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1jigendaddyjigendaddy   (-_-)ヒッキーは死んでしまったようです

10 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:16:56.40 id:V0X6WyFT0
熱い、熱い、熱い。
煙が多くて息ができない。
僕の周りがゆらり、揺れている。

いつも寝ていたあの床も、いつも見ていたあの天井も。
黒くなって、脆くなって、跡形もなく崩れて。
僕の身体もそれらと同じで、段々黒くなって、崩れていって。

皮膚が燃える、熱い。
喉が焼ける、苦しい。
目の前が霞む、辛い。

「助けて」
叫んだつもりが声にならなくて。
もし声が出たところで、燃え盛る家に飛び込んでくる人なんていないのだろうけど。

あぁ、少しずつ意識が無くなっていく感じがする。
これが【死】ってやつなのか。
案外身近な物だったんだなぁ。

そういえば、今僕の目の前で黒こげになってる母さんが『空襲が来たら防空壕に逃げ込め』なんて言ってたっけ。
もう遅いっていうのに、何故だろう。
こんな思いをしなくて済むのだったなら、防空壕に行きたかった、なんて考えていたり。

でも、今更な話だよね。
人生が終わる直前、僕は自虐的にひっそりと笑みを浮かべて死んでいった。
どうせ遺体が発見される頃には、焦げていて表情なんかわからないのだから。

12 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:18:24.50 id:V0X6WyFT0










(-_-)ヒッキーは死んでしまったようです











15 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:20:57.73 id:V0X6WyFT0
(-_-)「ん……? ここは……?」

ジットリと湿った空気が僕を包み込む。
寝過ぎた時のような倦怠感が、しばらくぶりに意識を取り戻した事を教えてくれる。

(-_-)「僕は死んだはずじゃ……?」

しっかりと意識はある。
自分がここにいるという感覚もある。
しかし、確実に自分が焼け死んだという記憶も残っている。

爛れていく自身の体。
鼻に残る母親の死臭。
家屋が崩れていく轟音。

何もかもがつい先程の事のように、鮮明に思い出される。

(-_-)「うん、確かに僕は死んでるよね」

思わず再確認。
生きていると考えるよりも、死んでいると考えた方が記憶的にも自然だ。
それならば、僕はもうこの世の者ではないのだろう。

19 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:22:54.06 id:V0X6WyFT0
(-_-)「ってことは、僕は幽霊?」

そう考えるとなると辻褄が合う。
第一、生きている時は徴兵すらパスできるほど身体が弱くて、家から殆ど出られなかった僕が、
誰の助けもなく、こんな見知らぬ場所に到達できるはずがない。

それに、気付いたら見知らぬ場所って時点で、もうおかしい。
ここに来るまでの道程なんて、全く記憶に無いし、来ようとした覚えもない。
なのに何故、僕はこんな所にいるのか。

(-_-)「もしかして、ここって防空壕とか……」

よくよく考えてみると、見るからに頑強そうな岩壁。
人が数人入っても余裕のある、人間収納スペース。
そして、眩しい光の差し込む、唯一の出入り口。

うん、ここは確実に防空壕だ。

(-_-)「でも、なんで僕が防空壕に? あ、もしかしたら……」

確かに僕は死に際に、防空壕に行きたかったと思いを馳せた。
しかし、死んでからじゃ遅すぎる。
神様の悪戯だかなんだか知らないけれど、これは皮肉すぎるんじゃないのかな。

23 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:25:18.77 id:V0X6WyFT0
(-_-)「とりあえず外に出てみようかな」

いつまでも防空壕の中にいても、既に死んでいるのだから意味はない。
とりあえず光の差し込む元へと行ってみることにした。

(;-_-)「う、うわぁっ!」

防空壕から一歩踏み出して、僕の身体が光に照らされた瞬間。
何だかよくわからない不安が、僕に襲いかかってきた。
まるでここから出てはならないと、本能が僕に知らせているような。

必死に最初にいた位置に戻る。
何故かこの場所にいると、凄い居心地が良い。
もうこの場所から離れられないかもしれない。

(-_-)「この防空壕は僕の場所だ。誰にも取らせないぞ」

生来の引きこもり癖が、死後も発揮されるなんて思いもしなかった。
でも、そんなこと関係無いんだ。
防空壕は俺の嫁。

(*-_-)「防空壕……'`ァ'`ァ」

死んでからもこんなんじゃダメだ、落ち着こう。

26 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:27:55.64 id:V0X6WyFT0
(-_-)「ん? 誰か来た……?」

