まだ丸い形をしている月が俺を照らす。

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 16:58:30.19 id:rL7ZYkzL0
('A`)「かーちゃんも、親父も」

('A`)「ギコのおっさんも、阿部さんも」

('A`)「・・内藤も」

('A`)「みんなこの月の下、空の下なんだな」





( A )「・・みんなおやすみ」



旅に出て、こんな安らかな気分で寝袋に入れたのは初めてだった。
街灯に集まる蛾を遠目に、俺は眠りについた。

12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:00:16.26 id:rL7ZYkzL0
_



あっという間に朝は来た。


支度を整えて再び俺は自転車を漕ぎ出す。
とにかく、進む。進む。進む。俺は朝から昼までずっとペダルを踏み続けた。
何かに憑かれたように必死でショボンおじさんの家へと・・・。





・・・





(;'A`)「暑い・・・それにしても今日は暑い・・」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:02:08.47 id:rL7ZYkzL0

今日は異常なほどの暑さだ。
汗が半端ない。特に腕など、まるで水に濡れたようにビチャビチャ、テカテカとしている。




正午のベルが鳴り、信号機に何度目か足を止められたときだった。
気が緩み、一気に暑さが襲い掛かってくる。髪の毛を擦ってみると、太陽に照らされてかなり熱くなっていた。
もちろん背中は汗でびしょびしょ。それどころかパンツまで汗で染みてきた。




(; A )「やば・・バテてきた・・」

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:05:00.12 id:rL7ZYkzL0
俺はコンビニへと駆け込む。
ここは涼しい場所に行って暑さを凌がなければ。というのが俺の判断だ。




('A`)「あぁ・・涼しい」

「あの人、なに?ww」

「何のためにコンビニいるのよww両手広げてww」

(A`;)「・・はっ」




・・しかし、これが大きな間違いだということに、俺は後々気づくことになる。

18 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:07:17.27 id:rL7ZYkzL0
('A`)(・・ちぇっ。別にいらないのに食べ物買ってしまった)



('A`)「よし、じゃあ出発するかw」

('A`)「・・へくちっ」

('A`)「汗が乾いてクシャミが出たか」

('A`)「まあいいや。出発!」






澄み渡る青空の下、俺は自転車を漕ぐ。
進行方向にはうっすらと山影が見え、俺の早く着きたいという気持ちを急かす。
そして、さらにその気持ちは俺のペダルを漕ぐ足を急かし、動かす。


19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:09:01.79 id:rL7ZYkzL0

すると




(;;'A`)「あぢぃやあぢぅあぢぃぃぃぃぃぃぃぃうううあぁぁあん!!!!」

(;;'A`)「また汗まみれになっちゃったよあばばばばばば」


せっかく涼んだのに!という苛立ち、暑すぎてもう駄目ぽ!という苛立ち
いろんな苛立ちが集まって俺は壊れてしまったようだ。
暑いと変なのが沸く。と、よく言うが、こういうのを"変なの"と呼ぶのだな。


(;;'A`)「・・・・・・・・」


(;;'A`)「!」

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:10:41.92 id:rL7ZYkzL0
そうだ。辛いときは空を見るのだ。俺の大好きなあの空を・・・。
しかし、自転車を漕ぐ足は止めない。止まったら、ますます暑い。



(;;'A`)「・・!」



そう思うものの、俺は空に浮かぶあるものを見つけ、足を止め、見入ってしまった。





('A`)「飛行機雲だ」

('A`)「こんなにくっきりしたのを見るのなんて初めてだ・・・」

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:12:14.63 id:rL7ZYkzL0
暑さを忘れて俺は空を見上げていた。


西から東へ、それとも東から西へか、一筋の、真っ白な飛行機雲が空を貫いている。
雲は見えなくなるところまで続いていた。遠くなるほど雲の白が淡くなっていく
東の地平線から西の地平線まで、その雲に沿って、ずっとゆっくり目を運ぶと、地球が丸いことを実感した。
・・なんだか感動した。



('A`)「・・よし」

('A`)「行くか!」



('A`)(でもなんだか引っかかるんだよなあ)

('A`)(飛行機雲が綺麗にでた日って確か・・・)

('A`)(えーと・・えーと・・)

('A`)(思い出せねえ)

24 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:13:26.49 id:rL7ZYkzL0
飛行機雲に感動しつつ、ちょっとした引っ掛かりを持って俺は進み始める。
また暑さが俺を蝕む。さらに気温が上昇してきたような気がする。
しかし、体の反応はさっきからどうもおかしい。




('A`)「ぶえくしょーーー!」

('A`)「ちぇ、なんださっきから」

('A`)「こんなに外は暑いのに・・へっ」

('A`)「へっくしょーー!!」




('A`)「あぁもうイライラするな」

25 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:14:57.00 id:rL7ZYkzL0
その後俺は、自転車を漕ぎながら、コンビニに入ったり、出たりを繰り返して涼をとりながら進んだ。
今日も飛行機雲を見たこと以外は特に何もない旅路だった。

















だが、それがいい。


日が暮れたのと同時に、俺は公園を見つけ出した。この流れも慣れたものだ。

27 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:18:08.22 id:rL7ZYkzL0
('A`)「今日はここで終わり~・・・」

('A`)「・・」

('A`)「へくしょん」

まだくしゃみが止まない。おかしいな・・。
鼻を啜りながら寝袋を準備する。


('A`)「よし、これでオーケー」

('A`)「ずずっ」

('A`)「・・風邪なのかもしれないな」

('A`)「今日は寝袋にちゃんと入って眠ろう」

28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:20:30.52 id:rL7ZYkzL0

「続き・・・ては・・天・・・報です・・・」











公園の裏の家からテレビの音がする。
だが、はっきりと聴き取れない。そういえば、テレビもここ数日見ていないなあ・・。
ネットもやってない。ゲームもやってない。
でもなんだか画面を見ない生活のほうが、時間を有意義に過ごせているような、そんな気がした。

それが事実かは、旅から帰ったときに分かるだろう。


29 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:23:20.06 id:rL7ZYkzL0
「・・今日の暑さ・・・では一番の暑さ・・・39度で」

「・・・これは例年を・・・上回り・・・」

「明日は・・・雨が・・・」

「・・・・真夏日はまだまだ・・・」

「・・・次は・・・・週間・・・・」



( A )「・・・・・」

( A )「くしゅっ、ずずっ・・・」

( A )「・・くしゅっ!」

( A )「・・・・」

( A ) zzzZZZZ




(自転車編1 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/08/05 19:27:36

15jigendaddyjigendaddy   自転車編2

34 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:32:15.55 id:rL7ZYkzL0
寝袋にすっぽり入って寝たこと。
それも裏目に出てしまった。



_朝、たまらなく不快な気持ちになって目覚めると、背中にとてもヒンヤリしたものを感じた。




・・これは汗だ。


どうやら昨日は熱帯夜のようだった。かなり暑苦しかったに違いない。
それでも目覚めないで寝ていられたということは、身体に相当疲労があったんだろう。
急いでTシャツを着替える。あぁ・・そろそろ洗濯しなくては。



('A`)ドクオは夏の旅に出るようです


35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:33:31.00 id:rL7ZYkzL0
('A`)「・・・・どれ」




俺は重い腰をあげる。



( A`)「ううっく・・!!」



( A )「・・・・・・・・・」



立ち眩みと、頭を誰かから掴まれているような感覚が襲った。

36 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:34:17.77 id:rL7ZYkzL0
・・さらに、くしゃみも相変わらず止まらない。


('A`)「・・風邪、本当にひいちまったか?」

('A`)「ま、いいや」




俺は公園の蛇口で顔を洗い、乾パンを口に放って早々と自転車に乗り込む。
病は気から。だ。朝方の涼しい風に揺られれば、気分もよくなるかもしれない。



('A`)「だが・・・今日は風がさっぱり吹いていないな・・・」

('A`)「ちいっ」

('A`)「まあ、長い旅・・こんなことも・・あるさ・・」

('A`)「はあはあ・・・」

('A`;)「そろそろサロン県から出なくちゃな」

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:36:04.46 id:rL7ZYkzL0
_


結構頑張って走ってるつもりなのに、自転車を漕ぐスピードが明らかに昨日、一昨日より遅くなっている。
大した暑さでもないのに、もう新しく着替えたシャツが汗で濡れている。
・・昨日のようにコンビニへと向かう。しかし、いくら涼を取っても不快さは消えない。
頭は相変わらず痛い。だるい・・・。







('A`)「あそこの公園で休もう・・はぁはぁ・・」

('A`)「あぁ・・・・。やばいな・・・。」

('A`)「水・・水が飲みたいよ」

40 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:38:32.91 id:rL7ZYkzL0
('A`)「うぷっ!」

('A`)「ぬるい・・・ぬるすぎるよ」

('A`)「・・アテにならないな・・」


('A`)「ジュースでも買おうか・・・」


俺はリュックの中を探る。しかし、財布は見つからない。
無くなったわけではないだろう。ただ奥の奥のほうにあるだけなのだ。


がさごそ・・

('A`)「・・・ち、見つからない・・」

41 名前:一行抜かしちゃた ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:39:19.41 id:rL7ZYkzL0
俺は蛇口のところへ急ぐ・・。しかし



('A`)「うぷっ!」

('A`)「ぬるい・・・ぬるすぎるよ」

('A`)「・・アテにならないな・・」


('A`)「ジュースでも買おうか・・・」


俺はリュックの中を探る。しかし、財布は見つからない。
無くなったわけではないだろう。ただ奥の奥のほうにあるだけなのだ。


がさごそ・・

('A`)「・・・ち、見つからない・・」

42 名前:一行抜かしちゃた ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:42:48.36 id:rL7ZYkzL0
(;'A`)「うぅっ・・」

('A`)「やめた。下、俯いていると気持ち悪い・・」


('A`)「・・そうだ。ポケットの小銭は!?」


俺はジーパンのポケットに手を突っ込む。
しかし、中にあるのは紙クズや1円、5円玉ばかり。



( A )(そうだった。昨日、コンビニで買い物したんだった・・クーラーで涼むついでに)

( A )


('A`)「・・・行くか」

45 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:45:11.71 id:rL7ZYkzL0
・・俺は体調を崩したまま自転車を漕ぎ続けた。
視界が揺れているのは、陽炎のせいじゃなくて、俺の体調のせいなのか、自転車の進行もフラフラとしてきた。
や・・ば・・・い・・・。





「頭が痛いくらいなんだ」

「旅ではよくあること」

「それくらいでは休めない」






そんな言葉が俺の背中に乗っている。
・・しかし、もう・・これじゃ・・・

46 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:46:00.68 id:rL7ZYkzL0

(;'A`)「はー・・はー・・・くそっ」

(;'A`)「・・ん?」






俺は腕に冷たい感触を感じた。
少し立ち止まると、また、感じる。
・・もしや








(;'A`)「あ・・雨か?」

49 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:47:48.23 id:rL7ZYkzL0
俺は空を見上げる。
昨日までの青が嘘のように空は灰色だ。
顔に冷たい雨が、ぴちぴちと2、3滴当たる。


(;'A`)「ま・・、いいや」


(;'A`)「ただの通り雨だろ。一気に行くか・・」





自分の判断を信じて俺は進み続ける。雨が身体に当たるが、一定の量しか降っていない。


よし、大丈夫だ。

50 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:49:53.23 id:rL7ZYkzL0
そう思い、信号で足を止めたときだった





「わーっ、突然、強く降って来やがった!!」

「天気予報大当たりね」

「おかーさん、あめ、あめだよーww」

「傘、傘!!」







( A )「・・・・・」

なんてこったい。

52 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:51:47.39 id:rL7ZYkzL0
一瞬のうちに、雨の流れが目に見えるほど勢いは増してきた。
しかし、周りに雨やどりできそうなところもない。
・・いや、雨を凌げる場所なんて、多分周りを見渡せばどこにでもあったんだ。
頭が痛すぎて思考力が欠如していた。




とにかく俺は自転車を漕ぎ続ける。なんか知らないけど漕ぎ続ける。




横断歩道を渡りきり、300メートルくらい進み、














そこで、俺は気を失った。

55 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:54:10.22 id:rL7ZYkzL0
アスファルトが雨にじっとり濡れ、特有の匂いが鼻を劈く。

自転車が音を立てて倒れる音

雨が激しく道に打ち付ける音

それ以外は何も自分の耳には入ってこない

目には

何も見えない

頭に浮かぶのは




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




J( 'ー`)し「ドクオ、トレーナー着なさい」

('A`)「やだー」

56 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:56:39.32 id:rL7ZYkzL0
J( 'ー`)し「外はもう涼しくなっちゃったの」

J( 'ー`)し「だから半袖じゃ寒いのよ?」

('A`)「さむくねーもんっ」

J( 'ー`)し「そんなこと言って・・、友達みんな、もう長袖でしょう?」

('A`)「いーんだもん。おれ、半そですきだもん」

J( 'ー`)し「まったく・・」

ぴんぽーん

('A`)「あ、むかえきた!」

('A`)「じゃーな!かーちゃん、いひひー」

J( 'ー`)し「あっ、待ちなさいよ!!」

('A`)「じぶんのからだは、じぶんがいちばんよくしってるんだヨーンwww」

('A`)「ばいばいww」

57 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 17:59:16.84 id:rL7ZYkzL0
・・・・・・・・・・・・



(;'A`)「うーーー・・・・」

(;'A`)「かあちゃん、つめたいの、はやく・・はやく」

J( 'ー`)し「はいはい、アイスノンね」

J( 'ー`)し「・・・まったく」

J( 'ー`)し「何が"自分の体は自分が一番良く知ってる"・・・よ」

('A`)「・・うぅ」

J( 'ー`)し「全然分かってないじゃない!」

(;A;)「ごめんなさいごめんなさい」

58 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:00:24.59 id:rL7ZYkzL0
J( 'ー`)し「これに懲りたら、かーちゃんの言うこと聞くのよ」

J( 'ー`)し「・・・かーちゃんは」

J( 'ー`)し「ドクオ以上にドクオのことがわかるんだからね?」

(;A;)「うんっ。うんっ」

J( 'ー`)し「よし」




(;A`)「・・・かーちゃん?」

J( 'ー`)し「今度はなんだい?」

(;A`)「アイスかってきて」

J( 'ー`)し「・・・しょうがないわね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

59 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:01:35.40 id:rL7ZYkzL0
・・・走馬灯って、本当に見れるんだ。

・・じゃ、なに?俺、死ぬのw

・・・そうなんだよ

・・体調管理は昔から下手糞だった・・・

・・・・内藤・・わりーな・・

もうおまえんとこのラーメン、食べられねーわ・・ww

・・・今の俺には・・

・・帰り道も

・・帰るところもない

・・・うっひゃー・・





・・・まじで死ぬの?


60 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:04:35.23 id:rL7ZYkzL0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

  「まったく酷い雨ねぇ・・。それもいきなり」

「ママ」


  「どうしたの?」


「あそこになんか転がってるわ」


  「なんかって・・あれ、人じゃない!」


「・・助けたら?」


  「すいません、車、車止めてください」


61 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:05:24.62 id:rL7ZYkzL0
_


「ママ、こいつどうすんの」


  「学生さんかしら・・・、まぁ、酷い熱」


    「奥さん、このリュック・・、何か訳アリみたいっすね」


  「どうしようかしら・・」


  「病院に連れていきましょう」


「ママ、ママ」


  「なに?」


「家で休ませようよ」

63 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:07:52.91 id:rL7ZYkzL0
  「・・え?」


  「・・ちゃん。それは・・ね?」


「私が休ませるって言ったら休ませるのよ!」



  「・・・」


  「運転手さん?サロン記念病院に・・」


    「は・・はい」



「こら!!病院には行くな!!!家に行くのよ!」

「い・い・よ・ね?」

64 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:09:48.39 id:rL7ZYkzL0
    「ひっ・・・(そんな睨まんでもええやん)」


「・・・・・」


  (やれやれ、この子には本当に困ったものだわ・・)


  「そのまま家に向かってくださいな」


     「わかりました・・」

67 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:11:51.44 id:rL7ZYkzL0
_




・・あ、意識戻った。俺、生きてた。
よかったよかった。・・・はは・・・・。




雨の音が聞こえる。まだ、降り続いてたのか。
通り雨じゃなかったんだな。俺の予想、外れちゃった。頭が痛くなかったにしても、あのまま進んでたら色々とアウトだったワケだ。






69 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:13:26.79 id:rL7ZYkzL0
・・だが、その雨の音は、何かを隔てて聞こえているように感じる。
そうだ。なんか、部屋の中にいるような感じなんだ。野外とは違う、温い、それでいて気持ちいい空気を感じる。
・・・冷房か?



      ところで・・そうそう・・思い出した。やっと思い出した。

      飛行機雲が綺麗にでた次の日は、雨が降るんだっけ・・・・。

      昨日のうちに気づいておけばなぁwww・・・・。


・・・・・・

71 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:16:23.14 id:rL7ZYkzL0
('A`)「・・・・」


「あ、起きた」



気がつくと、俺はまた他人の家で寝ていた。
内藤のときとは違い、今回は和室だ。つまり布団・・。
服は真っ白いシャツに変わっていた。ちなみに下はそのままパンツ一丁。



ξ゚⊿゚)ξ



枕元には、くるくるした髪の毛の、やけに高圧的な目をした女の子が座っていた。女の子座りをしながら、分厚い本を読んでいる。
どうやらここは広いお屋敷のようだ。部屋には、俺の布団と俺と、彼女しかいない。

72 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:18:16.58 id:rL7ZYkzL0
(A`) ('A)


俺は女の子に、基本事項を尋ねる。



(;'A`)「あのう、すいません」


(;'A`)「ここはどこでしょうか」


ξ゚⊿゚)ξ「私んちよ」


(;'A`)「あ・・はいwそうですよねwすんませんww」

73 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:19:53.43 id:rL7ZYkzL0
ξ゚⊿゚)ξ「あんた、路上にぶっ倒れてたんだよ」


(;'A`)「あーやっぱりwwサーセンww」

(;'A`)「助けてくれたんですか・・?」


ξ゚⊿゚)ξ「別に善意で助けてやったわけじゃないわよ?」




ξ゚⊿゚)ξ「雨ん中、自転車とリュックとっ散らかして」

ξ゚⊿゚)ξ「うずくまって倒れてるあんたが」

ξ*゚⊿゚*)ξ「かわいそーーでかわいそーーーーで仕方なかったから助けてやったのよ!!」

74 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:21:00.75 id:rL7ZYkzL0
(;'A`)「お情け有難うございます・・」




彼女は喋り方も高圧的で、クラスにいたらあまり関わりたくないタイプの人だと思った。

・・いや、女となんか喋れねえけどよ。
そのせいか、自然と口調も固くなり、同い年くらいなのにガチガチの敬語を使ってしまう。ヘタレだな俺。

よし、ちょっとチャレンジしてみよう。



「ツンーー。ツン?」


ξ゚⊿゚)ξ「なに?」

76 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:22:14.19 id:rL7ZYkzL0
「話しあるからちょっときてーー」

ξ゚⊿゚)ξ「わかったーー」




(;'A`)「・・・」


(;'A`)「ツンっていうんだね」
















ξ゚⊿゚)ξ「・・はぁ?」

鋭い視線が突き刺さる。

77 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:23:19.08 id:rL7ZYkzL0
(;'A`)「ひょえっ!」


ξ#゚⊿゚)ξ「気安く口にするんじゃねーーよタコ!!」


(;'A`)「は・・はひ」




ξ゚⊿゚)ξ「・・じゃ、ちょっと行ってくるから」


ξ゚⊿゚)ξ「そのまま寝ててよ」

(;'A`)「は・・はーい」

78 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:26:04.23 id:rL7ZYkzL0
チャレンジなんかするんじゃなかった。あの子・・ツン(さん)は怖い。
・・でも、あの子のおかげで助かった。熱もだいぶ下がった。
・・・・感謝しよう。


('A )「・・・」


俺は目を少し開いて、ツンが向こうの部屋に行くのを見ていた。
だが少し様子がおかしい。


















"すっ"と立ち上がって歩き出す気配がない。

80 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:26:59.31 id:rL7ZYkzL0
('A )(どうしたんだろう)





ξ;゚⊿゚)ξ「よいしょ・・・」






彼女は、足をとても重そうに座ったまま引きずって進む。
手だけを使って、赤ん坊がやるようなハイハイのさらに出来損ないのような動きをしている。
そして、俺の視界から外れたところまで行き、何かに掴まった。

81 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:27:52.14 id:rL7ZYkzL0
ξ゚⊿゚)ξ「んしょ・・・」


何かに座ったようだ。視界にツンの長いスカートが見える。
・・そして、車輪?




('A )「・・・」



('A`)(・・・・・・・・車椅子?)


そう思った瞬間、車椅子で少し進んだツンと、俺の目が合う。



ξ゚⊿゚)ξ    (A` )


ξ゚⊿゚)ξ「・・・・」

83 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:29:54.45 id:rL7ZYkzL0
(A`;)(やwwやばwwもう片方の目もはずみで開けてしまった!!)


ξ゚⊿゚)ξ「・・何見てんだよ」


(A`;)「あ・・いや・・その」










ξ#゚⊿゚#)ξ「見てんじゃねーーよ!!!!!」

84 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:31:18.98 id:rL7ZYkzL0
額をめがけて、ツンの手から放られた本か何かが飛んでくる。
同時に、「このカス!」だとか、罵倒も飛んでくる
・・病み上がりの俺の体にそれをかわす運動能力はなく、モロに角で食らってしまった。






(;'A`)「あひょっ!!」






( A )「・・・・きゅぅ」






というわけで俺は再び気絶。
朦朧としているうちにツンの姿は消えてしまった。

87 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:32:38.85 id:rL7ZYkzL0
ξ゚⊿゚)ξ(・・・・)


ξ゚⊿゚)ξ(どいつもこいつも私のこと)


ξ゚⊿゚)ξ(変な目で見やがって・・・)






ξ゚⊿゚)ξ(あんな自転車)







ξ゚⊿゚)ξ(ぶっ壊してやる!!!!)



(自転車編2 おわり)

返信2007/08/09 22:49:31

16jigendaddyjigendaddy   休憩

89 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:38:40.64 id:rL7ZYkzL0
というわけで「自転車編」でした。
内藤のお話の出来が良かっただけに、これからちょっとプレッシャーを感じます。
感想や意見などお寄せください。


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/08/05(日) 18:42:02.70 ID:1wMHy+fnO

多分自転車編終わっても泣きそうだ

質問なんだが最終回までのプロットって立ってる?

91 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 18:53:41.01 id:rL7ZYkzL0
>>90

たってます。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/08/05(日) 18:59:39.10 ID:1wMHy+fnO
把握した
つか今まさに汗だくでチャリこいでたら飛行機雲あって笑った
ttp://imepita.jp/20070805/682130
f:id:jigendaddy:20070805194052j:image
明日雨か…

93 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 19:01:18.80 id:rL7ZYkzL0
それでは・・
本日も支援してくれた皆様ありがとう。
次回も(おそらく)読者に優しい時間帯にお会いしましょー。


('A`)ばいばい

94 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/05(日) 19:08:40.44 id:cBi82Gn70
>>92
ちなみに「飛行機雲がくっきり見えると次の日は雨」
っていうのは、テレビとかで見た知識じゃなく、科学的論証も(多分)なく、

一週間前くらいに、綺麗に飛行機雲見えたときの友人の虚言・・
のはずだったんですが、次の日、見事に雨がザーザー降って、その日以来なんとなく信じています。

ちなみにその日見えた飛行機雲、>>92の写真とまったく同じ感じです。綺麗ですね。
だから1wMHy+fnO氏の地域はた ぶ ん明日雨降るでしょう。

余談失礼しました。それでは今度こそさよなら。

返信2007/08/05 19:41:29

17jigendaddyjigendaddy   自転車編3

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:02:13.67 ID:6CflUDW00

雨はまだ降り続いていた。
猛暑が続く毎日の中、この雨模様はきっと人々に涼しさをもたらしただろう。
だが俺の場合は違った。自分の体調管理の甘さと重なり、路上で気絶という最悪の事態を招いてしまったのだ。
ところがぎっちょん。
路上で「死ぬのかな・・」なんて朦朧としていたら、目が覚めて他人の家で俺は寝ていた。
ツンという女の子が俺を助けてくれたらしい。
命の恩人の割りに、彼女は俺に高圧的な態度を取り、なんだか怖い。
















広い和室で、雨音だけが静かに聞こえる。


('A`)ドクオは夏の旅に出るようです

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:04:33.29 ID:6CflUDW00
再び目を覚ました俺は部屋を見渡す。





ツンが出て行って、さらに恐ろしいほど殺風景だ。
どうやらツンはまだ戻っていないらしい。枕元で看病なんて、やっぱり都市伝説だ。
ましてやあの性格だから、どうせ俺はあのままずっと寝かされていたのだろう。放置プレイか。
さっき呼ばれて出てったのは、きっと俺の処置についてでも話し合うためかもしれない。





('A`)「よいしょ・・と」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:06:45.35 ID:6CflUDW00
俺は体を起こして立ってみた。頭痛は感じないが、まだ少しだるさが残る。
だが、いつまでもここで寝ているわけにもいられない。雨が止んだらすぐに行かなくてはならない。
そう思い障子を開けて、縁側から雨をただ眺めていた。




ξ゚⊿゚)ξ「あっ」

ふと隣のほうを見ると、車椅子に乗ったツンの姿が。





ツンは俺と決して目を合わせないようにして喋る。

ξ゚⊿゚)ξ「なぁんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「もう立てるくらい元気になったんだ」

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:09:11.84 ID:6CflUDW00
('A`)「あ、ああ」


確かにずっとほったらかしにされて寝てた割りには治りが早い。さすが若さだ。


ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、もうこれ要らないねえ」



そう言って彼女はタオルと水が入った桶を胸に掲げる。





('A`)「あっ」

('A`)「もしかして・・ずっと看病してくれていたのか?」

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:11:00.70 ID:6CflUDW00
この「もしかして」が当たりでもはずれでも、良い反応を導くことはできない。
さっきの数分間の初接触でそんなことは分かっていたのに、口は動いてしまった。





ξ゚⊿゚)ξ「そうよ?」

ξ゚⊿゚)ξ「私は別に、ほったらかしてそのまま寝てれば治ると思ったんだけどね」

ξ゚⊿゚)ξ「ママがうるさいから仕方なく看病してやってんの」

('A`)「・・・」






そらきた。こんな台詞を、目線を完全に逸らされながら言われたら、いくら相手が恩人でも嫌な気分になってくる。

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:14:30.94 ID:6CflUDW00
ξ゚⊿゚)ξ「水とタオル、返してこよう」


そう言って彼女は車椅子をターンさせる。


ξ゚⊿゚)ξ「・・あ」


少しばかり距離が開いたところでツンは頭だけ振り向く。


ξ゚⊿゚)ξ「私がいなきゃ今頃ノタレ死にだったかもねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「私に感謝しなさいよ」

('A`)「う、うん」

ξ゚⊿゚)ξ「は?」



ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと言えよ」



(;'A`)「ありがとう・・」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:22:06.95 ID:6CflUDW00
なんでいちいちこんなふうに尖っているんだろうか。
だがしかし俺はここで話を止めるわけにはいかない。いくつか訊きたいことがあるのだ。




('A`)「なあ、ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「何よ」

('A`)「俺の荷物は?」

ξ゚⊿゚)ξ「入り口に全部置いてあるわよ」

('A`)「ここは地理的にはどこなんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「サロン岡市よ」


('A`)(よかった。倒れた場所から離れてない。それどころか近づけた)

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:28:07.24 ID:6CflUDW00
ξ゚⊿゚)ξ「すぐに行っちゃうの?」


('A`)「うん。雨が止んだら」


ξ゚⊿゚)ξ「残念ながらそれは駄目」

('A`)「・・?。どうしてだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ママが、ご飯食べていきなさいって」


('A`)「いやっ。そこまで世話には」


その瞬間、俺の腹から情けない音が出た。


ぎゅるる


('A`)「・・」

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:32:28.19 ID:6CflUDW00
ξ゚⊿゚)ξ「私は今すぐにでも帰ってほしい気分なんだけどね」

ξ゚⊿゚)ξ「ママがあんたと色々話ししたいっていうから」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、6時になったらリビングまで来て」




('A`)「うん」






そこで会話に一呼吸が入ると、ツンは無駄なことなど何も口にせずそのまま車椅子を走らせて行ってしまった。
夕飯を食べさせてもらうのは有難い。倒れていたところを看病してくれたのも本当に感謝している。


ただひとつ、あの子の態度がなんだか胸に重いものを残す。

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:36:25.25 ID:6CflUDW00
_


从'ー'从「まぁ、自転車でVIPからラウンジまで旅を?」

从'ー'从「いいわねぇ・・」



ツンの母親は娘と違って温厚で、また少々お喋りな人だった。
箸を休めては俺に質問を投げる。


从'ー'从「寝る場所とかはどうしてるのかしら?」

('A`)「公園ですね」

从'ー'从「やっぱり野宿なの~。大変ねえ」


ξ゚⊿゚)ξ「・・・」

ツンは、俺の向かいでつまらなさそうに箸でおかずを転がしている。
その姿はまるで幼児のようで、彼女の幼い一面を感じとれる。

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:41:51.40 ID:6CflUDW00
从'ー'从「ツン?食べないの?」

ξ゚⊿゚)ξ「食欲、ないの」

从'ー'从「そう・・」



ツンは俯いたままだ。そして間髪入れずまた会話が始まる。


从'ー'从「ドクオくん」

('A`)「はぁ」

从'ー'从「じゃあ、今夜の泊まるところは?」

('A`)「ここから最寄りの公園は・・」


俺が脳内で地図を広げていると、おばさんが立ち上がってブラインドを上げた。
窓に雨が激しく打ち付けている。


从'ー'从「晴れそうにないから、今夜はうちに泊まっていきなさい」

25 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:48:43.14 ID:6CflUDW00
ここで遠慮したとしても、家を後にした俺に打つ手立てはない。
快くその善意を受け取りたいが・・





ξ゚⊿゚)ξ「チッ」

从'ー'从「こら!」


ξ゚⊿゚)ξ「・・・」






不満そうな顔をしたツンを見るとサイコーに気まずくなる。しかし、朝になればもう彼女ともお別れだ。



('A`)「ありがとうございます」

俺はツンの家に泊まることになった。

26 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:52:42.49 ID:6CflUDW00
夕食を終え、俺は寝ていた和室に戻った。
"女の子の家"という感覚はまったくない。ツンの家はお屋敷なので、ここは旅館の一室のようなものだ。
こうして一人になると公園なんかよりずっと居心地がいい。



畳に寝そべり、ただぼーっとしていると、雨の音がだんだんと静かになっていくのが分かる。



・・もしかして


俺は障子の隙間から外を見る





('A`)「雨、止んだじゃん!」

28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 21:56:39.39 ID:6CflUDW00
よく見るとまだポツポツとは降っていたが、ほとんど止んだようなものだ。
・・だが、今日はここに泊まることにしよう。
夏の雨は、激しく降って、急に止む。空はいつものこの時間帯のように、綺麗な色を帯びてきた。
そう思って、俺は再び畳に寝そべる。







すると、今度は外を見た逆方向から、なにやら物音が聞こえてきた。

金属音か?何かと何かがぶつかる音だ。何かを叩いている。

俺は、そっと障子を開けてみた。







ξ;゚⊿゚)ξ「・・・・」

33 名前:所々修正 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:04:43.61 ID:6CflUDW00
なんと、車椅子に乗ったツンがハンマーのようなもので俺の自転車のペダルを叩いている。
手前のペダルを、何度も何度も彼女は叩いていた。
もちろんペダルは壊れていないが、ところどころがかなりへこんでいる。
なぜこんなことを!? 目線を変えると、ブレーキとタイヤを繋ぐ線の部分が切られているじゃないか。
・・・自転車を壊されているのか!!!







(;'A`)「・・お、おい!!!」









俺はそれを見るなり、すぐさま縁側から飛び出す。
勿論素足だが、そんなことは関係なく、俺は自分の自転車が壊されてたことで、パニックのような状態になっていた。


35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:06:44.87 ID:6CflUDW00
ξ゚⊿゚)ξ「!!!」



ツンは俺に気づくと、ハンマーを手に急いで車椅子を発進させた。



必死でツンは車椅子を走らせて俺から逃げる。




だが、すぐに追いつき、俺は肘掛を両手で掴んでツンを押さえた。
俺はツンに呟く。




('A`)「く、車椅子が人の足に勝てるわけねーだろっ」

36 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:09:31.17 ID:6CflUDW00

彼女は車椅子を勢いよくターンして、俺の腕を肘掛から振り解いた。
俺の正面に来た彼女の顔は真っ赤になり、目にはうっすら涙を浮かべている。





この時点で俺はようやく自分の言葉が不味いものだったと気づく。






(;'A`)「・・・」

ξ;⊿゚)ξ「しね!!」







彼女はハンマーを俺に向かって振り回す。
俺はそれを避けるのに精一杯で、自分の言葉について謝ることも、相手の行動を糾弾することも、ままならない。

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:10:52.84 ID:6CflUDW00
ξ;⊿゚)ξ「ばかやろう!ばかやろう!」






ハンマーの動きはもちろん不規則極まりなく、後退してもすぐ車椅子を操作して間を詰めてくる。






ツンは右手を振り回しているだけ、俺は全身でそれを避けている。
体力の消耗は俺の方が圧倒的に激しい。
息が切れ、動きが鈍り始めたときだった。




(;'A`)「や・・やめ」

(; A )「・・っ!!」

39 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:12:37.84 ID:6CflUDW00
右の二の腕に、ズシリと重いものがめり込んでくる感覚が走る。
俺は思わず腕を掴んで膝をつき、ツンのほうも動きが止まる。





そこでようやく俺は言葉を口に出すことができた。






(;'A`)「お、おい!!」

(;'A`)「なんで俺の自転車ぶっ壊してんだよ・・・・」




ξ;⊿゚)ξ「・・」



(;'A`)「言えよ!!」

41 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:15:31.30 ID:6CflUDW00
ツンは涙を指の先で拭き取りながら言い返す。


ξ;⊿゚)ξ「む・・・むかつくんだよ!!!」





(;'A`)「はぁ??」





ξ;⊿゚)ξ「・・・旅?・・・VIP県からラウンジ県?・・・野宿?」






ξ;⊿゚)ξ「おまえみたいな、自由に好き勝手なことやってる奴」





ξ;⊿゚)ξ「大嫌いなんだよ!!」

42 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:16:39.80 ID:6CflUDW00
('A`)「じゃ・・じゃあ」








('A`)「なんで助けてくれたんだよ!!」




ξ;⊿゚)ξ「・・・」



ツンは口ごもり、俺は続ける。




('A`)「俺、看病してくれてすごく嬉しかったのにさ」

('A`)「・・今はなんだか色んな意味で悲しいよ」

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:17:50.99 ID:6CflUDW00
ξ;⊿゚)ξ「・・・」

ξ;⊿゚)ξ「うるさいうるさいうるさい!!!」





再びツンがハンマーを振り回す。
だが俺は冷静さを取り戻していたので、簡単にツンの腕を掴んで制止することができた。





ξ;⊿゚)ξ「さ、触るな!離せ!」




俺は素直にその言葉に従う。
・・ツンはゆっくりと腕を下ろす。

44 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:21:11.71 ID:6CflUDW00
ツンは瞳いっぱいに涙を溜めて、それが流れないように我慢していた。
しかし、1滴、2滴とそれは零れ落ちていく。
口をきゅっと結んで堪えるその姿は、リビングで見たのと同じように、幼さを感じられた。





今度は俺は自転車の方に目を向ける。
これじゃブレーキをかけることができないし、ペダルの損傷のせいで、かなり運転に支障を来たすだろう。
こんな状態じゃ自転車を漕ぐことはできない。




('A`)(・・自転車)

('A`)(どうしてくれるんだ?)

48 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:23:45.24 ID:6CflUDW00
俺は下を俯いた。







眼中に入る水溜りに、オレンジ色の入道雲が写る。







( A )「・・・・・」



ξ ⊿ )ξ「・・・・・」





二人の沈黙を、雨で休んでいた蝉たちの一斉の泣き声が包む。

そしてそれを割るように、どこかのスピーカーから、乾いた声が聞こえた。

51 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:29:59.88 ID:6CflUDW00
『・・・町内会から連絡です・・・・』



从'ー'从「二人とも~、スイカ切ったから食べましょう~」

从;'ー'从「・・・!!!!!!!!!」

从;'ー'从(ど・・どうしたのこの自転車!?)




『・・・雨が止んだので、当初の予定通り・・・』




( A )「・・・」

ξ ⊿ )ξ「・・・」


52 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/09(木) 22:30:58.95 ID:6CflUDW00
从;'ー'从「つ・・ツンちゃん?」



『・・・サロン岡市の夏祭り、納涼歩行者天国を夜7時より開始します・・・』




( A )(俺の旅、終わった)



『・・・大通りの通行止めは6時45分から・・・』



从;'ー'从「・・・・」



『・・・・・』


(自転車編3 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/08/10 10:38:09

18jigendaddyjigendaddy   自転車編4

3 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 19:40:51.54 id:PSM26N8H0
从'ー'从「・・ドクオ君、スイカおいしいかしら?」

('A`)「はい。よく冷えていて旨いですよ」




俺は無残な姿になった自転車を見ながら、縁側でおばさんが用意してくれた西瓜を食べていた。
おばさんはさっきから申し訳なさそうな顔をして鎮座している。




从;'ー'从「・・うちの娘が、本当にご迷惑を・・」

从;'ー'从「さっそく自転車屋さんにさっき電話を入れたの。明日、修理に来てくれるって・・」





('A`)ドクオが夏の旅に出るようです


6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 19:47:09.45 id:PSM26N8H0
('A`)「あの・・おばさん」

('A`)「ツンがあんな性格になったのって・・、何か特別な理由があるんですか」


遠くの空を見つめながらおばさんは徐に語り始める。



从'ー'从「見ての通りなんだけど、あの子は足が悪いの」

('A`)「でも、それだけではないでしょう?」

从'ー'从「なんなのかしらね・・ 僻みっぽいのかしらね」

从'ー'从「時々、ヒステリックになって物を投げたりするし・・」

('A`)「ちょっと待ってくださいよ。親であるあなたも把握しきれていないんですか?」



从'ー'从「・・・あの子も複雑な年頃なのよ」

( A )「・・はぁ」

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 19:57:40.95 id:PSM26N8H0
おばさんのあやふやな態度に、俺は深く重いため息をついた。
おばさんは、本当はツンのことを誰よりも知ってるはずだ。
しかし、その中身をあまり話したくないというか・・、露にしたくない。そんな様子だった。親の心理だろうか。





从'ー'从「ツンのことが知りたいかしら?」

('A`)「え?いや・・その」

从'ー'从「ちょっと待っててね」





おばさんは視界に見える奥から二番目の部屋へと入っていった。
そして、なにやら衣服のようなものを取り出して戻ってくる。


12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:07:43.01 id:PSM26N8H0
从'ー'从「行ってらっしゃい」



そう言って俺の手にその衣服は手渡された。



・・・なんだろう?俺は早速広げてみる。



これ、甚平だ。


13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:08:12.90 id:PSM26N8H0
__


从'ー'从「ツンちゃーん?」

「・・・」

从'ー'从「いないの?いるんでしょツンちゃん!」

「なによ」

从'ー'从「お祭りに行くわよー」

「いかない」

从'ー'从「本当に?楽しみにしてたじゃない」

「・・・」

「焼きそばと、かき氷と、お好み焼きと、わたあめと、金魚と、フランクフルト買ってきてね」

从;'ー'从「ママ、そんなに持てないなー」

「ばか」

15 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:17:06.79 id:PSM26N8H0
从'ー'从「ドクオ君、もう準備終わったわよ?」

「・・は?」

从'ー'从「せっかくだから連れていこうと思って!」

「ふん。絶対行かない」






从#'ー'从「ドクオ君はツンちゃんのせいでどれくらい迷惑したか分かるの!!??」






「・・・・」


从'ー'从「あの自転車はあなたのお金で修理するよう電話を入れました」

从'ー'从「お詫びだと思って、町を案内しなさい」

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:25:50.37 id:PSM26N8H0
从'ー'从「いえ、お詫びなんかよりもっと・・」

从'ー'从「あなたね、人の大事な大事なものを壊したのよ?」

从'ー'从「大体ね・・」

(説教はウンザリだ!!)

がちゃ

从'ー'从「あ、出てきたわね?浴衣の着付けするからこっちいらっしゃいな」


ξ゚⊿゚)ξ「・・・ちっ」

从'ー'从「こら、舌打ちなんかしちゃいけません」

ξ゚⊿゚)ξ「ふん・・」

21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:32:56.38 id:PSM26N8H0
俺はしばらく玄関で二人を待っていた。だんだん外が暗くなっていく。
・・まだ放心状態気味だった。






空っぽの心に、旅に出る数日前のことがスッと差し込まれていく。





___



(,,'A`)「おいドクオ、何やってんだおめぇ」

('A`)「見りゃわかるだろ・・ 自転車に空気詰めてんだよ」

25 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:43:08.73 id:PSM26N8H0
(,,'A`)「なに、昨日お母さんが言ってたことは本当だったか」

('A`)「喋ったのかよかーちゃん・・」

(,,'A`)「別にいいだろう喋っても」

(,,'A`)「もしかしてそのママチャリで行くのか?」

('A`)「だってこれしかないじゃんよ」

(,,'A`)「ぷっ」

('A`)「なんだよ」

26 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:43:42.22 id:PSM26N8H0
(,,'A`)「そんなんで走ったら、体も自転車もバラバラになっちゃうぞ?」

('A`)「うっるせーなぁ・・」

(,,'A`)「いつ、行くんだ?」

('A`)「・・わからないよ。でも、思い立ったらすぐ出発したいから」

('A`)「明日、起きたらいなくなってるかもね」

(,,'A`)「まぁ、二日くらいまだ待ってろよ」

('A`)「?」

trrrr

(,,'A`)「あ、ギコさんか?実はよぉ・・・」

('A`)「・・・・」


____


28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 20:51:02.64 id:PSM26N8H0
・・親父の部屋には、若い頃の色んな写真がある。実に様々な場所をバックにして、仲間や一人で写っているのだ。
小さいころはそれを見るのが楽しくて、何度も足を運んだものだ。



親父の膝に座り、俺が、「おとーさんはここまでなにでいったの?」

「ひこうき?」「じどうしゃ?」

と聞くと


「ちがーーう!もっとカッコイイ男の乗り物さ・・」

と返し


「マウンテンバイクさ!」


と自慢げに昔の話しを喋り始める。


そして、俺が

「じゃあぼくもじてんしゃのる!!」

と言って

「よし、じゃあ次の日曜は河川敷に行って練習に行こう!」 と親父がシメるのが茶飯事だった。

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:02:43.71 id:Qgr44lKC0
___誰にでも当てはまるかもしれないが、あの頃、親父は俺にとって偉大な存在だった。
テレビの中でしか見れないような場所に、ガソリンも何も必要ないただの骨組みみたいな乗り物で行っちゃうなんて。


だが、親父がサイクリング野郎だったのは俺が生まれるまでだ。
親父が活き活きとしていたのは親父の部屋の写真の中だけで、少年期になった俺が目にする親父は、写真と違った。


毎晩、酔っ払って帰ってきて、みっともない腹を露にしてすぐ寝てしまう姿。

いくら俺に厳しく叱っていても、上司から電話がかかってくるとヘコヘコする姿。

日曜日はどこにも連れてってくれないで、ただテレビを見ながらタバコを吸う姿。







・・・俺の身長がちょうど親父を抜かし始めたころ、俺の親父への尊敬の念はすっかり消え失せていた。


33 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:08:00.30 id:Qgr44lKC0
そして時間が経ち、俺と親父の間にそれなりの距離ができた。
そこに飛び込んできたのが、旅の話しだった。
誰にも言わないで・・ただ心の奥底でなら述懐できる。




・・自転車で遠くの場所へ行くっていうのは、本当は憧れに近づきたかったからこその計画なんだ。





小さな頃から、密かに憧れていた・・。部屋の写真を見ては。


可笑しな話だ。親父なんて全然尊敬していないのに、ずっと俺の憧れだってことは。
矛盾じゃないか。
どちらが先行するんだろうか?この場合。
俺は旅に出る前にふと考えてみたんだ。


でも、会社からわざわざ早引きして、旅に必要な道具を買い揃えてきたり、俺が練ったコースに色々突っ込んでくる親父を見てすぐ思ったんだ。


・・やっぱり親父はすげぇなって。


35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:18:07.33 id:Qgr44lKC0
その決断が頭の中で固まると、ふと二つのことに気付いた。

一つは・・・

日曜日、「どっかつれてって!」と言っても、親父は無視し続けていた。

そして、俺があまりにしつこいと、親父は決まってこう言ったもんだった。




(,,'A`)「誰かに連れてってもらうんじゃなくてなぁ・・・ 自分で行け!!!!!」





この言葉が、今ほど深く刺さっている時はない。
ただ本当に、単純にどこかへ連れて行くのが面倒で言ったのかもしれない。

それはそれでいい。



俺に足りなかったものを全て表してくれてるような、そんな叱責の言葉に今は感じるのだ。今更だが。

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:27:59.57 id:Qgr44lKC0
そしてもう一つ。

"父"っていう存在は、"息子"っていう存在である俺に、人間の全てを見せてくれるんだって。


・・・何事にもチャレンジする人間

・・・嫌なことがあると、お酒に逃げてしまう人間

・・・上の立場にはどうしても逆らえない人間





「子供は親の背中を見て育つ」ってまさにこのことだと思ったんだ。
いや、どっちかというと 学ぶ か?

とにかく、自転車の一件で、俺は親父のことを少し好きになった・・・。










____そして今、それがすまない気持ちに全部切り替わっている。

38 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:31:01.01 id:Qgr44lKC0
('A`)「わりぃーなー親父・・」

('A`)「アンタの愛車、ぶっ壊されちゃったよ」

('A`)「ま、ブレーキとペダルだけなんだけどさ・・。直してくれるって言うけどさ・・」

('A`)「なんか複雑なんだよねえ・・」


死んだ目をしながら、地面に向かって言葉を呟いていると、眼中におばさんとツンの車椅子が見える。
・・もしやさっきから居たのか?


从'ー'从「ほ・・本当にごめんなさいね?」

从'ー'从「ほら!!ツン!!謝りなさい」


「・・・」


俺は上を向かないでただ「いいっすよ、いいっすよ」とだけ言っていた。


・・ツンは謝らなかった。

40 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:36:48.28 id:Qgr44lKC0
__

夜の街は、屋台や街灯の仄かな光りに包まれていた。
色んな方向から、美味しそうな匂いが漂う。だが、食欲は湧かない。
楽しそうに歩く女の集団や、仲良く手を繋ぎ歩くカップルがなんかむかつく。




・・・家でおばさんと別れ、俺はツンの車椅子を押しながら歩いていた。


俺とツンの間に会話は無いに等しい。ただ、道が分かれているところで


「右」だの

「左」って


そんなことしかツンは喋らない


俺もそれで十分だと思った。こいつと喋ることなんて、今は何もない。

・・というか、ぶっちゃけこんな賑やかなところには行きたくなかった。
独りになりたかった。あのときツンと交わした言葉を頭の中で一つ一つ浮かべながら・・

42 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:40:04.16 id:Qgr44lKC0
・・とはいえ!!雨があがったばかりのからっとしたアスファルトを、甚平と下駄装備でカランコロンと歩くのは気持ちいい。新感覚だ。
こんなこと、絶対に地元ではできない行為だ。甚平姿で外に出た瞬間、同級生の嫌な目線を突き刺されてを終わってしまう。





地元ではできないことをやる。これも旅の醍醐味だ。




しかし、足止めを食らったが明日はどうすればいいのだろうか?
また内藤のときみたいに働くか・・。しかし、ツンの家はお屋敷だ。俺が手伝えることなどあるのか?