出入り口から差し込んでいた光に、黒い影が入り込む。
サラリとした長い髪に、綺麗な顔。
僕の防空壕の雰囲気に似付かわしくない女性が、僕の防空壕に進入してきた。

僕の防空壕を勝手に利用して、僕の防空壕で避難して。
既に死んでいる僕の防空壕の中で、死んでる僕の目の前で生き存えようとして。
そんなこと、許せない。

(#-_-)「出て行け」

地面に落ちていた石を拾い上げて、投げ付けてみる。
肉体を持たない霊状の僕が物質に触れるのか不安だったけれども、案外普通に触れるようだった。
女に向かって飛んでいった石は、目標物には当たらずに、小さな音を立てて地面に落ちていった。

しかし、当たらなくても石の効果は抜群だったようだ。
石の動きに気付き辺りを見回す彼女の目には、僕の姿が映らないらしい。
誰も居ない場所から石が飛んでくるのだから、少なからず恐怖は感じるんだろうな。

(#-_-)「早く、出て行け」

続いて数回、またも石を投げ付ける。

30 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:30:55.86 id:V0X6WyFT0
女は、自分の周りに起こっている不可思議な現象に我慢ができなくなったのか、外に逃げていった。
ちょっと悪いことをしたのかも、とも考える。
もし、彼女が防空壕から出た瞬間に空爆でも受けたりしたら……

(-_-)「でも、僕の防空壕に入ってくるのがいけないんだ」

僕の考えは間違ってはいない。
人の土地に勝手に入ってきた、あの女がいけないんだ。

(-_-)「ふぅ……」

自分に言い聞かせてから、小さく溜息を吐く。
何故だか、虚しいんだ。

(-_-)「なんでこんなに防空壕を死守しようとしているんだろ……」

別に特別な思い入れがある訳でもない。
むしろ数分前に来たばかりの場所なのに、とても大切な場所のような気がする。
守られるはずの防空壕を守ろうとしているなんて、おかしな話だな、と思った。

(-_-)「暇だなぁ」

人もいない、物もない。
何一つ無駄な物がないこのスペースは、僕を存分に退屈にさせてくれた。
どうせ誰かが来ても、また追い出してしまうんだろうけど。

33 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:33:01.62 id:V0X6WyFT0
(-_-)「どうして僕だけここにいるんだろう」

母さんだって僕と一緒に死んでいった。
なのに、今ここにいるのは僕だけ。
全く同じ状況下で死んだ母さんだって、僕と一緒に防空壕にいても良いはずなのに。

(-_-)「暇だなぁ」

無意識にさっきと同じ言葉を呟いていた。
このままじゃ「暇だなぁ」が口癖になるかも、なんて一人で考えてこっそり笑う。
一緒に笑ってくれる人のいない寂しさが、余計に強く感じられただけだった。

生きている間も、基本的には自分の部屋に篭もりっきりで、孤独ではあった。
外に出ることもあまり無いから、友達も殆どいない。
寂しくなかったと言えば嘘になる。

そんな僕が身を裂くような孤独に負けなかったのは、正直、母さんの存在が大きかったんだと思う。
反発することも多かったけど、それでも母さんは僕に尽きっきりでいてくれた。
持病が悪化した時や、戦争の恐怖に震える時。

(-_-)「やっぱり一人っきりは辛いよ……」

母さんが何時でも傍にいてくれた。
母さんが何処でも傍にいてくれた。
だから、僕は孤独を乗り越えられていた。

なのに、今はいない。
僕は、一人。

37 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:35:51.13 id:V0X6WyFT0
僕は孤独だ。
一緒にいてくれる人などいない、真性の孤独だ。
その事実に気付いてしまった。

僕は膝を抱えて、この暗闇にポツンと存在している、孤独が去るのをひたすら待った。
顔の近くに膝、人肌があれば、少しでも孤独が和らぐ気がしたから。
このポーズは、生きている時からの癖だったような気もする。

(-_-)「母さん……」

この防空壕から自由に出られたら、僕は何処まで行けるんだろう。
でも残念なことに、僕は防空壕から出られないし、防空壕の心地良さに依存している。
僕の世界は、この防空壕の中、僕の視界で捉えられる範囲内だけなんだ。

世界から出られないなら、誰かが尋ねてくれるのを待てば良い。
だけれども、尋ね人は僕が追い出してしまう。
なんてもどかしいんだろう。

(-_-)「母さん……」

いるはずのない人の名前を、またも呼んでいる。
聞こえるはずがないのに、来るはずがないのに。
自分の考えの甘さを再認識させられる。

(-_-)「母さん……」

それでも、まだ呟いてしまうのが僕という人間なんだ。

42 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:37:52.13 id:V0X6WyFT0
( ^ω^)ノ「おいすー」

母さんについて考えすぎていたのだろうか。
いつの間にかの来訪者に、僕は気付けなかったようだ。
間抜けな声を上げて、防空壕に一人の少年が入ってきた。

( ^ω^)「とりあえず、この防空壕で一旦休むかお……」

地面の汚れも気にせずに、ゴロリと横になる。
ついに僕が孤独から脱せられる瞬間だ。
なのに、

(-_-)「……」

僕は何故、石を握っているんだろう。

ついさっきまで、孤独から解放してくれる尋ね人を待ち侘びていたのに。
ついさっきまで、女を追い出してしまったことを後悔していたのに。
僕はまた、こいつを追い出そうとしている。

(#-_-)「出て行け……!」

強く握った石を、勢いを付けて放つ。
少年に向かって真っ直ぐに飛んでいった石は、小さく音を立てて少年の頭に命中した。

(;^ω^)「痛っ!!」

44 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:40:34.15 id:V0X6WyFT0
(#-_-)「出て行け……!」

女の時と同じ。
また何個か石を掴んで、どんどん投げ付ける。
今回は驚くべきコントロールで、面白いくらいに石が命中していく。

(;^ω^)「痛い痛い痛い!! ちょっ、痛い!」

石を適当に寄せ集めて投げ続ける。
最後の一個まで、綺麗に命中。
なのに、こいつは決して逃げ出そうとする素振りを見せない。

(;-_-)「また石を……」

(;^ω^)「あのー……」

無くなった石を補充しようと探し回っている僕に、男が声を掛けてくる。
今はそれどころじゃない。
こいつにぶつける石を探さなくちゃいけないんだ。

って、え……?

(;-_-)「僕が見えるの?」

(;^ω^)「人に石を投げ付けておきながら、君は何を言っているんだお」

48 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:43:48.29 id:V0X6WyFT0
(;^ω^)「とにかく、僕に何の恨みがあって石をぶつけまくったんだお?」

さも当然のように尋ねてくる。
女の時は、僕の姿は見えなかったはずなのに。
何故、こいつは僕が見えるんだろう。

だけれども、今はそれどころではない。

(#-_-)「出て行け!」

僕の防空壕から、侵入者を追い出さなくてはならない。
こいつは、ここにいては駄目な存在なんだ。

(#-_-)「出て行け!」

石が無いのなら、直接攻撃すればいい。
近づいてきた男に対して、思いっきり拳を突き出す。
今まで一度も喧嘩したことの無い僕だけれども、防空壕を守るためならば、自然と身体が動いた。

(;゚ω゚)「――――ッッッ!!!」

(;-_-)「え……?」

僕の拳は、男の腹を突き抜け、背中側から姿を見せていた。
うん、凄く貫通してる。

51 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:45:25.54 id:V0X6WyFT0
(;゚ω゚)「僕は……ここまで頑張ってきたのに……防空壕で……死んでしまうのかお……」

男が何か呟いている。
やばい、やばい、かなりやばい。
僕は防空壕を守ろうとしただけで、人を殺すような殺人パンチを放つつもりなんて無かったのに。

(;-_-)「うわあぁっ!」

僕は焦って、貫通している腕を抜いた。
驚くほど、僕の腕には感覚が残っていなかった。

(;゚ω゚)「ごふぅっ!」

男が変な声を漏らす。
どの程度の傷口かと思い、目をやってみる。

(;-_-)「……」

傷どころか、服にすら乱れが見られない。
なのにこの男は何故、

(;゚ω゚)ビクンッ!ビクンッ!