・・などと雑念を抱いていると、ツンの口がようやく文章を発した。




ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、あそこのカキ氷やさん行ってよ」

ツンは前方左の方向を指差す。「い い フ ラ ッ ペ 」と書かれた屋台がある。


('A`)「あ、ああ」

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:41:35.28 id:Qgr44lKC0
俺は指差した方向へと車椅子を進め、なんとなく会話を続けようとした。



('A`)「・・でも、あそこのカキ氷やさんちょっと遠くないか」

('A`)「すぐ隣にもあるぞ、ほら」

・・・

ξ゚⊿゚)ξ「嫌だ。あのおじさんの店がいいの」


少し間をおいてツンは口を開いた。
なぜだか俺はほっとした気持ちになる。


('A`)「あのおじさん?毎年来てるのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。あのツナギ・・・。間違いないよ」


ξ゚⊿゚)ξ「あそこはね、シロップを三種類かけてくれるんだよ。ほら、列が少ないうちに早く進めろよ」




ツンの命令口調にちょっとイラっとされながら、俺は車椅子を"おじさんのカキ氷屋"まで到達させた。

45 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:43:37.00 id:Qgr44lKC0
ξ゚⊿゚)ξ「おじさん、イチゴと、レモンと、メロン」

「やあ譲ちゃん。今年もきたんだね。シロップは好きなだけかけてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「やたっ」



ツンの頬が少しだけ緩んだ。こんな表情を見るのは初めてだ。
・・どうせだから自分も買おうと俺は目線を下げる。




('A`)(カキ氷MAX・・? どんな味じゃそれは)





('A`)「よし決まった。あのー、俺はコーラとレモンとピーチで・・・」

N| "゚'` {"゚`lリ「オーケー・・」

N| "゚'` {"゚`lリ「ん?」

N| "゚'` {"゚`lリ「!!!!!!!!!!!!!!どっ、ドクオくん!!」

48 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:47:38.23 id:Qgr44lKC0
('A`)ポカーン






屋台の照明が暗くて最初はよく分からなかったが、カキ氷屋を開いているのは、紛れも無い。



そう、ガチホモの阿部さんだった。



('A`)「あ、ああ阿部さん!!こんなところで何を!?」

N| "゚'` {"゚`lリ「見ての通り露天商だが?」

N| "゚'` {"゚`lリ「毎年、俺は本職の他にこういうこともやってるんだ」

N| "゚'` {"゚`lリ「ここなら、俺の肉体を遺憾なく露出できるしな!!ふぬぅ!!」



そう言って阿部さんは、ノースリーブ仕様のツナギから突き出てた上腕二頭筋をぷるぷるさせた。
そして、カキ氷機を物凄い勢いで回し始めた。カップの中は1秒で削られた氷で一杯になる。

52 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:51:48.39 id:Qgr44lKC0

ξ゚⊿゚)ξ「わあ、すごーい♪」

N| "゚'` {"゚`lリ「最近はどうも持て余していてねぇ・・。上も下も・・。はっはっは」

N| "゚'` {"゚`lリ「ドクオくん、旅は順調かい?」

('A`)「は・・はいっ」

(;A;)(あぁ・・この感じ・・紛れもなく阿部さんだ)




___





えらくスパンが短い再会に軽く胸を打たれ、俺とツンはカキ氷屋を後にした。
色々話したかったが、並んでる客の迷惑になるし、控えておいた。
何より、阿部さんの強烈なアイコンタクトでもう腹いっぱいだ。
相変わらずあの人の俺を見る目はケモノのようだ。恐ろしや。


阿部さんと会ったことで少し気分が高揚し、俺はツンに話しかけた。

54 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 21:55:50.84 id:Qgr44lKC0
('A`)「ツン、おまえのカキ氷すっげー変な色してんなww」


ξ゚⊿゚)ξ「ん・・。おまえ、おじさんとどういう関係なの?」


('A`)「ああ、旅先で出会ったんだよ!」


ξ゚⊿゚)ξ「ちっ」



祭りの音にすぐ掻き消されたが、ツンが舌打ちを漏らした。
そうか、「旅」はNGワードか・・? 



__そしてまた少しの時間が過ぎる。

祭りの人の流れが早くなっていく。ツンの車椅子から手を離したら、探すのがかなり困難になるくらいに。

57 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 22:00:29.21 id:Qgr44lKC0
ちょうど商店街を一周したあたりだった。
手に焼きそばを持って、周りの雑踏からの音に掻き消されないような、芯の強い声でツンが話しかける。






ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、私、人がたくさんいるとこ嫌なの」

('A`)「ああ、俺も」

('A`)「で、それがどうしたんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「・・だから、静かな場所で焼きそば食べたい」


('A`)「どこにあるんだよ」

58 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/12(日) 22:01:03.73 id:Qgr44lKC0
ξ゚⊿゚)ξ「あっちの広い道通れば神社に着くから行け」



('A`)「うん。そうか。じゃあ行こうか」









__そして俺たちは祭りの灯りから消えていく。

まだ・・、お互いがお互いを許しあえていないような会話を交わして。

(自転車編4 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/08/12 22:16:07

19jigendaddyjigendaddy   自転車編5

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:01:39.83 ID:K/WiUcCs0
数分くらい商店街から離れていくと、こじんまりとした神社が見えてきた。空き地のような広い敷地を構えている。
しかし、「ここか?」と俺がツンに尋ねても、黙ったままだ。
仕方がないから敷地内に入ると、ツンはやっと口を開いた。



ξ゚⊿゚)ξ「…やっぱりいい」


('A`)「ん?なんでだよ。せっかく連れてきてやったのに」


ξ゚⊿゚)ξ「いいって言ってるじゃん。早く戻ってよ」





ツンはどうも神社へ行くことを拒否しているようだ。
なぜだろう。静かな場所に行って食べ物を食べたいんじゃなかったのか。
理由を尋ねてもやはり無視を続ける。

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:03:34.28 ID:K/WiUcCs0




('A`)ドクオは夏の旅に出るようです



このままでは困ると、俺は話しを繋げる。


('A`)「じゃあ…、商店街に戻るのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「嫌だ」

('A`)「なんだよ。俺も立ちっぱなしは疲れた。ここで休もう」



ξ゚⊿゚)ξ「…いやだよっ」




急に幼子のようにツンは駄々を捏ね始めた。よほど彼女が嫌がる理由が敷地内にあるのだろう。
俺はそれがどうしても知りたくなった。同時に、さっきから抑えていた尿意がどんどん大きくなっていく。

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:05:19.79 ID:K/WiUcCs0
('A`)「んーー!」

ξ゚⊿゚)ξ「なんだよ」


('A`)「…立ち小便がしたくなった。あっちの草むらなら大丈夫だよな?」


ξ゚⊿゚)ξ「…キモイ」

('A`)「はは。じゃあちょっと行ってくるから待ってて」



そう言って俺は、敷地内の周りを覆う草むらの中へと身を隠した。
別に隠しているつもりはないのだが、ここは神社の灯りが届かないので体が暗闇に包まれるのだ。
ちなみにその場所に着くまで結構距離があった。90メートル弱だろうか。

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:07:39.65 ID:K/WiUcCs0
ジョロロ…


('A`)「…ふぃー。野外プレイもだいぶ慣れたな」


用を足した後、しばらく向こうの端から端まで見渡してみる。暗闇に目が慣れて段々と視界がクリアになり、人がいることを確認した。
2…3人か。その集団は緑や赤の光をあちこちに散らしている。どうやら花火をしているようだ。
人がいないから行きたくないのか。それだけではないだろう。きっとその人物を嫌がっているんだ。
俺はもうちょっと様子を見ることにした。






('A`)「背丈は俺よりみんな大きいな。なんか恐い連中だ」

('A`)「…ん。なんだろ。あいつらどっか同じとこを見てる」

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:09:21.89 ID:K/WiUcCs0
「おい、あそこになんかいるぞ」

 「ホントだ。あんなとこで何やってんの」

   「結構可愛いじゃん。なあ、ちょっと行こうぜ」



何か話し合っているようだが、聞き取れない。
咲いていた花火が全て消え、集団は歩き始めた。こちら側へじゃない…、入り口のほうだ。





ξ゚⊿゚)ξ「…来る」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、暗くて誰だかわからないよ」

ξ゚⊿゚)ξ「…ばかドクオ。早く来てよ」

12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:11:05.08 ID:K/WiUcCs0
「おいーーっす!」



ξ゚⊿゚)ξ(…!誰こいつら!?)


   「こんなところで何してんの」

ξ゚⊿゚)ξ「べっ、別にただ立ち寄っただけよ」




('A`)「何だ、ツンと話してるぞ…」


「神社に立ち寄っただけって変じゃね?」

 「可愛い浴衣着てんね」



ツンの周りを、大柄な男達が囲む。

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:13:06.25 ID:K/WiUcCs0
('A`)「…これはなんという…」


(;'A`)「はっ!! 助けるべきだろ自分!!」




草むらを掻き分けて俺はツンの元へと急いだ。
暗闇と生い茂った草の性で前方が見えない…。早くも走れない。
俺は不安な気持ちで胸がいっぱいになる。とにかく、ツンを助けねばと、早く早くと急かしていた。

しかし、脳の命令はそう簡単にスムーズに体に行き届くわけではない。





('A`)「どわっち!」

('A`)「あ…足がもつれた」

15 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:15:11.92 ID:K/WiUcCs0





('A`)(…つぅーーーーーーん!!!)





('A`)「はっ!」

('A`)「心の中とはいえあの生意気娘の名を叫んでしまった!」


…でもそんなの今は関係ない。
あの男達がツンに何か乱暴をしたら、おばさんに合わす顔がない。
俺は本能的にも分かっていたし、頭でも理解していた。
ツンが危険だ。

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:16:50.59 ID:K/WiUcCs0
__

「まだ祭りって終わってないよねー」

 「足、悪ぃの?」

  「ねえねえ、ちょっと俺たちと一緒に行こうよ」


ξ゚⊿゚)ξ「何言ってんだよ!き…消えろ」


  「消えろはないんじゃね?」

 「ちょっと生意気だなこいつ」


ξ゚⊿゚)ξ(ほんとマジうざい…)


ぶんっ!


「わ!危ねえなこいつ。いきなりターンしやがって」

 「車椅子も安全運転で行こうぜ、な」

18 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:18:03.44 ID:K/WiUcCs0
人が走る音と、何か車輪がアスファルトを滑る音が聞こえる。
ツンが何らかの状況に追い込まれているということだろうか。
やばい。本格的に焦ってきた。入り口まで後数メートル…。



ξ;゚⊿゚)ξ「………」

「逃げる気かよー」



ξ;゚⊿゚)ξ(もっと!もっと早く走りなさいよこのポンコツ!)

タタタッ…

「頑張ってるみたいだけど、よゆーで追い抜けちゃうよ?」



ξ;゚⊿゚)ξ「はぁはぁ……」

「やっぱ、車椅子じゃーねー」




ξ;゚⊿゚)ξ「!!」

21 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:19:47.12 ID:K/WiUcCs0
ξ ⊿ )ξ( ('A`)『く、車椅子が人の足に勝てるわけねーだろっ』  )







ξ ⊿ )ξ









ξ;⊿゚)ξ「……」



「おいおい、泣き出しちゃったよ」

 「別にそんなつもりなかったけどねぇ」

   「…なんか一気にシラけたよ。行こう行こう」

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:21:59.42 ID:K/WiUcCs0
ようやく草むらを抜けた俺は辺りを見回す。
入り口からちょっと離れたところに集団とツンはいた。
急いで俺は駆けつける。




(;'A`)「はぁはぁ…やっと、追いついた」

ξ ⊿ )ξ




(だれあいつ…?)




(;'A`)「ちょ、ちょっとまてーーやおまえらぁああ!!!」






「あん?」

(;'A`)「この子になにしたぁあああ!!」

26 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:24:15.66 ID:K/WiUcCs0
ξ ⊿ )ξ「!!」



こんな風に啖呵を切るのは生まれて初めてだと思う。
ツンはずっと下を向いたままだ。男たちはこちらにガンを飛ばしながら話しかけてくる。
恐い…。すごく恐いけど、ここで下がったら、俺は金玉を持ってる資格なんかないと思った。



「別になにもしてねーよ」

 「ああ。まじなにもしてねー。そいつ泣いてっけど、理由知らんし」




男たちの態度は冷え冷えとしていた。俺はツンの方を振り向く。

27 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:26:00.08 ID:K/WiUcCs0
('A`;)「ほ、ほんとかツン」


ξ ⊿ )ξ「…」





ξ ⊿ )ξ「えっちなこと、されそうになった」





「はあ!!??」




男たちは顔を見合わせて困惑していた。よく見ると、ツンの浴衣や髪型が少し乱れているじゃないか。騙されないぞDQNめ
…本当に危ない。ガチで取り返しのつかない事態になるところだった。

そして俺の感情の矛先は、男たちに向けられる。

29 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:27:47.36 ID:K/WiUcCs0
('A`)「ぶるああああああ!!!」

('A`)「ツン!!おまえは先にどっか行ってろ!!」


ξ ⊿ )ξ「うん」




('A`)「こんのクソ外道がーーー!!!!」


「…なんだこいつ。(外道はその女だと思うんだが)」

 「ってかさ、おまえ、その子のなんなの?彼氏…ではないよな。その面で」


('A`)「彼氏なんかじゃねえ!!俺はな」

('A`)「…」





('A`)「なんだろうか?」

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:30:57.54 ID:K/WiUcCs0
俺がふと怒らせた肩を沈めると、その隙に男たちは、ここぞとばかりに闇の中へと消えてしまった。

「まじイミフーーww」などという言葉を吐き残して。




(;'A`)「よし。なんとか追っ払ったぞ」

ξ ⊿ )ξ「…あいつらがアンタに呆れて、勝手にどっか行っただけだよ」

ツンは俺の斜め後ろで冷めた顔をしていた。

('A`;)「ツン!どっか行ってろって言ったじゃんか」

36 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:33:09.36 ID:K/WiUcCs0






ξ ⊿ )ξ「そんな必要ないよ」






('A`;)「な…なんでだよ」










       だって、ウソだもん。

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:34:25.01 ID:K/WiUcCs0
('A`)





うそ?







ξ゚⊿゚)ξ







ちょっと、遊びいかないかって誘われただけよ





( A )

40 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:35:40.49 ID:K/WiUcCs0
無意識に手がでた。
堪忍袋の尾が切れたとはこういうことだろうか?



ξ゚⊿゚)ξ「つっ!!!!!」



俺の手がツンの頬にぴしゃりと当たる。
本当に無意識のうちに手が伸びたとしか言い様がないのだ。
…自然と頬を打つ強さに加減が無くなっていた。






(;'A`)「……」

41 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:38:24.40 ID:K/WiUcCs0
(; A )「……」



俺とツンは共に俯いていた。俺は彼女を殴った右の掌を見つめる。
そして…、頭を上げた。




ξ ⊿ )ξ




まだツンは俯いている。
暗さと前髪に隠れてよくわからなかったが、仄かに頬は赤くなっているようだった。





42 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:38:51.17 ID:K/WiUcCs0
('A`)「…」



俺は何も喋らなかった。
彼女から口を開くのを待っていたのだ。





おまえは言う事があるはずだ。

俺に。

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:41:00.53 ID:K/WiUcCs0
二人の間に沈黙が流れていた。
しかし街の方からはまだまだ楽しそうな声が聞こえてくる。



俺は段々我を取り戻してきて、「人を平手打ちとはいえ殴ったのは初めてだ」なんて思っていた。
それからまたちょっとだけ時間が経って、ようやくツンもゆっくり頭を上げ始める。



彼女の瞳は弱弱しく潤み、長いまつ毛はしっとりと濡れていた。




…泣けば済むことじゃない。だが、俺はかなり動揺した。
夕方見せた顔じゃない。



これは、夕方俺と喧嘩をしたときに見せた顔とは違う。

46 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:43:43.71 ID:K/WiUcCs0
ξ;- )ξ「…」



('A`)「ごっ」


('A`)「ごめんな。」



俺はツンの口から謝罪の言葉が出るのを待つために、沈黙を作った。
それなのに、顔を上げたツンの表情は、逆に俺の口から
「ごめん」その言葉を出させるように作用した。こんな風になるはずじゃなかったのに。




ξ;- )ξ「ひぐっ…ひぐ…」


ツンは嗚咽交じりに泣き出した。
まるで幼児のようだ。そして、流れる涙を手の甲で拭い、口を開く。

48 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:45:54.74 ID:K/WiUcCs0
…声も体も、全てが震えていた。
鼻から水が垂れてきそうな具合だった。ツンは塞き止めたものを一気に流すように喋り始める。



ξ;- )ξ「ドクオ…うっ、ごめん…ごめんなさい…」

ξ;- )ξ「きっ、キライだよねアンタだって…ひぐっ!…私のこと…」

ξ;- )ξ「我侭でさ…、意味不明でさ…、ヒステリックでさ…、さっきから困ってるでしょ?」

ξ;- )ξ「私もね…、うっ、ときどき、自分で自分が何やってんのか分からなくなるのよ!!!!」









('A`)「…」

50 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:49:57.11 ID:K/WiUcCs0
俺は何も言えない。何を言ったらいいのかわからない。
…でも、口を開かなきゃ駄目だ。
パニックになっているツンに自分の言葉を挟ませて、"会話"を成り立たせなくては。



だって、このままじゃ彼女は自分を責め続けて、心が破裂させるだろう。
きっと…、今までもそうしてきたんだ。
胸の中の辛いことや黒いものを、こうやって涙と一緒にして吐き出すしか術がなかったんだ。
高圧的な態度は、それを精一杯抑制するための仮面なのだ。





なぜか俺はそのことを一瞬にして悟っていた。
それは、俺も彼女と同じように胸の中にドロドロしたものを抱えている人間だったから。



それを、こんなふうに自分の外に吐き出せるかどうか。



それだけの違いだったんだ。
やっと気付いた。彼女も俺と同じなのかもしれないと。

51 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:51:47.32 ID:K/WiUcCs0

ξ;- )ξ「こっ、この足がぁ!!悪いのよ!」



ツンは左足を浴衣の布地越しに、拳で殴り始めた。鈍い音が出る。



('A`)「やめろよ!おい!ますますひどくなるよ!やめろって…」



俺はそれを両腕で制止する。ツンは呆気なく俺の力に抑えられ、再び小さく泣き始めた。
俺と彼女の距離が狭まる。よし、今なら話しかけられる。俺は腕を解いた。

53 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:53:57.55 ID:K/WiUcCs0
('A`)「一つずつ、聞いていくよ…」


('A`)「いや、それよりまず、俺からだな」

('A`)「さっきは殴って悪かった。顔は女の命なのにな…。最悪だったよ俺」



俺は車椅子の前で土下座をした。地に頭をつけるのは、初めてだ。




('A`)「あと、急に用を足しにどっか行っちゃってごめん」

('A`)「元はといえば、俺がもう少し我慢してれば変な男たちも寄り付かなかったんだ」


どうしても、目線を完全に合わせて彼女に言葉を渡すことができない。
ツンは黙ったまま、俺の話しを聞いている。

54 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:55:40.46 ID:K/WiUcCs0
('A`)「…でさ、今度はツンのほうなんだけど」

('A`)「まずは、なんで神社に入りたくなかったんだ?」



ξ;- )ξ「クラスメイト…」


('A`)「クラスメイト?」


ξ;- )ξ「花火してたでしょ?クラスメイトがいると思って…行きたく、なかった」


('A`)「馬鹿にされるのか?何か言われるのか?」





ξ;- )ξ「馬鹿にされるっていうか、学校では、シカトされる」

ξ;- )ξ「そのくせにこういう場所で会うとね、嫌な目をされるの…」

ξ;- )ξ「ひぐっ…。だから嫌だった…。ドクオに、その姿を見られるのも…、嫌だった!」

59 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 21:58:53.76 ID:K/WiUcCs0
ツンの口調が段々と幼くなっていた。
学校では空気扱い。しかし外では生殺し…。
よくあるパターンだ。俺もそういう状況に追い込まれた時期は無かったとは言い切れない。
ところでなぜツンが学校でそんな扱いを受けるのだろうか?
…尋ねようと思ったが、即座にその考えは閉まった。
ハブられている人間に、ハブられている理由を尋ねるなんて、ひどすぎる。馬鹿げてる。
大体予想もできる…。だからやめておこう。






俺は続けた。

('A`)「そっか…。じゃあ、なんでウソついたんだよ」

('A`)「お前の身に何かあったらな」

('A`)「おばさんにどう俺は…」

('A`)「それにな、お前だって…」

60 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:01:12.98 ID:K/WiUcCs0
責めているわけではないのに、自然と口調が厳しくなる。
それ以前に自分でも何言ってるかよく分からなくなってきた。
俺はとりあえずツンの返答を待つ。





ξ;- )ξ「別に…、理由…、ない」


ξ;- )ξ「でもっ…、こんなに怒られるって分からなかった。うっうっ」







もはやあの高圧的で棘棘しかったあの姿はない。
目の前にいるのは、ただ子猫のようにすすり泣くただの女の子だ。

62 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:03:08.31 ID:K/WiUcCs0

ξ;- )ξ「本当に私って、わけわからない…」

ξ;- )ξ「ごめんなさい、ごめんなさい…」




もうここまで弱くなってしまった姿を見てしまったら、こっちも潔くそれを許さざるを得ない。


('A`)「…わかったよ。もういいよ」

('A`)「ん」


俺はツンの膝にちょこんと乗っていた焼きそばに気がついた。
だいぶ中身がぐちゃぐちゃになっている。



('A`)「じゃあ…、誰もいなくなったし焼きそば食べようか?」

72 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:16:52.44 ID:9M8Vx6I00
('A`)「…早くしないと、冷めちゃうぜ」




















ξ;- )ξ「もう……、冷めてるよ」


75 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:18:12.62 ID:9M8Vx6I00
___祭りが終わり、俺たちは家へと戻った。





おばさんが「花火しない?」と誘ってきたが、俺もツンもそれを断った。
ツンがなぜやりたがらないかはわからないが、俺はとにかく疲れていた。疲労しきっていた。






そもそも俺は病み上がりの体だったのだ。
部屋に戻ってきた俺は、畳の上で体を大の字にし、今日一日を振り返った。

76 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:19:37.75 ID:9M8Vx6I00
('A`)「ええと…、昼過ぎに雨が降ってきて、ぶっ倒れて」


('A`)「夕方に目覚めて、気がつくとそこは見知らぬ部屋でした…っと」


('A`)「そこにいたのはツンという少女で、そいつはなんと俺の自転車を破壊しやがった…とさ」


('A`)「んで……メシ食べさせてもらって…いや、自転車を破壊されたのが先だったか?…えと…んと……」


( A )「……ぐぅ」








眠りの世界に片足を突っ込んだ俺の耳に、大きな音が入ってきた。戸を開ける音だ。

77 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:21:02.03 ID:9M8Vx6I00
('A`)「ふがっ!」

目線を上げた先には、浴衣からまた私服に着替えたツンがいた。



ξ゚⊿゚)ξ「部屋…、来ない?」









('A`)「え!?いやいや…、そんな」

ξ゚⊿゚)ξ「来なさいよ」

(;'A`)「うん……」


家に戻ってきて、彼女はまた"元"に戻ったみたいだった。

俺は疲れた体を持ち上げ、言われるままにツンについていく。

78 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:23:12.75 ID:9M8Vx6I00
ξ゚⊿゚)ξ「ここよ」