嫌な痙攣を起こしているのだろうか。
真実を確かめるため、僕は実験として、もう一度腕を突き刺してみる。

55 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:48:17.35 id:V0X6WyFT0
(;゚ω゚)「グハッッッ!!」

突き刺さる感覚がないまま、またも僕の腕がこいつを貫通する。
今度は、そのまま腕を横に振るう。
次いで、頭部から股に掛けて縦にも腕を貫通させてみる。

(;゚ω゚)「アバッ! アババッ!!」

どうやら僕の腕は、この男に何の危害も加えられていないようだ。
腕が通過した後には、何一つ痕跡が残っていない。
ここで僕は一つの考えが思い浮かんだ。

既に死んでいる僕は、どうやら無生物には触れることができるらしい。
だけれども、命ある生命体には干渉できないようだ。
触れることも、見られることもできない(例外はあるらしいけど)と、これまでの経験で証明された。

ここから導き出される答えは一つ――

(-_-)「出てけよ」

(;゚ω゚)「ブハァッ! うぅ……って、お?」

(;^ω^)「僕は、生きてるのかお」

(-_-)「出てけよ」

――こいつを早く追い出すことだ。

58 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:50:23.23 id:V0X6WyFT0
(;^ω^)「出てけって……いきなり石ぶつけだすし、君はなかなか僕のことを嫌ってるおね」

(#-_-)「そんなことどうでも良いだろ! なんで僕のこと見えるんだよ! 早く出て行けよ!」

事が思い通りに上手く進まない苛立ちからか、思わず声を荒げる。
生きている頃の僕では考えられない。
死後の方が生前より元気だなんて、不思議なこともあるものだ。

(;^ω^)「見えるに決まってるお。君はここにいるんだから」

(#-_-)「僕は幽霊なんだよ! 見える方がおかしいだろ!」

(;^ω^)「幽霊とか何を言っているんだお」

(#-_-)「僕の腕がお前の体を貫通したろ! 普通の人間にあんなことできると思うのか!」

(;^ω^)「あー、確かに。あれは生身の人間じゃ無理な芸当d……」

(;゚ω゚)「君は……幽霊なのかお……?」

今更驚いた顔をされても、正直反応に困る。
なので僕は、とりあえず話を本題に戻した。

(#-_-)「もうなんで見えるとかどうでも良いから、早く出て行ってよ」

(;^ω^)「本当に僕のこと追い出したいんだおね」

60 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:53:34.69 id:V0X6WyFT0
(#-_-)「当たり前だろ。ここは僕の防空壕なんだ。むしろ、なんでお前がここにいたがるんだよ」

相も変わらず、こいつは全く出ようとする気配を見せない。
人の防空壕で、どこまで厚かましい奴なんだ。

(;^ω^)「防空壕が個人の所有物なわけがないだろ……常識的に考えて」

(#-_-)「うるさい! 早く出て行け!」

(;^ω^)「少し休んだら出て逝くお。だから、それまで待っていてくれお」

何だその誤変換。
死んでいる僕に対する当て付けか。

(#-_-)「逝くのはお前だバカ! 今すぐ出て行け!」

(;^ω^)「僕は生きてトーチャンとカーチャンに会いに行かなくちゃいけないんだお。だから……」

( ^ω^)「だから、頼むお」

突然、強い意志を持ったかのように、こいつは堂々とした態度で頼み込んできた。
すると、何故だろう。
こいつの言葉を聞いた瞬間から、僕の防空壕独占欲は音も無く溶けていった。

(-_-)「そっか、わかった。さっきまで色々と乱暴してゴメン」

(;^ω^)「いきなりの心変わりktkr。よくわからないけど、ありがとうだお」

62 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:55:36.06 id:V0X6WyFT0
(;^ω^)「これも一種のツンデレなのかお……」

小声で何か呟いているけれども、聞こえないふりをする。
わざわざ対応するのも面倒な気がしたからだ。

(-_-)「僕の名前はヒッキー。君の名前は?」

『こいつ』『男』『少年』
色々と地の文で表現はしてきたけれども、そろそろ呼び名をハッキリさせておきたい。
その考えから、僕は名を尋ねた。

( ^ω^)「とりあえずブーンって呼んでくれておkだお。ヒッキー、よろしくだお」

こいつ……ブーンは、名乗りながら手を差し出してきた。
握手でも求めてきているんだろうか。
僕もつられて手を差し出す。

(;-_-)「「あ」」(^ω^;)