ツンは客間のエリアから離れた一室で立ち止まり、ドアノブを回した。






('A`)「おっ…………」


目の前に広がったのは、定石通り並べられたぬいぐるみや女の子らしい色調のインテリア…だったが、それより目を惹かれたのは…








('A`)「す、すっげえ量のテープとCDだな!!!」


ツンの部屋には入り口のところを除く三辺に二つずつ棚が置いてあり、その中にはテープやらCDやら漫画やらが敷き詰められていた。

80 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:24:45.73 ID:9M8Vx6I00
ξ゚⊿゚)ξ「うん。ひいた?」

('A`)「い、いや全然」




ξ゚⊿゚)ξ「私ね…、こんなんで全然友達いないし、外にも自由に遊びいけないし」

ξ゚⊿゚)ξ「この部屋が一番のお友達なのよね。今も、今までも」


そう言ってツンはラックからCDのケースを取り出し、コンポに差し込んだ。
絞った音量で、お洒落な曲が部屋に流れる。いい雰囲気だ。





ξ゚⊿゚)ξ「でも、あんたとはいい友達になれそう」


('A`)「!?」

82 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:27:21.89 ID:9M8Vx6I00
ξ゚⊿゚)ξ「あんなに本気でキレられたの、ドクオが初めて」

ξ゚⊿゚)ξ「あんなに私が人前でグチャグチャに泣いたの、ドクオが初めて」



ξ ⊿ )ξ「私って見る目あるわねー」


('A`)「…そだな。俺を助けてくれたもんな」




たった半日で、人を見る目は変わると思った。
そしてあのとき、本気で俺はツンを心の底から心配して、良かったと思えた。
本当に、良かった。

83 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:29:45.68 ID:9M8Vx6I00

ξ゚⊿゚)ξ「…」

('A`)「…」



俺はツンが出してくれたお茶を啜っていた。
彼女は何もいわず窓の外から星を見ている。


('A`)「なあツン、おすすめはどれだ?」


俺は棚を見回しながらツンに尋ねた。







85 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:31:09.94 ID:9M8Vx6I00
ξ゚⊿゚)ξ「うーん。これかなぁ」

ツンは車椅子でこちらに近づき、二段目の棚からテープを取り出した。


少しだけ色褪せたラベルには

『フルーツバスケット』

と書かれている。


87 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:31:56.57 ID:9M8Vx6I00
('A`)「これってどんな映画なんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「三人の女の子がね、イカダ作って島から逃げ出すの」

('A`)「…」

('A`)「え、それだけか?」



ξ゚⊿゚)ξ「それだけよ」

('A`)「へぇ。こんなにいっぱい映画のテープあるから、そういうのにはウルサイと思っていたんだが…」

ξ゚⊿゚)ξ「私の身の回りにはね…」

ξ゚⊿゚)ξ「できない"それだけ"が多すぎるのよ」


('A`)「えっ、あ…ごめん」

ξ゚⊿゚)ξ「別に謝らなくていいよ」

90 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:34:21.94 ID:9M8Vx6I00
('A`)「えっ、あ…ごめん」

ξ゚⊿゚)ξ「別に謝らなくていいよ」


ξ゚⊿゚)ξ「だからね、そんな変哲もない普通な映画が楽しいの」

ξ゚⊿゚)ξ「それにね…」





ξ゚⊿゚)ξ「この映画に出てくる女の子たちの顔が好きなの」

('A`)「表情?」

ξ゚⊿゚)ξ「うんっ」


ツンは寂しげに微笑む。


ξ゚⊿゚)ξ「演技だけど…、それでも私には眩しすぎるくらいいい笑顔してるんだよ?みんな」

92 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:38:21.97 ID:9M8Vx6I00
ξ゚⊿゚)ξ「あとね…、すっごく気に入ってるシーンがあるんだ。この映画には」

('A`)「へぇ。そいつぁどんな?」

ξ゚⊿゚)ξ「女の子がね…他の女の子たちと別れちゃうの」


('A`)「うんうん」


ξ゚⊿゚)ξ「それでね…、その去ろうとした女の子は」


ξ゚⊿゚)ξ「"また会えるかな?"って別れ際に言ったのよ」

('A`)「なんかその時点でいいシーンだな」


ξ゚⊿゚)ξ「そして残された子は、彼女にこう返事する…」

94 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:41:13.24 ID:9M8Vx6I00
('A`)「ほうほう、その言葉がジーンとくるんだな?」

ξ゚⊿゚)ξ「えと…、ジーンってくるより、なんか励まされるんだ」


('A`)「それで?残された女の子はなんて言ってやったんだ?」


ξ゚⊿゚)ξ「……」












ξ゚⊿゚)ξ「い・わ・な・い!」

(;'A`)「なんでだよー」

ξ゚⊿゚)ξ「実際に観てみなさいよ」


95 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:42:50.81 ID:9M8Vx6I00
「観る時間なんてねぇよー」と俺はぼやくと、彼女はいたずらに微笑んだ。


しかし、少し時間が経つと、その表情は、段々とまた曇っていく…。
そんなとき、俺の頭にとある提案が浮かんだ。





('A`)「なあ、花火しにいかないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「花火?」


('A`)「ああ…。玄関に袋が置いてあったぞ」

('A`)「おばさんがせっかく準備してくれたんだ。ちょっとくらいやらないか?」



ξ゚⊿゚)ξ「うん…」

97 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:44:59.97 ID:9M8Vx6I00
俺は畳部屋に戻り、リュックの小ポケットからマッチと蝋燭を取り出した。
どこかで必要になるかもしれないと、こういう小物は何種類も用意したつもりだ。
花火の為に使うとは思ってもみなかったが。



__そして縁側に出ると、既にツンが花火の入った袋を持って待っていた。



俺は蝋燭に火をつけ、蝋を地面に垂らしてしっかりと火種を立てた。
袋の中にあった花火セットのビニールを破る音が聞こえる。



ξ゚⊿゚)ξ「はい、これ…」



ツンは両手に一本ずつ手持ち花火を持っていた。
車椅子でゆっくりと俺のほうへと近づき、左手に持っていた花火を手渡してくれた。

100 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:46:36.76 ID:9M8Vx6I00

('A`)「お、ありがと…」





二本の花火が蝋燭へと近づく。

数秒ほど先端を火の中で燻らしていると、音とともに青と赤の花が咲いた。




('A`)「おぉ…、やっぱりこういうベーシックなのもいいな」


ξ゚⊿゚)ξ「そだね…」



俺の花火から咲いていた青い光が緑へと変わり、ツンの花火はまだ勢いよく赤色の閃光を噴出していた。
真っ暗な暗闇の中で、二本の花火が俺たちの姿を少しだけ照らす。

101 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:48:02.79 ID:9M8Vx6I00
光から目を離し、ツンの方に視線をくべる。


ξ゚⊿゚)ξ「楽しいね…」


移り行く花火の色にツンは見惚れながら、優しく微笑んでいた。
しかし、俺はあまり気持ちがよくなかった。
それは…、その笑みは、自室で見せたあのどこか寂しげな笑み。
あれと、まったく同じ類のものだったからだ。



本当は物凄く可愛いんだろうその笑みから、哀しみを取り除いてやりたい。

そんな気持ちが俺の中に芽生える。



('A`)「なあツン、俺は…」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」


('A`)「いや…なんでもない」

103 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/15(水) 22:50:33.69 ID:9M8Vx6I00










___俺は君の、全力で笑った、純粋で、満面の笑顔が見たいんだ。










(自転車編5 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/08/17 11:21:20

20jigendaddyjigendaddy   自転車編6

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/25(土) 23:54:00.91 id:qrBiyTBS0
__ツンの家の庭では、しばらく赤や緑の花火が絶えず咲いていた。

そして最後の手持ち花火の火薬が静かに尽きたとき、俺たちは真夏の夜闇に包まれる。



















ドクオは夏の旅にでるようです

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/25(土) 23:55:17.65 id:qrBiyTBS0
俺とツンを繋ぐ線分の中点にある蝋燭の背丈は、もう小指ほどになっていた。
茜色の炎はちろちろと燃え、俺たちのズボンの裾を照らす。



暗闇の中でツンは喋り始めた。





ξ゚⊿゚)ξ「…自転車」


('A`)「いいよ。もう謝らなくていい」


ξ゚⊿゚)ξ「…」



ξ゚⊿゚)ξ「速いだろうね」

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/25(土) 23:57:03.58 id:qrBiyTBS0
('A`)「ん?」

ξ゚⊿゚)ξ「あれってさ、普通の自転車と違うよね」

('A`)「ま、まあな。見ればわかるだろ」


ξ゚⊿゚)ξ「…速いんだろうね。風になった気分でしょ?」


('A`)「まあね。それでも、ずっと漕いでるとかなり疲れるもんだよ」


ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」

('A`)「ツンに助けられる直前、つまりヘトヘトで漕いでたとき…」




('A`)「あんときほどペダルが重く感じたときはないよ」

8 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:00:55.49 id:AhM/12rF0
「風になった気分」
そうツンに形容されたとき、何故か無性に嬉しくなった。






…ふと俺は自転車の方を見てみる。しかし、暗くてよく分からなかった。







(A` )「ギアの重さは2くらいにしてるのに…、5、いやそれ以上に感じたなあ」

(A` )「漕いでも漕いでも速くなっていく感じが沸かないんだ」

(A` )「あの日は本当に辛かったなあ。死ぬかと思った!」

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:04:34.44 id:AhM/12rF0
ξ゚⊿゚)ξ「ギアってなに?」

( 'A)「ん?ギアってのはな…」

( 'A)「わり」

( 'A)「俺も専門知識は皆無だからよく説明できんわ」

ξ゚⊿゚)ξ「そっか」

('A`)「とりあえず、ギア比が小さいと軽く感じて、大きいと重く感じるんだよ。漕ぎ応えが」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあずっとそれを最小にしておけばグングン進めるね」

('A`)「いやー、そういうワケでもないんだ」




ξ゚⊿゚)ξ「じゃあなに?」

('A`)「ん…。よく説明できんわ」

12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:06:39.94 id:AhM/12rF0
ゆっくりと揺れている蝋燭の火を見つめながら、ツンは優しい口調で喋る。




ξ゚⊿゚)ξ「私ねぇ、あんたのことが」


(*'A`)「?」




ξ゚⊿゚)ξ「うらやましいよ」





(;'A`)「…」 


('A`)「…こんな駄目駄目男のどこがうらやましいっての?」


ξ゚⊿゚)ξ「どこが駄目なの?」

13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:07:58.95 id:AhM/12rF0
('A`)「え!?そりゃあその」

('A`)「未だに電車ひとりで乗れないし」

('A`)「床屋から卒業してないし」

('A`)「どうて… ごほん! 彼女いない暦イコール年齢だし」

('A`)「ブリーフ派だし」


('A`)「えと、あとは…」





ξ゚⊿゚)ξ「ははっ」





返答に詰まる姿を、彼女は和やかに笑う。
暗闇に慣れた俺の瞳は、その表情をくっきりと浮かばせた。

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:12:08.27 id:AhM/12rF0
ξ゚⊿゚)ξ「そんなの大したことない、全然」

('A`)「それに今までクリアできたゲーム一本もないしさ…」

ξ゚⊿゚)ξ「君は大人だよ」




('A`)「お、大人?」



ξ゚⊿゚)ξ「うん。私なんかよりずっと…」







そう言いながらツンは花火が入っていた袋の中を弄り始めた。
何かを発見し、包装を破り、俺に手渡す。

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:14:32.27 id:AhM/12rF0
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり最後はこれだよね」




渡されたのは数本の線香花火だった。





('A`)「おっ…いいね」





花火に点火しようとしているツンに俺は尋ねた。

('A`)「あのさ、俺は大人か?少なくとも自分ではまだまだガキだって思ってるんだが」

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:18:41.30 id:AhM/12rF0
「こういうこと聞く時点で俺は子供なんだよな」と思いつつ俺はツンの返答を待つ。
垂れた花火からぱちぱちと音が鳴り始めたとき、彼女の口は開いた。




ξ゚⊿゚)ξ「少なくとも私よりは大人だよ!!」

ξ゚⊿゚)ξ「自分でやること決めて、実行してる」


ξ゚⊿゚)ξ「私なんかね、いっつも…」






ξ゚⊿゚)ξ「…ううん。なんでもない」



ツンは言葉を止め、穏やかな顔で花火に目をやった。
俺たちが垂らしていた線からは、小さな灯火が出たり消えたりを繰り返していた。


そんな様子を見ていると、俺の頭からなんともロマンチックな流れが吹き出た。

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:22:56.39 id:AhM/12rF0
('A`)「線香花火ってさあ…、人生なんだぜ」


ξ゚⊿゚)ξ「え?人生?」


('A`)「ああ、最初はチロチロと咲き始めるだろ」


('A`)「それが段々大きくなって」


('A`)「ほら、今みたいに満開になるんだ。賑やかにパチパチいってるだろ」


('A`)「そんで静かにその勢いを緩め、消える」


('A`)「…人生だよな」

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:24:36.28 id:AhM/12rF0
俺の乏しい国語力を搾っての見解だった。
しかし妙に満足感があった。自己満足というやつか。



ξ゚⊿゚)ξ「ははっ。言われてみればそうかもね」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、私は違うわ」

ξ゚⊿゚)ξ「ずっとチロチロとくすぶってるだけだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そして、静かに消えるだけでしょうね」



('A`)「いや、俺のほうが…」


ξ゚⊿゚)ξ「だからドクオは大人だって!」

ξ゚⊿゚)ξ「もっと自信もちなよ」



「自信もちなよ」……その言葉をそっくりと彼女に返したかった。
そう思った矢先、二人の火の玉はゆっくりと地に落ち、俺達は再び闇に包まれた。

25 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:29:54.86 id:AhM/12rF0
('A`)「さっ、今度こそ終わりだな。俺が片付けるよ」




俺は近辺のゴミを拾い、花火が入っていた袋に集めた。
袋を閉じようとしたとき、一本突き出た棒が俺の手に触れた。
…これは手持ち花火だ。




('A`)「ん…?ツン、もう一本だけあったよ。手持ち花火だよ」


俺が言うなり、ツンは急いでこちらのほうへ向かってきた。


ξ゚⊿゚)ξ「ちょうだい!」


('A`)「あ…、うん」

29 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:35:09.05 id:AhM/12rF0
ツンはライターで直接花火に火をつけた。白い花がツンの手元から噴き出す。
そして、車椅子をターンさせ、言った。









ξ゚⊿゚)ξ「なんて書いてあるんでしょーかクイズ!!」

('A`)「…………」



(;'A`)「!?あ、そうか、その花火で字を書くから当てろってことだな?」


ξ゚⊿゚)ξ「そうだよ。じゃあ、いくね」

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:38:44.31 id:AhM/12rF0
ツンの右手がゆっくりと曲線や直線を引いた。
花の色は、白から、青へ、そして赤へ








('A`)「が……」


('A`)「ん……?」


('A`)「ば………」






32 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:39:28.45 id:AhM/12rF0
そこで、光は消えた。
ツンは悔しそうな顔をして、それからちょっと無邪気にはにかんだ。







「まあこの三文字で大体わかったよね。おやすみ!」と言って、バケツを持ってそそくさと行ってしまった。








俺は闇の中、ゴミ袋を持って、立っていた。

………胸には、なんだか優しいものが残った。

35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:45:49.31 id:AhM/12rF0
__朝が来た。和室の柱に立て掛けられているハイカラな時計は、6時を指していた。





この俺に早起きの習慣がついたなんて、信じられない。
だが、ちょっと起きるタイミングが遅くなると、それだけでもう朝の気分は最悪になってしまう。
旅に出る前は、クーラーをつけながら平気で昼まで寝ていたなあなどと思った。




('A`)「ふああああ…」




目覚めた俺は縁側に立って、大きく背伸びをする。新鮮な空気を吸い込む。
今日も良い色の空だ。気持ちがいい。

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:49:49.58 ID:72n9rb0F0
朝の食卓でおばさんは、自転車屋さんは仕事の朝イチに…、9時には来てくれると言った。
昼過ぎには、出発できる。俺は胸の高鳴りを感じていた。





しかし同時に、胸にひっかかることもあった。

ツンのことだ。





俺はツンの屈託のない笑顔が見たい。

どうしても、見たい。








毎日、憂鬱に日々を送る彼女に、自分の力で最高のスマイルを導かせたい。

昨夜、神社で泣き顔を見たときから、ずっと思っていた。

38 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:53:56.18 ID:72n9rb0F0
この旅に出て、「初めて」のことが沢山あった。
「信じられない」ことが沢山あった。


__そしてまた一つ、俺が誰かのために動くなんて。






お節介だろうか。余計なお世話だろうか。

それでもいいんだ。






…いいんだ。

39 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:55:49.44 ID:72n9rb0F0
午前10時。今日も太陽は燃えている。セミも元気に鳴き始めた。


屋敷に着いた自転車屋は、既に汗水を垂らしていた。
マウンテンバイクをいじるのを傍観しながら、俺は足りない頭を絞っていた。




('A`)「んー…」


「よお、お兄ちゃん」


('A`)「…?」

('A`)「はい?」


「なかなか手入れが行届いてて、いい自転車だなあ」


('A`)「(そりゃあもちろん)ど、どうも」

41 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 00:56:47.94 ID:72n9rb0F0
「これなあ…、うん、チャレンジャーの乗り物って感じするよなあ…。」



なかなか面白いことをいうおじさんだと思った。
チャレンジャーか。うん、俺は挑戦者だ。なにに挑んでいるのだかは知らん。

工具を持つ自転車屋さんの手元から、金属がこすれ合ったり、ぶつかり合ったりする音が聞こえてくる。



自転車はすぐに直った。もともと壊れている箇所はあまり少なかったし、二時間ほどしか修理の時間は続かなかった。






自転車屋が腰を上げ、ハンドルの周りを何やら調整しているときだった。
俺の頭にとある考えが浮かんだ。

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:02:52.54 ID:72n9rb0F0
('A`)「すす、すいません」


「ん?」


('A`)「あの、これを、…… してくれませんか?」


「ああ、いいけど。念のため持ってきたんだ。でも、別途料金だよ?」


('A`)「大丈夫です。お願いします」


「よし、わかった」





俺はポケットからお金を取り出し、おじさんの油と汗まみれの掌に乗せた。
そして、あるものを受け取った。

45 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:07:30.98 ID:72n9rb0F0
__俺は屋敷に戻った。ツンとおばさんとの、最後の食事の時間だった。


('A`)「おばさん、有難うございます。おかげで自転車、すっかり直りました」


从'ー'从「いいえ、礼には及びません。重ねてドクオ君に謝ることしか私にはできないわ」

从'ー'从「ほらツンも…」

ξ゚⊿゚)ξ「……」


('A`)「いいえ、もう大丈夫です。直ったんだし!」

('A`)「それより、この二日間本当に有難うございました」

('A`)「感謝の気持ちで一杯ですよ」



こんな一丁前に感謝を口にできるとは、俺も成長したのだろうか。
おばさんが作ってくれた冷やし中華を頬張りながら思った。

そういえば旅立った日も冷やし中華だった。かーちゃんと親父は今頃どうしているだろうか……

47 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:13:19.54 ID:72n9rb0F0
从'ー'从「食べたらすぐ行くの?」


('A`)「今考えています。とりあえずは腹が落ち着いてからですね」

('A`)「それにしても美味しいっすね、この冷やし中華」


俺の口からはお世辞も飛び出るようになった。
なんだか俺が俺じゃなくなっていくような気分だ。もちろん良い意味でだが。


('A`)(かーちゃんのはちょっと味が濃すぎるんだよな、その点これはいい…)




なんて思っていると、軽くホームシックになりそうだった。
家を発ってから一週間は経っただろうか……。

48 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:17:39.34 ID:72n9rb0F0
昼食を終え、俺は和室に戻り支度をした。



少し時間が経ち、ノックの音も立てずに、ツンがゆっくりと入ってくる。

お別れのときというやつか。



('A`)「よ……よお」


ξ゚⊿゚)ξ「うん」


('A`)「色々とありがとな。」


ξ゚⊿゚)ξ「何もお礼を言われることなんかしてないのに、なんでそんなこと言うの?」


そのときのツンの顔は、出会ったころの棘棘しさと、どこか照れているような、その二つが混ざっていた。



俺はすかさず返答する。

51 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:19:01.47 ID:72n9rb0F0
俺はすかさず返答する。




('A`)「君と出会ったこと自体にありがとう って言いたいんだよ」




…内心、どのくらい恥ずかしいことを言ってしまったんだ俺は…と、後悔した。
しかしツンは軽く笑ってくれる



ξ゚⊿゚)ξ「ははっ!ドクオ、俳優みたいだよ?その台詞」


('A`)「そうか、俳優か!いやぁ参るね」



いやぁ参るねじゃないよアホタンが。
だが自分でもあんな言葉が自然に口に出るとは驚きだった。

52 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:20:03.04 ID:72n9rb0F0
__そして、俺は自転車屋さんから買った「ある物」を手渡そうとした。
しかしツンが口を開く。



ξ゚⊿゚)ξ「見送りするよ」


('A`)「へ?」



ξ゚⊿゚)ξ「ママと一緒に、そこの登り坂まで」



ツンは障子の向こうを指差した。
広い道幅の長い坂がある。




('A`)「あ、ああ… ありがとな」



こうして、別れの時間は少し延びてしまった。

55 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:25:30.81 ID:72n9rb0F0
ツンが出て行った後、俺は14時ごろまで和室で体を休めることにした。
一番暑い時間帯に出発するのもアレだが、一気に進みたかった。
出来ることならば晴れてラウンジ県に到達し、ラウンジ県の公園で野宿がしたかったのだ。





天井を見つめつつ、俺は「ある物」をかざして見つめる。




('A`)「うーん…」


今更、俺は自分の考えにケチをつけ始めた。



('A`)「こんなんじゃ、駄目だっ!」

57 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:26:21.03 ID:72n9rb0F0
__14時になった。

新しい名案が浮かばないまま、自分のアイディアに不満を持ったまま、旅立ちの時間が訪れた。


俺は自転車を押して歩きながら、おばさんとツンと坂へと向かう。



从'ー'从「ここからならもうラウンジ県はもうすぐね。ほんと、頑張ってね?」

从'ー'从「おばさん、本当にドクオ君のこと応援してるから!」


('A`)「ど、ども…」



ツンはおばさんの脇を車椅子で進んでいた。困ったことに、少し不機嫌そうな表情だった。


ξ゚⊿゚)ξ「…」


('A`)(どうしよう……)

60 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:31:37.91 ID:72n9rb0F0
坂は上り坂だった。見るところ傾斜は中々きつい。

おばさんとツンの足が止まった。


从'ー'从「じゃあ、ここまでね」

从'ー'从「ここは長いし、きついしで近所じゃ有名な坂なのよ」

从'ー'从「直った自転車の試運転にはちょうどいいと思うわ!」

从'ー'从「……じゃあ、頑張ってね」



俺はおばさんと握手をした。

そして、ツンと…、握手をして、「ある物」を不満ながらに渡そうと思ったそのときだった。







ξ゚⊿゚)ξ「私、坂の上まで行くわ」

61 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:32:14.41 ID:72n9rb0F0
突拍子なツンの発言を、早速おばさんは塞ぐ。




从'ー'从「無茶よ。車椅子じゃ辛すぎるわ」


ξ゚⊿゚)ξ「いいの。私はドクオを坂の上で見送りたいの」


ξ゚⊿゚)ξ「ママは黙っててよ」


从'ー'从「もう…。勝手にしなさい」


从'ー'从「ごめんなさいドクオくん。最後まで」


('A`)「俺は別にいいですけど…、むしろ嬉しいくらいで」

('A`)「でもツン、大丈夫なのか?」


ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ」

66 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:38:39.41 ID:72n9rb0F0
俺はおばさんに「さようなら」と別れを告げ、ツンと一緒に坂を登った。
自分だけ自転車に乗るのでは彼女が置いてけぼりになるので、押して歩いた。



('A`)「ふぅ…。こりゃ、確かに、つらいなっ」


ξ;゚⊿゚)ξ「…」



黙々とツンも車椅子を押していた。
綺麗な素肌に一筋の汗が輝いていた。


('A`)「おい、ツン?無茶するなよ」


ξ;゚⊿゚)ξ「平気だよっ」




…強がりの裏には、彼女の本質的な可愛さがあるような気がした。


もうすぐ、坂の上だ。

67 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:43:00.17 ID:72n9rb0F0

('A`)「ようし着いたーー!!」


ξ;゚⊿゚)ξ「……着いたね」


ξ;゚⊿゚)ξ「私、初めて」

ξ;゚⊿゚)ξ「自力でここを上ったの」

ξ;゚⊿゚)ξ「ついでにね」

ξ;゚⊿゚)ξ「こんな汗をかくのも久しぶりよ」



('A`)「俺は自転車乗ってるときは、ツンの数倍は汗かいてるぞ。はは」



ξ;゚⊿゚)ξ「…こんなに、風が気持ちいいって思うの初めてだよ」

68 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:44:21.51 ID:72n9rb0F0
('A`)(風…………)







その一言を聞いて、俺の頭に電球が浮かんだ。

これだ。間違いない。

といった類ではなく、なんというか、自然に


ぽろっと出たアイディアだった。









('A`)「じゃあ、いっそのこと、風になろうよ」

71 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:46:34.35 ID:72n9rb0F0
ξ;゚⊿゚)ξ「!?」


('A`)「はいはい失礼しまーす…」

ξ;゚⊿゚)ξ「わっ、ちょっと…」






俺はツンの体を抱え、助手席にちょこんと乗せた。
もともとマウンテンバイクにはそういった類は搭載されていない。
しかし、何せ親父の代からの"旅用"なので、なぜかこじんまりしたのが後部にあった。




坂を上りきったところで露わになった入道雲を背に、俺は自転車をターンした。

74 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:48:04.63 ID:72n9rb0F0
('A`)「よし!行くぞ!!!しっかりつかまってろーーー!!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「え!?ねえ、わっ…」







俺は力一杯ペダルを踏んだ。

自転車は坂を勢い良く下っていく。

風が体に当たる。そして通り抜けていく。

周りの景色が早送りされているような感じだ。


…そうさ。









(;'A`)「風になった気分だろーーー!?」

76 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:49:54.24 ID:72n9rb0F0
俺は後ろのツンに大声で尋ねる。



さり気なく後ろを振り向きながら。






ζ(゚ー゚*ζ「……うん!!!」







ツンは笑っていた。しっかりと、俺の体に掴まりながら。



口の先をくいっと曲げて笑っていた。





最高の笑顔だ………。

80 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:51:23.86 ID:72n9rb0F0
(;'A`)(やばい…。車椅子どうすんだよ!!!)



しかし、俺が見たのは驚くべき光景だった。


ξ;゚⊿゚)ξ「…ありがと」



そう言って、ツンは自転車から降り、なんと自分の二本の足で立ち上がった。
だが、しっかりと地に足をつけた感じではなかった。
















…少し離れたところで、おばさんが泣いているのに気付いた。

81 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:52:25.38 ID:72n9rb0F0
('A`)「お、おまえ…」





喋りかけようとしたが、止めた。
うん。ツンが立てたんだ。…それでいいじゃないか。






( A )「……」






俺はしばらく黙っていた。何ともいえない気持ちが胸の中で波を起こしていた。
しかし、渡すものがあるんだ。まだお別れじゃない。終わりじゃない。
ポケットの中から俺は… 自転車のベルを取り出した。

82 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:53:51.60 ID:72n9rb0F0
('A`)「これ、あげるよ」

('A`)「俺、ツンのこと忘れたくないんだ」


ξ ⊿ )ξ


('A`)「ツンにも、俺のこと忘れないで欲しいって思うんだ」


ξ;⊿ )ξ


('A`)「だから、あのマウンテンバイクに付いてたベルをあげるよ」


ξ;⊿ )ξ「……」






ツンは涙目でベルを受け取り、ちりん、ちりんと二回それを鳴らした。
…その音は青空に吸い込まれていく。
おばさんはハンカチで必死に目頭を押さえている。
もうなんだか気恥ずかしい気分だった。

87 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 01:57:10.14 ID:72n9rb0F0
('A`)「じゃ、行くな。今度こそ」

('A`)「…またこの上り坂かー。つらいな!」

('A`)「あっ、わりぃーなー…。坂の上で見送ってもらうつもりだったのにな…それに車椅子も…」




そう言って振り返るとき、ツンが口を開いた。



ξ;⊿ )ξ「わ、私も…」

ξ;⊿ )ξ「……」


黙ってツンはリボンを解いた。ツンのくせ毛が左のほうだけ広がっていく。
そして、俺の自転車のハンドルにしっかりと結び直した。


ξ;⊿ )ξ「………ここにいるから……」



優しく瞳を濡らしながら、彼女はハンドルをさすった。

黄色のリボンが、風に揺れている。

91 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 02:00:07.09 ID:72n9rb0F0
もう俺たちに安易な別れの言葉は要らない。

黙って俺は自転車を発進させる。



…俺はギアの比を最大の5にする。


こんな辛い坂をまた上るには、こうしなきゃ踏ん張れない。


一気に重くなったペダルを踏む俺は、とある言葉を思い出す…





('A`)「なあーーーツーーーン!!!」



俺は後ろを向いたまま、ツンに叫ぶ。「フルーツバスケット」の、少女のように。



ξ;⊿ )ξ「…うん?」

92 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 02:01:59.55 ID:72n9rb0F0
「また…会えるかなーーーーーーーー!」








ξ;⊿ )ξ



ξ ⊿ )ξ



ξ ー )ξ










『ラストシーンじゃ、あるまいしーーーー!!!!』

94 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 02:03:00.90 ID:72n9rb0F0
……………


そうか…

ラストシーンじゃ あるまいし


ってか。そう言ったんだな。



うまいこと言ったもんだな



そうだな…



…夏はいつ終わるのだろう?




映画なら簡単さ。



「FIN」の文字が出れば終わるだろう。

96 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/08/26(日) 02:04:09.92 ID:72n9rb0F0
…俺の夏はいつ終わるのだろう?


……この調子じゃ、まだまだ終わらないようだな。




もう一度だけ、もう一度だけ俺は後ろを振り返ってみる。親父の言い付けに、初めて背いてみた。





………弾けんばかりの表情で、素晴らしい笑顔で、ツンは精一杯手を振っていた。






俺も思わず、目が線になるくらいに笑ってしまったよ。







(自転車編6 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/08/27 19:35:12

21jigendaddyjigendaddy   異郷編1

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/09/09(日) 22:44:08.67 ID:8fISEQeF0



親父の五連速式のマウンテンバイクは、軽快に国道を走っていた。
自転車屋さんにメンテナンスを受けてもらっただけあって、ますます乗り心地は良くなっている。
ラウンジ県まであと数キロ。




ハンドルに括り付けられたツンのリボンが、そよそよと風に泳いでいた。




6 名前:”あと”ですね 投稿日:2007/09/09(日) 22:46:47.98 ID:8fISEQeF0
俺はツンとおばさんと別れた後、無我夢中で自転車を漕いでいた。
心の中にはさわやかな気持ちが立ち込めていて、それが俺をぐんぐん先へと進ませる。
本当にラウンジまであと少しだ。


('A`)「ふぅ…」

('A`)「ちっと休もう」


だが、今回の一件で「無理はよくない」ということが分かった。(当たり前だが)
俺はパーキングエリアで休憩することにした。
…ツンと別れてもう3時間が経っていた。だが空はまだまだ青い。そう、夏の昼は長い。

7 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 22:49:06.27 ID:8fISEQeF0
自販機で飲み物を買い、用を足し、建物に寄りかかりながら日陰で涼んでいた。
空を見上げる。幾重にも重なった雲の隙間から、綺麗な青が見える。
そして、目線を下げた俺の視界に飛び込んできたのは……


(;´_ゝ`)「クッジューテルミーーーーー!!!!!!!!!!!」


外人さんだった。









ドクオは夏の旅に出るようです

8 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 22:52:09.89 ID:8fISEQeF0

「え…?英語か?ごめん、よくわからないな…」


( ´_ゝ`)「オゥノゥ! ソーリー…」


( ´_ゝ`)「!!!」


( ´_ゝ`)「ちょと、すいませーーーん!!」


「!!!(厄介なことになりそうだ…にげろ…)」


(;´_ゝ`)「オゥ……」



妙にテンションが高いその外国人は、通りかかった人々に手当たり次第何かを尋ねているようだった。
かなりの長身には、旅用のリュックサックはとてもよく似合っていた。
鼻はツンと高く、髪はブラウンの天然パーマ、瞳はブルー。年齢は20代そこらだろうか。
すげえ、俺、生で外人見ちゃったよ。

12 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 22:55:14.72 ID:8fISEQeF0
('A`)(アメリカ人かな?喋ってる言葉は英語だな)

('A`)(うーん。学校に来るELT以外では、こんな間近で見るのは初めてかもしれない)


( ´_ゝ`)ジィーーー…


('A`)(ん?)


そんなことを思っていると、外人さんと俺の目がバッチリと合う。


( ´_ゝ`)「・・・・!!!!」

(;'A`)(うわっ)



その瞬間、俺はなんとなく悟ったね。

こりゃあ面倒なことに巻き込まれるぞと。

13 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 22:57:30.08 ID:8fISEQeF0
外国人は俺を目掛け、凄まじいダッシュでこちらへ向かって来た。
そして、目の前で立ち止まり、汗を拭いながら流暢に俺に話し掛ける。


( ´_ゝ`)「そのリュック、ぼくもおなじね」


外国人は半分身を翻し、一杯ものが詰まった背中のリュックを叩いた。
それよりだ。どうやら、日本語は少し話せるようだ。


(;'A`)「お…同じ」



( ´_ゝ`)「Are you traveler?」


(;'A`)「う…うん!?」

14 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 22:59:37.02 ID:8fISEQeF0
外国人が発した英語は、学校で耳にするリスニングテストのCDなんかより、ずっとずっと聞き取り辛かった。
「訛っている発音」とは、こういうことを指すのだと分かった。


それでも「アーユー」までは難無く分かった。しかし、それに続いた単語が聞き取れない。
トルァ… トラベ… ベルァ…

…?


( ´_ゝ`)「Um…. tourist?」


(;'A`)「…ツァリ?」


駄目だ。さっぱり分からない。
何かで困っているのは分かる。助けてやりたい気持ちも無い訳じゃない。(早いとこラウンジへ行きたいが)


しかし、俺の異文化交流スキルはさっぱりだ。
中学校から学んできた「英語」なんて科目は、さっぱり役に立たない。

それは、俺が馬鹿なだけなんだろうけど。

17 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:02:10.96 ID:8fISEQeF0
俺は一つの結論を出した。

困っているところ悪いが、俺はギブアップだ。
という意思くらいははっきり出そう。


('A`)「I can't…」

(;'A`)「アイキャントスピークエングリッシュ」


…我ながら酷い発音だ。そこらの中学生の方がましだ。


( ´_ゝ`)「……」



これで静かに去ってくれる。
そう考えていた時期が俺にもありました。


( ´_ゝ`)「キミ、いまイングリッシュいったよ」




(;'A`)(……こいつぁ策士!!!!!!)

20 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:05:10.18 ID:8fISEQeF0
外国人は無精髭をさすりながら、俺を見下して笑う。
身長が高い性もあるが、海の向こうの人たちの笑い方は豪快だ。


( ´_ゝ`)「HaHa!!!!」

( ´_ゝ`)「You are funny」


これは聞き取れた。ファニー。可笑しいってか。


(;'A`)「ごめんなさいねえ」




外人は続ける。

( ´_ゝ`)「ぼくがちょと、いじわるだったよ」

( ´_ゝ`)「きみも、ぼくとおなじ」



( ´_ゝ`)「タビビトだろ?」

23 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:08:24.74 ID:8fISEQeF0
「タビビト」




妙にクリアに耳に入ってきた、この言葉。
そうか、もう俺も一端の旅人に見えるか。なんだか俺は嬉しくなり、ついつい反応する。
「協力してやろうじゃないか」そんな気持ちもなぜか沸々と湧き上がる。


(*'A`)「オーイエス! ユートゥ?ユートゥ?」



( ´_ゝ`)「イエス。ぼくは、たびする りゆうある」

( ´_ゝ`)「だから、にほんきた」


('A`)「へえ…。その理由を教えてくれないか」


(;´_ゝ`)「さがしてるところが あるんだ」

27 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:11:00.33 ID:8fISEQeF0
__


気がつくと、俺と外国人…。名前は「アニー」というらしい。
俺達はパーキングエリア内の食堂で軽食を取りながら会話をしていた。


( ´_ゝ`)「キミをみて すぐピンときた」

( ´_ゝ`)「ぼくとおなじだと」


('A`)「ああ、まあね…」

('A`)「アニーみたいに特別な理由はないけど…」

('A`)「その場所の、手がかりはあるのか?」


( ´_ゝ`)「Please wait」

アニーはアメリカ人の癖に中々日本語が上手い。それもそのはずで、なんとハーフだそうだ。
4歳までを、ここサロン県で過ごしたらしい。
彼は大きな上半身を折りたたんで、リュックの中を探り始めた。

29 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:14:52.31 ID:8fISEQeF0
( ´_ゝ`)「This」


アニーは一つの写真をリュックの小ポケットから取り出し、テーブルに置いた。
色褪せた風景の中で、子供のころのアニーとその兄弟らしき人物が肩を組んで笑っていた。



('A`)「綺麗だなあ…。ここは草原みたいだな。この、奥に広がる紫なのは?」

( ´_ゝ`)「lavender」

('A`)「??」

('A`)「ら・・べんだー?」

( ´_ゝ`)「そう」



33 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:19:19.70 ID:8fISEQeF0
( ´_ゝ`)「It searches for this place. (この場所を探しているんだ)」







('A`)「……」

('A`)「あ…。ああ!なんとなく分かったよ。」

( ´_ゝ`)「ありがとう」

('A`)(サーチ… さがす、さがす…)

('A`)(この場所を?)

35 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:22:55.19 ID:8fISEQeF0
アニーは水をぐいと流し込み、写真を撫でながら呟いた。


( ´_ゝ`)「このしゃしん みてると」

( ´_ゝ`)「あのひのラベンダーのにおいがもどってくるよ…」


('A`)「へえ。この隣にいるのはおまえの兄弟か?」


( ´_ゝ`)「Yes」

( ´_ゝ`)「なまえ オットー」

( ´_ゝ`)「いいおとうとだった…」


('A`)「だった?」


( ´_ゝ`)「…なんでもない」


外国人のモーションはやはり大きい。たちまちアニーは「Oh my god」の体勢を作る。
何かワケありのようだ。俺の協力しようという意欲がまた大きくなる。
なんだろう。このワクワクする感じは、旅に出る前じゃ絶対得られなかった感覚だ。

37 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:24:40.35 ID:8fISEQeF0
俺も冷水の入ったコップを飲み干す。
窓の向こうでは、車の窓ガラスが太陽の光を反射していた。



('A`)「草原…。奥にはラベンダー…。」

('A`)「なんだかファンシーな場所だな。こんなところ、日本にあるのか?」





( ´_ゝ`)「さんにちくらい さがした」

(;´_ゝ`)「でも…。みつからない。not found.」

( ´_ゝ`)「・・・・」

( ´_ゝ`)「ドクオ、さがすの、てつだってくれるのか?」

38 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:26:51.56 ID:8fISEQeF0







('A`)「もちろん」







40 名前:1◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/09(日) 23:28:29.01 ID:8fISEQeF0


即答した。
前々から感じていた。
俺の中で何かが変わりつつあるという「予感」が、「確信」に繋がった瞬間だった。



動く。俺は動けるんだ。
行動力が、自分でも驚く程の行動力が身に付いた。




旅に出る前の俺と、今の俺じゃ、全然違う。




(異郷編1 おわり)

返信2007/09/10 19:07:41

22jigendaddyjigendaddy   異郷編2

2 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:37:39.46 id:Qg4GeHJ/0



俺とアニーは早速国道の道を外れ街へ出る。
彼のマウンテンバイクも乗り心地が良さそうだ。四つの車輪は軽快にアスファルトを滑る。
ちょっとずつラウンジが遠退いていく。だが、別にいいさ。



('A`)「この辺は全部探したんだよな?」

( ´_ゝ`)「イエス…。いちお、ぜんぶのみち とおった」

('A`)「こういう道は?」



俺は咄嗟にハンドルを左へ切る。アニーが慌てて後に続いた。
一見、気づかないような細い路地を突っ切ると、また新しい街並みが出迎える。



('A`)「ジャパニーズ・ロードさ。細道な」

( ´_ゝ`)「Good!! でも…、やはりここらにも、みつからない」

5 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:38:59.17 id:Qg4GeHJ/0
('A`)「そんなすぐ見つかるわけないって」

('A`)「でも確かにこの街なんだろ?」


( ´_ゝ`)「ああ。それはまちがいないよ」

(;´_ゝ`)「……でもみつからないんだ」


('A`)「困ったなそりゃ…。とにかく漕ぎ続けるしかねえよ」



少しだけ、空が赤みを帯びてきたような気がしていた。
青に混じって、少しだけ、ほんの少しだけだが…。間違いなく夕方に近づいていた。


ちょっとだけ、不安な気持ちが胸に落ちる。



(;´_ゝ`)「ドクオ…。ぼくは、まっくらになるころには」

(;´_ゝ`)「げしゅく、げしゅくさきへバックしなければならない…」

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:40:00.99 id:Qg4GeHJ/0
アニーは汗を拭い、小さな息をひとつ地面に落とす。
俺は首を左に右に忙しく動かしていた。しかし、写真の中にあった風景の切れ端も目に飛び込んでこない。
車輪を漕ぐ音が、空しく俺とアニーの間に響いた。



('A`)「下宿…。そうか、下宿先ね」

('A`)「わかったよ」

('A`)「絶対日が暮れるまでに」


( ´_ゝ`)「Thank you」


だが、このままじゃ埒が明かない。茫漠とこの広い町中を二人で走り回っていても効率が悪すぎる。



何かいい方法はないかと思索する俺の視界の先に、とある建物が入ってきた。


('A`)「交番だ!」


( ´_ゝ`)「コバン?」

9 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:41:31.70 id:Qg4GeHJ/0
('A`)「そうだよ、そうだ」

('A`)「交番に尋ねてみればいいじゃないか」


('A`)「っていうか、今まで誰かに……」


「尋ねたりしなかったのか?」 
そう言いかけた瞬間、パーキングエリアでアニーを初めて見た数時間前を思い出した。
妙に焦り、妙に挙動が不審な、無精髭で長身の外国人。そして接触を拒むジャパニーズピープル。
貴重な異文化交流は大事にしようぜ。


( ´_ゝ`)「フォ―――!!」


( ´_ゝ`)「ポリス!?」


('A`)「そう」


('A`)「…やっぱ気づかないかな? 異国の人にはこの建物が交番だって」

10 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:42:44.62 id:Qg4GeHJ/0
入り口の傍に自転車を止め、キーをかけ、交番へと入る。
交番に立ち寄るなんて、小学生の頃… 500円玉を届けに行ったとき以来かもしれない。


('A`)「ちわぁ…」


天井の隅に設置された扇風機が首を振り、俺の髪を揺らす。ああ涼しい。
数十秒待っていると、奥の方から警官が現われた。
彼はいかにも田舎の情緒を含んでいるような、穏やかな顔つきで、俺はギコのおじさんをなんとなく思い出した。

警官はくしゃくしゃの髪を撫で付けながら尋ねる。


「はいはい、何の御用ですか」



('A`)「あの………」

(;´_ゝ`)「This pictさうkhsふぁjかあssw」


('A`;)「まあまあ落ち着けよ」

13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:44:47.17 id:Qg4GeHJ/0
('A`)「とある場所を探してるんです」


「道案内かい」


(;'A`)「この場所に通じる道を教えて頂けたら、手っ取り早いんですけどね~」


「?」


('A`)「アニー」


アニーは胸ポケットから写真を取り出し、机に置いた。


('A`)「この風景、この町に確かに、あるらしいんです」

('A` )「彼が探しているんです」


( ´_ゝ`)「ミオボエ、ないか ポリスマン」

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:45:53.44 id:Qg4GeHJ/0
警官は写真を手に取り、ふむふむと頷きながら見つめる。
窓から漏れ出し、俺たちの背中を照らす陽は仄かなオレンジ。


体に染み付いた汗が扇風機の風で乾いていく。


しばらく警官は写真と睨めっこをしていた。

__そして、静かに写真を机へ戻し、神妙な表情でこちらを見つめる。



(;'A`)ゴクリ






「すまん!! この場所知らんわ!!」








(;;´_ゝ`)「マイガ―――――――!!!!」

16 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:47:43.57 id:Qg4GeHJ/0
(;´_ゝ`)「This is a pen! This is a pen!」


( ´_ゝ`)「これは ペン です」


(;´_ゝ`)「What happen!!!????」



('A`)「おまえの頭がワットハップン」


( 'A`)「そうなんですか。やっぱり分からないですか、すいません……」


警官は、朗らかだがどこか残念そうな笑顔で話す。




18 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:49:19.25 id:Qg4GeHJ/0
「いやぁね。私はここに昔っからいるわけじゃないんだ。なんどか転属してね」

「だから昔のここの地理は……」


(;´_ゝ`)「そんなムカシのことじゃないよ Um… 20 years ago」


「ここに来たのは8年前だ。すまんねえ」



( ´_ゝ`)「ハァ………」

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:49:42.19 id:Qg4GeHJ/0
俺とアニーは、朗らかな警官に一つ礼を言って交番を去った。
アニーのため息がどんどん重くなっていく。相変らず自転車の調子は軽快だが。

でも、大丈夫。


('A`)「まだまだ手はあるさ」

( ´_ゝ`)「ホワット?」


('A`)「近所の人に聞いてみようぜ」



( ´_ゝ`)「オーケー!」



まるで初めての御使いに行く兄と弟のような構図だと自分で思った。
アニーの方がいくつも年上なのにな。
人を引っ張っていくのも中々悪くないと感じる。

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:51:06.75 id:Qg4GeHJ/0
('A`)「じゃあこの家にしようか」

( ´_ゝ`)「Um…」

('A`)「どうしたんだ?」

( ´_ゝ`)「このいえに きいたよ」


('A`)「そうなんだ。じゃあ」

( ´_ゝ`)「このいえも」

('A`)「ちょっと進んであの向かいの」

( ´_ゝ`)「たずねた」


('A`)「それなら(ry」

( ´_ゝ`)「このへんはぜんぶたずねてみたよ」



(;'A`)「…………」


この辺一帯には聞き回ったらしい。しかしまだ見つからないということは、有力な情報は何一つ得られなかったということか?
それは少しおかしいぞ。

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:52:14.62 id:Qg4GeHJ/0



__俺とアニーは近場の公園で休憩することにした。
水飲み場で顔を洗うアニーに俺は尋ねる。





23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:52:37.38 id:Qg4GeHJ/0


('A`)「なあアニー」

( ´_ゝ`)「なんだいドク」

('A`)「ちょっと失礼なんだけどさ……」

('A`)「写真の場所は本当にこの町にあるのか?」

('A`)「違う町なんじゃないのか?」


( ´_ゝ`)「……」

タオルを片手に、アニーの体が途端に震えだした。
まずい。やはりカチンときてしまっただろうか………。


( ´_ゝ`)「Yeah! ボクもそれおもってたヨー」


⊂( ´_ゝ`)⊃「HAHAHAHA~」






やっぱりかこの野郎。

26 名前:1レス抜かしました 投稿日:2007/09/29(土) 20:55:03.82 id:Qg4GeHJ/0
俺とアニーは公園の小屋で作戦を練り直すことにした。