透けて突き抜ける互いの手と手。
生と死の壁。
僕達の間には、それがうっすらと、それでもしっかりと存在していた。

(;-_-)「ゴメン、握手できないや」

(;^ω^)「こっちこそ気を使えなくてゴメンだお」

64 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:57:39.33 id:V0X6WyFT0
死んでいなければ、僕に命があれば、ブーンの手を握ることが出来たのに。
僕に非があるわけではない。
だけれども、なんとも言えない罪悪感が僕を包み込む。

それはブーンにも言えることのようで、彼も気まずそうな顔をして押し黙る。
触れなくなった原因はブーンではない。戦争だ。
なのにブーンは、失言をした自分を責めているようでもあった。

声には出さなくとも、互いの感情はなんとなくだけど理解できた。
理解できる分、掛け合う言葉が見つからない。
結果的に嫌な沈黙が残った。

(;-_-)「そういえば、なんでブーンは僕の姿が見えるんだろ」

この空気から脱するために、僕はわざとらしく話題を変える。
僕にとって、とても疑問に感じていた事柄だ。

(;^ω^)「それは僕にもわからないお」

やっぱりブーンにもわからないらしい。
まぁ、ここで理由をスラスラと答えられてもきっと戸惑うけれど。

( ^ω^)「あ、でも僕はここに来るまでに何回か死にかけたお。だからきっとヒッキーの世界に近づいたんだお。うん、きっとそうだお」

(;-_-)「そっか……」

ほら、戸惑った。

68 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 21:59:51.67 id:V0X6WyFT0
( ^ω^)「何回も死にかけたけど、僕は頑張って生きるんだお。
       どこかで必ず、トーチャンとカーチャンが僕を待っているから」

(-_-)「……」

ブーンは僕に、さっきと同じような雰囲気で目標を告げてくる。
彼のように目標も、命も、広がる世界も無い僕には、とても羨ましく感じられた。

( ^ω^)「ヒッキーの両親はどうなんだお?」

無いはずの心臓が、ドキンと少し跳ね上がった気がした。
同時に、僕の心が果てしなく深く続く、真っ暗な谷底に突き落とされる。

(-_-)「父さんは昔に、母さんは僕と一緒に死んだよ」

(;^ω^)「あ……」

ブーンが、またやってしまった、みたいな表情になる。
そら、そうだろう。
反省したばかりなのに、またタブーな質問をしてしまったんだから。

(;´ω`)「またしてもゴメンだお……」

(-_-)「死んじゃったのはブーンのせいじゃないんだから、別に良いよ」

このご時世に一家族全員が無事なんて事の方が珍しいんだ。
僕達みたく全滅する家族も決して少なくはない。

(-_-)「僕だけじゃない。他にも似たような霊がいっぱいいると思うんだ。
    毎日、死んでいく人は沢山でている。それなのに一々気にしていたら気がもたないよ」

70 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:02:14.79 id:V0X6WyFT0
(;´ω`)「本当に気が使えない子で……、今度からしっかり言い聞かせますお」

(-_-)「何それw」

ブーンのちょっとした言い回しに、僕は思わず笑ってしまう。
笑い声は、閉ざされた防空壕に小さく響いて。
先程から暗かった空気が、少しだけ明るくなったように感じた。

( ^ω^)「お、ヒッキーが初めて笑ったお」

(;^ω^)「表情変わってないからわかりづらいけど……」

小さな声で、付け足しで呟かれていた言葉は聞き逃す。
僕はブーンの言葉で、初めて死んでから人に笑いかけたことに気付いた。

(-_-)「やっぱり防空壕の雰囲気的にも明るくなれないからかなぁ。ってか、絶えず笑顔な幽霊も嫌でしょ」

(;^ω^)「それは確かに不気味すぎるお……」

久しぶりの生きた会話。
それは死んでいる僕には眩しすぎて。
何気ない話でも、楽しすぎて。

(;^ω^)「ちょ、いきなりどうしたんだお」

僕は知らずに涙を溢していた。

74 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:06:02.37 id:V0X6WyFT0
(-_-)「いや、何でもないよ。ただ、話す楽しさが懐かしすぎてさ……」