('A`)「いいかアニー、俺思うんだけどな」

( ´_ゝ`)「ん」

('A`)「20年前くらいまではあったのに、昔からここに住んでいる人たちが誰も知らない」

('A`)「そんな秘密の花園みたいな広い原っぱがあると思うか?」

('A`)「というわけで俺はアニーの勘違いだと思うんだ。うん」

('A`)「きっと隣町とか、そういう可能性がある」

( ´_ゝ`)「ソウダナ……」


('A`)「そもそも、なんでこの町にあの原っぱがあるという証拠は?」


( ´_ゝ`)「しゃしんのウラ 見てくれ」

27 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:55:37.40 id:Qg4GeHJ/0
俺は写真を受け取り、くるっとそれを裏返してみた。
裏側にマジックペンで書かれた褪せた文字に、俺は絶句する。



/^o^\ ナンテコッタイ

( ´_ゝ`)「どうしたドク?」

('A`)「ここ、ここ見てみろよ」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)「OK」



「1987年 アニー5歳 オットー3歳 ニューソク町の野原にて」


( ´_ゝ`)「………」


( ´_ゝ`)「ここは ニューソク町 ちがうの?」



('A`)「違あああああう!!」

28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:56:05.51 id:Qg4GeHJ/0
('A`)「どうしてだ」

('A`)「なんで勘違いした」

('A`)「ここはサロン県だ」

('A`)「理由を三行であsdrhkhl」


(;´_ゝ`)「うーむ。Sorry」

(;´_ゝ`)「あめなめる?」

('A`)「頂こう」



('A`)





(;'A`)「カーーーーーーーーーーッ!!!」

30 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:57:20.49 id:Qg4GeHJ/0
アニーは素でここをラウンジ県だと勘違いしていたようだ。
それもそのはず。よくある事だが、サロン県と、ラウンジ県には同じ名前の地名が存在する。
ニューソクという地名だ。
サロン県の方のニューソクは”市”。ラウンジ県の方のニューソクは”町”
しかもここはニューソク市ではなくニーソク市だ。名前が似ているから恐らくアニーは根本から勘違いしていたようだ。



( ´_ゝ`)「………」



この事実を告げるとアニーは膝からガクッと体を地に落とした。そりゃそうだ。実は一番ショックなのは彼自身だ。
もうちょっと早く気づけば良かったかもしれない……。
だが俺にとっては好都合だったりする。俺はアニーの肩を軽く叩いた。

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:58:24.53 id:Qg4GeHJ/0
('A`)「俺、実はさ、ラウンジ県を目指して旅してるんだ」

('A`)「だから俺的にはまったく問題ない」

('A`)「OK?」


( ;_ゝ;)「mjsk」

(*´_ゝ`)「よし、そうと決まれば出発ダネ!」


なんという立ち直りの早さだ。



('A`)「うん、行こう。ラウンジ県に」

('A`)「実はここからだとラウンジ県は目と鼻の先なんだ。そしてニューソク町は県の入り口」

('A`)「全力でかっ飛ばせばなんとかなるさ」

32 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/09/29(土) 20:59:23.29 id:Qg4GeHJ/0
結果オーライで本当に良かったと俺は思った。だが町中を探し回った数時間のことが、実に悔やまれる。仕方のないことだがな。
自転車に乗り込んだ俺とアニーを照らすのは強烈な夕陽。体が金色に染まる。蝉が一日の締めのごとく賑やかに鳴いている。
辺りが暗くなるころにはラウンジ県につけるだろうか。まあ、到達する時点で精一杯だろう。
…じゃあアニーはどうなる?確か下宿先に戻らなければならないといけないのでは………


(;'A`)「うおおおお!!風!俺は風になるぜ!!」

( ´_ゝ`)「Alright,hold tight I am a highway star~~♪」



(;'A`)「アニーところでよ!下宿先は、大丈夫なのか!」

(;´_ゝ`)「Don't return!!」


(;'A`)「よっしゃああああああ!!!」




道路を走る自動車が次々とライトを付け始める。薄暗くなった橙の空に俺は輝く星を見つけた。一番星だ。
見つけてみせるさ、絶対に。アニーの思い出の場所だって。



(異郷編2 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/09/30 10:29:24

23jigendaddyjigendaddy   異郷編3

4 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 22:54:08.59 ID:4AEQ8iCb0



空はオレンジの絵の具で染まっていた。
それに段々と黒の絵の具が混じっていき、天上は俺達が進む道を徐々に暗くさせた。
俺は徐に、腕に巻いた時計に目を配った。時刻は19時半を周っている。
対向車線を走る車のライトが、俺とアニーの体躯を薄黄色に照らした。


('A`)「もうすぐラウンジ県だ」


独り言と小粒の汗を、
ポツリと地に落とす。



('A`)「もうすぐ夜が来る」





    ドクオは夏の旅に出るようです

6 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 22:58:33.12 ID:4AEQ8iCb0
道沿いの商店は、どこもかしこもシャッターを閉めていた。
俺は太腿を擦ってみる。筋肉が張っていた。


('A`)(飛ばしすぎちゃったかなあ… ちょっと疲れてきたよ)


(;´_ゝ`)「……」


アニーの自転車を漕ぐペースはとても速い。
その調子は落ちることなく、弾丸のようにアスファルトを突き進んでいく。


(;'A`)(待ってくれやー)


最初は同じ速度で走っていけたのだが、俺は自分の体力ってやつを分かっちゃいない。
というか、ペース配分がなっていない。
飛ばしすぎたのだ。明らかに。



(;'A`)(…あいやー)

7 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:02:08.95 ID:4AEQ8iCb0
俺とアニーの距離が段々と開いていく。彼の大柄な背中が小さくなっていく。
距離を置いて、彼を後ろの視点から見つめてみた。

一定の速さ、変わらないフォームでどんどん直進していく姿は、
まるでテレビで見た競輪の選手のようだ。
そして俺はへばってしまって、さしずめ古い自転車をガタガタ進ませる老婆のよう。


(;'A`)「あうあう」


('A`)「うぇっ、ウェイト」


('A`)「アニー、プリーズウェイト~」


力を振り絞り、最大限アニーとの距離を詰めて呼びかけを投げる。


(;´_ゝ`)

しかし、俺の努力空しく、
アニーはただ黙々とペダルを踏み続けた。

11 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:07:36.95 ID:4AEQ8iCb0
(;'A`)「ちいっ」

仕方がないから俺は後に続いた。
これ以上距離が開かないよう、精一杯ハンドルを握りながら。



(;'A`)「はひゅう。ふひゅう」


この旅に出て、体力は以前より少しは上昇したと思った。

ツンと出会った日。
そう、雨の中で必死で自転車を漕いで、倒れてしまった日もそう思った。
しかし、それはやはり思い違いだったか…?


(;'A`)「次の信号、赤になれ!赤になれ!」

12 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:11:45.21 ID:4AEQ8iCb0
(;'A`)(諦めるものか。サロン県までもう少しなんだ)


そう、アニーが速すぎるのだ。彼はきっとアスリートなのだ。
そう思い込んで、俺は自分の限界を信じる。
いける。まだいける。


  (;'A`)「…やっぱ無理☆」


その瞬間









一瞬の緩みから全てが決壊し、俺は転倒した。
アスファルトに身を打ち付けるのはこれで二度目なのだった。

13 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:15:54.07 ID:4AEQ8iCb0
(; A )「……」


今回は転倒したものの、意識は失ってはいない。
きっと気の緩みから、体のバランスが崩れてしまったのだろう。
肘と脇腹にジンジンとした痛みを抱え、
転倒した自転車と重なりながら、俺は夜空を見る。


(;'A`)「一番星見っけ」

(;'A`)「…あ~。腕痛い」

(;'A`)「腹減った」


アスファルトに、自転車と被さり寝転がりながら、
コイツは何をしているのだろうか。
そんな場合じゃない。

(;'A`)「アニーは…」


半身を持ち上げて、道の先を見る。
俺は、赤信号で足を止めるアニーの姿を見つけた。

14 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:18:08.98 ID:4AEQ8iCb0
(;´_ゝ`)「フゥ……」


( ´_ゝ`)「?」

( ´_ゝ`)「ナニカが… タリナイ」

( ´_ゝ`)「!」


(;;´_ゝ`)「ドクだ!ドクがいない!」


「おーい、アニー。ここだよー」 ('A`)ノ


( ´_ゝ`)「……」


(;´_ゝ`)「OH!そんなトコロでなにクタバッテルんだ!!」

17 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:20:16.73 ID:4AEQ8iCb0

良かった。アニーが俺に気づいてくれた。こちらに手を振っている。
もし信号が青だったならば、彼はあのまま突き抜けてしまっただろう。
それじゃお互い困るというものだ。
俺は立ち上がり、砂を払い、自転車をノロノロと牽いて彼の元へ向かった。


(;'A`)「良かったあ。赤信号で」


( ´_ゝ`)「バナナのカワでスリップしちゃったのかい?」


(*´_ゝ`)「HAHAHA!!」


(#'A`)「…」


(;´_ゝ`)「Sorry… Sorry for you」



('A`)「もうちょっと、ペース。ペースダウン」

19 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:23:03.66 ID:4AEQ8iCb0
( ´_ゝ`)「OK」

( ´_ゝ`)「でも、あのカンバンを見てくれないか?」


('A`)「…ん? 標識?」



俺は上を見上げた。
道路標識は、俺達の進行方向をこう示してあった。



↑ サロン県 0.3km



('A`)「…なんと」

20 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:25:04.31 ID:4AEQ8iCb0
そう。
ふと気づけば、俺達はサロン県に着いていたのだ。
正確にはあと三百メートルなのだが、もう着いたも同然。


(*´_ゝ`)「やったな… ドク」

(*´_ゝ`)「Good job だよ」


('A`)「ああ…」


なんだか心の中の突っ掛かりがストンと取れた気がした。
…何故だろう?


( ´_ゝ`)「ヨロコブのはまだ早い」


('A`)「うん、まだ”おまえの場所”を見つけてないもんな」


( ´_ゝ`)「Yes」


俺は時計を見てみる。二十時を少し過ぎていた。車の流れは一層激しくなっていた。

22 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:28:08.26 ID:4AEQ8iCb0
漆黒に染まってしまった夜の空を見上げ、俺は呟く。


('A`)「すっかりもう夜だな」


本来、二十時という時間帯に、
「すっかりもう夜」なんて表現は使わない。
旅に出る前は、テレビやネットやゲーム。それらのゴールデンタイムである時間帯だ。
しかし、今じゃすっかりその時間は、就寝時間へとすり替わった。

この時間帯。
もしアニーと出会っていなかったら、今頃いつものように寝床を探している最中だろう。




('A`)「ふああ……」


思わず欠伸を漏らしてしまう。
二十時に体が眠くなるなんて、俺はまるで幼児のようだと思ってしまった。

23 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:30:27.78 ID:4AEQ8iCb0
( ´_ゝ`)「フォオオオオ」


('A` )「なんだ、うつったか?」

(*´_ゝ`)「フフフ…」







俺とアニーは一旦自転車を漕ぐのを止め、牽きながら歩いていた。
その脇で、大なり小なりの自動車が、俺達の何倍ものスピードで行き来していた。

そしてその流れの隙間から覗くことができる向こう側の景色は、
暗闇に包まれてはいたが、雄大に広がる田園風景だった。

耳を澄ますと、車がアスファルトを滑る音に混じって、虫の音が聞こえるんだ。
目にする車のナンバーは、サロン県ナンバーの車体が多く、達成感を感じてしまう。


肉体の疲れもあってか、自然と足取りが遅く、遅くなっていく……

26 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:35:42.90 ID:4AEQ8iCb0
('A`) ぽけーっ



( ´_ゝ`)「Very tired」

( ´_ゝ`)「寝るばしょを さがさないか?」

('A`)「…ん? あ、ああ」


先に寝床の話しを切り出してきたのはアニーからだった。
疲れている俺の様子を察してなのか?


( ´_ゝ`)「じゃあつぎのみちを…」

( ´_ゝ`)「み…g…」

(  _ゝ )「zzzZZZZ」




……単に自分も疲れてしまったからか。

28 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:39:27.08 ID:4AEQ8iCb0



大道を外れて、住宅街を徘徊する俺とアニー。
サロンの街並みはVIP、ラウンジより、緑が多いと感じる。少し田舎っぽいというか。


('A`)「良いかアニー。野宿に最適な公園を選ぶコツとは…」

(  _ゝ )「…」

('A`)「まず一つは~…」

('A`)「~~~~」


( ´_ゝ )「…zzZ」


('A`)「これくらいかな」

('A`)「聞いてた?」


( ´_ゝ`)「Um..... ああ、イヌのウンコにはきをつけるんだろ?」


('A`)「駄目だこりゃ」

29 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:42:27.97 ID:4AEQ8iCb0
大体、15分くらい周辺をふらふらしていると、2箇所は公園が見つかる。
アニーの適当な独断により、遊具が沢山ある方の公園に野宿することが決まった。

きっと、日本の公園の遊具が物珍しいのだろう。まあ、俺は寝れればどこだっていいんだけどな。
俺は公園という場所に泊まるのが好きだった。
一日が終わり、公園のベンチに腰を下ろすたびに、旅を始めたばかりの頃を思い出す。


('A`)「…ふむ」

('A`)「よし、ここは安全だな。今夜の寝床はここにしよう」

( ´_ゝ`)「なにが安全ナンダイ?」


('A`)「ちょっ、おま… 早速ブランコで遊んでやがる。疲れてたんじゃなかったのかよ」

(*´_ゝ`)「コレ、おもしれえYO!!」


(;'A`)「おいおい…」

31 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:46:13.93 ID:4AEQ8iCb0
(;'A`)


('A`)




('A`)(阿部さん……)


俺は阿部さんからもらった紙を丁寧に畳んで、リュックの小ポケットに戻した。
彼と別れてからどれくらい経っただろうか。(とはいえ縁日で再会したが)

そして、サロンの空を眺めつつ、ちょっとだけ頭の中を空にしてみる。
一日の中で一番、時間が、綺麗に、そして緩やかに、過ぎていく時。




……さて、眠るとしよう。

33 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:47:48.98 ID:4AEQ8iCb0
('A`)「おーいアニー。寝袋のスペアがあるんだが…」


(  _ゝ )「ZZZZZZZZZZ」



(;'A`)「…おいおい」




遊ぶだけ遊んだらさっさと寝る。
ある意味羨ましい人物である彼は、自分の寝袋の中で既に眠りについていた。
下宿のことを気にしていた一方で、やはりこうなることを覚悟していたのだろうか。


('A`)「俺もねーむろっと」


('A`)「ふああ」

35 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:53:41.53 ID:4AEQ8iCb0
毎晩のことだ。
寝袋から、顔をひょこっと出して空を見つめる。
そのたびに思うことがある。


空は広い。どこまでも続く。
俺たちはいつも、この空の下で泣いたり笑ったりしているんだな。


当たり前のことだ。至極当たり前のこと。
でも、そんな当たり前のことに気付けなかった、以前の俺がいる。


海の向こうにある、アニーの国の空も、ここの空と一体を成しているのだ。
そこに住む人々の、髪の色や目の色、話す言葉が全く異なろうが、


見上げる空の、その雄大さと、鮮やかな色は、変わらないんだ。



('A`)(変わらないんだ……)


部屋の窓から見るより、こうして寝転んで眺めるほうが、
地球の丸みを感じられると、俺は思った。
夏の空は、好きなんだ。

37 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/20(土) 23:58:42.13 ID:4AEQ8iCb0
瞼の裏は、何の映像も写さず、
ただ黒色を提供して、疲れた俺を眠りへ誘うだけだった。


本当に眠いときは、瞳を閉じた途端に、
何も考えられずに眠りへ落ちてしまうのだ。



( A ) ………



(  _ゝ ) ………






アニーは、まだ見ぬ景色を切望する思いを胸に
俺は、サロンの地を遂に踏むことができた という達成感を胸に 


今日という一日を終えたのだった。

39 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:00:02.35 id:ISRRBGan0



ゆっくりと意識が目覚める。
朝の空気を目一杯に吸い込むと、俺の体は機能する。


('A`)「うーん……」


大きく伸びをする俺の視界に入ってきたのは、
ジャングルジムの上で遠くを見つめるアニーだった。



( ´_ゝ`)「!! Good mornning Doku」


('A`)「おはよう」


('A`)「朝から何してるの?」



( ´_ゝ`)「まち… まちをね、みていたんだ」

41 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:00:42.19 id:ISRRBGan0



ゆっくりと意識が目覚める。
朝の空気を目一杯に吸い込むと、俺の体は機能する。


('A`)「うーん……」


大きく伸びをする俺の視界に入ってきたのは、
ジャングルジムの上で遠くを見つめるアニーだった。



( ´_ゝ`)「!! Good mornning Doku」


('A`)「おはよう」


('A`)「朝から何してるの?」



( ´_ゝ`)「まち… まちをね、みていたんだ」

42 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:01:16.64 id:ISRRBGan0
起きたばかりで、まだ鈍い体で、
俺もジャングルジムをよじ登る。子供の頃を微かに思い出した。


('A`)「ひゃー」


('A`)「朝のいい運動に… ならないけど」


('A`)「いいな。こういうのも」

バランスよく、手と腰を鉄の棒の上に乗せて、アニーの隣に並ぶ。
彼は「町を見ていた」 と言うが、そこから見える範囲はもちろん狭いものだ。


('A`)「何が見えるんだ?」


('A`)「公園の小さなグランドと、家の屋根が重なっているのしか見えないぜ」

43 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:02:42.22 id:ISRRBGan0
アニーは不適に笑い、こう言った。


( ´_ゝ`)「ジューブンじゃないか それだけで」



('A`)「!?」



( ´_ゝ`)「じぶんの め というレンズに」

( ´_ゝ`)「うつった しかくでも まるでもない けしきはね」

( ´_ゝ`)「そのうつしたイッシュン しか見れないものなんだ」



('A`)(なんだよく分からないな)

45 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:04:11.07 id:ISRRBGan0





( ´_ゝ`)「ボクはさっきから ここにすわって」

( ´_ゝ`)「ココロに なんまいも しゃしんをとったよ」

( ´_ゝ`)「だんだん、まちがあかるくなるしゃしん あかるくなったしゃしん」

( ´_ゝ`)「でんせんに ことりがとまったしゃしん とびたったしゃしん」

( ´_ゝ`)「さんぽのいぬが はしるしゃしん あるくしゃしん」



( ´_ゝ`)「ぜんぶ、そのイッシュン しか じぶんのレンズに うつせないんだよ」



('A`)「………」

50 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:06:20.51 id:ISRRBGan0
アニーは高い鼻を摩り、今度は満足気な表情を作る。


( ´_ゝ`)「ぼく にほんごヘタだから わかりづらい ごめんね」

('A`)「いいや。そんなことねえよ。伝わったよ。 ……ほんとに」







( ´_ゝ`)「ひとみに写したメモリーは そのうち消える」

( ´_ゝ`)「……でも、いつまでたっても きえないメモリーもある」

52 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:09:50.17 id:ISRRBGan0
('A`)「ああ。あの写真の風景だろ?」

('A`)「もう、お前の言いたいことは十分に分かってるつもりさ」



太陽が輝き始めた。
淡く、優しく、まだ強くない日光に二人の体が晒される。


('A`)「よし、早く飯食べて出発しよう」

( ´_ゝ`)「ああ」

53 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:11:49.80 id:ISRRBGan0


公園を出発してから数時間が経過した。


町から、段々と冷たくて気持ちのいい空気が無くなっていく。
代わりに訪れるのは、強い日差し。
Tシャツには早くも汗が染みてきた。


('A`)「今日もあっついわ」


( ´_ゝ`)「……」



アニーは注意深く、町を散策していた。
きっと自分の記憶と、町並みをリンクさせているのだろう。




( ´_ゝ`)「……」

55 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:15:30.82 id:ISRRBGan0
('A`)「あぁ~。もう十時だ」

('A`)「なあ、この角の先にコンビニあるみたいだから、休まないか?」



そう言って、ハンドルのブレーキを軽く握ったときだった。
アニーの青い瞳がギョロリと一方向を見ている。
何か重大なことを発見したような表情だ。まさか。


( ´_ゝ`)「―――!!」


( ´_ゝ`)「ドク!! look!!! あのヤマをミロ!!」


(;'A`)「ん?」



アニーの大きく太い指が指した先には、斜面が禿げた山があった。
これは俺にもなんとなく見覚えがある。

――そうだ。

57 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:18:09.20 id:ISRRBGan0
(;´_ゝ`)「やった!間違いないよ!」



アニーは咄嗟にポケットから写真を取り出して、俺に見せる。
見慣れてしまったセピアの風景の奥にあったのは、



あのはげ山だった。確かにあの山だ。はげている箇所が丸きり同じ…。



( ´_ゝ`)「あのマウンテンにむかってはしれば」

('A`)「…見つかるかも ってか?」



荒削りで無計画な考えだった。
だが、もはやそれくらいしか手はない。




( ´_ゝ`)「Ohhhhhhhhh!!!!!11」

58 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:20:17.32 id:ISRRBGan0
アニーは軽く腰を上げて、立ち乗りでグングンと町を走っていく。
俺は追い付くのがやっとだ。
もともと近い位置にあったはげ山との距離が、どんどん縮まる。



( ´_ゝ`)「―――!!!」


(;'A`)「今度はどうした?」


(;´_ゝ`)「こ、このダガシヤ!!! まだあったのか!!!」


急ブレーキをかけ、アニーが次に発見したのは、
幼い日に通ったらしい駄菓子屋だった。
彼の心のメモリーが、この町と確実にリンクし始めている。

59 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:22:08.78 id:ISRRBGan0

('A`)「凄いな!! もう見つかったも同然じゃないか?」


( ´_ゝ`)「ぶつぶつ… ここに… あるから… だから…」


( ´_ゝ`)「レフト!!!」


数秒だけ考えごとをして、
アニーはまたロケットのように飛んでいく。
そして、道の先でまた何かを発見し、また数秒だけ考えて、自転車を走らせた。


( ´_ゝ`)「木のでんちゅうだ!!」

( ´_ゝ`)「しょんべん・コゾー!!」

( ´_ゝ`)「ステーションは たてかえたのか!?」


(;´_ゝ`)「ライト!! レフト!! ライトだ!!!」

60 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:23:18.93 id:ISRRBGan0
左へ右へと曲がりながらも、
確実に「あの場所」へ近づいている実感が沸いてきた。


('A`)(実際に見てみるとどんなんなんだろう…)


( ´_ゝ`)(オットー…)



( ´_ゝ`)(変わらない。カワッテいないんだよ)


( ´_ゝ`)(良かった…… あれがおこったのが、このまちじゃなくて)


( ´_ゝ;)(ほんとうによかったよ…)


二台の自転車が軽快に道路を走る。
二人とも漕ぐスピードが落ち着いてきた。俺の腕は肘から手の甲までじっとりと汗で濡れている。
アニーの青いTシャツも、背中の部分が汗でびしょびしょだ。

75 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:57:44.86 id:ql96934q0



( ´_ゝ`)「――!!」

('A`)「お、また手がかりが見つかったか?」



( ´_ゝ`)「……この、さきだ」

( ´_ゝ`)「このヒマワリのみちのさきなんだ」


道沿いには、大きなヒマワリが何本も並んでいた。
どれも頭を垂れていて、会釈をしているようだ。
ヒマワリはやや東向きに頭を垂れている。そして、今の進行方向も東――。


真っ直ぐ伸びる道路の向こうには、陽炎が揺れている。



( ´_ゝ`)「いこう」

77 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 00:59:53.22 id:ql96934q0
黙ってただ、進み続ける。
アニーによれば、この道を真っ直ぐ進んだのち、
左に曲がれば、開けた場所があるそうだ。

つまり、そこがラズベリーの草原。



('A`)「…」


( ´_ゝ`)「……………」




―――


(´_ゝ`) ついに おわかれか オットー

(´く_`) さすがだな おにいちゃん


(;く_`) かなしくないのか?


(´_ゝ`) かなしいさ………

79 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:02:04.45 id:ql96934q0
(´_ゝ`) でもYOー

(´_ゝ`) あにきってのは なみだをみせちゃいけねーんだ

(´_ゝ`) Are you ok?

(´く_;) さすがだな おにいちゃん……


「アニー、ほら早く来るんだ」


(´_ゝ`) じかんだ

(´く_;) おにいちゃん!!!



(´_ゝ`) なあに

(´_ゝ`) オットーのこえがきこえたら、うみをおよいで、すぐかけつけるYOー

(´く_;) さすがだな…

80 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:04:54.27 id:ql96934q0
(´_ゝ`) そんじゃ…


(´く_`) まって!!!


(´_ゝ`) ??

(´く_`) これ、あげるよ

(´_ゝ`) いいの? だいじにしてたじゃないカYO-

(´く_`) おにいちゃんに、もっててほしいんだ!!



(´_ゝ`)……はあくした


―――


( ´_ゝ`)(把握した)

(;'A`)「あー、もう。かなりこの道長いな……」

85 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:08:33.80 id:ql96934q0
道の先で揺らめく陽炎は、行けども行けども突き当たりに辿り着けない俺達を、
笑っているような気がした。

アニーの本気の速度で行けばすぐ着くだろうが、
彼は何か物思いに耽っている。ノロノロ運転だ。
もうすぐ探していた場所に辿り着けるというのに、どうしたのだろうか?



('A`)「あと…50…46…43メートル…」



( ´_ゝ`)「…」


( ´_ゝ`)「ヨシ」




( ´_ゝ`)「とばすぞ!!!!」

90 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:14:46.40 id:ql96934q0
またアニーは腰を浮かし、立ちこぎでスパートに入った。
アニーの隆々とした太腿が、汗を弾いている……


(;'A`)「おい、ちょっと待って!!」


(;´_ゝ`)「…」




風景が加速する。


陽炎を追い越していく。


何も考えられなくなる。




そして、



突き当たりを曲がった俺たちの目に、飛び込んできたものは――――

91 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:19:46.71 id:ql96934q0
(;'A`)「…………」


( ´_ゝ`)「………」






思わず、口を、大きく開いてしまった。
自転車を漕ぐ足を、止めることが出来なかった。


曲がった先に見えた景色。それは


(;'A`)(アパートがこんなにたくさん…… 団地か)


(;'A`)(あの写真の面影は、一欠けらも無いじゃないか)


( ´_ゝ`)「……」


(;'A`)「もうちょっと、奥まで進んでみようぜ。な!」

96 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:25:53.85 id:ql96934q0
待っていたのは、黄金色の草原でも、
紫色のラベンダーでもなかった。


無機質に立ち並ぶ、大きな集合住宅。
本来そこにあったはずの、自然の景観をぶち壊すほどの。


ここに、アニーの場所があったのは間違いなかった。
禿げ山を正面に捉えている構図が、写真とぴったり一致していたからだ。


しかし、それをハッキリと言葉にするのは、
余りに辛すぎる。


( ´_ゝ`)「……」

('A`)「……」


団地は閑静だった。
時々、子供のはしゃぐ声が聞こえてきた。

98 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:30:11.47 id:ql96934q0
('A`)(明らかに、山を、草原を拓いて建てましたって感じが…)

('A`)(やはり、時の流れは景色を変えるか)



( ´_ゝ`)「…ヤッパリね」

('A`)「!?」

( ´_ゝ`)「なんとなく、わかっていたんだよ」



( A )「……」


('A`)「ほら!でもさ! この、この奥にまた何かあるかもしれんし」


(#´_ゝ`)「シャラップ!!!」


('A`)「ひっ…」

103 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:35:08.54 id:ql96934q0
俺に怒声を投げたあと、アニーは拳を強く握り潰した。
それから、ゆっくりと写真を取り出し、
それを見つめながら、その大きな大きな体を、震わしている。

自転車は、止め具をつけずに、
アスファルトに転がったままに放置されていた。



(  _ゝ )「…」


(;'A`)「ごめん、な…」



( ´_ゝ`)「いいや。 ちょっとカッとなりすぎたよ」



( ´_ゝ`)「HAHA……」

106 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:39:34.87 id:ql96934q0
気がついたことがある。
本当に、外国人はリアクションがでかい。
嬉しいときは馬鹿笑い、悲しいときは顔面蒼白。

中学生のころ、英語の教科書で見た押絵そのものだと、
アニーを見て思う。


( ´_ゝ`)「……」


('A`)(どうしたものかな)







( ´_ゝ`)(どうしたものカナ)

( ´_ゝ`)「オットー……」


ふと気がつくと、
アニーは、リュックから何かを取り出していた。

108 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:43:21.04 id:ql96934q0
('A`)「…ん? アニー、それなに?」


( ´_ゝ`)「…これかい?」


( ´_ゝ`)「これは…」


( ´_ゝ`)「オットーのかたみなんだ」


形見? 薄々勘付いていたが、何となく繋がり始めた。
彼が写真の中の風景を、探していた理由。
そして、俺が彼から受け取ったものは――


('A`)「随分、古い型のカメラだな」

( ´_ゝ`)「アンティークさ。 ふふっ…」

111 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:48:34.51 id:ql96934q0
形見のカメラは、市販のインスタントカメラより一回り大きかった。
あちらこちらが金属製で、特有の冷たさを感じるはずなのに、何故か暖かい。
これが、持ち主の温もりというのなら納得だ。


('A`)「ちゃんと撮れるのか?」

( ´_ゝ`)「もちろん」


('A`)「このカメラで、風景を収めようとしたのかい?」


( ´_ゝ`)「ああ……」




( ´_ゝ`)「ボクは、小さいときにおとうとといきわかれたんだ」

('A`)「!?」

114 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:52:20.32 id:ql96934q0
アニーは、青空を仰ぎながら話しを続ける。
俺は、カメラを摩りながら黙ってそれを聞くしかなかった。


( ´_ゝ`)「おやがリコンし」


( ´_ゝ`)「ボクは、アメリカンのパパにひきとられ、海のムコウに」

( ´_ゝ`)「おとうとは、ジャパニーズのママにひきとられ、ここにのこったんだ」


( ´_ゝ`)「すうかげつご、たよりがきた」



( ´_ゝ`)「マロン県にひっこししました と」



( ´_ゝ`)「そのすうかげつご、なにがあったとおもう?」

117 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 01:56:35.50 id:ql96934q0
('A`)「マロン県、20年前…」


('A`)「…!!」

(;'A`)「だっ、大震災…」


マロン県は、学校の教科書に載るくらいの大地震が起こった地だった。
延べ数千人が被害に見舞われ、大怪我、死を被った。

(;'A`)「まさか…」

アニーは、黙ってゆっくりと頷く。








「そんなことがあったのか」で済まされた過去の事柄が、
いきなりグッと接近した瞬間だった。

119 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:01:19.01 id:ql96934q0
( ´_ゝ`)「ひにくにも、それの”イチブシジュー”をしったのは」

( ´_ゝ`)「けっこう、あとになってからだったよ」


( ;_ゝ`)「…またあおうと、ぜったいやくそくしたのにな…」


(;'A`)「アニー…」


アニーの体が震える。大粒の涙が、2滴、3滴だけ地に落ちた。
予想に反して、その流れはすぐに止まった。
真っ赤になった顔を上げて、彼は話を続ける。


( ´_ゝ`)「…ココロに」


( ´_ゝ`)「ココロにのこしたしゃしんは、ずっときえないままだよ」

121 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:06:02.25 id:ql96934q0
( ´_ゝ`)「あのひ… ここで…」

( ´_ゝ`)「かけっこしたコト くさのかんむりをつくったコト」

( ´_ゝ`)「きんじょのコとあそんだコト」

( ´_ゝ`)「オットーの えがお なきがお おこったかお」

( ´_ゝ`)「ぜんぶ、このメでうつした! そして、ココロにのこっている!」



( ´_ゝ`)「でも、オットーは、それをわすれてないかな?」

( ´_ゝ`)「そらのうえで いたいたいとないていないかな?」

( ;_ゝ;)「――そんなことばかりを、ぼくはオトナになってからも、うみのむこうでなやんだよ」


('A`)「……」


また、大粒の涙が地に落ちた。
窓から、専業主婦が物珍しそうな顔で俺たちを傍観している。

125 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:10:03.02 id:ql96934q0



        さすがだな … … … …



   わすれてなんか いるもんか … … … … …






( ;_ゝ`)「!!!???」







いきなり、アニーの体が波を打ち、背筋がグンと伸びた。何かに気付いたように。
そして、周囲を見渡し始めた。


(;'A`)「どうしたんだ? アニー」

127 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:15:15.90 id:ql96934q0

( ´_ゝ`)「…オットー?」



( ´_ゝ`)



( ´_ゝ`)「こっちだ!! こっちだよドク!!」


何を言い出すのかと思うと、突然アニーは一方向に走り出した。
倒れたままの自転車を踏み付け、
転がっている子供のボールを蹴っ飛ばし、
住人のおばさんの挨拶を無視する程に、
夢中で走っていた。


(;'A`)「ま、まてよー!!」


俺も自転車を放り出して、必死で走り出す。畜生、やっぱり足も速いなアイツは…

しかし、それは彼を動かす「何か」も加担しているのだ。
何があるんだ。この先に。

133 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:20:24.62 id:ql96934q0
勘付いている方も多いと思いますが、
回線直ってちょっと過ぎてからは絶賛ながら投下中であります。
以下何事も無かったかのように再開

134 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:22:17.15 id:ql96934q0
三つ目の建物の裏側に、山肌があった。
まさに山を拓いてここを建てたのが、丸分かりである。
アニーはそこをぐんぐんと登っていく。俺も負けじと、登っていく。


(;´_ゝ`)「ぬおおおおお!!!!」

(;'A`)「ひぃ…ひぃ…」



一足先に、アニーが上に到達した。
そして、両膝をガクッと落とし、何かに感激している。





(;'A`)「ま…さか…」


( ´_ゝ`)「カモン!ドク!はやく… きてごらんよ!!!」

137 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:28:42.79 id:ql96934q0
('A`)「よっし… 着いたぞ」

('A`)「――!!!」



( ´_ゝ`)「ほら… キレイだろ?」


( ;_ゝ`)「HAHA… ラベンダーさ…」


( ;_ゝ`)「オットーが… おしえてくれたんダ…」

( ;_ゝ`)「のこってたんダ…」




ほんの僅かな範囲だが、あの写真で見たのと同じ色の植物が、ラベンダーが、

そこで生きていた。根を生やしていた。

その色は、古ぼけた写真で見るよりよっぽど鮮明で、とても華奢な身なのに、

とても力強く俺の目には見えたんだ。

139 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:32:15.40 id:ql96934q0
('A`)「…ん?」

植物に見惚れていた俺は、ふとポケットの異物感に気づく。

('A`)「あ、カメラ… 撮らなくていいのかい?」

('A`)「めちゃくちゃ縮小されちゃったけどな! はは…」



( ´_ゝ`)「いいんだ」


('A`)「…え?」



( ´_ゝ`)「オットーはわすれてなんかいなかった ココロにちゃんとうつしていたんだ」

( ´_ゝ`)「このカメラのフィルムが たくさんのこっているのにもなっとくだよ……」


('A`)「??」

142 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:38:12.54 id:ql96934q0
( ´_ゝ`)「きみは、ぼくいじょうに、ココロにのこしていたんだな」

( ;_ゝ`)「だから、こんなカメラ、ひつようなかったのかもな……」



('A`)「俺さあ、思うんだけど」

('A`)「オットーは”共有”したかったんじゃないかな? そのカメラを通して」

('A`)「二人、別々の場所にいれば、目にする景色… 心に残す景色も違うだろ?」

('A`)「きっと、海の向こうの写真を撮って送ったりしてほしかったんだよ」



( ´_ゝ`)「… いいこというナ かおのわりに」


('A`)


(*'A`)「余計なお世話だよ」

147 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:42:23.71 id:ql96934q0
( ´_ゝ`)「きょゆうか……」

( ´_ゝ`)「それじゃあ、このふたりのけしきは」

( ´_ゝ`)「とるひつようは、なかったのかもね」



('A`)「そうだよ!!」


( ´_ゝ`)(このラベンダーは、オットーがまもってくれたんダ………)

( ´_ゝ`)(このラベンダーは、ぼくとオットーのメモリーなんだからなぁ……)




('A`)「凄く都合いいこと言うかもしれないけどごめんよ」

('A`)「でも、アニーの持論に合わせたらこうなる」

( ´_ゝ`)「…なんだい?」

148 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:46:24.72 id:ql96934q0
('A`)「結局、この写真の風景は消えちまったワケだが」

('A`)「アニーと、オットーの心の中には残っていたんだ」

('A`)「すごく安直で、すごく曖昧な 事の片し方だろ?」

('A`)「でも、それでいいと思うんだ俺」





( ´_ゝ`)「……」

( ´_ゝ`)「それを前提にさがしていたつもり」







俺は山肌から飛び降りてしまった。
流石だな兄者

152 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:50:31.83 id:ql96934q0
( ´_ゝ`)「おーい!! ダイジョブかー!!」

('A`)ノ「あいたた… ああ、大丈夫だよ~」



( ´_ゝ`)「今、そっちに向かうよ」



――


(;'A`)「しっかしなあ、最初からそう思っていたのか」

( ´_ゝ`)「でも、かくしんがもてなかった」

( ´_ゝ`)「オットーはココロのなかがからっぽになっていたかもしれない」


('A`)「まあ…そうだな そうだよな」

153 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:55:28.30 id:zkKI8+XQ0



時刻は昼を過ぎている。もうすぐ、一日が一番暑くなる時間帯だ。
俺とアニーは、突き当りの場所まで戻っていた。
…遠方を眺める。ハゲ山が見える。

そしてその下には、閑静な団地が並んでいた。
アニーの場所は消えていた―――。



( ´_ゝ`)「DE・MO・SA」

( ´_ゝ`)「けっかオーライだよナ」

(*'A`)「おめーが言うなよ」





( ´_ゝ`)「……」


( ´_ゝ`)「…おわかれの、じかんだ」

156 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 02:59:06.01 id:zkKI8+XQ0
('A`)「…おう。 これから、どうするんだ?」


( ´_ゝ`)「ぼくは、このじてんしゃでこれからマロンにいくよ」


(;'A`)「!? どれだけ離れてると思ってるんだよ!!!」

( ´_ゝ`)「ふふっ… にほんのサマーは まだこれからさ」


( ´_ゝ`)「そして、オットーのおはかにいく」

( ´_ゝ`)「カメラをかえしにいくんだ……」


('A`)「そうか、頑張ってな」



( ´_ゝ`)「ドクオは?」

159 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 03:02:59.79 id:zkKI8+XQ0
('A`)「俺は…… この逆方向に突っ切れば、目的地が見えてくる、はず……」


( ´_ゝ`)「そうか。じゃあ、ほんとにここでおわかれなんだな」


アニーの自転車のシャーシが、太陽に反射してキラリと輝いた。
…その瞬間、二人の間に鋭い風がひゅっと通り過ぎる。


( ´_ゝ`)「…ありがとう。ほんとうにありがとう」


( ´_ゝ`)「いくらアリガトウ といってもたりないくらいダ」



('A`)「はは…。 一回で十分さ」

161 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 03:06:37.34 id:zkKI8+XQ0
俺とアニーは、固く強く、手を握り合う。
アニーの手は俺より二周りも大きい。それでいて、何故か優しい暖かさがあると感じた。

そう、あのカメラと同様に。



( ´_ゝ`)「サイゴに…これをもらってクレ」





('A`)「…これ、ラベンダーじゃないか!?」


( ´_ゝ`)「ふふっ… いっぽんだけハイシャクしたのさ」


( ´_ゝ`)「ぼくと、オットーからの おまもりだよ」



('A`)「…そうか、ありがとよ」

163 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 03:10:10.52 id:zkKI8+XQ0
俺はラベンダーを丁寧にハンカチで包み、
押し潰されないリュックの箇所にそれを仕舞った。
その途端、アニーの表情が極端に崩れ始めたではないか。


( ´_ゝ`)「ふっ… フフフフフフフ」


('A`)「な!? どうしたんだよアニー。いきなり」



(*´_ゝ`)「アハハハハハハハア!!!!」


('A`)「ちょ! いや、おま… 」

165 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 03:13:00.56 id:zkKI8+XQ0
(*´_ゝ`)「アヒャヒャHAHAHAHAAwwwwwwww」

(*'A`)「ぷっ!」



('∀`)「あははははっ!!!! 」



―――――カシャッ!


('∀`)「……え?」







( ´_ゝ`)「……ナイス・ショット」



(;'A`)「あっ! おまえ、どさくさに紛れて写真撮りやがったな!?」

( ´_ゝ`)「にほんごワカリマセーン!」

(;'A`)「このやろ!!」

168 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 03:16:46.86 id:zkKI8+XQ0
( ´_ゝ`)「すばらしいスマイルだ」

( ´_ゝ`)「きみとであえたこと ほんとうにかんしゃしている」

( ´_ゝ`)「だから、ココロだけじゃなく、写真にもおさめたかったのさ」


('A`)「この」


(;A`)「やろ……」


( ´_ゝ`)「おいおい、なにをないてるんダイ?」

( ´_ゝ`)「わらったり、ないたり」

( ´_ゝ`)「…いそがしいやつだな~」


('A`)「…ふ、ふん。目にごみが入っただけだよ。本当にな」

( ´_ゝ`)「それはジャパニーズ・ジョークか?」

('A`)「…さあね」

169 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 03:23:55.07 id:zkKI8+XQ0
( ´_ゝ`)b「Good luck!!!!」

('A`)b「お前もな!」






アニーは道を下り、

俺はショボンおじさんの家へと、また進み始める。

俺の心には、

幾つもの風景が残されている。

何でもないような一枚、何かの節目であった一枚。

…一つ一つ、大事にしていこう。 俺の旅に、また一つ課題が増えてしまったな。

171 名前:1 ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/21(日) 03:25:35.47 id:zkKI8+XQ0
だからアニー。




お前と、二つの県を跨いであちこち走り回ったこともさ、一生心に残しておこうと思うよ。

そして、おまえは俺の積極性を引き出してくれたんだ。ありがとう。

………じゃあな!













(異郷編3 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/10/21 21:00:06

24jigendaddyjigendaddy   やくそく編1

6 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 19:38:43.97 id:D2DgdSav0



アニーと別れた俺の心には、何か満たされるものがあった。
内藤や、ツンと別れたときの気持ちとは、違うベクトルのものだ。


結論から言うと、アニーとの目的は果せなかった。
写真の中にあった風景は、閑静な団地に変わっていた。


しかし、アニーから

「これでいいじゃないか」
「いいんだよ」


そんな風に言い包められて、それで納得してしまった俺がいる。
「そうか、別に見つからなくても、良かったんだ」と。
俺は、そんな俺を少し好きになった。


そういう、気がする。

9 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 19:41:34.83 id:D2DgdSav0


―――自転車は、あと僅かの距離であるショボンさんの家へと、ひた走る。



太陽が真上にあった。
風鈴が囁いていた。
子供たちが市民プールから帰ろうとしている。
老人が団扇を手に散歩をしている。


何でもないような風景を、俺は特別なものだと、
切り取って、そして心に貼り付けてきたつもりだ。いや、無意識にそうしてきた。
そしてこれからもそうしていきたいなあ。

そんなことを彼は強く思わせてくれた。




('A`)「ああ、この距離がもどかしいっ!!」

('A`)「早く着かないかな……」

('A`)「………」


唇の上についた汗をぺろりと舐める。
俺は暑い空気を切り裂いて、ひたすら先を急いだ。

11 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 19:44:35.83 id:D2DgdSav0


しばらく進んでいると、道先に緑が多くなってきた。
右を見上げれば、山肌が見える。

遠方へ伸びる道路はぐにゃりと波を打ってるかのようで、
その先は一つの暗闇――トンネルへと続いていた。

('A`)(そういや……)


俺の頭の中では、出発する前の親父との会話が再生されていた。



('A`)「なあ、ショボン叔父さんはどんなところに住んでいるんだ?」

(,,'A`)「あそこはなあ…… 海があるな。海に面した所だ」

('A`)「へえ… 海か。もしかして、小さい頃連れてってもらった海水浴場?」

(,,'A`)「そうだな」

12 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 19:48:48.63 id:D2DgdSav0
('A`)(もしかして、この蛇行した道を抜けて)

('A`)(トンネルを通過したら)


海が見えてくるのかもしれないと、
俺は胸を躍らせた。

……そして、海が見えてきたら、
ショボン叔父さんの家もすぐ見つかるはず。


('A`)「よっしゃ――!! …あぁ」


だがしかし、何度も経験してる通りだ。
心の勢いに身体がついて行くのは、非常に苦しいことなのだ
いや……


気合で頑張ろう。

15 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 19:54:30.13 id:D2DgdSav0


数十分をかけて、
ようやく俺はトンネルの入り口まで辿り着いた。
入り口からは、ひんやりとした風が吹き、俺の火照った体を冷ましてくれた。


('A`)「ふーむ」


俺はペダルから足を離し、地につけ、
トンネルを見つめてみる。
老朽化が進んでいるみたいで、苔や蔦が生茂り、少しおどろおどろしい雰囲気だ。


('A`)「トンネルの向こうは不思議な国 とまではいかないが」

('A`)「何か、何か俺を待っているに違いない!」


そんなことを思いつつ、トンネルへ踏み込んでいく。

17 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 19:58:48.45 id:D2DgdSav0
仄暗い黄色のランプが、トンネルを照らす。
中は無風で、しかし熱気は充満していない。


('A`)「トンネルを自転車で通過するなんて、初体験だなあ」


外見の老朽とは裏腹に、トンネルの路面は緩やかだ。
とてもすいすいと進んでいくことができる。
なんとなく鼻歌を歌いたい気分。


('A`)「~♪」


多少大きな声を出しても、
道路を行き交う車の轟音に掻き消されるのが、なんだか楽しい。

18 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:01:01.51 id:D2DgdSav0
('A`)「…ん?」


トンネルの距離を「少し長いな…」と感じ始めてきたときだった。
俺の鼻が、とある匂いに反応する。




コンクリートじゃなくて、
車のガスじゃなくて、
これは……


('A`)「…潮の匂い?」



予想が当たったのだろうか。
間違い無いな、ここを抜ければそこは海だ。
ペダルを漕ぐ足に、力が入った。

19 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:03:35.44 id:D2DgdSav0
ほの暗いと思っていた黄色の光りが、
段々と淡く、眩しくなっていくような気がする。
視界も少しクリアだ。


('A`)「光が見えてきた!」

('A`)「出口だな!」




対向側を走る車が、次々とライトを付け始める。
俺は、進行側の車に倣ってライトを落とす。



潮の匂いが、段々と強まってきた。
まだ見ぬ先へと、微かなイメージを持ちつつ、
トンネルは終わりを迎える。


(;'A`)「はあはあ……」

21 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:06:11.46 ID:9iPzyZ2K0
俺はトンネルを抜けた。

暗闇にある時間居たせいか、
太陽の光がいつもの何倍もの強さで襲ってくる。


( A )「く、くわあ~」

('A )「……」


('A`)「海だっ!!」


ガードレールを隔てて、やや遠方に群青色の海が広がっていた。
少し視点を下げると、様々な柄のパラソルがこちらを向いている。
テトラポットが線を成し、華やぐ人々の声が聞こえてくるようだ……。


('A`)「海…」

('A`)「いいねえ海」

24 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:09:18.10 ID:9iPzyZ2K0
上を見上げれば空の青。

そして頭を下ろせば海の青。こちらはやや深みがある青。
俺の旅情が、最大にまで膨張する。
俺の心は必死にここから見える景色を、いつまでも覚えていようとする。


――そんなこと意識しなくても、本当に印象に残ったのなら、
いつまでも残るんだけどな。



('A`)(そんなこと、わかっているけど)

('A`)(かれこれ5分間棒立ちの俺)

('A`) ぼーっ…



('A`)(小さい頃以来だなあ。ナマで海を見るのは。 こんなに雄大だっけ?)