即座に涙を拭き取って、説明。
僕はただ、生きていたのが懐かしくなっただけ。
もう二度と手に入れることは出来ない命を、今更ながらに欲しただけなんだ。

( ^ω^)「ヒッキー……」

ブーンは、そんな僕を真っ直ぐと見据えている。
その瞳はとても深く、清く澄んでいて。
何か強い意志が感じられる視線だった。

(-_-)「な、なに……?」

( ^ω^)「ヒッキー、防空壕の外に出るお」

(-_-)「え?」

ブーンの言葉の真意が掴みきれなくて、思わず聞き返す。
外に出る? 何故?
僕の中で、一つの疑問がグルグルと回り始めた。

( ^ω^)「外に出れば、ここにいるよりも色んな命を見ることが出来るお」

( ^ω^)「失われていく命も、奪っていく命も。
      それでも、見るたびに僕は生きてることを実感できるんだお」

79 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:08:35.21 id:V0X6WyFT0
( ^ω^)「もう一度言うお。ヒッキー、防空壕の外に出るお」

(-_-)「……」

ブーンの言葉は、確かに僕の胸に突き刺さった。
防空壕の外に出てみたい、とも思った。
でも、

(-_-)「無理だよ」

(;^ω^)「お?」

防空壕から出られないのが事実なんだ。
だけど、それだけじゃない。
驚いた顔をしてるブーンに向かって、僕は一番の理由を述べる。

(-_-)「既に僕は死んでいるんだ。そんな僕が外に出てどうなるの?」

(;^ω^)「僕は君に、生きていた頃の気持ちを懐かしんでもらいたいんだお」

(-_-)「死の辛さを知っているのに、死んでいく命なんか見られないよ。
    きっと、僕はこの防空壕で留まり続けるんだろうね。第一出られないし」

(  ω )「ヒッキー……」

81 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:11:04.26 id:V0X6WyFT0
遂にブーンは言葉を失った。
僕だって外に出たい。だけど出られないんだ。
僕は結局、死んでからも引きこもりのまま。

(-_-)「そろそろブーンは行った方が良いんじゃない? 親に会わなくt――」

突然、僕は言葉を止めた。
いや、失ったと言うべきかな。
急に涙を溢し始めたブーンに驚いたから。

( ;ω;)「そんなんじゃ……そんなんじゃ辛すぎるお!」

ポトリ、ポトリ。
ブーンは自分の顔を、服を、防空壕の土を湿らしながら言葉を紡ぎ続ける。

( ;ω;)「僕は親に会うって目標があるから頑張っていられるんだお。でも……」

( ;ω;)「でも、ヒッキーがここに留まり続けていたら何の目標も無いまま、意味もなく存在することになるんだお」

( ;ω;)「存在する意味がない引き籠もりなんて、不必要すぎて可哀想すぎるお!」

(-_-)「……」

おい、こいつ軽く失礼じゃないか?
そんな気持ちを押し込めて、僕は黙って耳を傾け続けた。

85 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:14:15.15 id:V0X6WyFT0
( ;ω;)「ヒッキーは、何かやりたいこととかないのかお? 僕の手伝えることなら何でもするお」

涙やら鼻水やら、顔から出る液体全てを撒き散らしながら、ブーンは僕に尋ねる。
よく見てみると、なかなか小汚い顔だ。

( ;ω;)「僕は親に会いたいお! そんな感じの目標をぶちまけてくれお!」

やたら一人で捲し立てている。
目標? そんなもの既に命と共に置いてきた……って、
一つ、あったや。

(-_-)「僕も……母さんに会いたい……かも」

最期まで僕の身を案じてくれていた母さん。
何時でも僕と共に歩んでくれていた母さん。
僕は、その母さんに、会いたいんだ。

(-_-)「あ……」

この言葉を発した瞬間、僕に異変が起きた。
突然、何だかよくわからない――だけれども暖かみのある空気が僕を包んだんだ。
それと同時に、今まで異常に沸いていた防空壕に対する執着心や、外への恐怖心が、あっさりと消えていった。