そんな気持ちを抱きつつ、俺はふと我に返った。
俺は再び自転車に跨る。さあ、あともうひと踏ん張りさ。

29 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:36:00.04 ID:9iPzyZ2K0


道路に沿って走行すると、
残念ながら海から僅かに離れていく。
途中、海水場へと別れる道もあった。
もし海水パンツがあるならば、ちょっくら泳いでいきたい気もする。

しかし、毎日陽に当たっているのにあまり日焼けしないこの貧弱な肌と、
痩せ細っていて弱弱しい肉体を晒すのが嫌だ。


('A`)(うーん。もう少し黒くはならないものかね)


俺はハンドルを握る腕を見た。
腕は、少し赤みを帯びているだけ。ああ、やだな。



('A`)(ああー、内藤みたいな隆々とした肉体になりたいよ)


まあでも、顔がこんな→( ^ω^)だから、
あいつはあまりたくましくは見えないんだがね。

31 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:38:53.56 ID:9iPzyZ2K0
('A`)「ふう……」


しばらく走っていると、風景は山と海だけから、
少しずつ町並みへと変わる。
俺は広場のようなところに自転車を停め、ベンチに腰を下ろした。
そして、地図を開く。


('A`)「親父の地図、見辛いなあ……」


サロン県内に着き、さらに海が見える町まで辿り着いた。
だからこれからは、親父が作ってくれた地図にシフト。


('A`)「どっちがどっちなんだろう……?」


手作り感溢れるその地図は、見辛くも俺を目的地へと確実に導いてくれる。
…と、思う。




('A`)「なるほど、2丁目ね。 ”しょぼくれ酒場”か」

34 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:44:51.69 ID:9iPzyZ2K0
ショボン叔父さんは、
個人経営の居酒屋「しょぼくれ酒場」を奥さんと一緒に経営している。
もちろん、足を運んだことは一度も無い。


('A`)「この店の名前はいいな…」

('A`)「いじけてるみたいだ」


海からどんどん遠ざかり、俺は町の中へと入っていく。
所変わればなんとやら で、やはり町によって空気や景色が全く違う。



('A`)「ここらの女子高生の制服はかわいいなあ」






そんな下心も持ちつつ、俺は地図を頼りに町を散策していく。

36 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:50:47.96 ID:9iPzyZ2K0
故郷と離れた町の風を受けつつ、
俺の自転車はどうやら目的地へ着いたようだ。
しかし、なぜか感慨深いものはない。 何故だろうか?


(;'A`)「あれ…… ここ、二丁目だよねえ」


二丁目はとても狭いエリアだ。
俺は建っている店を一軒ずつ見て周りながら、町内を巡ったはず…



(;'A`)「なんで、ないんだろう」



そう、最終の目的的である居酒屋が、
どこにも見当たらないのだ。

37 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:54:02.42 ID:9iPzyZ2K0
('A`)「なんでだろう…」


俺は、通行人に声を掛けた。


('A`)「あの、すいません」

「なんだね?」

('A`)「”しょぼくれ酒場”ってどこですかね?」

('A`)「ここにあるはずなんですけど…」


初老の通行人は、少し考えたあと、はっとした顔でこちらを見つめた。


「きみ、ショボンさんに何か用かね?」


('A`)「はい。尋ねに来たんです」

38 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 20:57:23.93 ID:9iPzyZ2K0
「そりゃまた…」


老人は、また一呼吸を置いた。
そして、とある建物を黙って指差した。


(;'A`)「…あれ?」


















老人の指先にあったのは、
寂れた一軒の建物。入り口はくすんでいて、目に留まらなかった………

40 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 21:00:37.48 ID:9iPzyZ2K0
('A`;)「え? あ、あのもしかして」


老人は僅かに頷き、早々に去ってしまった。
まさか……


俺は寂れた建物に近づいた。
町に揉み消され、ひっそりと行き場を無くしているように見える。
だがしかし、入り口に「閉店」などという張り紙は無い。
店内が、上方のガラスから微かに見える。
薄暗い灯りがついていた。
人はいるということか?しかし、ドアは閉まっている。




('A`)「あのー! もしもし……」






俺はドアを軽く叩いた。

43 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 21:04:22.35 ID:9iPzyZ2K0
「兄貴ぃ! 誰か来たみたいっすよ」

「出たほうがよろしいのではないかと私は思います」

「……誰だ? まったく…」



酒気を帯びたような、ピッチが定まらない声の主が一人いる。
聞き覚えがある。彼がショボン叔父さんだ。
そして、足音が段々とこちらへ近づいてくる。ああ、やっと対峙のときなのか……



ガラッ!







(;'A`)「あ、あの……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2007/10/27(土) 21:05:12.66 ID:0uJQZNwf0
(´・ω・`)「エクシード!!」

48 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 21:14:09.46 ID:9iPzyZ2K0
(´・ω・`) 「うぃー……」



出てきた人物は
くたびれたシワシワのシャツに、赤い頬、片手に酒瓶。
無精髭がだらしなく、髪の毛も色んな方向へはねていた。


…こんな人だったっけ?叔父さんって……
そして、挨拶を言おうとした次の瞬間だった。

50 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/10/27(土) 21:16:53.46 ID:9iPzyZ2K0
(´・ω・`)
「やあ
ようこそ、”しょぼくれ酒場へ”
このいも焼酎はサービスだから、まずは飲め、飲まなきゃシメる
 
うん、「閉店」なんだ。澄まない。
嫁さんもそりゃ逃げるわな。許して再婚してもらおうとも思っていない。

でも、この寂れた入り口を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「同情」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした現代社会で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。
そう思いつつ、昼間から酒を浴びる俺。

じゃあ、注文をきkうぇあjkfrh;」







(´・ω・`) 「……ところでおまえ誰?」






(やくそく編1 おわり)

(’A`)ドクオは夏の旅に出るようです
返信2007/10/27 21:56:53

25jigendaddyjigendaddy   やくそく編その2

3 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 00:48:15.72 id:FuPMAjuq0
(´・ω・`) 「……おまえ誰?」




叔父さんの第一声に、俺はたじろいだ。
故郷から遠路数十キロ。俺はやっと目的地である叔父の家に辿り着いた。
しかし、叔父の経営している居酒屋は何故か店を閉めていて、
俺が久方ぶりに出会った叔父さんの姿は、酷くだらしないものだった。

















('A`)ドクオは夏の旅に出るようです

6 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 00:49:43.40 id:FuPMAjuq0
(;'A`)「あのー……、俺はVIP県から来たドクオです」


(´・ω・`) 「はて、ドクオなんて俺の知人にいたかな?」


酒気を帯びた叔父さんの、ヨレた口調が店内に響く。
すると、奥の椅子に座っていた二人の男性のうち、
手前にいた中肉中背の男性が口を開いた。店員さんの一人だろう。


( ゚∀゚)「店長、その子がお兄さんのムスコさんじゃないっすか?」

(´・ω・`) 「長岡!おまえ皿洗いすんだのか?」


ジョルジュと呼ばれた男の人は、「へへっ、すいません」と軽く笑った。
そして、店の奥へと歩いていく。


('A`)「ああ、ハイ。そうなんです」


(´・ω・`) 「何、するとキミは兄貴の一人息子であるドックゥオ君か」


(;'A`)「そ…そうです。お世話になります」

8 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 00:52:36.97 id:FuPMAjuq0
叔父さんはお酒が入ったコップを最寄のテーブルにそっと置き、
俺の顔をまじまじと見つめ始める。


(´・ω・`) 「ふーむ。確かに似てるな。あまりパッとしない辺りが」

(#'A`)(自分だってショボくれてるような顔してる癖に何言ってんだ)


そして、
叔父さんは腕を組み、一人で何やら考え事をし始めた。
天井を見つめながら、何かを思い出すように。


(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「ああ、思い出したぞ」

(´・ω・`) 「電話もらったけな。そういえば」


段々、叔父さんから酒気が抜けて素面になってくるのを感じた。
するとなんだか、理知的な雰囲気が出てくるのがちょっとだけ悔しい。

11 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 00:54:58.13 id:FuPMAjuq0
(´・ω・`) 「…で、俺はキミに何を施せばいいのかな?」


('A`)「とりあえず、一週間程度お世話になるという話しで……」


(´・ω・`) 「そうかい。まあ、こんな汚い家だけど……」


叔父さんの髪を掻きむしる姿の後方から、
また快活な声が届く。


( ゚∀゚)「家族が一人増えたっすね!!」

(´・ω・`) 「うるせえ。手前は皿でも洗ってろ」

( ゚∀゚)「はい!!」




('A`)「それで……」

('A`)「ただお世話になるのもアレなので、店の手伝いをさせて欲しいのですが」

12 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 00:57:59.10 id:FuPMAjuq0
これは、旅に出る前から何気に心に決めていたことだった。
バイトの一つもこなした事がない俺。
だけど、親戚の店の手伝いくらいなら自分にもこなせるかもしれない。
その経験が今後の人生で、何か役に立てたらいいな。
そんな茫漠で単純な理由付けだけど、とりあえずは決めておいたことなのであった。





だけど叔父さんはアッサリと答える。






(´・ω・`) 「あれ?入り口で言わなかったっけ」

(´・ω・`) 「もう、この店は潰れたんだよ」

「いいや――――!!自分はまだ諦めたくないっす!!!!」

(ω・`#)「さっきからうるせーんだよドアホウがっ!!」


('A`)「…」

14 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 00:59:29.49 id:FuPMAjuq0
潰れる、とか、そこらの事情は詳しく尋ねても良いだろうか?
そんなことを思って暫しぼーっとしていた。
外見は確かにちょっと汚れてて、存在感がなかったけど、テーブルはきちんと綺麗に拭かれている。
薄暗くて入った途端はよく分からなかったけど、店内は一応清潔を保っていたのだ。
お品書きの張り紙もまだ付いたままだし、
経営不振ではなく、何か他に事情があるのではないだろうか。
だけど、そこらの事情を詳しk(ry









(´・ω・`) 「手伝うんなら海へ行けよ」

('A`)「海?」


叔父さんはスモークがかかった窓を指差して言った。
その方向には海水浴場がある。
だけど、何故に海?


(´・ω・`) 「行けばわかるさ。さあ行け。ほら行け!」

16 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:02:58.52 id:FuPMAjuq0
なんだか疎ましがっている様子だ。
叔父さんはテーブルに戻り、コップに酒を注ぐ。
きっと酒盛りの続きをしたいのだろう。せっかく尋ねてきたのに、何だか複雑な気分だ。


('A`)「はぁ。分かりました」

('A`)「とりあえず荷物置かせてもらったいいですか?」



(´・ω・`) 「…おう」

(´・ω・`) 「おい杉浦、ドク坊を案内してやれ」


叔父さんは背中を丸めて、コップに注がれた酒を少しずつ飲む。
上窓から差し込む太陽の光が、その姿に哀愁を醸し出していた。

20 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:05:45.88 id:FuPMAjuq0
杉浦と呼ばれた、細身でどこかインテリそうな雰囲気の、
もう一人の店員が俺を招く。





( ФωФ)「こちらです」

('A`)「はぁ」






俺は二階の、そこそこに広い部屋へと案内された。
ツンのときと同じく、この広々とした空間で寝られると思うと嬉しい。

22 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:09:20.08 id:XF8WAakO0
俺は二階の、そこそこに広い部屋へと案内された。
ツンのときと同じく、この広々とした空間で寝られると思うと嬉しい。


荷物を整理しながら、俺は杉浦さんに尋ねた。


('A`)「杉浦さんと長岡さんは、ここに住み込みで働いているんですか?」


大きな瞳がギョロリとこちらを見つめる。
そして、こう返答した。


( ФωФ)「ええ。それはもう家族のようなお付き合いです」

( ФωФ)「まあ、私も長岡も、先代への恩を返すために働いているようなものです」

( ФωФ)「今は休業中ですがね」

( ФωФ)「夏休み中は学生さんが結構御出でになるので、もったいないのですよ」




先代…? 恩返し? また謎が増える。

26 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:12:42.60 id:XF8WAakO0

('A`)「ここって、叔父さんが開いたんじゃないんですか?」

( ФωФ)「いや、先代の荒巻スカルチノフという方が建てたんです”しょぼくれ酒場”は」

( ФωФ)「ここで店長も、住み込みで働いていたんですよ」







( ФωФ)「荒巻さんの娘さんが、今の店長の妻なわけなんですけどね」





29 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:16:07.30 id:XF8WAakO0

―――叔父さんの家内。確かしぃさんという人だ。
親戚の集まりで、何度か顔を見たことがある。でも、店にはいなかった。
二階の居住のスペースにも、いる気配はない。



しかし、なんとなく理解してきた。
海へ行けばそれは確信へと近づくだろう。


('A`)「有難うございました」







俺は、荷物から小リュックを取り出した。
そして、それに財布など必要最低限の持ち者を放り、背負う。

30 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:16:36.90 id:XF8WAakO0
階段を下りると、叔父さんはすっかり酔って眠っていた。
威勢のいいイビキを他所に、俺は店を出た。



( ゚∀゚)「皿洗い終わったっすよー!」

( ゚∀゚)「…あら」



(´ ω `)「……ぐおー ぐおー」

32 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:18:27.36 id:XF8WAakO0
/ ,' 3「ショボン、ワシがなぜここを数十年前に”しょぼくれ酒場”と名づけたか分かるか」

(´・ω・`) 「はい! この…暖簾(のれん)を潜る人はみんなショボイからです!」

/ ,' 3 「馬鹿者!!」

(;´・ω・`) 「しまった! すいません…」




/ ,' 3 「……ワシのついついお節介になってしまう性格からかのぉ、
     ここに集うお客さんは、どこかしら影があるんじゃ。落ち込んでるんじゃ。そして、よくワシに相談を持ち寄ってくる」








/ ,' 3 「料理を出しつつ、そいつらの話しを聞いてやるのも人生の楽しみでなあ!」

33 名前: ◆ps3CKPkBXI 今日俺ミス多すぎごめん・・・ 投稿日:2007/11/04(日) 01:19:19.27 id:XF8WAakO0
―――――――



/ ,' 3「ショボン、ワシがなぜここを数十年前に”しょぼくれ酒場”と名づけたか分かるか」

(´・ω・`) 「はい! この…暖簾(のれん)を潜る人はみんなショボイからです!」

/ ,' 3 「馬鹿者!!」

(;´・ω・`) 「しまった! すいません…」




/ ,' 3 「……ワシのついついお節介になってしまう性格からかのぉ、
     ここに集うお客さんは、どこかしら影があるんじゃ。落ち込んでるんじゃ。そして、よくワシに相談を持ち寄ってくる」








/ ,' 3 「料理を出しつつ、そいつらの話しを聞いてやるのも人生の楽しみでなあ!」

34 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:20:51.52 id:XF8WAakO0
/ ,' 3 「おまえが始めてここに飛び込んできたときも、そうだったのぉ!」

/ ,' 3 「いきなり目から鼻から水出して、女の子の話しをするやいなや」

/ ,' 3 「その女の子が、おまえにお燗とおつまみを運んできたときは笑ってしまったわい!」

/ ,' 3 「あの時のおまえの顔は忘れられんな!!」

(*´・ω・`) 「わわわ!! 言わないでくださいよそのことは――」



/ ,' 3 「…まあ、お前になら、この暖簾も、娘も安心して預けられる」

/ ,' 3 「ショボン、この店を」








頼んだぞ……

頼んだぞ……………

頼んだぞ………………………

36 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:24:20.80 id:XF8WAakO0
――――――


(´ ω `)「がってんです・・・・・」





(´・ω・`)





(´・ω・`) 「あれ? おい杉浦、ドク坊は?」


( ФωФ)「海水浴場に行きましたよ」

(´・ω・`) 「しぃの所か?」

( ФωФ)「恐らく」

( ゚∀゚)「皿洗い終わりまっした―――――!!」

(´・ω・`) 「うるせえ! そうか、まあいいか」


(´・ω・`) 「……はあっ」

38 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:28:32.84 id:XF8WAakO0
俺は歩いて海へと向かう。
詳しい道順は分からないが、とにかく海が見えるほうへ歩けば着くのだ!
これも旅の醍醐味だろうか。


('A`)「……」


市営バスが通り過ぎる。
女学生のスカートの端が微かに揺れる。
行く先には陽炎が何重にも重なり揺らめいていた。


('A`)「ついに辿り着いたんだなあ……」


信号に足止めをされ、バスを見送る俺の目に入ったのは、
ラウンジのナンバープレート。





平和な、午後の散歩道だった。
勉強だの、成績だの、ゲームだの、ネットだの、それらを一切遮断し、関係ない世界で生きているような気がする。
いつまでもこんな生き方をしていたい。
でも駄目なことは分かっていた。

42 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:35:36.95 id:XF8WAakO0
何かマイナスな思考をしてしまうと、
心の中に黒い点が現れる。そして、そこから淀んだ気分が放出される。


前々から仄かに気にしていたことが、くっきりと形になる。





”旅が終われば、また俺は元に戻ってしまうのではないか?”






45 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:38:06.76 id:XF8WAakO0
……今はこんな日々送っちゃってるけど、ひとたび夏休みが終わってしまえば、また以前の俺!
机に突っ伏してただ同じような毎日をこなすだけの俺! 駄目人間! 劣等生!!









それは、恐怖だ。











そして、とても嫌なことだ。
だけど、強烈な不可抗力が、旅から戻ってきた途端、襲ってきそうな、
そんな余計な心配に心は揺れていた。
何故だろう。

47 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:41:15.88 id:XF8WAakO0
('A`)(まあ精一杯楽しんでやるさ)

('A`)(あとからどうなるかなんて、今の俺には知らないことだ)



考え事をしながら歩いていると、いつの間にか俺は海水浴場に辿り着いていた。
堤防の上から、色とりどりのパラソルが見える。

海の香りが、する。



('A`)「うおー!海だあー」



両手を広げて小さく呟く。
海は広いな大きな。………でも俺の心は狭いな小さいな。







余計なことを考えてしまうのは俺の癖なんだ。
(これ久しぶりに言ったなあ)

50 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:42:49.47 id:XF8WAakO0

早速堤防を降りると、足に砂の感触が。
だが、それは鈍いものだ。スニーカーを履いている性だな。
ああ! 裸足になりたい。サンダルでもいい。
自分の足元を憎みつつ、砂浜を散策する。


('A)(姉ちゃんいい乳してますね)


半袖長ズボンにリュックサックにスニーカー。
どちらかというと山に行く格好な俺は、明らかに目立っていた。
頭の中に微かに残るしぃさんの顔を捜しつつ、
遊びに来ている女の子を凝視しつつ………
俺は軽快に歩いていた。海にいる人たちが皆楽しそうな表情をしているので、
俺もなんだか上機嫌になるのだ。
さっきの暗雲どこへやら だ。




('A`)「あー そういえば腹減ったな」





海で泳げなくとも、
海に来たという気分を味わおうと思い、俺は海の家で何か食べ物を買うことにした。


51 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:46:19.27 id:XF8WAakO0
('A`)(ここしかないのかな…?)


海の家は繁盛していて、少し長い列を成していた。
俺は列に並び、何を買い食いしようかと思案する。
旅路の半分を折り返したことだし、所持金もある程度自由に使える。




「焼きもろこし二本なんですー!」

「はい!おまち!」




若く元気な男性の声と、
透明感があり、それでいて筋がしっかり通っている女性の声が聞こえてくる。

列はどんどん消化され、俺の番が周ってきた。

54 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:50:20.59 id:XF8WAakO0

( ><)「いらっしゃいなんです!」

「あんちゃん!何でもすぐ出せるよ! さあ何にする?」


('A`)「えっとー、焼きそばひとつお願いします」


後ろを向いていた女性が、俺の注文を耳にして、振り返る。
あ、これは見覚えがある……


(*゚ー゚)「はい焼きそばひと――」










(*゚ー゚)「……ドクオくん?」

59 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:53:07.91 id:XF8WAakO0



(*゚ー゚)「まあ! それじゃ私たちを訪ねに」

( ><)「VIPからはるばる自転車で!?」



(*゚ー゚)( ><)「すごーい!!!」



(*'A`)「はは…」


しぃさんは海水浴場で海の家のアルバイトをしていた。
奥さんに逃げられたと叔父さんは言っていたが、随分近場に逃げたものだと思う。


( ><)「杉浦君と長岡君は家にいたんです?」


一緒にいたのが稚内ビロードさんだ。元はしぃさんと同じく店で働いていたが、
しぃさんが家を出るとき、心配して後を追ったらしい。

その挙句、”何かと助かるから”と、海の家で一緒に働く羽目になったらしい。
優しげな瞳となで肩が特徴的だ。

60 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 01:56:36.60 id:XF8WAakO0
('A`)「はい、杉浦さんはひたすら読書、長岡さんはひたすら皿を洗っていました」

( ><)「そうなんです……」

(;><)「て、店長は?」


ゴミを片付けながら、しぃさんは呆れた声で言う。


(*゚ー゚)「どぉせ昼間っからお酒飲んでるんでしょー?」



(;'A`)「…その通りです」




(*゚ー゚)「まったく……」

62 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 02:00:39.36 id:XF8WAakO0
(*゚ー゚)「まったく……」



('A`)「お世話になる代わり、居酒屋を手伝おうと思ったのですが」

('A`)「あの有様で…」

('A`)「だから叔父さんから海に行ってこいと言われ」

('A`)「辿り着いたのですが」

( ><)「もう今日はおしまいなんです!」 

(;'A`)「そうなんですよね……」








(*゚ー゚)「ビロード!お疲れ!今日はもう帰るよ!」

64 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 02:06:15.88 id:XF8WAakO0
しぃさんは話している合間にさっさと帰る準備を済ませていた。


('A`)「…あの家に帰るんですか?」

(*゚ー゚)「まーさか! 友達の家に泊まらせてもらってるわ」

(;><)(私は家に帰るしか術がないです… 毎晩気まずいんです…)


しぃさんの物憂げな表情を見ると、俺の頭に電球が浮かんだ。
しかし、この考えが良いものかは定かではない。




('A`)「あの、今日は一緒に店のほうへ帰ってみませんか?」





しぃさんの表情が一瞬にして強張る………


69 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 02:15:33.69 id:XF8WAakO0
しかし、ビロードさんがとっさにフォローを入れてくれた。


(;><)「し、しぃさん! それがいいんです。今日は一緒に帰るんです!」

(;><)「ほら、ドクオくんも来てくれたんだし、おもてなししましょうよ!」


(*゚ー゚)「うーん……」

(*゚ー゚)「ビロード君がそう言うのなら…」

(*゚ー゚)「…じゃあ、そうしようかな!」


(;><)(毎晩店長や長岡くんの夕飯作りは辛いんです… 良かった良かった)


――――


( ゚∀゚)「コップ洗いおわったっす!!!スプーン洗いおわったっす!!!テーブル拭き終わったっす!!!」

(´・ω・`) 「馬鹿野郎!! 洗い物ばっかしてねーで何か作れよ!」

( ФωФ)(ビロード遅いですね。何をぐずぐずしてるのでしょうか)

70 名前: ◆ps3CKPkBXI 投稿日:2007/11/04(日) 02:18:05.91 id:XF8WAakO0
( ><)「何か旅の話しでも聞かせてくださいなんです!青春なんです!」

('A`)「え、えーっとですね…」


(*゚-゚)「…」


(A`;)(余計なこと言わなかったほうが良かったかなあ…)







こうして俺とビロードさんとしぃさんは、一緒に帰ることになった。
俺はしぃさんとショボンさんの間に起きたことを何も知らない。何も分からない。
ただ一つ言えることは、
しぃさんの今一つ晴れない顔を見ると、


何か一波乱が起きそうな予感がしてならなかった。




(やくそく編その2 おわり)

( ・3・)ブーン系読み物・小説練習&総合案内所のようですイラスト
返信2007/11/04 09:48:47