( ぅω;)「目標を見付けられたなら、それを叶えるために奮迅あるべしだお!」

ブーンは何故かノリノリだし。
何そのどこかで聞いたことありそうな台詞。

87 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:16:34.22 id:V0X6WyFT0
とにかく、僕を防空壕に縛り付けていた鎖は、音も無く砕け散っていった。
つまり、

(-_-)「ブーン、僕この防空壕から出てみようと思う」

僕は自由になれたんだ。

( ^ω^)「お、わかったお! それじゃあ早速出るお!」

ブーンは心から嬉しそうに僕を連れ出そうとする。
これが愛の逃避行って奴なのか。

(-_-)「ちょっと待って。その前に頼みがあるんだ」

( ^ω^)「頼み? なんだお」

今までの現象から、僕は一つの仮説を立てた。
そして、その仮説はきっと当たっているんだろう。
それならば、僕のやるべき事は一つ。

(-_-)「僕が死んだこと。僕がここに存在したこと。僕が君と出会えたこと」

(-_-)「その証拠をこの防空壕に残しておきたいんだ。いつか、誰かが見てくれることを信じて」

( ^ω^)「……わかったお」

ブーンは静かに頷いてくれた。

90 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:20:37.88 id:V0X6WyFT0
( ^ω^)「具体的に僕は何をすれば良いんだお?」

(-_-)「僕がこれから言葉を紡ぐ。その言葉を僕の代わりに防空壕に掘ってほしいんだ」

正直、一人でやろうと思えばできる行いだ。
僕は無生物に触れられる。
そこら辺の堅めな物を拾って掘ればいいだけの話。

だけど、これはブーンにやってほしかった。
生死を超えた繋がり。
それを確固とさせるためにも。

( ^ω^)「把握したお」

そして、ブーンはまたも頷く。
全く疑いを見せない姿勢が、とても嬉しかった。
気付けば、ブーンは既に何やら硬そうな物質を握っていた。

( ^ω^)「準備はおkだお」

(-_-)「うん、それじゃあ言うよ」

深く息を吸って、取り込んだ空気を言葉として吐き出す。
一文一文を噛み締めるように。
僕の全てをしっかりと残せるように。

92 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:22:02.61 id:V0X6WyFT0
(  ω )「書き……終えたお」

ブーンの声が少し震えている。
ひたすらに俯いて、顔は見せないように。
一瞬だけ、深い沈黙が訪れた。

(-_-)「ありがとう。それじゃあ防空壕から出ようか」

その沈黙を破って、声を掛ける。
ブーンはゆっくりと、外へ歩を進めた。
僕もそれに続く。

外から差し込む光が、とても強く感じられる。
僕の前を歩いていたブーンの影は、その光に伸ばされて。
対して僕の影は、地面に存在していなくて。

(-_-)「それじゃあ、お別れだね」

外に踏み出した瞬間、僕の体がフワリ、宙に浮く。
ブーンは少し驚いた顔をして、少ししてから納得した顔になって。

(  ω )「成仏って、やつなのかお?」

未だにブーンの声は震えたまま。

(-_-)「うん、母さんが上で待っているから」

僕は、空を指さす。

95 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:24:09.76 id:V0X6WyFT0
(  ω )「ヒッ……キー……」

ゆっくりと僕の名前を呼ぶ。
とても不安定な、か細い声で。

(-_-)「ブーン」

僕もまた、ブーンの名前を呼び返す。
すると、俯き加減だったブーンの顔が、突然に持ち上げられた。

( ;ω;)「ヒッキー! もうお別れなんて寂しいお! せっかく仲良くなったばかりじゃないかお! それに、あの文章……」

大粒の涙をボロボロ溢しながら、思いの丈をぶつけてくる。

(-_-)「大丈夫。お別れじゃないよ」

僕はブーンに、出来るだけ優しい声で語りかける。

( ;ω;)「お?」

(-_-)「空から。僕は空から母さんと一緒に君を見守っているから。ブーンが無事両親に会えるよう祈っているから」

( ;ω;)「……」

涙を大量に溜め込んだ目で、僕を見つめる。
その間にも、僕の体は空へと昇っていく。

98 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:26:45.31 id:V0X6WyFT0
( ;ω;)「……約束……だお」

(-_-)「え?」

( ;ω;)「僕のこと最後まで見届けていろお! これは絶対破っちゃいけない約束だお!」

大声でブーンが叫ぶ。
空気を、大地を、心を、その場に存在する全てを振るわせるほどの叫び。

(-_-)「任せて! 絶対ブーンは両親に会えるから! ずっと見守っているから!」

僕も負けじと大声を張り上げる。
空に昇りながらも、しっかりとブーンに思いが届くように。

だんだん、ブーンの声が小さくなっていく。
次第にブーンの姿が、防空壕が、周りの木々が、全てが蟻くらいの大きさになっていく。

一人で空を昇る最中、僕はまた少し笑っていた。
それは死ぬ時の自嘲的な笑いではなくて、幸福を感じた時の笑い。

(-_-)「母さん、今会いに行くよ」

今までの不可思議な現象の原因へ、僕は向かっている。
上へ、上へ。

100 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:28:03.31 id:V0X6WyFT0
よく考えればすぐ気付くはずだったね。

母さんは僕に防空壕へ行けと言っていた。
僕は気付いたら防空壕にいた。

母さんは僕のことを人一倍心配して、いつでも守ってくれていた。
僕は他人から、防空壕――つまりは僕の安全を守ろうとしていた。

母さんは僕が助かるよう、過保護なほど付きっきりだった。
僕は防空壕から出られず、過保護なほど守られていた。

女の人が来た時は必死に追い出したけど、ブーンの場合は追い出さなかったのも、
ブーンが僕達と似た境遇だって話してくれたからでしょ。

僕が母さんに会いに行くと決意を固めた時に、やっと安心してくれたんだよね。
だから、僕は防空壕から出られるようになったんだよね。

僕が上に昇ったら、ゆっくり答え合わせをしようか。
母さんの意志で、僕の自由が奪われたことを咎めた後にね。

そして、二人でブーンを見守ろう。
きっと、彼が無事に両親に会えるように。


防空壕の言葉は、誰かの心に響くかな。

104 名前:(-_-) ◆qvQN8eIyTE 投稿日:2007/08/28(火) 22:29:41.16 id:V0X6WyFT0
『自分ハ、コノ世界ニ生キテマシタ
 父ハ、二年前ノ戦イデ、自分ト母ヲ残シテ、遠イ空ヘト昇ッテイキマシタ

 父ヲ失ッタ自分ト母ハ、絶望ニ打チ拉ガレナガラモ、ソレデモ必死ニ生キテイキマシタ
 一本ノ芋ヲ親子デ分ケテ、タマノ白米ニハ二人デ喜ンデ、ソレハ誠ニ慎マシイ生活デシタ
 ソノ日モ、母ノ作ッタ粥ヲ食ベテイル最中デシタ

 突然ゴオォォ、トイウ音ガシタカト思ウト、気付ケバ家族ノ思イ出ガ詰マッタ家ハ燃エテイタノデス

 イエ、燃エタノハ家ダケデハアリマセン

 自分ト母モ燃エテイタノデス

 嗚呼、自分達ハ何ヲシタトイウノデショウカ
 マダ生キテイキタカッタノニ、父ノ分モ母ヲ助ケテイキタカッタノニ
 誰ニモ迷惑ヲ掛ケズニ生キテキタノニ、理不尽ニモ命ヲ、コレカラノ生活ヲ、永遠ノ言葉ヲ奪ワレタノデス

 自分ハ既二、コノ世ノ者デハアリマセン
 セメテ、コノ防空壕二逃ゲ、コノ文章ヲ見付ケテクレタ方々二御願イガアリマス
 自分ノ分モ生キテ、コノ哀シイ戦争ヲ終ワラセテ、争イノ無イ平和ナ世界デ笑ッテ生キテクダサイ

 自分ノ分モ、母ノ分モ、父ノ分モ、全テノ戦争ニヨッテ命ヲ奪ワレタ方々ノ分モ、生キテクダサイ
 コノ争イノ凄惨サヲ後世マデ伝エテイッテクダサイ

 イツカ永遠ノ平和ガ訪レルト信ジ、自分ハ逝キマス
 サヨウナラ、サヨウナラ』

( ^ω^)ブーンたちが戦場を駆け巡るようです
返信2007/08/29 22:25:29